以下は、2×4住宅施工の実際を写真入りで説明したものです。2×4住宅工事の現地レポート風とし、専門的な記述はできるだけ省いて写真も豊富に入れました。セルフビルドで2×4住宅を建てる方だけでなく、業者に施工を依頼される方にとっても、どういった視点から現場のチェックをしていったら良いか、という点にも注意しながら書かれています。住宅業者の中にはできるだけ手抜きをして、楽して儲けようとする業者が少なからずいます。悪徳業者による欠陥住宅をつかまされないためにも、ぜひお読みになってください。
2×4建築に限らず、家を建てる前にはまず地縄張りという作業を行います。
地縄張りとは、敷地の中に建てる家の外形に沿って仮杭を打ち、縄(実際にはビニールなどの紐)を張って、敷地境界までの距離を測ったり、給排水経路などの確認を行うことです。基礎工事を業者依頼される方にとってはここでの記述は不要とお考えになるかもしれませんが、建物と敷地の位置関係をなおざりにすると、あとあと後悔することになります。業者に依頼する場合でも自分でやる場合でも、実際の施工図面をみながら、以下のような位置関係をしっかり確認しましょう。
敷地境界からの距離
境界杭の確認
GL(グラウンドレベル)の確認
隣家との位置関係確認
道路面との高低差の確認
給排経路、メーター位置の確認
民法上の規定では隣家との壁の距離は最低でも500mmは必要ということになっています。離しておけば、火事のときに延焼しにくいとか、隣の物音が聞こえにくいなどの利点があります。小さな敷地では隣地境界との距離をあまり取らずに建ててしまうケースもあるようですが、後々トラブルになることも少なくありません。車庫証明を取るにも、隣地や道路境界と建物の間には車の幅以上の距離は必要です。こうした点を細かくチェックしながら、建物や排水設備等の位置を決定します。
敷地内に古い浄化槽が放置されている場合などには、これを掘り出し、新しい浄化槽を入れます。排水経路には勾配が必要になるため、新しい浄化槽の設置高さの細かい調整は、以下のGL(グランドレベル)を出してからになります。基礎工事が終わってから浄化槽を設置する場合には、穴を放置しておくと危ないため、古い浄化槽を掘り出したらすぐに埋め戻します。浄化槽の設置は、かなり専門技術が必要なため自分でやる方はほとんどいないと思います。通常は自治体指定の専門業者が責任施工し、自治体のチェックを受けます。なお、下水道が引かれている土地では浄化槽穴の掘削は当然不要になりますが、下水道からの配管は指定業者でなければ行えないきまりです。
水盛遣方とは、基礎の水平や位置、寸法を確認する作業で、特に基礎の芯の位置の確認が重要になります。基礎の芯が少しでもずれると家全体の寸法が狂うことになるからです。
「水盛」というのは昔、木で作った桶に水を張り水平を取ったことに由来しますが、現在は気泡管式の水準器が使えます。このほかにも「水」に由来した用語として、水糸や水杭(遣り方をする際に打つ杭)、水貫(基礎の水平を取る基準を出すために、水杭の間に渡す木の枠)といったことばが出てきます。。水盛の後には、遣方(やりかた)を行い、根切りと言って基礎立ち上がりの土を掘ります。次に、地業という石を敷き詰める作業をしたあと、捨てコンクリート、通称捨てコンと言って、鉄筋を組むための水平な場所を作るためのコンクリートを打ちます。
ここでは、これら一連の作業の実際を、実務手順書や公庫仕様書を見ながら勉強していきます。チェック項目としてはいろいろありますが、根切に十分な深さと幅があるか、掘削した穴から出水がないか、地業捨石がしっかり突き固められているか、防湿シートが問題なく敷きこまれているか、捨てコンが水平に打たれているかなどが特に重要です。
遣り方作業
地業(栗石設置)と捨てコンクリートの打設
捨てコン作業が完了したら、次は、ベース部や立ち上がり部の鉄筋を組みたてます。業者に委託する場合にはベース部周辺に張り巡らされる型枠がきちんと設置されているかどうか、鉄筋がきちんと組まれているかどうかなどをチェックしていきます。その前にまず、捨てコンの上に基礎の位置を出す「墨出し」という作業をします。通常はペンキや太めのマジックペンなどで捨てコンの上に墨を出していきます。墨を出せない場所には水糸を引きます。建物の角部と角部の対角寸法も測り、直角になっているかを確認します。型枠が設置されたら、余裕のある幅を残して捨てコンの上に立っているかどうか、ガタガタしていないかなどもチェックします。また、型枠を押さえる当て棒などもしっかり立っているかどうかなども確認します。
ベース部や立ち上がり部の配筋
鉄筋を自分で組む場合も、業者に委託する場合も、公庫仕様書の「布基礎」の項に従って作業を進めます。通常は異型鉄筋を使用しますが、丸鋼を使う場合もあります。それぞれの直径や定着長さなどが適切であるかどうかを仕様書をみながら確認します。異形鉄筋というのは、鉄筋の表面が波を打っているようにギザギザなっているもので、コンクリートへの絡みが良くなり強度があがるようになっています。丸鋼というのはギザギザのない鉄筋です。今ではほとんどの場合この異形鉄筋が使われているはずです。通常、主筋は13mm、補助筋は10mmを使いますから、業者に委託する場合にはこうした適切な鉄筋が使われているかどうかをチェックしていくことになります。
また、鉄筋の間隔は300ミリ以下と定められていますので、これ以上の鉄筋間隔で組まれていないかどうかについてもチェックしていきます。良心的な業者では200ミリ以下で鉄筋を組んでくれるところもあり、要所ではこれより短い100ミリ、それ以外の部分も150ミリ程度で組み立ててくれる場合もあります。200〜300mmでも仕様上は問題ありませんが、こうしたところも、業者の良し悪しを見分けるコツとなります。
