細野高原へ

太平洋を進んでいる台風の影響でしょうか。昨夜は結構な量の雨が降り、今日の午前中は雨はやんでいましたが、午後からはまた時折激しい雨が降っています。こんな天気だと、ついおととい行った細野高原の爽やかさが懐かしくなります。

その細野高原について今日はその訪問記を綴っていきましょう。

まずその場所ですが、東伊豆町の「稲取温泉」という場所の山の手のほうになります。伊豆東急線に、「伊豆稲取駅」という駅がありますが、この駅よりほんの少し南へ下ったところにある「稲取文化公園」付近にこの高原へ登っていくための入口があります。

「東伊豆町観光協会」さんのHPによれば、この入口付近の135号線に案内看板が出ている、ということだったのですが、河津方面から北上してきた我々には案内看板がよくわかりませんでした。もしかしたら、一本手前の道を入ったのかもしれません。

この135号は通常でも交通量が多く、気を付けていないと見落としてしまうかもしれませんので、もし伊東方面からアクセスされる方は注意して入口をみつけてください。

この入口から細野高原へは延々とクルマで登っていきます。ふもとに近い部分は両側に民家が迫っている細い道で、クルマ二台がすれ違うのもやっとという場所や、明らかにクルマ一台しか通れない部分もあって注意が必要です。

この細い道のまわりにある民家ですが、どこの家も、きれーいに組まれた石垣の上に整地された土地にたっていて、この石垣がまたどちらのお宅も見事な出来栄えなのです。

おそらく、東伊豆ということもあり、台風などの嵐が来たときにはかなりの強風が吹くための対策だと思われますが、こんなにきれいな石垣をみたのは、昔沖縄へ行ったとき以来かもしれません。

沖縄も台風がよく通過するところであり、ここ東伊豆もそれは同じなのでしょう。災害の多いところに住んできた先人からの知恵のたまものなのでしょうが、それにしても見事な石垣だと、妙に感心しながら上へ上へと登っていきました。

そんな石垣もだんだんと高度を稼いでいくと徐々にみられなくなっていき、かなり標高を稼いだなと感じたころからは全く民家はなくなり、路の両脇は生い茂った杉林や雑木林になります。

その後はひたすらこの林間の間の道を上っていくのですが、ふもとの民家の間を上っているとき以上にこの道は細く、時折、既に上の高原訪問を済ませて下ってきたクルマともすれ違いましたが、場所によってはすれ違うことのできないような場所もあり、ガードレールもなく、運転には気を遣います。

おそらくはこのアクセスの悪さが細野高原の知名度が上がらない原因なのだと思いますが、仮にもっと知名度が高くなって、この道に乗用車がひしめいたら、事故が起こるのではないかと心配になってしまいます。

我々が行ったのは平日だったためそこそこの車の量で済みましたが、週末の土日などにはもっとたくさんの車であふれかえっているのかもしれません。これからもし週末に行かれる方があれば、ご注意ください。

さて、延々と林間の道を上り続けることおよそ10分ほどでしょうか。突然、視界が開け、その先には駐車場のようなものが見えてきました。この駐車場、まだできたばかりのようでかなり真新しく、そこには「イベント会場」の看板があり、東伊豆町の観光協会の方らしい人が空いている駐車場を指示してくださいました。

あとで知ったことなのですが、クルマで来た人はここまでが限度で、このあとさらに上に楽して登りたい人は、観光協会の用意する乗り合いタクシーに乗って、さらなる上の「三筋山」まで直下まで行けるのだとか。ススキのシーズンである10月末までこの措置が取られるようで、やはり週末などに観光客が殺到するためかと思われました。

ただし、観光協会の方がこの駐車場を管理されているのは、午後3時までだそうで、そのあと、頂上の三筋山までクルマで行く人は、「自己責任」をとれる方ならば入山してもかまわない、ということになっているそうです。

既に書き忘れていますが、そもそもここ細野高原とは、天城山の一部である三筋山(みすじやま)、大峰山(おおみねやま)、浅間山(せんげんさん)などを三方に囲まれた標高400~500mの山の上にある草原地帯です。

ススキの原として最も観光スポットとなっている細野高原からはさらに上の三筋山まで乗用車で乗り入れができる道路が造られていて風光明媚な場所なのですが、知る人ぞ知るで、あまり一般の観光客は来ないようです。

