うつうつと春はゆく

1-destrict-7502昨日は、年始からちょうど100日目だったようです。

もうそんなか、と改めて月日の過ぎ行く速さを思って嘆息したりしているわけですが、まてよ、ということは、今日はさしずめ残る265日の初日ということになるわけで、いわば元旦です。

桜はもはや散りつつはありますが、代わって新緑が爆発的に外を埋め尽くし始めており、なるほどめでたい感じはします。

なので、わたくし的には、なんとなく2度目の正月気分を味わいたいなと思ったりしているのですが、この4月から就職した新社会人や新入生諸君は、それどころではない、といったところでしょう。

入社や入学して何がなんだかわからないまま過ごした1ヶ月後には待望の大型連休がやってきてほっとできるものの、そのあとにはまた同じ現場へ戻らなければならない、というジレンマがあり、それに対するストレスの中で体調を崩す人も多いようです。

いわゆる「五月病」というヤツで、やる気はあるものの、その環境に適応できないでいると人によってはうつ病に似た症状がしばしば5月のゴールデンウィーク明けから起こりはじめます。

私も経験があり、とはいえ、進学や社会人になったときばかりではなく、会社で長く経験を積んだあとも、しばしば5月になると憂鬱、といったことはよくありました。私がやっていた建設コンサルタントの仕事は、3月の年度末に納品となることが多く、それまでは猛烈に忙しイのが、4月になるとパタッと静かになります。

年末から毎晩のように残業をして忙しくなり3月に入ると徹夜をすることも多いほど激しい労働にさらされます。その忙しさが4月になると潮を引くように薄れていくわけで、無論、気持ちも楽になるわけですが、その分気が抜けたようになるのがこの時期です。そしてそれが一段落して新たなフェーズを迎える5月はやはりいつもいやなかんじでした。

この五月病のように、ストレスの原因、つまりストレス因子がはっきりとわかっており、それによって、ある時期に著しい苦痛が続く、といった場合には、精神面での機能の障害が起こっていることも多く、医学的にはこれは「適応障害」というようです。

「うつ病」まではいかないにせよ、軽いうつ病状態であり、一方ではそのストレスが除去されれば症状が消失する特徴を持つ精神障害とされます。従って、「五月病」というように「病」という文字がつくのは確かに医学的な根拠があるわけであり、誰しも発する症状と考えていいようです。

発症に至る例としては、今春に生活環境が大きく変化した者の中で、新しい生活や環境に適応できないま、ゴールデンウィーク中に疲れが一気に噴き出す、長い休みの影響で学校や職場への行く気を削がれる、というわけで、ゴールデンウィーク明け頃から理由不明確な体や心の不調に陥ります。

主な症状としては、抑うつ、無気力、不安感、焦りなどが特徴的な症状であり、そのほか不眠、疲労感、食欲不振、やる気が出ない、人との関わりが億劫になる、といったものです。

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一方、その対策としては、やはりいったん職場や学校を離れて気分転換をし、ストレスの解消に努める、といったことが一番のようです。

学校を出たばかりの新社会人の場合は、中学校や高校など、以前の環境の友人と会うのも良い、といわれますが、これは過ぎし日の楽しいことを思い出しストレスを解消する、という意味もあるでしょう。が、同じく学校を出て頑張っている友達の様子をみて、自分も頑張らなきゃ、と思えるようになるから、ということもあるのではないでしょうか。

私自身の経験を言わせてもらうと、こういうときにはいたずらに逃げず、直面している問題にむしろ立ち向かう、といったほうが早く適応障害からは脱せたように思います。だからといって頑張りすぎるのではなく、その立ち向かいの中で冷静に問題点を見つけ、その解決方法を自分なりに熟考する、といったことが効果があったように記憶しています。

しかし、こうした五月病に似たような症状というのは、1年に一度起こるだけでなく、週明けなどの休み明けにも起こりうります。

「サザエさん症候群」というのだそうで、日曜日の夕方から深夜、「翌日からまた通学・仕事をしなければならない」という現実に直面して憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える症状です。

