敷地や地盤の条件により、建築できる住宅規模が決まったら、つぎは間取りについて検討しましょう。最近は、実に多様な家づくりの本が出ていますので、これらの中から自分のイメージに合った家を選び、その間取りをアレンジしていくのが良い方法だと思います。ある程度のイメージが固まったら、自分でラフスケッチを手書きしてみるのも良いでしょうし、CADを使える人は図面化してみるのも良いでしょう。しかし、CADまで習得するのは、ちょっとおっくうだという方は、市販のソフト(例えば、3Dマイホームデザイナー、メガソフト社など)を購入すれば、簡単に間取り図が作成できます。また、当社に間取り図をお送りいただければ、無料で間取り図を作成します。図面化した間取り図はそれだけで終わるのではなく、その間取りが適正なものかどうかを判定するとともに、次項で示すように、立体図化してそれが当初のイメージに近いものかどうかを確認すると良いでしょう。
間取りの良し悪しの判断のポイントとしてはさまざまなものが考えられますが、経済性や社会性、家庭面や健康面などから総合的に判断することが必要です。風水や家相学を勉強されるのも面白いと思いますが、一般的には以下のような観点から判断されると良いでしょう。
間取り図の鳥瞰図(3DマイホームデザイナーPro(メガソフト)を使って作成した例)
一方、実際に建てられる住宅として仕上げるためには、ただ単に間取りの良し悪しだけを判断するのではなく、構造力学的に地震や台風に耐えられるよう検討を加えなくてはなりません。2×4住宅の場合、そのプランが適切なものであるかどうかについては、後述するように「耐力壁」という壁が適切に配置されているかどうかを国が決めた基準に従ってチェックする必要があります。国が決めた基準とは、「建築基準法」であり、この法律を受けて国土交通省が示した基準や告示、そして住宅金融公庫が発行している仕様書があることは前述の通りです。
ところが、この仕様書(マニュアル)というのはお役所仕事そのものであり、一般の人には非常に分かりにくいのが難点です。耐力壁の配置についても、一箇所だけにまとめて記述してくれれば分かりやすいのですが、各項バラバラに記述されているため、なかなか理解に至らないのが現状です。国土交通省の告示内容や、公庫仕様書をじっくり読めば理解できないものではないのですが、初めての人はやはりとまどうでしょう。とくに開口部の取り方や、耐力壁線の配置に関する細かい規定を理解するのには少々時間がかかると思われます。
従って、作成した間取り図をもとに、耐力壁線や耐力壁の配置について、告示内容や仕様書の記述に従ったひととおりのチェックを行い、問題のありそうな箇所があるかどかを確かめます。耐力壁の配置に関するチェックそのものはそれほど難解なものではなく、自分でも簡単にできます(後述)。
とはいえ、独学の末に作ったプランにはひとりよがりの部分も多いもの。できれば、第三者の意見を反映していただければと考えます。やはり専門の建築士さんなどに依頼してチェックをしていただくほうが安心です。最近はセルフビルドに取り組む人が増えていることから、たとえ有償であっても比較的リーズナブルにチェックに応じてくれる建築士さんも増えているようです。
耐力壁に関する規定を図化したもの。このほかにも細かい規定がある。
住宅にかかるコストは、大きく分けて以下のようになります。
1.調査・設計費用(申請用図面・施工図面、地質調査など)
2.材料費
構造用部材(2×4材、構造用合板、金物、屋根材料など)
内外装資材(サッシ、外壁材、内装材など)
住宅設備(バス、トイレ、キッチン、各種電気設備など)
3.仮設材料・工具購入・リース代(足場・工具のリースなど)
4.設備施工外注費(給排水工事、衛生設備工事、電気設備工事、ガス設備工事など)
5.諸経費(各種申請料、税金、水道・下水道負担金など)
6.付帯工事・備品費(外構工事費、照明器具購入費用など)
これらの詳細な費用の算定すべてを設計も終わっていない初期の段階で行うことはナンセンスです。これらのコスト計算は、間取りや外観などがある程度煮詰まった段階まで待ったほうが良いでしょう。
しかし、先々の資金調達の見通しをたてるにあたって、ある程度の建築費用の目安は誰でもが知りたいところです。建物の面積やグレードによってどの程度の家が建てられるかがわかれば、計画的な資金繰りも可能になります。初期投資できる資金が少なければ、小さな規模のものから建てて、少しずつ建て増ししていくというプランも成り立ち、こうしたプランニングは以下の設計内容にも大きな影響を与えます。
