■アメリカ合衆国は、元々先住民族であるネイティブ・アメリカンが住んでいた土地である。そこに、16世紀からはヨーロッパからの植民者が、17〜19世紀には奴隷貿易によりアフリカからの黒人奴隷が、19世紀からはアジアからの移民が入って来た。

さらにこれらの人種間で混血が起ったため、「人種のるつぼ」と呼ばれてきたが、実際には異人種が融け合って生活する社会が形成されるよりも、むしろ人種毎に入植が行われてきた経緯がある。とくに「ゲットー」と称されるアフリカ系アメリカ人居住地域やチャイナタウンが代表するように、各地に特定人種による居住地ができている。

 

 

1764年、ヨーロッパ人と会うネイティブ・アメリカン

 

このような住み分けが起きていることから、近年ではアメリカ合衆国を色々な野菜が入ったサラダに例えて「人種のサラダボウル」と呼ぶことが多くなった。こうした中で人種差別問題、特にヘイトクライムと呼ばれる人種差別主義者による凶悪犯罪が頻繁に発生し、大きな社会問題となっている。

また、南部や中西部を中心にKKKなどの人種差別的な団体が未だ半ば公然と活動している地域も存在する。アフリカ系の死刑執行率がヨーロッパ系に比べて極端に高いなど、裁判制度の不公平性も問題となっており、現在も合法違法を問わず移民が多い。

「合計特殊出生率」とは、人口統計上の指標で、一人の女性が一生に産む子供の平均数を示すものであるが、アメリカの合計特殊出生率は2.0?2.1前後で横ばいに推移しており非常に安定している。先進国の中ではトップクラスであり、とくに移民層の出生率が2.71と高い。

つまり、アメリカの人口は自然増、社会増双方の要因により安定して増加し続けている。老齢化が進む日本とはこの点が大きく異なる。2006年には総人口が3億人を超えたと公式に発表された。

世界でも有数の多民族国家である。2010年の人口統計によると、白人は72.4%(2億2355万人)、アフリカ系(黒人)12.6%(3892万人)、アジア系4.8%(1467万人)、アメリカン・インディアン0.9%(293万人)、太平洋地域の先住民系0.2%(54万人)となっている。

また、2つ以上の人種を祖先とする国民は2.9%、900万人もいる。アメリカは英語圏であるためにイギリス系が多いと思われがちだが、最も多いのはドイツ系(17.1%)であり、 その次がアイルランド系(12.1%)、3番目にイングランド系(9.0%)となっている。このドイツ系、アイルランド系、イギリス系で全人口の4割以上を占めている。

歴代大統領にはイギリス系以外にアイルランド系やドイツ系とオランダ系とギリシャ系が就任しており、そして2009年時点の現職はアフリカ系である。

 




1985年、ミハイル・ゴルバチョフ・ソ連書記長と会談するロナルド・レーガン米大統領

 

また、以前のヒスパニック系は14.5%(4190万人)だったが、最近のアメリカの国勢調査による人口統計学では、新たに中南米諸国から移住したヒスパニックが18.5%(4527万人)と増加傾向にある。

これらヒスパニック系はアフリカ系と減少傾向にあるドイツ系を超える人口構成となっており、いまやアメリカのマジョリティになりつつある。人口予測によれば、2050年にはヒスパニックの人口は1億3300万人となり、全人口の3割に達する見込みである。

アメリカの言語は、言うまでもなく英語(アメリカ英語)であるが、アメリカ合衆国には法で定められた公用語はない。しかし、建国の歴史から英語が事実上の国語となっており、英語を話す国民は82.1%に上り、次いで、スペイン語を話す国民が10.7%である。

原住民であるハワイ語やアメリカ・インディアン諸語などを話す国民は少数派である。長年にわたる先住民の同化政策の結果、先住民の言語を話せる人口は非常に少なくなっており、十分な保護政策も取られておらず、多くが消滅の危機に瀕している。

英語を母語としない国民でもたいていは英語を日常的に使用している。高齢者を除き、基本的な英語の知識は市民権取得の必須条件である。アメリカ人の中には英語を連邦の正式な公用語とすることを希望する者が多く、上述のとおり公用語は定められていないが、州レベルでは現在30州が英語を公用語に指定している。

一方、ニューメキシコ、ルイジアナ、メイン、ハワイの4州では行政上英語以外の言語が事実上の第二言語とされている。ハワイ州では州憲法によりハワイ語と英語が公用語とされており、ルイジアナ州とメイン州ではフランス語が行政上の第二言語である。

 

英語とスペイン語以外の言語が話される州

 

合衆国加入当時からスペイン(メキシコ)系住民の多いニューメキシコ州は常にスペイン語を非公式な第二公用語としてきた。このスペイン語の話者は、上の統計に示すとおり英語に次いで多く、特にカリフォルニア州、ニューメキシコ州、アリゾナ州、テキサス州などメキシコと隣接する地域に多い。

