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応用編 第1章 2×4セルフビルドのプランニング @

応用編では、2×4住宅をセルフビルドするにあたってのプランニングや施工について、市販の図書ではあまり書かれていない話題を主に記述していきます。

まず、第1編では、2×4工法の勉強の方法や、設計や積算の方法、材料の入手の仕方について説明しています。また。第2編では、実際に現場で2×4住宅を建てる場合の問題点や課題を記述の中心に置き、これに2×4工法の実質的なマニュアルといわれる公庫仕様書からの引用を若干加えて、はじめての人にもわかりやすいよう現場の写真も豊富に掲載して2×4住宅のできるまでを説明しています。紙面の関係からすべての工程を詳しく語ることはできませんでしたが、これを読んで少しでも皆さんのセルフビルドによる家づくりへのご理解が深まればいいなと考えております。

1. 2×4工法の学習について

さて、セルフビルドをはじめるにあたっては、まずやはり2×4工法とは何か、を知ることです。基本的な知識がないままに、材料だけ仕入れて作業を始めても失敗は目に見えています。その基礎知識をステップバイステップで勉強していただくためには、いろいろな手順があると思いますが、筆者は以下の手順で読み解いていくことをお勧めしています。

@当ホームページや市販の基礎読本を読み、2×4工法の概要をつかむ

A公庫図解マニュアルなどを参照しながら、公庫仕様書の細かい部分を読む。「セルフビルドガイ学習ドライン(今後公開予定)」を参照しながら必要か書を読むことで、2×4工法への理解はより深まる。

B公庫仕様書に書かれていない現場知識を「実務手順」でチェックする。

 「セルフビルド学習ガイドライン」は、市販図書ではなく、筆者が5年ほど前に作成したオリジナルの公庫仕様書の解説書です(全120ページ)。その後公庫仕様が改訂されたため、ガイドラインの中身も書き換える必要性がありますが、忙しさにかまけてまだ改訂しておりません。が、いずれ改訂して公開したいと思います。

実際の建築工程に従い、公庫仕様書のどこをみればその記述があるか、その記述をどう読み取るか、について詳しく書いてあります。これに加え、公庫仕様書の姉妹書といえる公庫図解マニュアル(正式には、「図解 枠組み壁工法住宅施工マニュアル」)を参照しながら、公庫仕様書をチェックしていくことで、2×4工法に関する知識は一段と深まると思います。


一方、マニュアルにも書かれていない現場での作業上における知識は「木造住宅施工の実務手順」で補います。この本は、2×4住宅も施工するハウスメーカーである、木下工務店の技術者が書いたもので、実際の現場における2×4工法住宅と在来軸組み工法住宅の現場管理の方法について述べられたものです。公庫仕様書は、フレーミングについて詳しく書かれていますが、フレーミングが終わったあとの内外装材の取り付けについてはほとんど記述がないため、こうした実務書に目を通されることで、現場施工への理解がより深まると思います。なお、上述の「キットでつくる2×4住宅マニュアル」もこうした公庫に書かれていない内外装の取り付けについて詳しく書かれており、実際の施工に入る前に再度読み返すと良いでしょう。

以上のような書籍に一通り目を通されることで、それまで漠然としかものでなかった2×4建築に関する知識は、飛躍的に深いものになると思います。素人が家を建てる場合、まず必要なのは、標準仕様書をよく読み解くことですが、その理解を進めるためには上述のような書籍や資料が最適だと考えます。

 

なお、前述までの参考資料を参照することによって、2×4工法に関するほとんどの知識は吸収できると考えられますが、実際の設計にあたっては、梁や根太といった構造部材の大きさや長さを「スパン表」というものから決める必要があり、これは住宅金融公庫から発行されています。「枠組壁工法の構造計算の手引き(スパン表の解説)」はこれをわかりやすく説明したものであり、スパン表そのものも合わせて掲載されていますので、設計を自分でやる方はこれも入手されたほうが良いでしょう。また、仕様書は住宅金融公庫という一法人が示した基準にすぎませんが、仕様書の各項目は国土交通省が技術基準として示した「告示」というものに従って編纂されており、上述の公庫図解マニュアルの各記述内容には「告示」のどの箇所に基づいた記述かが示されています。この「告示」の内容は、「枠組み壁工法建築物の設計の手引き(監修国土交通省)」という図書の中で詳しく解説されています。通常の2階建て2×4住宅を建てるための参考図書としてまで購入する必要はないように思いますが、小屋裏のある準3階建ての2×4住宅の設計の参考とする場合や、2×4住宅の防火対策を知るためには不可欠の参考図書といえます。 

 

同書の「共通仕様書と国道交通省告示」の関係の項を見ると、「告示は、枠組壁工法について、構造耐力上必要な技術基準を一般的に定めたもの」であり、「設計施工に際して参考となる細部のディテール等までを示したものではない。」とうことであり、確かに設計施工の際に参考となるような細かい図版などはあまりありません。しかし、2×4工法の地震や台風などに対する強さなど、構造体としての特性などが詳しく説明されており、2×4とは何かをより専門的に勉強したい方は、こちらも入手されると良いと思われます。なお、2×4工法の場合、2階建ての場合には耐力壁量を計算するだけで良いのですが、3階建てとする場合には、「構造計算書」を作成しなければならないことになっており、その計算書の作り方についても詳しく述べられています。また、2×4工法の火事に対する性能基準についての説明や「構造材の種類」といった項目に対してもかなりのページを割いており、何かと参考になります。

