足場をどの段階で取り付けるかは業者によってもまちまちですが、土台の設置の前に組んでしまう業者が多いようです。足場については仕様書にはほとんど記述がなく、実務手順書のような実用書をみながら組んでいくことになります。
足場が組まれると、いよいよ、土台や大引の取り付けといった木工事が始まります。土台とは、基礎の上に乗る木材です。また、大引とは、土台の間に渡される木材です。いずれも住宅の部材としては最も下部にくる木材となり、まさしく家全体を支える「土台」ですから、きちんとした施工が必要になります。
土台のサイズは、公庫仕様書では4×4材を使うことになっています。土台は乾燥材を使うことになっており、寸法は89ミリ×89ミリになります。公庫仕様では、この土台の防腐・防蟻措置として、防腐・防蟻処理剤を使うことを薦めています。まずは土台・大引の長さを確認しましょう。図面どおりの寸法で納入されているかどうか。土台の長さが数十センチと短いものは危険です。特に耐力壁の下や隅柱の近くの土台が短く切断されているものは問題があります。そもそも設計図面に継手の位置が示されているはずですから、その寸法どおりに土台が納入されているかを確認します。既にアンカーボルトの位置も決められているはずです。土台の両端にアンカーボルトが位置していないような土台はもってのほかということになります。土台の穴あけの位置は、基礎の外側の面に合わせます。この上に更に1階の床根太を据付け、1階の外壁を組み立てていきますが、こられとの位置関係に注意しながら土台の穴あけをする必要があります。本概要版では詳しくは説明しませんが、2×4工法においては誤解の多い部分のひとつです。
ところで、手抜き業者は設計図に土台の位置が明記してあるにも関わらず短い土台を入れてきます。ひどい場合は、30センチ、僅か10センチの土台を平気で隅柱の近くに入れてきたりしますから要注意です。このような短い土台は、両端をアンカーボルトで押さえることもできずはなはだ危険です。また、搬入されてくる木材のなかには反りやねじれをもっている木材も全くないわけではありません。きっちりの数量の土台しか手配していない業者だと、素性の良くない土台を選別することなく、そのまますべて乗せていってしまうことになり、フラットな土台ができません。土台・大引の継ぎ手の釘打ちについても、公庫仕様書で細かく指示されていますが、一番多いのが釘打ちの省略、打ち忘れです。ここでは紙面の関係から細かいことが記述しませんが、釘打ちの方法、場所についてもきちんと公庫仕様書で確認すべきです。
なお、土台の仕口の加工は、業者に依頼した場合には、プレカットと言って工場であらかじめカットされたものを納入してくることが多いものですが、まれに現場でカットする施工をしている業者さんもいるようです。ツーバイフォーの場合は、特に木材を加工したりせずに仕口と仕口を突き付けて、釘打ちをすればすみます。これがツーバイフォーの施工性の良さにもつながっています。とはいえ、精度よく直角に材料をカットするのは結構難しく、そうした技能を持った職人さんがやれば問題ないのですが、現在はそのような職人さんの数が減ってしまっており、仕口がガタガタ、ユルユルの場合もあります。仕口をどのように加工するのか、現場で加工するのかそれとも工場プレカットか、事前にチェックしておくことをお勧めします。
アンカーボルトの位置や仕口の状況をチェックしたら、土台に座金彫りを施します。座金彫りとは、アンカーボルトをスクリューワッシャーで土台に締め付ける際に、スクリューワッシャーが土台の上に飛び出さないよう、土台に埋まるように数センチの彫り込みを行うこと、を言います。ツーバイフォー工法では、軸組み工法と違い、土台の上に柱がすぐには乗らず、まず床組みが乗ります。従って、スクリューワッシャーが土台の飛び出ていると、土台の上に根太をうまく水平に載せることができません。このために、彫り込みを行なってスクリューワッシャーを土台に埋め込んでおく必要があります。上図のようにスクリューワッシャーが土台の上に飛び出さないようにするための金具も市販されており、こうした金具を用いれば大きな座金彫りは必要なくなります。
土台を設置したあとには、これに防腐・防蟻処理剤を塗ります。ただし、公庫仕様書には塗ってはいけない箇所なども指示していますから、こうした指示が書いてある箇所も注意深くみておく必要があります。布基礎に床下換気口を設置していない場合には、土台を設置する前に基礎パッキンを取り付けます。