これだけの高所にクルマで上がってこれるのに、あまり観光客が来ないのはやはり途中のアクセス道路が狭いためでしょう。我々が訪問したときのような秋のススキのイベントがないときには、さらに制限なく標高800m超の三筋山頂上直下までクルマで行けるわけですから、もっと人気が出てもよさそうなものです。

おそらく伊豆稲取という場所も、伊豆高原や下田の間にあってマイナーなため、あまり人に知られてこなかったのでしょう。

この三筋山頂上ですが、ここは、パラグライダーの基地にもなっていて、そこから眼下にみえる相模湾に向かってダイブ!ができるようです。、高所恐怖症の私などは聞いただけでも足元がぞわぞわしそうなスポーツですが、こういうことが好きな人にはたまらないレジャースポットになっているようで、これも知る人ぞ知る、らしいです。

我々が行ったこの日にはパラグライダーで飛んでいる人はいませんでしたが、おそらく休日にはこちらの方面の方々でも賑わうのでしょう。このパラグライダー客のためか、草原のあちこちに風向・風速がわかるようにと、目印を兼ねた吹き流しが立ててありました。

さて、駐車場に車を止めて、いざ入山しようとしたところ、どうやら入山のためには「入山簿」に記入をしなければならないようです。協会の人たちが建てたプレハブの前にはその入山簿が並べてあり、係の方からそこに記入をするよう促されました。

駐車場のすぐそばにある看板によると、この入口の駐車場がある付近だけでも400m近い標高があるようで、三筋山の頂上の標高は前述のとおり800m以上もあります。この日のように天気の良い日ばかりではなく、天候の悪い日もあり、この頂上ではこれから10月も下旬に入ればさらに頂上の気温は下がります。

その頂上付近までクルマでアクセスできることもあり、観光客の多くは気軽に平服で登ってきますが、この入山簿への記入は、こうした観光客が天候の悪い日に遭難しないとも限らない、という配慮からなのでしょう。わかる気もします。

ということで、おとなしく言われたままに住所と電話番号を記入し、いざ「入山」です。といっても、我々も薄着の長そでとジーパンに町歩きの普通の靴を履いての登山ですから、おのずと登れる距離は知れています。

協会の方から渡されたパンフには、三筋山の頂上まで登って帰ってくるロングコースと、細野高原の周りをぐるりと回ってくるミドルコース、そして細野高原を横断して、主だったところを見るショートコースの三つが書いてありました。

前述したように、三筋山の頂上までは協会さんが用意した乗り合いタクシーで行けるのですが、協会の係の方からの詳しい説明を聞きそびれたため我々はそのことを知らず、時間的にも午後2時近くになっていたことから、中間のミドルコースをとることにしました。

中間のミドルコースとはいえ、最高標は600mくらいになるようです。駐車場から見上げると上のほうにその到達地点らしい東屋のようなものも見えます。

さっそく駐車場脇の手続き場所から一歩高原のほうへ足を踏み出しましたが、そこだけでももう別世界!でした。行く手の三筋山のほうを見上げると、その頂上までのほとんどの部分が薄い緑色の草原地帯となっていてその直下のあたりから、白く光るススキの原が広がり、それが盛り上がり下がりしながら、なだらかに連なりながら今我々が立っているレベルまで降りてきます。

三筋山からやや左手の南側へ目を向けると、そこには三筋山から流降りる優雅なスロープがあり、ここもススキで覆われた草原地帯になっています。ところによりそのスロープに針葉樹林帯が残されていて、太陽のシルエットとなって影のように立ち並んでいます。逆光の太陽に照らされた目の前のススキの原とこの黒々とした針葉樹林は絶妙のバランスをみせており、なかなか絵になります。

そして、すぐ自分たちの立っている間近の足元に目を落とすと、その平面は見渡す限り、ほぼ100%ススキの原であり、強い逆光の中、ときおり強い風に揺られて一斉になびくその様子は、映画でみた「風の谷のナウシカ」のラストシーンのようです。

振り返って、今まで登ってきたふもとのほうを見ると、眼下にはぼんやりと青い色の海がみえます。相模湾です。左手のほうには、この相模湾からの強い風を受けることで発電をしようとするのでしょう、大きな白い風車も見えます。

さらに北側には、青々と連なる山々も見えます。大昔この細野高原や三筋山を形成した、天城火山の名残の山塊です。こちらの方向にはススキの原は多くはありませんが、青々とした天城山塊とその前に連なる針葉樹林帯、そして手前にみえる若干のススキの原はこれはこれで絶妙な組み合わせです。

