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応用編 第1章 2×4セルフビルドのプランニング D

11. 建築コストの検討

(1) 購入先の検討

前述の「概算費用算定」の項の繰り返しになりますが、住宅にかかるコストをもう一度確認しましょう。大きく分けて以下のようになります。本項では、これまで設計してきた内容や内外装のコーディネートの結果を受け、いよいよコストの細かい部分を算定することになります。

@.調査・設計費用(申請用図面・施工図面、地質調査など)

A材料費

  構造用部材(2×4材、構造用合板、金物、屋根材料など)

  内外装資材(サッシ、外壁材、内装材など)

  住宅設備(バス、トイレ、キッチン、各種電気設備など)

B仮設材料・工具購入・リース代(足場・工具のリースなど)

C設備施工外注費(給排水工事、衛生設備工事、電気設備工事、ガス設備工事など)

D諸経費(各種申請料、税金、水道・下水道負担金など)

E付帯工事・備品費(外構工事費、照明器具購入費用など)

 

このうち、高額なのはいうまでもなく、A.の材料費であり、これにかかる費用をいかに安くあげるか、が全体の工費を抑える上えの焦点となります。さて、その前に、材料の調達先について述べておきましょう。一般的には、以下が考えられます。

@あなたのおうちの最寄のHC、小売店

A2×4構造用資材専門卸業者(2×4建築協会指定業者など)

B建築資材専門の卸業者、町の専門設備業者

 

これらについて、一応の解説を加えておきます。

@HC(ホームセンター)

近年では全国どこへ行っても見られるようになり、2×4材(ランバー)や構造用合板を扱うところが多くなりました。場合によっては、Aの卸業者よりも安く材料を販売しているところもあり、まとめてランバーを購入するならばHCのほうがお得な場合も多いようです。また、内外装材や屋根材も各種そろえており、住宅建設に関わるひととおりの資材を求めることができるHCも出てきました。しかし、HCで扱っているこれらの商品の多くは、特定の売れ筋商品(あるいは売れ残り商品)を大手のメーカーから大量に仕入れることで安値が実現しているものであり、このため、品揃えが極端に悪く、なかなかご希望の商品に行き当たらないというのが難点です。2×4材にしても店頭に並んでいるもの以外のサイズのものの注文には応じてくれないケースが多いようです。また、2×4材以外の商品を注文しようとして店員に聞いても埒が明かない、あるいは仕入れに難色を示すということもあるようです。HCで資材を購入する場合には、商品の種類がかなり限定され、店頭に並んでいるもの以外はかなり、割高になるというのが一般的な状況です。

A2×4構造用資材専門卸業者

公益団体である、財団法人ツーバイフォー建築協会などが指定しているなど、ある程度信頼できる業者がお勧めです。しかし、こうした指定業者でなくても最近は品質的にも問題のない2×4材を扱う材木商が増えており、多くの場合、まとまった数量であるならば、個人で納入を依頼しても応じてくれるところが多いと思います。購入価格は、上述のHCよりもやや高めかもしれませんが、ほとんどの店ではHCでは購入できないサイズの2×4材も納入してくれます。しかし、プレカットやパネル化まで応じてくれるところは少なく、材料のカットは自分ですることになります。材料をプレカットしたり、パネル化することで作業の手間を省きたい人は、設計事務所や工務店などに専門工場を紹介してもらうことになりますが、専門知識がないのをいいことに、設計料を請求されたり、仲介手数料などを取られたりするケースがあるなど、何かと素人には取り組みにくい相手といえるでしょう。

B建築資材専門の卸業者、町の専門設備業者

2×4材以外の建築資材としては、屋根材や内外装材、サッシなどがあり、これらを扱っている建材卸店やサッシメーカー代理店の多くは、工務店や大工を相手の営業が主体です。従って素人とわかると相手にしてくれないか、高額な販売価格を提示してくるケースがほとんどです。セルフビルドを志す人の多くが最初にぶち当たる壁はこうした資材の調達です。事情を話せば納入してくれるところも皆無ではありませんが、一般的には卸専門の業者から個人が直接建設資材を購入することは難しいでしょう。

次に素人が期待するのが、工務店や町のガラス屋、建材屋ですが、これもあまり期待できません。彼らは、卸業者から品物を仕入れて販売していますが、建築主に代金を納入する際にはかなりのマージンを上乗せしており、あまり大きな声ではいえませんが、サッシなどでは卸値の3〜4割高、特定の建材などでは5割増しというのもあります。とくに、サッシなどについては町のガラス屋に安値を期待してはいけません。割高な中間マージンのほかに輸送費用や調整費用を上乗せして価格を吊り上げているところさえあります。これら町の業者さんは通常は補修や修繕などの収入で生計を立てていますから、経営が苦しいお店も多いようでく、まとまった資材の納入の際にはここぞとばかりに加算額を増やしてきます。住宅産業そのものが、我が国独自の発展をしてきた産業であるため仕方のないことといえばそれまでなのですが、そろそろ日本の住宅資材の流通のしくみも変えていかなければならない時代になってきているのではないでしょうか。