名前の由来は、「サザエさん」の放送が、通常日曜日の終わりにあることです。ほとんどの地域のフジテレビ系で毎週日曜日18:30 – 19:00に放送されていることから名づけられました。

日曜日の夕方にはほかにも「笑点」などもあり、「笑点症候群」でもよさそうなものですが、朝早く仕事が始まる職業に就いている人などでは、笑点のあと放送される「サザエさん」が終われば、あとは風呂に入って寝る、という人も多いわけです。

45年を超える長寿番組であり、世代にかかわらず認知度が高く、放送開始時刻・終了時刻が固定されており、プロ野球中継などで放送休止になる例が非常に少ないことから、日曜夕方の代名詞となったといわれます。

この症例については身に覚えのある人も多いことでしょう。日曜日の終わりごろにこのサザエさんをみるあたりから、休日の終わり、明日からの仕事の始まりを実感し、憂鬱になる、という人は多いに違いありません。症状はやはり5月病と似ており、ごく軽度のうつ病、つまり適応障害です。

実は「サザエさん」以外の番組でも日曜の終わりを連想させる他の何かでも、同様の症状が起こりうるそうで、上の「笑点」もそうであり、「大河ドラマ」や「日曜洋画劇場」「日曜劇場」などを見て憂鬱になる人いるようです。夜遅くまでテレビを見ている人は「情熱大陸」あたりでようやく明日の仕事を思い出し、気分が落ち込むという人もいるようです。

当のサザエさんにしてみれば、明るいキャラクターでお茶の間に笑いを届ける、という役割を担っているだけに不本意でしょう。が、この症状を持っている人にすれば、サザエさん一家がドタバタ騒ぎを起こすたびに、その一挙手一投足が明日からの仕事と関連づけられてしまって、あ~ぁと溜息をついたりするわけです。

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そんならいっそのこと見なきゃいいじゃん、と思うわけですが、家族だんらんの夕方の時間帯に自分だけサザエさんを見ずに、ひとりでぽつねんといるのもおかしい、というわけで自分の意思とは別についつい家族につきあってしまいます。

こういう軽いうつ病も含めて、いったいこの世にはどのくらいうつ病を患っている人がいるのか、といった統計はないか調べてみましたが、そういうものはないようです。ただ、医者からお前はうつ病だ、と明らかに精神障害だと診断された人は世界中で3.5億人はいる、という統計データもあるそうです。

「障害調整生命年」という指標があり、これは普通の人なら正常に生きることができたはずが、病気や障害、早死などによって残る人生がどれだけ奪われたかを示すもので、ようするに「失われた年数」を意味するものです。

それによれば、いろいろな病気がある中でうつ病は、堂々にその第3位に入っているそうで、一番の癌((25.1年)、心臓病 (23.8年)に次いで、17.6年だそうです。まさに世界的な疾病といっていいでしょう。しかもWHOはうつ病の未治療率を56.3%と推定しているそうで、かなり治りにくい病気でもあるようです。

しかし、ひとことにうつ病といっても、その症状はいろいろあって複雑です。他の精神障害と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難といわれており、上の五月病やサザエさん症候群の定義もまた確固たるものではないようです。

ただ、「精神障害」と言われるようなうつ病は、「大うつ病性障害」として扱われ、ここまでひどくなった人というのは、1日のほとんどや、ほぼ毎日、2、3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症です。

なので、それに比べれば五月病や週末病はとるに足らないもの、と考えてもいいかもしれませんが、症状が悪化すれば大うつに発展する可能性もあるわけで、やはり日ごろから注意するにこしたことはありません。

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とはいえ、自分は病気だ、と思い込む必要はありません。五月病などのストレス以外にも失業、離婚といった人生におけるストレスは、正常な悲観反応として、軽症のうつ病と同じ症状を呈します。しかし、それは「理解可能」な出来事であり、過剰な診断と治療は避けるほうがむしろいい、ということがいわれているようです。

