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応用編 第2章 2×4住宅施工の実際 D

15. 屋根工事

1) 防水シートの敷き込み

小屋組みが終了すると、屋根下地材を貼り、この上にアスファルト・ルーフィングという防水シートを張り、屋根材を張っていきます。

屋根下地材の張り方は基本的には床と同じなのでここでは割愛します。その上に防水シートが敷かれることで雨に対する心配がより少なくなります。防水シートとして一般的に用いられるのはアスファルトルーフィングと呼ばれるものです。アスファルトルーフィングとは、フェルトにアスファルトを浸透させ、表面に粘着防止のために粉末にした雲母や粘土などを塗布した、防水層を作るためのシートです。屋根や壁の防水材として一般的に用いられているものです。

公庫仕様書には下ぶきの張り方がいろいろと書いてありますが、アスファルトルーフィングを屋根の下の方から、つまり軒先の方から順に張っていかなくてはいけない、というような非常に大事なことは書かれていません。屋根の頂上からルーフィングを張っていくと、重ね合わせの部分が屋根下のルーフィングの方が上に乗ることになってしまい、雨漏りの原因となります。

アスファルトルーフィングの張り方についてもう少しだけ書いておきましょう。公庫仕様書にも書かれていない内容ですが、屋根の頂上部は三角形に重ねて張ることが必要です。屋根の頂上にあたる棟の部分はもっとも雨仕舞いに気をつけなければいけない部分です。この部分でアスファルトルーフィングを継ぎ合わせるようにすると雨漏りの原因ともなります。重ね幅についても注意が必要です。公庫仕様書の記述では、「上下(流れ方向)は100mm以上、左右は200mm以上重ね合わせる」と規定されています。きちんと現場で確認するようにしましょう。

 

2) 屋根材の種類について

屋根材について考えてみることにしましょう。昔は台風はたいへんな災害でしたが、最近は台風で屋根が飛んで人が死んだとか、風圧で家が倒壊したとかいう話はあまり聞きません。台風の被害の大方は鉄砲水や二次的な土砂災害などで、屋根そのものが原因になることは少ないようです。今問題なのはむしろ地震ではないでしょうか。台風の進路はずいぶんと精度良く予測できるようになりましたが、現在の科学技術では地震はいつどこにくるか、ほとんど予測できません。そのときに避難しようと思っても、もう遅い。誰でも否応なく命に関わる災害という意味では、台風よりも怖いといえます。阪神・淡路大震災で倒壊した家屋では昔ながらに屋根に土を載せその上に屋根瓦を載せていたケースが多かったとのことです。こうした家は屋根の重量が非常に重くなり、そのため揺れを支えきれずに倒壊してしまったとのことでした。

 

このため、当社としては屋根材としては軽いものをお勧めしたいと思います。軽い屋根材では普通のスレート葺きカラーベストコロニアルが一般的です。住宅用の屋根スレートは、セメントと補強繊維などによって成型してつくられます。 スレート葺きは施工のしやすさもあり普及しています。耐久性の点では他の材料に劣ることもあるかもしれませんが、耐久性よりも軽さを取った方が賢いと考えます。屋根材が劣化しても補修、張り替えはできますが、地震で失った命は元には戻らないからです。また、最近はやりの太陽光発電いわゆるソーラー発電で自家発電を考えている方にも屋根の軽量化は大変たいせつなポイントとなるでしょう。

軽さという点では金属屋根もお勧めです。最近のはやりはガルバリウム鋼板と呼ばれるものです。ガルバリウム鋼板は鉄に55%のアルミニウムを付着させたものです。海に近い地域の建物(工場や倉庫)の屋根や壁材として開発されたのがそもそもの始まりです。

 

ガルバリウム鋼板のような金属屋根は軽量でかつ日射にたいしても有効など優れた屋根材ですが、雨の多い日本では、屋根にあたる雨音が気になる人もいるようです。もちろん雨音をどのように感じるかというのは個人差もあるようですが。

 

3)小屋裏換気について

 