この細野高原の全体の広さは、東京ドーム26個分ほどもあるそうで、箱根の仙石原にも広大なスススキの原がありますが、それと比べても7倍の広さがあるとか。

こうしてその夢のような世界をゆっくりゆっくりと歩いて堪能し、二時間ほども歩きましたでしょうか。まあどこもかしこも絵になること甚だしく、気がつくと写真を300枚ほども撮っていました。

この細野高原の生い立ちなのですが、そもそも数十万年前このあたりは、天城山が噴火を繰り返して流れ出た溶岩で埋め尽くされた場所であり、原始の天城山塊の一部でした。

その後長い間をかけて、この原始天城山は浸食を受け続け、また断層の活動変化を受けることで、その中から三筋山・大峰山・浅間山などの高まりが「洗い出され」ます。そして、これら三つの山々の間には、凹地や緩傾斜地が形成され、それが現在の細野高原になったそうです。

もともとが火山由来なため、この高原地帯は大雨が降ったときには火山灰や火山土が雨と混じって泥水になって山を下り、これが「稲取泥流」と呼ばれるものです。この泥流はやがて各所に堆積し、それが土石流堆積物で覆われた今の広い高原を形成しました。

この堆積物中には泥質分が多くて水はけが悪いため、地表に湿原がつくられて水辺の植物が生育し、そしてその中でもススキが卓越種となり、現在のようなのススキで覆われた「細野湿原」が誕生しました。

確かに、草原のあちこちには沢水が流れていて、確かに「草原」ではあるのですが、「湿原」でもあることがわかります。ススキのような水辺を好む植物が大繁殖したのもその水はけの悪さゆえんのことのようです。

細野湿原は県内の湿原の中でも自然状態が最もよく残されているそうで、「タヌキモ」や「ミミカキグサ」などの食虫植物のほか、多くのラン科の植物や絶滅が危惧される貴重種も数多く生育しているとか。オオタカやハイタカなどのタカ類の狩場ともなっているそうで、こうした猛禽類が捕食する小動物もかなり多そうです。

昭和54年7月に、東伊豆町指定文化財(天然記念物)となり、保護・保全されてきましたが、その希少性が評価され、平成8年3月12日には静岡県指定の文化財となりました。

我々が訪問したこの日は、夕方まで上天気で、しかも時間帯が日暮れ近いこともあって、風になびくススキの原が夕日の逆光にあたって映える絶景が数多く撮影できました。その全部はご紹介できませんが、一部をこのブログでも紹介してみましたのでご笑覧ください。

これを見て、細野高原へ行ってみたいと思った方は今がおすすめです。10月末までいろんなイベントもやっているようですから。ぜひ行ってみてください。まさに「知られざる観光スポット」だと思います。

以下に東伊豆町観光協会のHPからの抜粋をそのまま掲載しておくのでご参考ください。なお、私自身は観光協会さんから一銭も宣伝費を頂戴しているわけではありませんので、ご承知おきを。

開催期間:平成24年10月1日(月)~10月31日(水)

■開催時間:9時~15時(雨天中止)

■イベント詳細:
稲取細野高原の大自然を楽しんでいただけます。イベント広場ではすすき狩り、マウンテンバイクの貸出、すすきソリすべりなどご用意いたしております。また、希望者にはイベント広場から絶景が眺められるポイントの三筋下駐車場までタクシーが運行しております。(片道10分)(環境保全協力金として1名200円の協力金のご負担をお願いいたします。)

■交通手段:
伊豆稲取駅から稲取細野高原イベント広場行きの無料ピストンバスが出ます。帰りの便は稲取文化公園を経由します。なお、バスは先着順となり、予約制ではありませんのでご了承ください。バスに乗りきれなかった場合はお手数ですが有料タクシーにてご来場ください。

■細野高原イベント広場駐車場:
乗用車37台、身障車1台、マイクロ(中)3台 (トイレあり)お車でお越しの場合、伊豆稲取駅より車で約15分です。

*イベント開催期間中は細野高原イベント広場より先はお車の通行ができませんので、イベント広場駐車場にてお車を駐車してください。

天城高原へ

さて、ここまでこのブログにお付き合いいただいた方は、ブログカテゴリーがいつのまにか、「伊那谷日記」から「修善寺日記」に変わっていることに既にお気づきかと思います。