「精神障害の診断と統計マニュアル」といううつ病であるかどうかを判断するマニュアルがあるそうで、それによれば、こうしたよくあるストレスや喪失のほか、経済破綻、災害や重篤な病気などへの反応といった、予測可能な反応によって引き起こされるうつ病もまた精神障害ではない、とされています。

さらに、同マニュアルには、うつ病の診断基準の注釈においては、愛する人との死別によって人生を見失う、といったケースですらも、理解可能な、正常な反応である、とまでか書かれています。

これは肉親の死などによって落ち込み、重度なうつ病だと思い込んでいる人ですらうつ病とは診断されない、ということであり、それほどシビアなケースでも自分は病気だ~もうダメだーとばかりあまり深刻に考えすぎないほうが良い、ということなのでしょう。

ほかにも抑うつ症候を引き起こすようなライフイベントや人生の転機はたくさんあります。出産、更年期障害、金銭的問題、仕事上の問題、病気、いじめ問題、失恋、自然災害、社会的孤独、人間関係の問題、嫉妬、隔絶、深刻な外傷などなど、人生はストレスだらけです。

そのたびにうつになっていてはキリがないし、病気がちだと思って送る人生では何のための人生なのかはわからなくなってしまいます。うつは病気に違いない、というこれまでの風潮を改め、ごく軽い精神的なトラブルだと考えて対処していくことがこれからは求められているのではないでしょうか。

以前このブログでも紹介したことのある、「病気が教えてくれる、病気の治し方」の著者(柏書房、トアヴァルト・デトレフゼン&リューディガー・ダールケ)は、うつ病とは、人が罪の意識を強く感じ、自分自身を非難し、状態を改善しようとたえず努力している状態だといいます。

うつ病(depression)は、ラテン語で「抑制する、押し下げる」という意味だといいます。

では、何を抑圧しているのか、どうして落ち込むのか、ですが、著者はその答えは3つあるといっています。

ひとつは攻撃性。

うつにかかりやすい人は、ときに外に向けられなかった攻撃性を内側に向かわせ、自分自身に向けることが多いといいます。攻撃性とは実は生命力と行動力が特殊な形になったものであり、攻撃性を抑圧すれば、行動力やエネルギーも抑圧することになる、といいます。

医者はこうした状態にあるうつ病患者をとかく何等かの行動に駆り立てようとしますが、これは逆効果で患者はまさに、そうした「行動」を恐れているわけです。

こうした人は、世間から評価されないことをことごとく避け、非の打ちどころのない生活を送っている、というポーズをとりたがります。が、実は行動したくないだけであり、行動することによってそれが外部に対して攻撃的で破壊的なインパルスを与えることを恐れ、それを隠そうとしている状態です。

たとえば新人の場合、本当は自分自身の力を示したい、思う存分先輩と張り合って仕事をしたい、というイメージを抱くわけですが、その反面、いやいやまだその力は自分にない、今はまだ行動するときではない、と思うわけです。

このため、職場や学校では猫をかぶり、優等生であろうとする状態であり、そういう自分を出せない「嫌な自分」への気持ちが高ぶった末、逆に自分への攻撃、という状態が現れてきます。

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ふたつ目は「責任」です。

うつ病とは責任拒否の最たる形です。うつ病にかかった人は行動せず、なりゆきに身を任せようとします。積極的に生きているとはいえないような状態です。

ところが、このように人生と積極的に対決することを拒否しているにも関わらず、ときに責任がいや応にも降りかかってくる場合というのは往々にしてあり、こうしたときに逃げることに罪の意識を感じます。そして、こういう人はその罪の意識という、家の裏口からこっそりとやってくる脅威に心底おびえます。

責任をとることへの心配は、とくに新入社員や学校に入りたての学生など、人生の新しいフェーズに直面した人におこりやすいといいます。

まだまだ学生気分、あるいは前の初等教育の場での甘えの気分が抜けきらず、自分が責任をとる、ということに臆病な状態です。入って間もない自分に責任が取れるわけはない、それほど成長してないという自分が嫌なわけですが、そう思うこと自体が罪の意識につながっていきます。

