エアライフルのはなし 2

昨日、エアライフルの話を書きましたが、メカニズムのことについてはあまり書けなかったので今日は少しそのことについて書きたいと思います。

エアライフルとはその名の通り、空気銃です。とはいえ、単に空気だけを使うものだけではなく、不燃性のガスを用いて弾丸を発射する形式のものもあり、その用途も子供向けの玩具から、射撃、狩猟に用いるものまであってバリエーションはかなり幅広いものです。

昨日書いたとおり、日本では一般に「空気銃」と呼ぶ場合、いわゆる「実銃」とみなされることから公安委員会の所持許可が必要となり、非常に厳しい審査を受けないとその所持が認められません。

しかし、欧米などの英語圏では、一般に空気銃をairgun(エアガン)と称して普通に所持している家庭も多く、弾薬を必要としないためその規制は比較的緩やかです。

空気銃が歴史上に登場したのは、15世紀のヨーロッパです。その機構は圧縮空気を使用して弾丸を発射するという単純なものですが、圧縮空気を溜めるシリンダーは高圧に耐えなければなりませんし、そのバルブには、耐圧性もさることながら高い精密機械加工技術が必要となります。

このため、初期の段階ではあまり高圧の圧搾空気を用いる事ができず、あまり威力のある空気銃を作ることができず、もっぱら屋内での射撃練習用の銃として使用されていた程度でした。

ところが年々加工技術が発達してくると、工作技術が進化した結果、次第に威力も高い物ができるようになり、狩猟などの実用目的のエアライフルも造られるようになってきました。また、火縄銃などとは違って、悪天候下でも弾丸の発射できる空気銃は次第に高く評価されるようなっていきました。

しかし、初期の空気銃は圧縮空気を溜めるため、数十回はポンプで空気を送り込んで圧縮する「ポンピング」という作業を行う必要があり、戦争などの現場ではなかなか実用的な銃として採用されるというわけにはいきませんでした。

日本で、空気銃を初めて作ったのは、鉄砲鍛冶職人の家に育った国友一貫斎(国友藤兵衛1778年~1840年)という人物で、1819年(文政2年)に、オランダから幕府に献上された玩具としての「風砲」を元に、実用レベルの威力を持つ物を完成させたのが初めだと言われます。

このオランダからもたらされた風砲を改良した銃はその後、「気砲」と日本語に訳されました。一貫斎はオランダ製の銃を解体し、各部品を詳細に研究した末、元となったオランダ製よりも射程に優れ、操作も簡単な気砲を作り出すことに成功しました。

また、一貫斎はポンプで空気を送り出した回数により、銃の重さが変化することに気づき、空気に重さがあることを発見した人物としても知られています。

空気銃の基本的な構造は、空気または不燃性のガスの圧力を用いて弾丸を発射する点においては玩具から実銃まで共通です。しかし、その圧力をどのように得るかという構造においてだいたい以下のような4つの方式が存在します。

ポンプ式

銃本体に装備されたポンプを用いて空気を貯め、一気に弾丸を発射する構造です。ポンピングは本体に装備されたレバーを用いて行います。その装着位置により、主にアンダーレバー、サイドレバーに分類され、一般にサイドレバーは競技用に、アンダーレバーは狩猟用に多いようです。

昔のものは一回では発射に必要な空気を貯めることができませんでしたが、近年のものではたった一回のストロークで蓄気を行うことができ、とくに競技用の銃は蓄積された気圧はレギュレータで一定に制御され、安定した初速を得ることができるという優れものです。

狩猟用でも一回で蓄気できるものがありますが、特にレギュレータは設けず、ポンピング回数を増減することで、使用弾丸の種類や猟場、獲物に応じた初速、威力を変更できるものなどもあります。

一般にポンプ銃は、撃発時に大きな可動部を持たないことから、反動も少なく高い命中精度を持ちます。このため、その昔はオリンピックなどで用いられる銃のほとんどはポンピング銃でした。

しかし、発射ごとにポンピングという大きな動作を要するため速射性に劣り、狩猟にはあまり向きません。また狩猟用マルチポンプ銃では、必要な威力を得るために結構な筋力を要求されるといいます。日本では、「シャープ・チバ」という山梨の小さな業者さんが狩猟用マルチポンプ銃を製作しているということですが、人気が高く愛用者が多いそうです。