既にある程度の間取りプランをお持ちであれば、住宅がだいたいどの程度のコストで建てられるかを概略積算可能です。但し、仮設材料以下の細かい費用は省き、主として材料費を中心とした算定になります。2×4の住宅コストは、その大きさによってだいたい一定していますので、建築床面積にこれまでの実績からの坪単価を掛け合わせることで、だいたいの概算費用が算出できることできます。坪単価については、基礎編で示した住宅単価などを参考に算出してみてください。
積算の結果、予算に無理がある場合には、グレードを落とすか、建築規模を縮小するなどの方法によって調整します。また小さい規模から立ち上げ、徐々に建て増ししていくというプランの場合には、基本部分と建て増し部分のそれぞれについて積算を行うなど、細かな調整も可能です。
目標とする住宅の間取図ができたら、その立体図を作成し、主に建物の外観を中心とした概略構造を検討すると良いでしょう。ただ、そのためだけに本格的なCADソフトを購入したり、それを勉強するのも大変です。前述しましたが、最近は、安価な立体デザインソフトも多数出回っており、これによってデザイン検討をすると良いでしょう。これにより自分で建てたい住宅のある程度の完成イメージがつかめます。
こうして作成したデザインが気に入らない場合は間取り図を修正し、以下に述べる壁量計算もやりなおしてトライアルで完成予想図の詰めを行います。外観を決める上でポイントとなる点を以下に列記しました。
市販ソフトによる一次デザイン
間取り図を作成し、予算にもある程度の目安がついたら、更に詳しく「壁量計算」という計算を行って、構造的に問題がないかどうかをチェックしましょう。
壁量計算とは、地震や台風に対して2×4住宅の耐力壁の量が十分であるかどうかを検討する計算のことをいいます。上で検討した立体図も、壁量が足りない場合には再検討が必要になります。建築基準法では、3階建て住宅の場合、複雑な構造計算が必要となってきますが、平屋建てと2階建て、小屋裏利用の3階建て住宅では簡易的な壁量計算をするだけで済みます。
壁量計算は、難しいものではなく、いたって単純な作業です。「上述のキットでつくる2×4住宅マニュアル」などにも計算の方法が記述されていますから、こうした参考図書をもとに自前の計算書の作成にトライしてみてください。基本的にはご自分で計算して理解していただくことがその後の家づくりのためには重要です。とはいえ、計算した結果に不安があるのは当然と思われますので、ご要望があれば当社で計算のチェックのサービスをしています(巻末のサービス内容の説明参照)。
このほか、平成12年の建築基準法の改正でチェックすることが必要になった、「バランス計算」という計算も行うとよいでしょう。平成12年以前の建築基準法では、壁量計算だけで十分だったのですが、この改正では、建物の四辺の壁量がバランスよく設置されているかどうかもチェックすることを求めています。これは先の阪神淡路大震災を踏まえて、より建物の構造に安全性が求められるようになった結果です。壁量は十分であっても、一方向に偏った配置のままだと、地震などの際にゆがみが激しくなり、最悪の場合は倒壊してしまう可能性があることが、現地の調査や実験によりわかってきたためです。バランス計算も複雑なものではありませんし、「セルフビルド学習ライン」の中に計算方法を記載してありますので、ぜひ壁量計算と一緒に自分で計算していただきたいと思います。
建築基準法では、各部屋の採光についても一定の基準を設けています。一般的な部屋ではその部屋の床面積に対して1/7以上の大きさの窓が必要ですが、隣に家があったりする場合には、「採光補正係数」という補正値を乗じなければならず、より大きな窓が必要になります。採光計算についても、「セルフビルド学習ガイドライン」に計算方法が記載されていますのでご自分でトライしていただきたいと思います。しかし、隣地との境界線までの距離などの敷地データが必要になってきますので、敷地内での家の配置がまだ決まっていない人はこれを確定する必要があります。また、土地を未購入の方はこうした境界線距離を仮定するなどして計算を行う必要があります。
耐力壁の検討例
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2011-01-01