あるいは明日は月曜日というサラリーマン。先週まではなんとか繰り合わせて仕事をこなしてきたものの、来週から始まる仕事ではさらに新たな責任が生まれる、しかしそれに自分は対処していける自信がなくて不安、できるものならば誰かに変わってほしい……というわけです。

こうした状態はまた、女性などでも、はじめて子供を産んだあとなどに、その生んだ子供への責任感から生じるといいます(いわゆる、産褥うつ病)。自分みたいな未熟な母親が本当に子どもを育てられるのだろうか、という気持ちが、せっかく生まれてきてくれたのに申し訳ない、という子供に対する罪への意識につながっていくのでしょう。

三つ目は、あきらめ、孤独、老化、死、です。

この4つの概念はたがいに関わりの深いことが多いものです。とくに残りの人生が少なくなった人は、その孤独な人生に悲観してうつ病にかかることも多く、生とは相対する死といやでも向き合うことになります。年老いた人には、他人とのコミュニケーションがなくなって、無気力、硬直化し、死への思いがつのってくる人も多いものです。

生命への不安と死への不安が同じくらい強く、それが葛藤になります。活動的な生活には責任が伴うものですが、まさにそれがいやなわけです。責任をとるということは、実は生への執着を捨てるとともに、残る人生における孤独を受け入れるということです。

ところがそれができない人は、孤独や死を怖がり、しがみつくことのできる相手を必要とします。そして、ときに、そうしたしがみつける相手との別離がうつ病のきっかけにもなったりもします。

ひとりっきりになるということは誰にも責任を押し付ける相手がいなくなるということであり、他人にしがみついてきた人は、その人を失った結果、自分ひとりで生きて責任をとるのがいやになります。

死が怖いうえに、生きていることの条件がわからない。生きることも死ぬこともできない状態であり、これがうつ病を助長するわけです。あきらめ、孤独、老化、死、そのすべてを受け入れ、しかもそれらがすべてつながっている、ということを理解することだけが、うつのラビリンスから抜け出す唯一の方法です。

……どうでしょう。

原文がわかりにくいのでかなり意訳しましたが、うつ病の「メカニズム」がわかった気になりませんか?

これから5月を迎えることになり心配な新人諸兄、週明けが怖いみなさんも、何が自分を押さえつけているかをいまいちど深く考えてみてはいかがでしょうか。

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ニャンとも眠い

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伊豆では、ソメイヨシノや山桜があちこちで花開き始めました。

ところによってはほぼ満開のところもあり、季節の進み具合は順調のようです。昨日今日と少々寒の戻りはあるようですが、もはや春といってよいのでしょう。

「春眠暁を覚えず」、ということで朝起きれない、という人も多いでしょう。が、私はだいたいどんな季節でも5時台には目が覚めます。

ジジイになったからだろう、と言われそうですが、20代の若いころから早起きで知られており、会社でのあだ名は「ニワトリ小僧」でした。

誰よりも真っ先に職場に入り、朝早くから仕事をするのですが、周囲は静まっており、格段に集中でき、その分、早く仕事を終えて帰れる、というメリットがありました。まさに早起きは三文の徳です。

この、春眠暁を覚えず、は誰が詠ったのかと調べてみると、中国の唐の時代の詩人・孟 浩然(もう こうねん)という人のようです。元文にはこれに続く後段があり、これは「処処啼鳥を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」です。

春眠暁を覚えず、と合わせて意訳すると、「春の夜は寒さもやわらぎ心地よいので、眠りについたあと夜明けが来ても気が付かない。目を閉じたままでいると、鳥のさえずりが聞こえるようだ。昨晩は嵐の吹く音がしたが、おそらくその鳥がついばむ花もたくさん散ったことだろう」といった意味でしょう。

昼寝ではなく夜の睡眠について詠った詩であるわけですが、しかし春には夜だけでなく昼間もついウトウトしやすくなります。これは春になると皮膚の表面血流量が増え、交感神経系が活発になり、日中の活動量が増えるということと関係があるようです。