スプリング式

スプリング式は、空気銃全体ではもっとも代表的かつ普及した方式であり、シリンダー内に組み込まれたピストンを圧縮したスプリングで前進させることにより、シリンダー内の空気を圧縮して弾丸を発射する構造です。

構造がシンプルで丈夫、さらに比較的安価なことから、海外では気軽な標的射撃から狩猟用まで広く普及しています。しかし、構造上反動や振動が大きく、他の方式と比べると精度の面で劣る場合が多いため、オリンピック競技のような本格的な競技などで使用されることはほぼありません。

ガス(CO2)式

空気の代わりに圧縮された炭酸ガス(CO2)を用いて弾丸を発射するものです。使い捨ての小型のボンベ(CO2カートリッジ)を銃に装填して使用するものと、親ボンベから専用のシリンダーに充填して使用するものに分けられます。主に前者は狩猟用に、後者は競技用に用いられます。

ポンピング動作やスプリング圧縮のような大きく、力を必要とする操作が不要であり、速射性に優れ、特に狩猟用では連発銃を実現しやすいというメリットを持つ反面、周囲の気温によって炭酸ガスの圧力変化が大きいことがデメリットです。

狩猟用としては猟期が寒冷な時期であることから、低い気温による圧力の低下が大きな問題とになります。競技用でも環境問題(二酸化炭素排出)への意識の高まりもあり、現在ではほぼ使われていません。

プレチャージ式(圧縮空気式)

銃に装備されたシリンダーにおよそ200~300気圧という高圧空気を充填し弾丸の発射に用いる方式です。排気バルブを短時間づつ開放することで一定量の圧縮空気を小出しに使って弾丸を発射します。あらかじめ圧縮してあるボンベを内蔵しているため、ポンピング動作なども不要となり、射手は装薬銃のように射撃に集中することができます。

ポンプ式同様、撃発時に大きな可動部を持たない構造は高い命中精度を持ちます。競技用ではレギュレータを装備し発射に使用する空気圧を一定に保つ構造が一般的であり、一度の空気充填で多くの弾数を安定した初速で撃ち出せます。ただ高精度な射撃を行う場合には充填圧の管理が重要となります。

狩猟用では競技用に比べ弾数より威力に重点が置かれることから、レギュレータは装備しないのが普通で、この点はポンプ式と同じです。空気の充填には、自転車用空気入れに似た形状のハンドポンプ、あるいはマリンダイビングなどに用いる圧縮空気が充填されたボンベを用います。

ハンドポンプは手軽ですが、高圧空気の充填には相応の労力を必要とするためあまり使われません。プリチャージには、充填に伴う補器類が必要であったり、構造的に神経質であったりという欠点は持つものの、その精度や利便性などのメリットは欠点を補って余りあるものです。

私が射撃をやっていた当時はこうしたものはあまりありませんでしたが、現在では技術が開発が相当進んだようで、現在で圧縮空気式はポンプ式とともに競技用としては主流になているようです。無論、狩猟用でも高性能のものがあり多用されています。




このようにいろいろな方式で空気を圧搾する空気銃が存在しますが、その形状としてはエアライフルとエアピストル(空気けん銃)の二つが代表的なものであり、このほか日本独自の銃種としてハンドライフルと呼ばれるものがあります。通常、競技用の口径は4.5mmで、狩猟用の口径は4.5、5.0、5.5、6.35mmなどがあります。

弾丸はたいがいは鉛で作られていますが、最近は弾道性能を高めるために何らかのコーティングがされているものもあると聞いています。

このうち、エアライフルは、主として長距離の弾道を得るための空気銃です。長い距離においても高い精度を保つため、装薬ライフル銃と同様に銃身にライフル(旋条)が切られています。

海外では無許可で所持できるケースが多いようですが、昨日述べたとおり日本では厳しい銃刀法の規制下にあり、実技面の教習等が免除となるものの、他の手続きは装薬銃や散弾銃)とほぼ同じであり、その所持のためには相当厳しい審査と面倒な手続きが必要です。