基礎パッキン工法は、コーナー部、土台の継手、それからアンカーボルトのある部分すべてに取り付けることが必要です。コーナーと土台の継手や遇角部などアンカーボルトのあるところにすべて取り付けていきます。アンカーボルトのある部分以外にも1メートル間隔以内で入れていきます。
基礎パッキンによらず、換気孔を採用する場合には、地面からの高さに注意します。本来は基礎の施工の段階で確認しておくべきですが、ほかのことに気を取られて気づかないことも多いものです。公庫仕様書には高さは書かれていないようですが、あまり低いと集中豪雨の際などに換気孔から内部に雨水が入りこんでしまう恐れがあります。とくに数年から十数年に一度ぐらいの比較的多く発生する大雨などの際に、いちど床下に水が浸水してしまうと、なかなか水が引かず大変なことになります。役所で浸水被害図などを入手することができれば、どのくらい頻繁に浸水被害にあっていることが分かります。
さて、土台が乗ると、次に根太(ねた)と呼ばれる木材が土台の上に乗ってきます。この根太の上に構造用合板などの床下張り材が張られ床組みが完成します。根太を総称して床根太と呼んでいるようですが、さらに、側根太(がわねた)、端根太(はしねた)という根太もあります。側根太と端根太に囲まれた内部に入る根太を床根太と呼んでいるケースもあります。
側根太は、外周部の土台の上に乗る根太で、内部の床根太と平行に走る根太です。端根太は、外周部の土台の上に乗る根太で、内部の床根太や側根太と直交方向に張る根太です。
根太のサイズは、2×6または2×10であることが多いようです。2×10とすると、床下空間が10センチほど高く取れますので、床下に潜りやすくメンテナンスしやすくなります。湿気もこもりにくくなりますので、防湿対策上も有利となります。ただし、地面との高さの差がそれだけ出ますので、玄関ポーチの段数が1段増えたり、1階の掃き出し窓や縁側から地面に降りるのが高くなったりします。車椅子を使用する方がいる場合は、敷地に余裕がないと車椅子のための勾配を取るのは苦しくなります。また、北側斜線が厳しい場合は、フロアレベルが高くなるとその分斜線のクリアがより厳しくなります。斜線制限などのない家では床下の高さをできるだけ高く取ることをお勧めします。
2×4の釘はサイズごとにきちんと色分けされているため、業者に依頼する場合、根太の釘打ちのチェックはさほど難しくありません。根太で使う釘の色は青と赤だけです。チェックは公庫仕様書を参照しながら行います。例えば外周部ではCN75が指定されていますから、青い釘が25センチ間隔で土台に斜めに打ち込まれているかどうか、というふうにチェックしていきます。内側からのチェックでは、添え側根太に同じく青い釘が50センチ間隔で打たれていればOKです。釘打ちのチェックは、釘の間隔を細かくメジャーなどで測るまする必要はなく、全体としての量が足りていればOKです。例えば、だいたい2メートルの範囲に4本打たれていればOKなどというように判断します。
根太組の際に見落としがちなのがころび止めの施工です。ころび止めとは、端根太の内側に合わせて平行に入れ、床根太が倒れないようにするものです。短い板なので忘れがちですが、図面の所要箇所にすべて取り付けられているかどうかをチェックし、青い釘1本が土台に斜め打ちされていればOKです。根太同士の釘打ちものチェッも重要です。側根太と添え側根太の釘打ちや、側根太と端根太、床根太と端根太の釘打ち、ころび止めと端根太根太の継ぎの部分の釘打ち、端根太の継ぎなどなどを公庫仕様書をみながらチェックしていきます。これらの釘打ちについては、基本的には勉強する、というよりも仕様書に記載してある図面をみながらだいたい理解する、といった程度で良いと思います。釘打ちは仕様書の内容の理解の根本ではなく、手順の確認にすぎません。むしろ、ころびどめは何か、側根太や端根太とは何か、どういう風にとりつけていくか、継手や補強はどうやって行うのか、などの理解が学習のポイントになります。
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根太組みの補強について若干触れておきましょう。床枠組みで使う金物は耐震性を高める上では釘と同等以上に大切な部品です。