 

(2) コスト計算

建築コストの計算は、一般的には以下のような流れで検討することが多いようです。

 

以下ではそれぞれについて、もう少し詳しく説明しておきましょう。

 

@住宅グレードの検討

住宅のグレード検討とは、内装に手間をかけるか、外装に手間をかけるかなどについて検討を行い、住宅設備についてもどの程度の設備を導入するかについて検討し、投入資金のどこにウエイトを置くかについての方向性を決めることです。例えば、建物の外見よりも住み心地を重視したい場合は、外壁サイディングには必要最小限の品質のものを使用し、内装材や床材に高級材を使用したり、より高断熱の材料を使用したり、といった具合です。内装や外装にはこだわらない、とにかく安く抑えるための方策について検討するのも良いでしょう。住宅金融公庫では、断熱材をどこにどう入れるかによって建物のグレードを変えています。公庫の仕様書をみると、基準金利適用住宅とか、省エネルギー受託、次世代型省エネルギー住宅などのグレードがあり、それぞれによって融資額が変わることなども知ったおいたほうが良いでしょう。

また、資金計画についても公庫融資や一般住宅ローンをご検討されている場合には、金融機関を通じてそれらの可能性を打診します。つなぎ資金の調達や金利や借入金額等についてはそれぞれの借り入れ機関と相談し手置く必要があります。

A調査・設計費用検討 

設計費用の詳細については前述したため、ここでは省略します。

地質調査は、地盤が軟弱であるかどうかを確認するための大事なものです。一般に良好といわれる地盤は5t/m2以上の地耐力がある地盤であり、この場合には鉄筋を入れなくてもすみます。5t/m2以下の地耐力の土地が必ずしも軟弱地盤というわけではありませんが、固そうにみえても建築後に住宅の重みで徐々に沈下していく地盤もあります。このため、砂礫質や砂質土のしっかりした地盤であることが確認されている場合以外は、できれば地質調査を行うことをお勧めします。一般的には1宅地5ポイントで5〜8万円程度です。

基礎工事は、一般的には平地であれば、1〜2万円/m2程度といわれます。地盤条件が良い場合には布基礎で済みますが、多少出費はあっても湿気対策や地震対策に有効なべた基礎での施工をお勧めします。平均的には1.5万円/m2程度程度と思われますから、15坪(約50m2)の建坪ならば75万円となります。自分で施工する方もいると思われますが、かなりきつい作業となります。それでも自作される場合、型枠が必要になりますが、これも自作されるか、あるいは近くにリースをしてくれる会社があるかどうかを探してみるとよいでしょう。

なお、傾斜地の場合や、基礎部分を車庫にする場合には費用はそれなりにかかります。この場合には、きちんとした構造設計も必要になることも多いので、その場合にも適切な設計業者がいるかどうかを調べましょう。

 

(3).材料費検討

@構造用部材

@.2×4材、構造用合板等

構造用部材にかかる費用をもっとも安く抑えるには、2×4材を扱う卸店から直接仕入れるか、HC(以下ホームセンター)などで安売りをしているときを狙ってまとめて購入し、材料のカットはすべて自分で行うのが一番安上がりです。間取り図が作成されていれば、これから必要な数量を拾い出しますが、作業途中の歩留まり(施工ミス等による消費)によるロスなどもある程度計上しておくことが必要です(見積もり数量の1.1〜1.2倍くらいにしておくのがベター。2×4材は余った場合にも日曜大工の材料として使え便利です)。

施工図面が完成していれば、図面から必要な2×4材(ランバーといいます)と構造用合板、石膏ボードなどのフレーミング材料のボリュームなどがかなり正確に算出できます。フルセルフビルドの場合は、HCなどでカットされていないランバーを購入しすべて自分でカットするか、当社などから工場でプレカット(事前にカット)してある部材を購入するかどちらかになると思います。ハーフビルドの場合には、工場生産のパネルを購入することになりますが、材料費及びパネル制作費、建方費用を算出します。

A.屋根材 

屋根材は、一般的なものはHCでも比較的安価なものが購入が可能です。但し、瓦屋根やガルバリウム鋼板など特殊なものはHCでは入手不可能なことが多いようです。このほか、棟包みや水切りなどの金物や樋なども同等だと思われますが、板金加工が必要なものはHCでは入手できません。