そう、この物語の最終目的地は「修善寺」なのですが、そこへ至るまでにはまだまだ紆余曲折あるのです。なので、もう少しこのストーリーにお付き合いください。

前号からの続き・・・・そう、そして移住先探しの先は、伊豆中央部へと移っていきました。伊豆半島は、一般的に東伊豆、中伊豆、西伊豆、南伊豆の4つの地方に区分されているそうで、あまりにも町中すぎる、として移住先として私が選択から外した三島市や沼津市、函南町は、このうちの中伊豆という区分に入るようです。

中伊豆と呼ばれるこの地域には、このほか伊豆市と伊豆の国市などに小さな別荘地が散在していますが、あまりぱっとした物件もなさそうなので、リサーチは更に東伊豆、南伊豆へと移っていきました。

そこで目にとまったのが、伊豆高原と天城高原です。この二つの高原地帯は、もともと伊豆急行線を保有する東急電鉄とそのグループ会社の東急電鉄、東急不動産といった会社が開発した別荘地です。伊豆地方だけでなく、関東地方にも鉄道を保有しており、かのバブル崩壊でも倒産するようなことはなく、管理する別荘地でも運営に支障がでるなどの問題はとくに出なかったようです。

伊豆の他の別荘地でも、大手建設機械メーカーのコマツ(旧小松製作所)のグループ会社が造った別荘地や、三菱地所や住友不動産などの大手不動産会社や銀行などが造った別荘地がありますが、これらについても現在までのところ大きな破たんのうわさはなく、おおむね運営は安泰のようです。

寄らば大樹の陰・・・ということで、ここはやはり管理体制がしっかりしている別荘地を探そう、ということに気付いたまではよかったのですが、しかしそれでも、ともかく実際の土地を見なければ埒があきません。ともかく、現地に行ってみよう!ということになり、ようやく伊那以来の重い腰を上げる時が来ました。

ただ、行くなら行くで、やはり具体的な物件候補を絞ってから行こう、ということになりました。どこでもいい、ということではなく、できれば伊豆の中でも涼しそうなところ、ということで、まず選んだのは「天城高原」でした。標高1000m近い高所にあるため、そのほかの伊豆のどこよりも夏涼しく、海岸に近い土地よりも気温は2~3度も低い、というのがその理由です。

そして東急グループが管理する「天城高原別荘地」の中にみつけた物件は、床面積はそれほど多くないのですが、敷地にある程度の余裕があり、増築が可能かもしれない、という物件。物件の管理しているのは、伊豆急行線、伊豆高原駅にほど近いM社さんで、地元でも老舗の不動産屋のご様子。早速電話で予約を入れ、その物件と同じ別荘地内でタエさんが選んだ物件の二つをみせてもらうことにしたのです。

6月28日の午後、東京の自宅を出て、厚木小田原道路を経て伊豆高原に着いたのは午後過ぎのこと。気温はやや高めで、30度をちょっと超えていたかも。天気はこの時期にしてはめずらしい晴天で、物件を見せてもらうには絶好の条件です。

約束の時間が迫っていたので、手早く近くのラーメン店でお昼を済ませ(実はこのラーメンやのラーメンは絶品でした。また後日ご紹介しましょう)、すぐ近くの不動産屋さんM社さんへ。

M社は、伊豆高原駅から歩いて十数分の高台の桜並木通りにあります。この桜並木通り近辺は知る人は知る、結構有名な観光地。おしゃれな飲食店や、工房、ブティックのほか、「ねこの博物館」などのプチミュージアムがあちこちにあり、とくに若い人に大人気。M社さんも桜並木沿いに本拠を構えておられ、広々とした敷地に建てられた洋風の明るいお店でした。不動産屋というよりも、どこかのマンションのショールームのようなかんじ。

受付でお約束をしたことを告げ、打ち合わせルームに案内されたやや緊張気味の二人の前に出てこられたSさんは、やや痩せ気味で中背のやさしそうな男性。年齢不詳ですが、気安くお話ができそうなタイプ。笑顔を絶やさない落ち着いた応対をする方で、今日のご案内も彼がしてくれるとのこと。早速、Sさんが運転するプリウスの後ろに乗せてもらい、現地へ向かうことになりました。

M社を出て、まがりくねった山道を山の上のほうへ上のほうへと向かう道中、さりげなく天城高原の様子やら伊豆高原の様子などをお聞きしてみました。それによると、天城高原は東急グループが管理しているリゾートなので、管理体制は非常にしっかりしているとのこと。しかし、最近は新しくここに別荘を建てる人はそれほど多くなく、出て来るのは築後20年以上経った中古物件が多いとか。住んでいる人の高齢化も進んでおり、最寄りの鉄道駅(伊豆高原駅)から30分以上かかることから人気は今ひとつ・・・なのだそうです。