 

これらの図書については、書店や住宅金融公庫でも入手でき、インターネットでも入手可能です。セルフビルドを志す人は必携です。ぜひ、入手してみてください。

2. 敷地のチェック(建築基準法等に基づく適正規模・屋根形状等のチェック)

 

セルフビルドのプランニングの最初はやはり、どういった土地に家を建てるか、その土地の状況に問題がないかどうかを調べることです。建築基準法による戸建て住宅の規制内容は、「単体規定」と「集団規定」のふたつに大きくわかれますが、ここでのチェックは後者にあたります。単体規定とは、個々の建物の安全性に関する規定であり、その建物が地震や台風や火事に対して十分な性能を持っているかを規定しているのに対し、集団規定とは、その建物が建つ地域の都市計画上の基準、すなわち道路や建蔽率、容積率、高さ用途地域といったことに関する規定です。

 

家を建てる場合には、自分でそれが建つ土地にどんな家が建てられるかを各法令や条例をもとにチェックしておく必要があります。また、これから購入される方も目指す住宅の大きさから逆算してどういった土地を選定するかを勉強しておく必要があります。これらの知識はけっして難解なものではありませんが、公庫仕様書と同じくお役人が決めたものですから、これを分かりやすく説明した市販の図書を探すと良いと思います。一例では、オーム社から出ている「わかりやすい建築法規の知識、井上国博ほか著」などがありますが、このほかにも良書はたくさんありますので皆さんも探してみてください。

 

予定敷地が都市計画内にある場合には、都市計画区域毎に建蔽率や容積率、高さ制限、防火規制などが厳しく定められているのが通常ですが、意外と気をつけなければならないのが都市計画区域外の農村部や山林地帯です。森林保護のために実際には家が建てられなかったり、国立公園や国定公園内にある場合や地域独自の条例や規制があって一定規模の住宅しか建てられないというケースもあります。このほかにも農地転用が済んでいない土地には家が建てられませんし、せっかく家を建てたのに敷地の回りが農地のため汚水排水ができないといったケースもあります。このため、田舎に家を建てられる方は予定敷地についてくれぐれも厳重なチェックを行っていただきたいと思います。 

 

ここでのチェックは今後設計を進めるにあたり、設計がかなり進んだ段階で実際には設計規模の住宅が建てられない、といった手戻りがないようにするためのものです。お客様のほうで既にそうしたチェックがお済みの場合には必要ありません。しかし不安材料がある場合にはクリアーにしておく必要があります。

なお、敷地が軟弱地盤でないかどうかについても調べておく必要があります。通常の砂質土地盤なら問題ありませんが、もともと沼地や湿地であった土地では、地質調査を行ったほうが安心です。

 

 

 

土地にかかる制限のチェック

   

土地の土質試験(地耐力調査)

スウェーデン式サウンディング法、表面波探査試験などがあります。一般的には1宅地5ポイントで5〜8万円くらい。

 

セルフビルドで家を建ててみたいと考えている方の多くが迷うのが、工法として何を選ぶかでしょう。わが国では、2×4工法、ログハウス、ポストアンドビーム、在来軸組み工法、フラードームなどの工法がありますが、一般に入手できるマニュアルの豊富さや素人でも取り組める簡単さを考えると、やはり初めての人にっとっての選択肢はやはりログハウスか2×4に絞り込まれるでしょう。  2×4に使用する材料は、一定規格で決まっていますが、ログハウスは使うログ材によって更にいくつかの種類に分けられ、それは、丸ログ、楕円ログ、D型ログ、角ログ、ラミネートログなどです。丸ログ以外は、ログ材を工場生産の段階で、施工し易いようにプレカットしたもので、角ログやラミネートログは2×4材のように四角い断面をしています。このため施工性は丸ログに比べてかなり改善されますが、ログハウスの持つ味わいのある内外観は薄れてしまうことが多いようです。  2×4とログハウスのそれぞれの長所短所を右表にとりまとめてみました。  ログハウスは、その味わいのある内外観や、木肌に直接触れ合えるやさしさなどから非常に人気が高い工法です。しかし、窓を大きくとれないために、換気がしにくく、また都市部では耐火構造物として認められず、建築ができない場合が多い、などの制約があります。大きな窓をとりにくいというのは、高温多湿の気候をもつ日本の住宅としては厳しい条件であり、湿気による木の伸び縮みは断熱性や耐久性をおびやかすものになりかねません。一方2×4は窓やドアの大きさを決めるためにある程度の規則はあるものの、ほぼ自由な形の窓形状をとることができます。また、耐震性、防火性、機密性、断熱性にも優れます。加えて、構造が簡単で難しい作業が少ないため生産性が高く、工期が短い、品質を維持しやすいなど、現状では素人が最も取り組みやすい工法であるといっても言いすぎではないでしょう。ログハウスでもマシンカットログと呼ばれる角材を使ったもの(上述の角ログ、ラミネートログなど)は、施工も非常にしやすく、素人向けといえるのですが、通気性や耐火性といった基本的な性能は2×4に比べて一歩譲る部分が多く、セトリングといって組んだログが収縮することによる建物の沈下対策も考慮に入れておかなければならないなど素人の方が最初に取り組む住宅としては手間がかかりすぎます。屋根ができあがるまでのログ材の保管管理も大変、ということもあり、資材の管理や工程計画が建てやすい2×4工法に軍配があがるということになるでしょう。

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2011-01-01