その結果、疲労感やだるさが出やすく、このためはとくに昼過ぎなどには強い眠気に襲われやすくなります。また、入学、入社、異動など、生活環境にもいろいろ変化がある時期なので、その反動で興奮してしまい、逆に夜は寝つきがわるくなる、という人もいるようで、これにより日中に「春眠」してしまうわけです。

いずれにせよ、春という季節には日の出の時間が速くなり、急激に日照量も増えるので、何かと生活のリズム、ひいては睡眠のリズムを崩しやすくなりがちです。それでは、質の良い睡眠をキープするにはどうすればよいか。それは、できるだけ睡眠パターンを統一することです。

よく、平日が仕事で忙しく、思うように睡眠がとれなくなると、休日に「寝貯め」を試みる人がいますが、そうしたからといって、頭や体がすっきり快調になるわけではありません。逆に体調が悪くなる人も多いようです。

これは、人の体には体内時計があり、寝だめはこれを壊してしまうためです。一定のリズムで睡眠し、これに合わせて生活パターンを決め込むと、体はそれに合わせて順調に動いてくれるようになります。

従って、いろんなイベントが重なって前日の就寝が遅くなっても、朝はいつもと同じ時間に起床するようにします。そうすると睡眠時間が短くなるので、その日は逆に眠たくなる時間が早くなるかもしれません。が、体が睡眠を取り戻そうとするので、その夜は深い眠りを導き、体をしっかりと休めることができます。

そして、同様に以後の日々もできるだけ朝起きる時間は同じにして、その前後で睡眠時間が浅かろうが深かろうが、これをキープし続けます。そうすることで、やがて体内時計のサイクルが安定してきます。次第に睡眠時間も一定となり、また体調も安定してくる、というわけです。

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もっとも睡眠時間は人によってまちまちです。いったい何時間寝ればいいのか。ナポレオンは3時間で十分だったといいますが、これくらいで十分かどうかについては、諸説あるようです。が、現代人は八時間労働制の関係もあり、やはり7~8時間というのが一番体内時計のリズムが安定しやすいといわれているようです。

1日の睡眠時間が7時間の人は他の人たちに比べて死亡リスクが低いというれっきとした統計データもあるようで、個人差はあるのでしょうが、やはりこれくらいは寝ておいたほうが良いようです。

ただ、連続して寝る必要は必ずしもなく、切れ切れでもいいようで、日本の場合、電車やバスで通勤・通学をする人も多く、そこで睡眠不足を補うことも悪いことではないようです。私自身、夜の睡眠はだいたいいつも5~6時間ぐらいであり、そのかわりに昼寝で不足分を補っています。

それにしてもなぜ睡眠が必要か、ですが、これは生命にとって大切ないわゆる「免疫力」「自然治癒力」などに悪影響がある、ということが定説のようです。子供の場合は成長ホルモンの分泌にも悪影響があり、睡眠が足りていないと身長が伸びにくくなる、というのは本当のことのようです。

このほか、よくいわれるのが、顔がむくみ、血色が悪くなり、皮膚の状態が目に見えて悪くなる、といったことでしょう。特に女性の睡眠不足は美容の大敵だ、とはよく言われます。

このほか、精神的にも悪影響があり、睡眠不足の人は鬱や躁、といった精神不安定状態になりやすく、記憶力、集中力が悪くなります。結果として仕事や学業に影響を与え、肉体労働などをしている人では深刻な負傷を負ったりします。睡眠不足で死亡事故に遭う確率が高いことは、各種労働統計によっても明らかにされているそうです。

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それでは、人間以外の動物はどうなのか。我が家にも一匹おりますが、ネコでは平均12~13時間だそうで、「ネコ」の語源は「寝子」だという説もあるくらいです。確かによく寝ます。また、イヌでは犬般的には10時間という統計データがあるようですが、その睡眠時間は大きさに依存する、ということが言われているようです。