また、ニューヨークやシカゴなどの大都市では日常的に用いられており、国内でもっとも学習者の多い外国語でもある。 近年増加傾向にある中南米スペイン語諸国からの移民であるヒスパニックには、英語を不自由なく喋ることのできない者も多いため、銀行のATMやスーパーマーケットのセルフレジなどではスペイン語が選択できるようになっている。

今や国民の3割に達しようとしているヒスパニックが話すスペイン語は政治的、経済的、文化的にも非常に大きな影響力を持っている。実際、ヒスパニック人口の多い州では既にスペイン語抜きにはビジネスが成り立たなくなっているなど、事実上の第二公用語となっている。

このスペイン語のような英語以外の言語を州の公用語として認めるかどうかは、単に文化的問題に留まらず州の公文書をその言語で作成する必要があるかどうかという財政的側面があり、選挙でしばしば取り上げられる問題である。

宗教についても見てみよう。プロテスタント58%、カトリック21%、など、キリスト教信仰者の比率は、1990年調査時の86.2%から2003年調査時の79%へと年々減少傾向にある。そのほか、ユダヤ教信者は 1.3%、これ以下なのがイスラム教、仏教、不可知論、無神論、ヒンドゥー教などであり、それぞれ0.5%から0.3%である。

無宗教は13.2%だという。 しかし、やはりアメリカの文化の根幹にあるのはキリスト教である。これまでの大統領が全てキリスト教徒であった。米国憲法修正条項第1条は国教の制定を禁じているが、大統領就任式の際に聖書を手に宣誓を行うなど米国社会ではキリスト教、特にプロテスタントの存在が非常に大きい。

こうしたキリスト教信奉者の中には、宗教的な理由から進化論を否定する者が多く、「公立校で進化論を教えるなら創造科学も合わせて教えるべき」とするキリスト教系宗教団体が州の教育委員会を相手取り論争を起こした例が数件ある。

ギャラップ調査2007年5月の調査によると、アメリカ人は、「神を信じる」と答えた人が86%、「天国を信じる」と答えた人が81%という結果が出た。キリスト教徒が多いことの反映といえる。

 

セント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂(ニューヨーク)

 

豊かな国である。他の先進国と比べて、所得税、贈与税、相続税(遺産税)率の累進性やキャピタルゲイン(債券や株式など資産の価格の上昇による利益)への税率が低い。しかしそのこと貧富の差を生んでいる。

2000年を過ぎ、サブプライムローン問題、リーマンショックなどによって失業者を多数生んだが、一方で米国流の資本主義、拝金主義信奉者の中にはこれらの低い税率を利用して利益を蓄えた。国民の間に資産格差が拡大しており、その内部には根本的な欺瞞や問題を数多く抱えている。

例えば、クレジットカード会社による入会審査の基準が緩く、クレジットカードを入手するのが非常に簡単である。その結果、恒常的にカードローンに依存するワーキングプアが増えている。日本と異なり、100ドル札といった高額紙幣の信用が低いため、現金決済よりもクレジットカード決済が好まれる傾向がある。

高度な学歴社会であり、アメリカン・ドリームを達成できるごく少数の個人を除いて職業や収入、社会的地位は学歴に大きく依存する。他方、自治体の教育関係予算は学区の税収と予算案に対する住民投票によって決定され、質の高い教育を提供する教師の確保にも影響するため、公立学校の教育レベルは学区により大きな違いがある。

片や私立学校の入学金・授業料は非常に高額で、入学には親の社会的地位や学歴、家柄、寄付金も選考要件となる。

 

ニューヨークの自由の女神像は、自由、民主主義及び機会の理想の象徴だが……

 

第二次世界大戦以前より今日まで、世界を席巻する主要な「大衆消費文化」の母国としてより強く認識されている。

大量に供給され短期間に消費される音楽、テレビ番組、ハリウッド映画などの娯楽、自動車、あるいはファストフードやコカ・コーラ等の食品、等々に代表される大量消費文化が、世界のどの国よりも支配的である。 すでに1830年代から、アメリカ合衆国は拝金主義的、物質主義的な風潮が蔓延している、と指摘されていた。

これほど金銭欲が人々の心に大きな場所を占めている国は無い、と他国から非難されるほど拝金主義、物質主義が蔓延しているといわれる。

その一方で、軍や軍需産業による先端技術開発への投資が活発な他、大学などの研究機関が行う各種研究に対しての企業による寄付なども盛んに行われていることから、先端技術や種々の学問においては世界的に見て1、2を争うものが多い。

第二次世界大戦前後、ユダヤ人であるためナチスに迫害を受けたアルベルト・アインシュタイン、あるいは祖国が戦火で荒廃したドイツからやってきたフォン・ブラウンなど、ヨーロッパの科学者や技術者が多数アメリカに移住した。

このため、ため、戦後はアメリカがヨーロッパに取って代わり世界の先端的な科学技術や学問の中心になった面もある。アメリカの大衆・大量消費文化は世界的なトレンドを形成し、また先端的な医療、軍事、航空宇宙、情報・通信(IT)などのテクノロジーは、保有する基礎科学・応用科学の力に支えられて実現しているものである。

現代の科学技術文明を牽引する主要な国家であることは間違いないといえそうである。

 




- BACK -