バトラー式三輪ガソリン自動車

AM-32B81870年、ユダヤ系オーストリア人のジークフリート・マルクスによって「第一マルクスカー」が発明されました。これが、一般に世界初のガソリン・エンジン自動車といわれています。

さらに1876年、ドイツのニコラウス・オットーがガソリンで動作するガソリンエンジンをつくると、ゴットリープ・ダイムラーがこれを改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行いました。

そして、これから10年ほどの年月を経て、イギリス人エドワード・バトラーが水冷2サイクル2気筒エンジンを使った3輪バイクを完成させました。

実車が完成したのは1887年とされていますが、冒頭の写真はそれより2年ほど前の1885年のものとされており、試作段階のものと考えられます。バトラー・エンジンはチェーンを使ったトランスミッションを採用するなど、画期的なアイデアが取り入れられ、マルクスやダイムラーのものと比べると格段の進歩が見られました。

が、これら初期のころのガソリン自動車は、いずれも実用には程遠いものであり、どれもが世界的に普及する、とまではいきませんでした。

一方、1885年、ドイツのカール・ベンツは、ダイムラーとは別にさらにエンジンを改良して、車体をも一から設計した3輪自動車をつくりました。そして、これが世界初の実用車だったといわれています。

そして、ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明しました。その後ベンツは4輪の自動車も製作し、最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売しました。また、ダイムラーもその後、自動車会社を興しました。

現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両者とされることが多いわけですが、その創成期には、マルクスや、オットー、そしてバトラーのような数多くの発明家がチャレンジして創った数多くの試作車があったわけです。

現在世界中を走り回っているガソリン自動車が実用化されるに至る前には、こうした初期のころの発明家が大いにしのぎを削る時代があった、ということを覚えておいてください。