例えば、土台と大引、束と大引きの結合部分に使用されている金物について、仕様書の記述は以下のようになっています。
「1階床組みを大引き、束を用いて構成する場合は、次による。土台と大引きの仕口は、土台を30mm欠き込み大入れとし、3本のCN75を斜め打ちする。なお、土台と大引きとの仕口を大入れとしない場合は、土台と大引きを突き付けとし、3本のCN75を斜め打ちしたのち、大引きの両面から根太受け 金物を用いて取りつける。」
ここでの根太受け金物に指定はありませんが、きちんと木材の寸法に合った金物が使われていることが大切です。高さが合わない金物では強度が不足します。また、きちんと金物の釘がすべて打たれていることを確認しましょう。欠陥事例では、金物が入っていても釘打ちが手抜かれているケースが多いようです。金物に打たれる釘は今まで見てきたような色つきのCN釘ではありません。金物用のZN釘という太い釘です。釘の頭を見れば違いはすぐに分かります。間違ってCN釘を打っていないか確認してみましょう。太いZN釘を使用していないと、地震のときの激しい揺れによる上下動で金物が釘をすべて切断してしまいます。これは軸組み工法でもまったく同様です。阪神・淡路大震災では、激しい横揺れのため柱が土台から飛び出し家が傾くという、予想もしなかった被害が発生しました。この原因は、やはり金具の強度不足です。しっかりした金具が正しい釘できちんと取りつけられていることが大切です。
土台と大引きの接合金具以外にも、床根太の継ぎ手部分などに金具が使用されており、これらが適切な位置にあるかどうかと同時に、継ぎ手の位置がきちんと土台の上にきているかどうかについてもチェックします。継ぎ手の下に土台が回っていないということは、継ぎ手が宙に浮いているということになり危険です。 根太の据え付けが大体終わると、根太の上面が水平になるように少々削ります。「不陸(ふりく)」とは、陸すなわち水平でないという意味ですが、不陸を調整しないと、この上に床下張りを行なう際に凸凹ができてしまいます。こうして削った部分にはまた防腐剤をきちんと塗る必要がありますが、こうしたことは仕様書には書かれていません。なお、防腐処理剤は木口を加工した部分にも特に忘れのないように塗っておく必要があります。というのも、シロアリは木口や加工した部分が好きらしく、こうした部分を狙って木の中に食い入ってくるからです。
根太の据付が終わると断熱材を敷き込みます。断熱材にもいろいろありますが、土間コンクリートのとなどに入れる断熱材と同じ、ポリスチレンフォームなどがよく使われます。厚さは60ミリ程度が一般的です。この断熱材の厚みは、家を建てる地域や、通常の省エネルギー住宅として建てるのか、次世代省エネ型住宅として建てるのか、などなどの諸条件によって異なってきます。公庫仕様書では、断熱性能によって公庫の融資額を変えているぐらいですから、どの程度の断熱性能を持たせるかは仕様書を読み解いていく上で非常に重要なテーマです。本編では細かく記載しませんが、仕様書を精読してその違いを正しく理解することが必要です。
例えば、次世代省エネ型住宅の場合、公庫仕様書の「断熱材の厚さ」を見ると、外気に接する床が90ミリ、その他の床が60ミリとなっています。外気に接する床とは、「施工部位」の解説に書かれているように、オーバーハングした2階床やビルトインカーポートの上の床にあたります。普通の床は、「その他の床」にあたります。断熱材の厚みが65ミリ、なら、次世代省エネ基準以上の厚みということになります。これだけ読んでも何がなんだかよくわからないと思いますが、こうした用語や仕様書の記述箇所をひとつひとつ丁寧に見ていくことが仕様書の正しい理解につながっていきます。
さて、断熱材の種類が決まったら、これを根太に留めていきますが、いい加減な留め方だと、知らない間に断熱材が根太の間から基礎のコンクリートの上に落ちている危険性があります。通常は、下の写真に示したようなクリップを使ってその上に断熱材を載せていくだけの作業です。作業そのものは単純ですが、上述のように断熱材の厚さによってこのクリップの大きさも変わってきますので、仕様書による事前の理解が重要であることは言うまでもありません。
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2011-01-01