小屋裏とは屋根裏のことです。屋根は太陽の熱をまともに受け止めます。従って換気をしないと、屋根裏の温度は非常に高温になってしまいます。屋根裏が高温になるとアスファルトルーフィングなどの下張り材の劣化が早まるとともに屋根裏の下にあたる部屋も高温になります。また、換気ができていないと湿気が溜まりやすくなり、木材が腐る恐れがあります。最近はロフトなどを設けたり、勾配天井とした小屋裏の無い家が増えているようです。これは、洋風のインテリアや家づくりが普及してきたことが影響と思われますが、ヨーロッパとは違い、日本の夏は非常に湿度が高く、蒸し暑いということを忘れないようにしないといけません。安易な考えでロフトや屋根裏部屋、勾配天井を設けると、作ってはみたは良いが暑くてたまらないということや、予想外に冷暖房費がかかってしまった、ということになりかねません。

 

屋根頂部に取り付けられた棟換気孔

小屋裏を設けない場合には、屋根断熱といって、屋根材と一体になったボードなどできちんと断熱しておくことが大切です。屋根断熱でなく、小屋裏を設け、天井と小屋裏の間に断熱材を入れる工法を小屋裏断熱と呼びます。天井が低いと圧迫感があるとか狭く感じるという人もいますが、これは慣れの問題でどうにでもなるでしょう。小屋裏を設けるということは、そこに中間層となる空気の層を設けることになります。この中間層が寒暑に対しバッファの役目をすることになり、屋内外の急激な温度の変化を緩やかなものにしてくれます。きちんとした換気のできている小屋裏をつくることにより、結露の発生も防ぐことができます。

 

屋根の形状には、片流れ、陸屋根、寄せ棟、切妻など様々な形があることは前述しましたが、できるだけ複雑でないシンプルな屋根が雨仕舞いにも良く、換気という面で見ると、切妻屋根が最も効率が良いと考えられます。屋根の勾配による温度差を使って換気ができるからです。陸屋根ではこうはいきません。また、寄棟屋根は屋根裏の空気の排気がなかなかできにくい構造ですが、切り妻屋根は妻の部分からでも棟の部分からでも空気の排出ができます。

 

 

換気の中でも最も効率が良いと考えられるのが棟換気です。屋根の頂上部にあたる棟の部分に換気口を設け、ここから小屋裏の空気を外に排出します。屋根の頂上部は熱せられた空気が上昇してくるところですから、ここから空気を排出するというのは理にかなっています。空気を取り入れる吸気口は軒裏に設けるのが自然です。切り妻屋根と軒裏吸気、棟排気の組み合わせは、セルフビルドで家を建てる場合の換気システムとしては最良のもののひとつといえるでしょう。

 

16. 屋根下地、ホールダウン金物などの取り付け

小屋組みや屋根葺き済んだら、その内部にはホールダウン金物という金物をとりつけます。基礎の項でも若干触れましたが、台風時や地震時に柱を引抜こうとする力に対抗するため縦枠にとりつけるものです。多くの木造2階建て家屋ではホールダウンアンカーボルトを入れていないと思いますが、阪神・淡路大震災の教訓から入れる家屋が増えています。2×4の場合は面(枠)で構成されていますので、地震による変形については軸組みよりも強固といえますが、縦枠が土台から浮き上がらないようにホールダウンアンカーボルトとホールダウン金物でしっかりとつなぎとめておくことが大切です。