小型になるほどより長い睡眠時間を取るようで、同じペットで犬より小さいネコの睡眠時間が犬より長いのはこのためかもしれません。ネズミのような小型の齧歯類は15~18時間だといい、逆に大型動物であるゾウでは3~4時間であることからみても、大型化すればするほど睡眠時間は短くなる傾向にあるようです。

背の高さと関係があるのかどうかまではわかりませんが、キリンに至ってはわずか30分~1時間だそうです。

大型動物ほど睡眠時間が短くなるのは、大型化によって新陳代謝の率が低く済むためと考えられているようです。新陳代謝は、脳の機能を維持するために重要なものですが、日中に酷使した脳細胞のダメージの修復をこうした大型動物はより短い時間でできる、ということがわかっているそうです。

が、なぜ短くできるのか、するのかはよくわかっていないようです。おそらくは、そうして睡眠時間短くすることで、巨大であるがゆえに他の捕食者に見つかりやすくなるリスクを軽減しているのではないでしょうか。ゾウやキリンは大型ですが、元来草食性のおとなしい動物なので、肉食系の動物の餌食になることも少なくはありません。

また、相対的に草食動物の睡眠時間は短く、肉食動物は長い傾向にあるといいます。ゾウやキリンは草食動物であり、これを襲うヒョウやライオンはより長眠です。

同じ猫科の動物であるネコも長眠ですが、野生の肉食動物は、ペットと違い餌を貰って生きているわけではありません。獲物をみつけて狩りをして自分で餌を得る努力をしなければなりませんが、失敗することも多く、そうそう毎日ステーキが食えるとは限りません。

必然として食物を得る機会は乏しくなります。しかし、いざ狩りに成功すれば、その獲物はたいへん高カロリーであるため、一度こうした食物を得た後はしばらく食物を摂る必要が無くなります。

この間、何もしなくても良い時間が多く、むしろ何もしないことで消費カロリーを抑えることができ、さらに寝てしまえばよりカロリー消費量は減る、といわけで睡眠時間が長くなる、と考えられているようです。

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一方、草食動物の食糧はその辺にどこでもある草や木の葉なので、摂取する食料に不自由しません。しかし、こうした食料は一般に低カロリーであり、繊維質も多くなりますから、大量にしかも長時間食べ続ける必要があります。

また、長い消化時間も必要となり、結局は起きている時間が長くなることを余儀なくされます。従って、睡眠時間は短くなります。

従って、動物の睡眠時間はそのサイズが大きいか小さいかということ以外にも、肉食か草食かによって、その差異が出てくるわけです。とすると、人間でも背の高い人は睡眠が短く、肉食の人は睡眠が長いのでしょうか。

ウチのヨメのタエさんは背が高いほうですが、睡眠が長く、野菜よりも肉や魚のほうが好きな私は相対的に睡眠が短いようであり、当たっていないような。が、あなたの周辺の人を観察してみてください。案外とその通りかもしれません。

それにしても、以上はヒトやそれ以外の哺乳類の睡眠のおはなしです。それ以外の動物ではどうなのか、といったところに目を向けてみると、例えば魚はどうなのか。

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結論からいうと、魚も寝るそうです。しかし、布団を引いてそこで寝るわけではなく、単に水中を漂う、あるいは水底にじっとする形で睡眠状態に入るそうです。また魚だけでなく、眠りを単に「定期的な休息」と定義すれば、ある種の植物も眠るといい、こうした脊椎動物以外の動物、例えば、節足動物にも睡眠に類似した状態があるといいます。

節足動物と言えば、ミツバチなどの昆虫類、カニなどの甲殻類、クモ類、ムカデ類などですが、彼等も睡眠をとるわけであり、このほかアメフラシなどの軟体動物などの神経システムの比較的発達した無脊椎動物も寝るそうです。

それらを睡眠と呼ぶのかどうかも怪しいようですが、独特の休息場所、休息姿勢、休息時の刺激反応性の低下、日周リズムなどを伴ったそれぞれの休息状態があり、これを睡眠と見ることもできるそうです。

