写真は、世界最大とされる無色透明な水晶球です。
直径32.7cm、重量48.5kg。アメリカの国立自然史博物館所蔵で、水晶の後ろに立っている人物は、ジョージ・パーキンス・メリル博士(George Perkins Merrill、1854-1929)。
アメリカ合衆国の地質学者で、隕石や隕石クレーターの研究などを行っていた人物です。細かい経歴はわかりませんが、メイン州、Auburn に生まれ、メイン大学 (University of Maine)、コネチカット州のウェズリアン大学、ジョンズ・ホプキンス大学で学んだ後、1881年にスミソニアン博物館の学芸員となった、とされます。
1893年から1916年までジョージ・ワシントン大学(当時はColumbian大学)の地質学、鉱物学の教授も務めたのち、1897年、43歳のとき、スミソニアン博物館の学芸員長に任じられました。
全く無名の学者、というわけではなく、1922年に全米科学アカデミーの会員に選ばれ、J・ローレンス・スミス・メダルを受賞しています。鉱物学者、ローレンス・スミスの功績を記念して、全米科学アカデミーが、流星、隕石などの研究に関する研究に対して授与するもので、賞金は現在、5万ドルです。
このローレンス・スミス(John Lawrence Smith、1818-1883)のほうは、元医師で、鉱物学の分野で功績のあった学者です。1846年から1850年の間、トルコ政府のために、鉱物資源の研究を行い、ナクソス島の有名なエメリー鉱石の鉱脈を発見したことで知られます。
エメリーとは、19世紀末にカーボ ランダムの製造 が工業化されるまでは、研磨材の主体をなしていたもので、ギ リシヤやトルコ、北米などの主産地は重要資源でした。化学者としても知られ、倒立型顕微鏡を発明するなどの功績もあります。隕石の収集を行ったことでも知られ、スミスのコレクションは没後、ハーバード大学に寄贈されました。
メリル博士が学芸員長を務めたスミソニアン博物館は、正式には「スミソニアン国立自然史博物館:National Museum of Natural History)といい、アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.にある博物館で、植物、動物、化石、鉱石、岩石、隕石の標本や文化工芸品など、総数にしておよそ1億2千5百万個を超えるコレクションを誇る、国立の博物館です。
スミソニアン博物館は、ひとつではなく、全部で15の博物館からなる「博物館群」であり、国立自然史博物館はその一つです。博物館の所有物はスミソニアン協会の所有物の大半を占め、またスミソニアン博物館群の中では二番目に人気が高いとされています。
また、およそ世界各国185人の自然史学者の拠点ともなっており、これは世界における自然及び文化史の研究に貢献する「科学者団体」としては、最も規模の大きいものです。
写真にある水晶玉がどういう由来のものかについては、いろいろ調べてみましたがわかりません。写真は1925年のもので、下にある最近撮影されたらしい写真の撮影年が2008年となっていることから、少なくとも83年以上の歴史はあるものということになります。
水晶玉とは水晶を球状に加工した物のこと。一般的に色の付いた水晶ではなく、無色透明な水晶が材料として選ばれます。定義の上では球状に加工した水晶であれば水晶玉と言えるので、その大きさは問われませんが、後述するように一般的に人間にとっては、その用途ゆえに扱いやすい大きさであることが求められます。
古くから作られてきたと言われているものの、いつ頃から作られだしたのかは定かではありません。
水晶は宝石の一種として扱われることもありますが、無色透明な水晶は地球の大陸地殻ではそれほど珍しい鉱物ではありません。しかも水晶はクォーツ時計など工業用途にも利用されるため、人工的に生産されることすらあり、こちらは「人工水晶」とよばれます。人工生産できるため、大きくて無色透明な水晶を入手することも比較的容易です。
しかし、天然の水晶は主に六角柱状の結晶として産出するので、円形にするためには加工が必要になり、大昔には貴重品でした。比較的硬い鉱物であるため曲面に加工するのは難しく、他の宝石ほど希少ではないものの、それを球状に加工することに高い希少性が発生します。
硬度が高くないため、近代においては身に着ける装飾品として使われることはそれほど多くはありませんが、大昔には希少な装飾用具のひとつでした。水晶にはこのほか呪術的な力があるとされ、昔からパワーストーンとして扱れてきました。
スクライング(scrying)に用いられることも多く、これは水晶を見つめることにより、眼に入った物理的光に対応しない視覚イメージ、すなわち幻視を得ることです。古くから占いの方法として用いられ、儀式魔術では霊的存在の姿を確認したり、霊界のビジョンが得られるなどとされてきました。
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「水晶球」 (1902)
科学的な根拠は何らありませんが、透明な水晶は、純粋な白い光を反射して、強いヒーリングエネルギーを作り出し、すべてを浄化し、清めてくれる、といいます。
また「場のエネルギー」を整え、持つ人のエネルギーを高めたりする、といわれます。わが家には10cm大の水晶のほか、大小の水晶があり、家の中のパワーを高めてくれています。
各種の宝石店などで入手できますが、問題は人工のガラス玉をつかまされること。そうならないためには信頼できる店を選ぶことが重要です。
自分で見分ける方法はいろいろあるようですが、ひとつには、本物の水晶を通して細い線を見るとある一定の角度で二重に見えます。髪の毛か何かを透かしながら水晶を廻してみると、どこかで二重線になるはずです。
ガラスではこのような現象はおこりません。また、人工的な美しさと天然の自然の美しさとの違いは全く違います。自分の目を信じて確認してみましょう。