フラットアイアンビル

「フラットアイアンビル、5番街、ブロードウェイ」
ニューヨーク、1903年頃
8×10インチ乾板ガラスネガ、Detroit Publishing Company

フラットアイアンビル(Flatiron Building) は、アメリカ合衆国ニューヨーク市マンハッタン区5番街にある、高層ビルです。

1902年(日本では明治35年)に竣工し、現存するニューヨークのビルの中でも古い歴史を持ち、愛称でフラービル (Fuller Building) とも呼ばれています。

高さ87mの22階建てで、完成当時はニューヨークでも最も高い建築物のひとつであり、最も古い摩天楼と呼ばれることもあります。



ちなみに、当時のニューヨークかつ世界で一番高いビルは1899年に完成した119.2mのパークロウビル で、こちらも現存しています。

その独特な形状から、フラットアイアンビルのほうが有名になり、完成当時から「高さ世界一だった」としばしば勘違いされますが、数字からみてもわかるようにパークロウビルの方が高いのは歴然です。

パークロウビル

冒頭の写真を見ると、まるでその幅は数メートルしかないように見えますが、遠近法を使った絶妙な設計の効果によるものであり、実際には上空からみると下の写真どおり、三角形をしています。

ただ、その細く針のような形ゆえでしょうか。フラットアイアンビルのほうが高く見えます。実際、最も細いところでは1メートル弱しかなく、その珍しい形と建築様式も古いことからく、ニューヨークの中でも人気が高いビルです。

設計はダニエル・バーナム。シカゴ万博総指揮者であり、このほかワシントンD.C.のユニオン駅など、著名な作品を数多く残しています。

バーナムの作品の多くは、ギリシャやローマに範をとった新古典主義建築です。20世紀のアメリカにおける卓越した建築家として、多大な影響力を持し、その生涯の中でアメリカ建築家協会の会長を二度務めるなど、数々の役職を歴任しました。

1912年、ドイツのハイデルベルクで死去したときには、バーナムの事務所は世界最大の設計事務所でした。

バーナムの事務所は今日も継続しており、彼の残した公私にわたる文書の数々は、ライアーソン・アンド・バーナム・アーカイヴスとして、シカゴ美術館に残されています。

また、彼の業績をたたえ、アメリカ都市計画協会は、総合的都市計画に対して毎年贈られる賞に「ダニエル・バーナム賞」の名を冠しています。

ダニエル・バーナム



所在地は、ニューヨーク市マンハッタン区5番街175号で、完成当時は14丁目より北では一番高いビルでした。このビルの場所は5番街、ブロードウェイおよび22丁目の三つの通りで囲まれた三角地帯となっており、23丁目が三角形の北の頂点を削っています。

5番街には、このほかセントラル・パークを眺望できる高級マンションや歴史的な大邸宅が立ち並び、ニューヨークの裕福さの象徴です。

また、特に34丁目と59丁目の間はロンドンのオックスフォード通りやパリのシャンゼリゼ通り、ミラノのモンテナポレオーネ通り と並んで世界最高級の商店街の1つでもあります。

この特徴的なビルはニューヨークの象徴の一つとなり、ビル付近の一帯はフラットアイアン地区と呼ばれるようになりました。

1966年にニューヨーク市指定歴史建造物に指定されるとともに、1979年にアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録され、1989年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されています。

ニューヨークへお出かけの際は、ぜひともご見学を。


現在のフラットアイアンビル