これから目指す目的地について、それを案内する不動産屋さんご自身の口から、あまり人気がない・・・みたいな言葉が出て来るとはビックリ。しかし、何事にも隠しだてせず、率直なものいいで現地の現状について語ってくれるSさんに、二人とも好印象を持ちました。

その日は梅雨中にも関わらず良いお天気でしたが、湿気が多く、外は蒸し風呂状態。外気温は30度を超えています。ところが、プリウスが、まがりくねった道をどんどん山の上のほうへあがって行くにつれ、プリウスの車載温度計の表示も1度、また1度と下がっていきます。ああ、やっぱり涼しいんだーという実感・・・

そして、まずタエさんが選んだ物件に着いたのは、ふもとの町を出てからおよそ30分ほど経過してから。気温は、既に27~28度に下がっています。やはり涼しい!その物件は林間にあり、あまり眺望はよくない別荘でしたが、5LDKと広く、床面積も120m2あるのを気に入り、タエさんが選んだのでした。

物件は、天城高原の最も高いところから東側に下がった林間にあり、かなり入り組んだ地形の中にありました。道路からもさらに谷底に向かうような細い小道をくだったところにあり、まさに森の中の一軒家という雰囲気。涼しそうですが、周囲は何やら暗い雰囲気。Sさんに鍵をあけてもらい、早速内部に入ると、この暑さの中でも中はひんやりとしています。ただ、中に入ったとたん、何やらカビの臭いにおいが・・・しばらくするとさきほどまで、ひんやりと・・・と感じていたのは湿気が多いため、と気がつきました。

ただ、いかにも「別荘」という重厚な造りで、2階から1階を見通せる吹き抜け構造になっている間取りは、なかなかおしゃれ。持ち主さんがまだ現状でも別荘として使われているようで、家具やら生活用品はそのまま。しかし、この湿気の中でよくカビないなーという印象。ふたりであちこち見ていたところ、1階のリビングで何かをチェックしていたご様子のSさんがポツリと一言・・・曰く・・・「ダメだなこりゃ」。

みると、リビングの床の上を何度も体重をかけて踏んでみて、床下の様子を確認していたご様子。聞くと床下の構造材がどうも腐っているようだ、とおっしゃいます。

さきほどまでの車中でも率直なモノの言いようをされる人だなと思っていましたが、自社管理の物件をけなすような言い方で、「ダメ」と言い切るとは・・・

続けてSさん曰く、「湿気が多いんで床下が腐っているんだと思うんですよ。こういう湿気の多い場所に建てた家は床下から腐ってくるんです、床を踏んでみてグニャグニャしているようなら、かなり傷んでいると思って間違いない。こういう物件はあまりお勧めできないですね~」とのことで、長いこと使っていない別荘物件には、こういうのが結構あるそうです。

二人で床を踏んでみると、なるほどグニャッと沈みこむような感じが確認でき、思わず顔を見合わせて、うなずき合うふたり・・・

「カビ臭いんで、早くこ出ましょう。こんなところに長くいたら、肺が悪くなっちゃう。つぎ行きましょ、次!」とSさん。それにしても結構はっきりモノを言う人だなーと、思わずふたたび笑ってしまった二人。

「仕事だから案内させていただいているけれど、それで体を悪くしたらもともこもありませんからね。」というSさんのひょうけた言い方にも再び大笑いした二人でした。

後日Sさんからお聞きしたことですが、Sさんは2年ほど前に、東京で別の仕事をしていたのを辞め、田舎暮らしをしたいという奥さんの希望を入れて伊豆へ来られたとのこと。M社に勤め初めてまだ1年あまりなのだそうです。会社が売り出している物件についても、悪いものは悪い、と平気でお客さんに言うことをポリシーにしている、とのことで、どうもその背景にはM社の人使いの荒さがあるようです。それでもこの仕事を続けておられるのは、人と接することがお好きなためのようで、今日のムシャ&タエとの接客もそれなりに楽しんでおられるご様子。

なかなか良い案内人に出会ったなー、とあとでタエさんともうなずき合ったものでした。

さて、林間の別荘を出て、次の物件へ。この別荘地は敷地面積が1000万m2あるそうで、場所から場所へ移動するのも一苦労。敷地の端から端まで移動するには車で数十分はかかりそうです。