一方、エアピストルも基本的にはエアライフルと同じ構造ですが、銃身が短いのが最大の特徴です。日本では口径4.5mmの競技用で、日本ライフル射撃協会が認めた銃のみの使用が許されています。これを所持する審査はエアライフルよりも相当厳しく、そのためにはまず日本ライフル射撃協会の推薦が要求されます。

日本ライフル射撃協会に所属することが求められ、エアライフルもしくはハンドライフルによる一定の実績と段級を取得することが必要になります。しかも許可される総枠が500名と定められていて、許可の更新は行われず2年ごとに新規に推薦を得て所持許可申請をする必要があるという厳しい基準があります。

この際、所持年数に応じた一定の成績の向上が要求され、その条件を満たしていない場合推薦はなされず、したがって所持許可も下りません。このためこの500名の枠に入る人の新陳代謝は相当激しく、やはり若い人が多いようです。

これだけ厳しい規制が張られているのは、空気銃といえども「けん銃」であるためです。その気になれば上着のポケットにも入ってしまうほどの大きさのため、よからぬことを考える輩が手にすれば大変なことになる、というのが公安の言い分なのでしょう。

わからない気もしないでもありませんが、何かと規制緩和が進んでいる世の中ですから、もう少しなんとかならんのかな、と思います。たとえば、銃は警察の目の届くところに保管しておき、メンテナンスや練習の際にはその都度取に行くというような方法もあろうかと思いますが……。

そもそも公安は射撃を「スポーツ」と考えていないようので仕方がないといえば仕方がないのですが。

ところで、日本では、もうひとつ「ハンドライフル」なるへんな空気銃があります。これは、けん銃の所持が難しい日本独自の銃種で、なんのことはない、基本的にはエアピストルと同じです。ただ、持ち運びがピストルのように簡単にできないように、エアライフルと同じような長さにするため、グリップ部にライフル様の簡易なストックを装着してあります。

また、銃身にはスリーブをかぶせて延長しており、これにより法律上はエアライフルと同じ扱いとなり、所持が容易となります。その射撃の仕方はけん銃と同じであり、片手で持って撃ちます。エアピストルを自由に持つことができないため、競技人口が増えないということを批判する向きもあり、その非難をかわすための措置のようです。

無論、エアピストルを持てる「500人」になるための練習用の銃という意味合いもあるのですが、法律を変えずにピストル本体のほうの構造に手を加えて無理やり自分たちの都合にあわさせたようなかんじがしてなりません。世界的にみても稀有な成り立ちの銃です。外国の人が見たらどう思うでしょうか。

以上、昨日まで描けなかったエアライフルの構造について述べてきましたが、最後に近年の日本の標的射撃競技の現状について少し書いておきましょう。

標的射撃競技には、ISSF(世界射撃選手権)のルールに準拠した、日本ライフル射撃協会の主管する静的射撃競技と日本クレー射撃協会ランニングターゲット部会の主管するランニングターゲット(動的射撃)競技のふたつがあります。

エアライフルにょる静的射撃競技は、10mという射距離で実施され、立射、伏射、膝射(しっしゃ)の三つの撃ち方それぞれの合計点で他者と競います。こ三つの撃ちかたのうち、最もハードで命中率が悪いのは立射です。このため、立射だけでその得点を争う競技もあります。

現在のオリンピック競技などで採用されているエアライフル競技もこの10mという射距離だけです。これ以上の射距離の競技はありません。

2000年代前半、JAFTA(日本フィールドターゲット射撃協会)等が中心となり、主として50m射場で狩猟用エアライフルを用いた標的射撃が注目を集めたそうです。しかし、射場におけるマナーの問題や射場に関連した法令の問題等でなくなってしまったようで、この背景にはやはり公安の規制がありました。

射場の法令問題とは、10mを超える射距離の空気銃射場は、その全長を構造物で覆わなければならない(覆道式)と内閣府令で規定されていることです。

薬装の小口径ライフル(22口径)では、50mの射距離で競技が行われることが多く、この薬装用のライフル競技場を使って空気銃競技の実施が可能と思われたのですが、この薬装用のライフル射撃場を調べたところ、その大部分は上記の内閣府令に抵触することが判明したため、多くの射場では次々と空気銃の使用が不可となりました。