間隔以外にも配筋のチェック項目は、コーナー補強部のチェック、かぶり厚のチェックなど色々あり、これらを総称して「配筋検査」といいます。目的はただひとつ、鉄筋がきちんと組み立てられているかどうかを確認することです。コンクリートを打ちこんでしまうともう後戻りがききませんので、打ちこむ前にきちんと確認することが大切です。きちんとした業者であれば、自らが配筋検査をしてくれますが、業者にまかせっきりにせず、自分でもチェックしましょう。
底面部のかぶり厚のチェック
なお、一般的な基礎では床下換気口といって、基礎の側面に小さな窓を開け、ここから床下の換気を行ないますが、最近は基礎パッキン工法を採用するケースが多いようです。基礎パッキン工法とは、基礎と土台の間にパッキンを入れ、隙間を作ることによって床下の空気を換気する工法のことをいいます。
一般的な基礎の場合には、床下換気口にねずみ等の侵入を防ぐためのスクリーンを取りつけますが、この開口部の回りの補強筋がきちんと入っているかを確認しましょう。開口部は強度が弱くなり、補強筋をきちんと入れなかったりすると、クラックが入ってしまう可能性があるからです。また、開口部の下の部分にはコンクリートがまわりにくく、隙間ができてしまうケースも多いようです。
基礎パッキン工法は、上に書いたような換気口の欠点を克服するために考え出されたものですが、換気性能も床下換気口に比べて10〜20%アップすると言われています。換気口の場合は、開口部周辺にクラックが生じたり、開口部の設置位置が適切でない場合には床下の空気が淀んでしまい、換気ができにくい場合があるという欠点があります。換気口が落ち葉やゴミなどで塞がれてしまっているケースも多いようです。これに対して、基礎パッキンは建物前周囲に換気口があることになり、基礎そのものに穴を空ける必要がないため、基礎の強度が一定に保てるなど大変合理的です。
基礎のベース部分に埋まる配管については、前もって配管をスリーブに入れ通す必要があります。配管用の穴をあらかじめ確保しておかないと、後からハツリ工事で基礎を壊さねばならず、せっかくの基礎を痛めることになります。床下換気口と同様、大きな開口部である場合には鉄筋で補強するなど注意しないと強度を弱めることになります。
配筋が終われば、いよいよベース部のコンクリートの打設です。コンクリートの打設も自分でやるとなるとドキドキするかもしれませんが、あせらずにやれば別に難しい作業ではありません。組んだ配筋の回りにコンクリートがきちんと回りこむよう、きちんとつき固めていくだけです。ミキサー車が到着したら、納品書に記載されている時間をチェックしておきましょう。出荷されてからあまりにも時間の経った生コンは、分離したり固まってきたりしてしまいます。まさしく「生」コンクリートです。90分以内に工場から現場まで到着する必要があります。2時間も経ったあとでは、コンクリートは硬化しはじめているのでそれ以上の時間が経過しているようであれば、納品は「待った」ということになります。
生コンのつき固めは、手作業でできなくはありませんが、通常はバイブレータで振動を与え、コンクリートが行き渡らないところがないようにします。ただし、バイブレータのかけすぎは重い砂利が下に沈んで分離してしまう可能性があるため加減が必要です。
コンクリートの突き固めが終わったら、コンクリート表面の水平レベルを確認するとともに、「押さえ」といって、打ったコンクリートの表面を平らに均す仕上げをします。業者に委託する場合には一般には専門の職人が平らにに均してくれます。また、ベース部の上に立ち上がり部が来る箇所では後から打つコンクリートの食いつきを良くするために、レイタンス処理という仕上げをします。
レイタンスとは、コンクリートを打ってしばらくすると、表面に浮き上がってくる微粒子の成分です。レイタンスには強度がまったくありませんので、これを放置したまま上にコンクリートを打ち増しすると、ここが境目となって強度が著しく低下します。
ベース部コンクリートの上に立ち上がり部コンクリートを打つためには、型枠を組んでを打ち継ぎすることになりますが、このとき立ち上がり部直下のベース部のレイタンス処理をしないまま打ち継ぎをすると、この部分に強度のない弱いコンクリートができてしまいます。この弱い接合(部)をコールドジョイントと呼びます。新幹線のトンネルなどで起きたコンクリートの剥離も同じ原因によるものです。
コンクリートの打設後は、型枠が外れるまで側面のチェックはできませんが、表面をチェックして細かいヒビ割れがないかどうかみます。ひび割れとしては、コンクリートが乾燥し収縮してできた乾燥収縮ヒビと、コンクリートに応力がかかっているためにできた応力ヒビがあります。乾燥収縮によるヒビ割れはいわば宿命ですから、大きなヒビでない限りあまり心配要りません。問題は、応力ヒビのほうで、型枠がきちんと設置されていなかったり、鉄筋を組むときにきちんと針金で固定していなかったりすると、特定の箇所に力がかかり、応力ヒビとなる可能性があります。
コンクリートの打設については、基礎の規模にもよりますが、かなり専門的な知識が必要となりますので、自分だけでの施工は不可能ではないものの一般的には専門の施工業者に依頼することが多いでしょう。しかし、要諦をつかめば必ずしも不可能な作業ではないと思われますので、仕様書ほかの実務書を読み解いて、自作に挑戦してみましょう。
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2011-01-01