次の物件へ向かう途中、この別荘地の中心的存在の「ホテルハーヴェスト天城高原」に立ち寄ってもらいました。18ホールの立派なゴルフコースを備えたこのホテルは、なかなか立派なもので、二食付き一泊、16,000円〜27,000円とか。富士山を望む比較的高級なリゾートとのことです。

このホテルには隣接して、「天城高原ベコニアガーデン」といった観光施設もあります。広い別荘地の中で食べ物やちょっとした日常品が手に入るのはホテルハーヴェストとこの施設の二つだけとのこと。あとは、ふもとの伊豆高原まで30分以上かけて車で買い出しに行かなければなりません。ふもとの伊豆高原駅までシャトルバスもあるそうですが、有料で片道300円取るとのことで、その費用もばかにはなりません。

ホテルを後にし、ようやく次の物件に到着。この物件は、私ムシャが選んだ物件。現場は、明るい尾根の上にあり、その尾根の上にさらに盛土をしたような高台に建っていました。家の外回りはパステルカラーでおしゃれに塗装されており、リビングの外側にはウッドデッキがしつらえてあって、そこからは富士山も見えるとのこと。あいにくその日は雲がかかっていて見えませんでしたが、富士山が見える、というのが私がこの物件を選んだひとつの理由。前々から富士山の見える家に住みたいと思っていたからです。

敷地はそれほど広くない印象ですが、建物自体はおしゃれで小奇麗なかんじ。早速内部を見せてもらうことに。この家は、土地の傾斜を生かしてスキップフロアになっており、きれいに掃除された3DK。床面積はそれほど大きくはないけれども、プラスで小さなロフトもあって、そこそこ収納も多い様子。おそらく、かなり年配のご夫婦が二人でお住まいになっていたようで、内部のあちこちには手摺が。外部にはその旦那さんが手作りしたと思われる小さな物置小屋もあり、ここに住んでおられたご夫婦の睦まじさが目に見えるようです。

再度、外部に出て、床下などもチェック。大きな問題はないようでしたが、さすがに築30年近く経ていることから、外壁や基礎部分の根太の一部分が腐っているようでした。敷地は北側に向かってやや傾斜しており、平たい部分もあることはあるのですが、増築をするとなると、基礎工事には結構お金がかかりそう・・・

なんでも、ここに住んでいたご夫婦はこの天城高原が大変気に入っていて、ここを売りに出して、現在同じ別荘地内の別の土地を購入し、そこに新しい家を建築中とのこと。人口が減少しているというこの天城高原ですが、こうした交通の便の悪いところを気にいって住みたいという人もいるぐらいだから、きっと良い所なんだろうなーと思いました。

確かに景色もよく、明るい感じでなかなか良い家だな、とは思ったのですが、ただ、いかんせん床面積が小さく、また増築も難しそうなので、我々二人が使うとすると、これはちょっと無理かなーと正直思いました。

伊豆での家探しはまだ始まったばかりだし、初日にすぐに気にいった物件に出会えるとも思っていなかったので、この物件にあまり乗り気でない、といったそぶりはSさんにはみせず、ほどよいところで「今日のところは」ということで、引き揚げたい旨を伝えました。

下山途中、他の別荘も2~3軒ほど外部からだけ見せてもらいましたが、その日はとうとうこれぞ!という物件には出会えず時間切れ。

山を下ってM社に戻り、再度応接ルームに案内された二人に、受付のお嬢さんから、冷たいおしぼりと飲み物、そしてケーキのご提供が。一日暑い中を歩き回ったあとのこのサービスはなかなか心にくいものです。

事務室で何やら探していたSさんが戻ってこられ、手渡してくれたのは本日の物件の資料と他の物件資料。今日の物件の印象を聞かれたので、正直にいまひとつだったことを伝えると、これを予期しておられたようで、曰く、「今度は、一日かけて伊豆のあちこちの物件をみてはどうですか?」とのお申し出が。

その日の応対で、Sさんのお人柄に大変好意をもっていた二人は、このお申し出を快諾。後日再び、伊豆の別荘めぐりをすることにしました。このとき既に私の心の中では、天城高原と伊豆高原はないな・・・とどこかで思っていたものの、今度来れば、もっと良い物件にめぐりあえるかもしれない・・・という期待も半分。しかしそれが空振りに終わるとはこのときはまだ考えてもいませんでした・・・(続く)