ところで、壁体内通気というのをご存知でしょうか。外壁の中に通気層を設けることをいいます。2×4工法では壁の断熱性能が高い分、逆に壁の中に結露ができやすいという弱点があります。このため、壁の一部に穴をあけて、壁内部の空気を入れ替えてやることが結露を防ぐために有効です。通気のための空気入り口は、一般的には壁の一番下に1センチほどの空気の吸気のための隙間を作ります。出口については、壁の上部に見切りを作りそこから外に排気する方法と、いったん小屋裏に入れて、妻や棟から排気する方法があります。後者の場合、壁から小屋裏に入った空気は最終的には棟換気により、屋根の頂上部にあたる棟の部分から排気されることになっています。切妻屋根の場合は、妻壁のない側の壁の通気層の空気が小屋裏に導くようにします。また、妻側の壁の通気層の空気は、妻の上部に設けられた見切りから外部に排出するのが一般的です。こうした換気のための換気口の大きさなどについても公庫仕様書ではその決定方法について詳しく書かれています。それについては長くなりますので、ここでは詳述しませんが、2×4工法という優れた工法をさらに優れたものにするためには、きちんとした通気手段の導入が不可欠です。これについては学習ガイドラインでは詳しく説明していますが、ここでは割愛します。

17. シロアリ対策

屋根下地が張られたあと、ホールダウン金物などで耐震対策を行ったあとは防腐・防蟻処理を行います。一般には防腐・防蟻薬剤を地上1メートルの高さまで塗布しますが、塗られた部分は緑色やオレンジ色になります。この防腐・防蟻対策に関する公庫仕様書の記述は、非常にわかりにくいのですが、結論としては、腐ったり蟻にやられたりしないような材料を選ぶか、通気工法を取りいれたり、薬剤処理をすることになっています。通気工法を採用すれば、薬剤は使わなくて良いということになっています。

薬剤処理は枠組や下地材などに「地面からの高さは1m以内」で施すことになっています。従って、仮に基礎の高さが1mほどもある場合は、防腐・防蟻処置をしなくて良いことになります。実際に地場の業者さんの中には非常に高い基礎を打つことを特徴にしている業者さんもいるようでこうすれば薬剤は一切使わなくて済みます。

 

18. 電気配線工事ほか配線工事

 

電気配線のためには、構造体への穴開けが不可欠です。ケーブル配線をする以上、どこかに穴を開けなくてはなりません。しかし、どこでも穴を開けられる訳ではありません。2×4の場合、結局は構造体となる2×4材への穴開けが必要ということになります。

木造軸組工法の場合は、柱で荷重を支えていますから、柱と柱の間の壁の中に何を通してもあまり構造への影響はありません。しかし2×4の場合は、枠組みとそれに張られる合板や石膏ボードなど全体として荷重を支えるようにできています。ですから、2×4材への穴開けには気を遣わないといけません。無造作に2×4材に大きな穴を開けると構造体としての強度に問題が出る恐れがあります。

 

 

ツーバイフォーの場合、天井の根太は2×10などのものが使われます。こうした太い根太が何本も平行して並んでいるので、根太をクロスする方向にケーブルを引こうとすると、何本もの根太を穴開けし、またいでいかなくてはなりません。

ところが、電気屋さんが本当に構造のことを考えて穴開けをしてくれるでしょうか? これは無理です。これはガス屋さんや水道屋さんも同じです。彼らは自分達の欲しいところに施工しやすいように穴を開けると考えておいた方が良いでしょう。そうなれば当然、穴あけしやすいところに大きめの穴を開けるということになってきます。放っておけば野放しです。これは気をつけなければなりません。特に家庭内LAN配線を行うという場合、ハブで分岐したケーブルをあちこちの部屋まで引っ張るために穴開けの場所も増えます。気をつけるようにした方が良いでしょう。

欠き込み、穴あけ、いずれのケースも公庫仕様書には分かりやすく図面で説明されており、一度覚えておけば配線を業者に委託する場合にも誤ったところに穴をあけられる心配はくなります。

実際の配線においては、仕様書の記述を理解した上で、できるだけ根太や縦枠、上下枠への穴あけをできるだけ少なくするように電気配線を計画します。しかし、どうしても材料に穴をあけざるを得ない配線もでてきます。施工を業者に依頼する場合には、できるだけ最小の穴をあけないで済むよう業者に依頼します。そして、できるだけ小さな穴を開けるよう依頼するとともに、大きな穴を開けた場合には金物などでのガードがされているかをチェックすることが必要です。

 


 

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2011-01-01