B.その他

屋根材以外にもひさしなど、金物の板金加工が必要な場合があり、自分でやることも不可能ではありませんが結構面倒です100m2程度の住宅であれば工賃5〜7万くらいと比較的安価なので、外注したほうが便利だと思われます。こうした材料費と工賃などを積算しますが、このほかにも、接合用金物や各種金物、接着剤、シーリング材なども経費は多くはかからないものについても忘れずに積算します。

更に、材料は一括して輸送したほうが安く上がりますが、セルフビルドの場合は、大量の材料の長期保管が困難な場合が多いため、材料を分割して納入する場合輸送コストが嵩む場合もあります。また、離島では船舶運賃の上乗せや山間部では狭隘な道路しかないため小口運送になる場合なども想定されるため、これらの場合のコスト高について検討します。

 

A内外装材

@.サッシ

サッシは、HCやガラス店から以外の専門業者から個人が購入することは難しいでしょう。HCでは品揃えが極端に悪く、また地域のガラス店から購入した場合には割高なことが多いようです。最近は、ネットでペアガラスの販売もしている会社が見かけるようになってきましたが、まだまだ数は少ないようです。

A.サイディング等外壁材

 サイディングは、最近HCでも購入できるようになりました。しかしHCで展示されているものは、痛んでいる場合も多く、また品質的にもあまり上質とはいえないものが多いようです。さらに品揃えは非常に種類が限られます。最近は不況なこともあり、直販店からの購入することも可能な場合があります。素人だから・・・などとひるまずに思い切って問い合わせをしてみましょう。

B.内装材

 多くのものはHCで入手可能ですが、ケーシング(額縁材)などの一部の造作材については入手できないものもあります。階段部材も入手しにくいもののひとつです。一般には入手しずらいものが多いようですが、サイディング同様、一般人にも卸してくれるメーカーも増えているようですので、ネットなどで根気よくさがしてみてください。

C.住宅設備

バス・トイレ・キッチンなどは、ガスや水道・電気工事など一般の方が作業できない部分もありますので、基本的にはカタログ等を入手し、施工価格とともに業者に見積もり依頼するのが一般的です。しかし悪徳業者に粗悪品をつかまるおそれもあることから、ネットでの流通価格なども確かめた上でその商品価格の高低の程度を判断してください。価格を確かめた上で工事依頼をしても遅くはありません。

 

(4) 仮設材料・工具購入・リース代検討

いわゆる足場材は、フルセルフビルドする場合には欠かせません。施工が長期になることからリースは不利であり、単管パイプなどを購入費用と比較するほうがベター(リフォームの際にも使える)です。これらの費用を比較し積算します。2×4工法に必要な工具としてハンマーは欠かせませんが、自動釘打ち機などがあればよりスピーディな施工が可能になります。セルフビルドの場合工期が長くなるため、自動釘打ち機やコンプレッサーのリース料は高くなりがちで、購入したほうが安価な場合も多いようです。導入する場合のコストについて積算します。

(5).設備施工外注費検討

設備の材料費とは別に設備の施工費用を分けたい場合には、別途積算します。材料だけ自分で入手し、自分でできない作業のみを分離発注したほうが安価な場合が多いためです。多くの設備工事は地元の業者でしかできないため、地元業者に原材料持込の上での施工費用の見積もりを依頼します。

(6)諸経費検討

住宅費用には、建築確認申請費用のほかにも各種登録手続きのための費用が必要です。登記申請量や各種税金、水道加入金、下水道負担金などは、経費として想定しておかないと資金不足に陥ることがあります。また下水道がない場所では浄化槽の設置が必要となり、自治体の助成金が少ない場合には導入価格もばかになりません。これら諸経費をもれなく計上します。

(7).付帯工事・備品費検討

住宅建設後、意外にかかるのが付帯工事費です。防犯のため門塀などの外構は必要ですし、玄関やポーチなどのアプローチ敷材工事なども欠かせません。照明器具なども忘れてはならないもの。冷暖房器具も地域によっては欠かせません。これらのうち、計上しておくべきものを付帯工事費用として計上します。

(8)総費用算出

上記を総計し、セルフビルドにかかる費用を算出、整理します。整理することで、他者まかせにせず、自分でできる部分も見えてきます。特に手持ち資金が少ない場合には、これをどこで補うかを再考できます。大事なのは、ともかくすべての項目を洗い出すことです。よくあるのは、工事を始めてしまってから、あれも足りない、これも足りなかった・・・で当初考えていた費用をはるかに超えてしまうというケースです。家づくりは最初のプランニングが肝心、ということを肝に銘じておきましょう。