一部に覆道式で空気銃の使用が可能な50m射場も存在するものの、多くの地域では事実上10m射場しか利用できないのが現状です。

前述のISSF(世界射撃選手権)で行われるエアライフル競技は10m競技だけであり、標的射撃しかやらない人にとっては、10mの射撃場で十分なのですが、狩猟を目的としてエアライフルを所持している人にとってみれば、現代の空気銃の性能や平均的な射距離を考えれば、10mの射距離というのはあまり現実的なものではありません。

また10m射場の多くはその設備を含めて競技用空気銃の使用を前提にしているため、標的交換機等の射場設備が破損する恐れもあることから、狩猟用空気銃の使用を禁じたり制限しているところも少なくないといいます。

狩猟用といえども、調整や練習に射場での射撃は欠かせないものであり、空気式の狩猟用射撃銃はランニングコストも安いことから、50m用の狩猟用エアライフル射撃場を復活ささせてほしいという声は根強いようです。

私自身は狩猟射撃はやったことはありませんが、昨今全国でイノシシやシカなどの被害が相次ぐなか、これらを駆逐するため猟友会の方々の出番は増える一方のようです。シーズンオフの技量維持のための練習は、猟期中の安全確保という面からも欠かせないものであり、射距離の長い狩猟用空気銃用の射場の確保は大変重要なことであると私は思います。

しかし、50m用のエアライフル射撃場が無くなってしまった理由としては、このほかにも射場におけるマナー問題があるといいます。

マナーの問題というのは、こうした小口径ライフル射場における競技を目的とする射手と狩猟を目的とする空気銃射手の意識の違いから生じたものです。

競技射手にとっては射場は真剣勝負の場なであり、練習といえども射手はかなりストイックな意識で射座に入っています。しかし狩猟系の射手にとっては、主戦場はあくまで猟場であり、射撃場は練習や調整が主目的の比較的気軽な場であります。

複数人が集まれば談話もしたくなり、片や射撃に集中している横で、話し声や笑い声が聞こえてくれば、やはり反感を覚えるものです。こうした軋轢が意識的な対立に発展することも多かったそうで、こうしたことも近年の長距離射場の閉鎖に拍車をかけたようです。

そういえばその昔、伊勢原の山の奥にあった射撃場に行っていたころ、猟友会の方たちも練習をやっておられ、我々の練習をみて話しかけてこられる方もいました。中にはタバコを吸っておられる方もいて、いやだなーと思いながら練習を続けていたことなどを思い出します。

練習をいったん離れ、談笑する中などではきさくで楽しいおじさんたちでしたが、やはり別々の目的で射撃をする人たちは別の人種のように見えたことは確かです。

これから標的射撃を始めようという人にとっては、あまり関係のない話かもしれませんが、害獣の駆除という任務がある彼らにとっての射場の確保も大事な話であり、その両方が満足できるような射撃場の整備が今後は必要になってくるように思います。

日本の射撃人口は公安の規制などもあって諸外国に比べれば極端に少ないようですが、今後も射撃をやる人が急増するというようなこともないのでしょう。いつまでもマイナーなスポーツのままなのかもしれませんが、一度やってみるとその爽快さや素晴らしさがわかると思います。

ちなみに近年は青少年の精神力増強のために、ビームライフル射撃を学内のクラブ活動として導入する学校も増えているそうです。免許がいらないことから民間の会社組織で運営されているビーム射撃場もあるようです。

使われている銃も、将来エアライフルへの転向に備えて本物そっくりのモノもあるようですから、こうしたところへ行けば少しはその味わいを感じとることができるでしょう。

また、厳しい規制があるとはいえ、健全な生活を送っている方であれば免許の取得は不可能ではありません。昨日も書きましたが、こうした難しい免許をとることができるということは、精神的にも人格的にも問題がない人物であると証明してもらったようなものです。

公安の免許をとり、あなたもぜひスポーツ射撃にチャレンジしてみてください。