それならば、人間以外のこうした動物は夢をみるのか。これについては、大脳をもつ動物だけが眠る、ということが言われているようです。夢をみるためには、外からの入力が遮断された状態で独自に視覚イメージをつくりだす脳のシステムが必要であり、大脳がこの機能を担っているからです。

また、大脳を持っている動物の中でも、レム睡眠をするものは夢を見やすいのでは、ということもいわれているようです。これは睡眠中の状態のひとつで、身体が眠っているのに、脳が活動している状態であり、体を休めながらも常に脳を活動させ、いざというときに対応しようとする本能だと考えられています。

脳は24時間活動させているとくたばってしまうので、半分覚醒状態にしているのがレム睡眠であり、眠っているその半分のところで、昼間にみた視覚情報を無意識に反復しており、これが夢といわれるものになって現れる、と考えられているようです。

一方、同じ大脳を持っている哺乳類でも、イルカは、水面に鼻(噴気孔)を出して呼吸する必要があります。そのため、脳を半分ずつ眠らせるという「半球睡眠」を行っています。

半球睡眠では、右脳を眠らせるときには左目を閉じ、左脳を眠らせるときには右目を閉じています。これで泳ぎながらでも眠ることができるわけですが、これができるためにレム睡眠をほとんど必要としないそうです。

長距離を飛行する渡り鳥も、半球睡眠しながら目的地まで飛んで行くそうで、飛んでいる最中に数秒間だけ脳全体を眠らせ、地表に墜落する前に目覚めるという芸当をするヤツもいるといいます。

こうした芸当は当然、ヒトなどの霊長類にはできません。できたらいいとは思います。半分目を閉じていれば眠れる、というのは素晴らしい技能です。努力すればできるような気もします。鳥に似た顔つきの人はもしかしたらできるのかも。

が、普通の人はできず、我々はレム睡眠をします。視覚システムがよく発達しており、サルに限って言えば、大脳皮質の約50%以上を視覚情報処理だけのために使っているとのデータもあるということです。

このため日中に見た視覚情報を、夜に行うレム睡眠の中で反復して見ている可能性が高いそうで、つまり、サルも夢を見ている、ということになるようです。

ただ、睡眠中に起きている間に得た情報を反復している、という観点からすると、イヌやネコも視覚は発達していますが、むしろ嗅覚のほうが発達しています。このため、視覚情報よりも、何かを嗅ぐ夢をたくさん見ているかもしれない、ともいわれます。寝ながらムニャムニャしているその姿は、餌の臭いを思い出しているのかもしれません。

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ペットを飼っている人達は、動物が夢をみると信じているようで、かく言うウチのテンちゃんも、私と昼寝をしているときには、なにやら寝言を言っているのを耳にします。ブチャブチャと口を動かしながら、うれしそうに見えるのはよほど何か楽しいことがあったに違いない、と思えるときがあります。

犬を飼っている人で、夜中に突然起き出して、寝ぼけたようにキャンと声を出し、そのまま寝てしまう、あるいは突然むくっと起き上がり、ふらふらと歩いてまた寝てしまう、といった様子を目撃したことのある人も多いでしょう。

似たような経験は、ペットを飼っている人達が多かれ少なかれ持っているのではないでしょうか。やはり何等かの夢をみている、としか思えません。

しかし、言葉をしゃべらない動物が確かに夢をみると証明することは、ほとんど不可能であり、どんな夢を見ていたの?と聞いても答えてはくれません。

ただ、猫や犬が夢をみることは、色々な実験で確実視されるようになっているようです。ネコの夢に関する実験では、ネコのレム睡眠を司る中枢は脳の青斑核という部位にあることがわかったそうです。

この青斑核を人為的に操作した結果、この実験ネコは、レム睡眠中にネズミをとる動作などをすることなどが確認できたそうで、このことから、ネコの夢は目覚めているときの行動のシミュレーションではないか、という仮説も立てられているそうです。

もしお宅のネコちゃんが、睡眠中においでおいでをしていたら、もしかしたらどこからかお金を持ってきてくれるシミュレーションをしているのかもしれません。おこさず、そっとその良い夢を育ててやりましょう。

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