小室山 ~伊東市

 画面中央に見えるのが手石岩

ここ二~三日は陽射しにこそ恵まれませんでしたが、気温は低く、比較的快適に過ごせました。九州ではまだ大雨が続いているようですが、今年の梅雨の雨の量は西高東低だったようですね。豪雨で被害に遭われた方に、お見舞いを申し上げたいと思います。

今日は一転して上天気になり、窓からは富士山もよく見えます。より一層雪が少なくなったようですが、富士山の頂上の気温ってどのくらいなのでしょうか。気象庁のデータをみてみると、昨日の最高気温が8.1度。最低気温が2.3度だそうで、やはり涼しい、というより寒いくらいですね。

いつか、その頂上を極めたいと思うのですが、なかなか踏ん切りがつかず、延ばし延ばしになっています。人ごみがきらいなので、上での宿泊はなんとか避けたいと思っていますが、富士山から見るご来光も見てみたいもの。そのうち何かきっかけがあれば、山小屋利用で登山してみようかな。いつになるかわかりませんが。

登山といえば、昨日、プチ登山をしてきました。伊東に用事ができたので、そのついでに、小室山という「火山」に上ってきたのです。標高300mちょっとの小高い山で、その南側にある500m超の火山、大室山と合わせ、「伊豆東部火山群」という火山グループの一員です。山の中腹まではクルマで行くことができ、比較的大きな駐車場があります。ここからは、遊歩道を通って徒歩で頂上まで行きますが、観光リフトもあって、お年寄りでも上ることができます。

観光リフトも少し興味はあったのですが、高所恐怖症の私としては、あえて危ない橋を渡ることはせず、ここは地道に歩いて上ることに。小室山は円錐状のきれいな山で、それを時計まわりと反時計回りに巻くように遊歩道が整備されていて、サンダルでも登れそうなほど楽ちんです。時計まわりで登ることに決め、歩きはじめましたが、少しずつ高度を上げていくにつれ、左手に青い海原が見えてきて、気持ちのよいこと。

この日は雨こそは降っていませんでしたが、曇天で見通しはあまりききません。晴れていれば遠くに伊豆諸島や湘南海岸なども見えるのでしょうが、遊歩道の木立の合間から見えるのは、少し波立った海ばかりと、二から三隻の船のみ。

20分ほどで頂上につきましたが、やはりここからの景色も遠くは見えません。すぐ近くにあるはずの大室山も雲に隠れているらしく、確認できませんでした。山の東側のすぐ真下には、ゴルフ場がふたつと、その先には青い海原が広がっています。南側に目を向けると、緑色の海岸線が見えますが、こちらの眺めはいまひとつ。が、晴れた日にはきっと伊豆高原方面の景色が広がるのでしょう。

西側から西北には富士山が見えたはずなのですが、これも雲の中。唯一、良い眺めだと思えたのが、伊東港とその北側に連なる海岸線。その沖合に、小さな島のようなものがあるのが、「手石岩」との説明が看板にありました。よくみると、島の周りに波があたって白いしぶきがあがっているのも見えます。今度、近くへ行ってじっくり観察してみようかと思います。

この岩、うちに帰ってから調べると、なんと、1989年に海底火山の噴火でできた海底火山のすぐ近くにある島のようです。1989年6月に、伊東市沖では頻繁に地震が起こりました。7月9日にはM5.5の比較的大きな地震が観測され、この頃には、伊東市周辺の井戸の水位や温泉の湧出量、地表面の変位が観測されるようになります。

やがて7月13日18時33分に海底噴火が噴火。そしてこの噴火、翌8月の末まで活発な活動を続けます。その結果、水面下81mの海底で火口の直径200mの火山が形成されていることが確認されました。近くにある手石岩にちなんでか、「手石海丘」とその後名づけられましたが、今はその活動は休止しているようです。

この噴火、伊豆半島においては、約二千七百年ぶりだったそうで、火山学的には大事件だったそうです。幸いなことに、火山噴火による被害はとくになく、噴火の前の7月9日に発生した地震で、伊東市の宇佐美地区を中心に、家具の下敷きなどで21人が軽傷を負っただけですみました。しかし、家屋の損壊や屋根瓦の落下、がけ崩れや道路の損壊などの災害も見られたそうです。

歴史に残る噴火記録や地質学的に調査された噴火史から判断すると、この手石海丘も大室山・小室山と同じく、「伊豆東部火山群」に属するのだとか。

この、伊豆東部火山群に属する火山は、そのほとんどが単成(たんせい)火山という種類の火山なのだそうで、単成火山は、いったん噴火して小型の火口ができたあと、二度と同じところからは噴火しない性質をもつのだとか。これに対し、同じ火口から何度も噴火を繰りかえして、その火口の周りに溶岩や火山灰を積もらせ、さらに大きな火山体を成長させる火山を、複成(ふくせい)火山と呼ぶそうです。

その代表選手が富士山や、箱根山、伊豆大島だということですが、なるほど大きな山ばかりです。単成火山は、伊豆東部火山群でみられるように、ある地域に群れをなして存在することが多いということで、こうした単成火山の群れの中にある、ひとつひとつの火山は、一度噴火した後に死んでしまいます。しかし、単成火山群全体として見た場合には、次々と別の場所で噴火を起こし、新しい単成火山をつくることを繰りかえすのだとか。

ということは、手石海丘と同じく、また別のところでこれからも小さな火山が噴火する可能性があるということ。なかなか油断がなりません。

日本にある火山のほとんどは複成火山なのだそうで、単成火山群があるのは、伊豆半島と中国・近畿地方の日本海側と男鹿半島ぐらいだそうで、全国的にみても珍しんだそうです。このうちの、伊豆は、そのむかし、13も複成火山があり、それが今の半島の骨格を作っています。そして複成火山お活動が終わり、今のように単成火山ばかりが起こるようになったのが、15万年前のこと。アフリカでホモ・サピエンスが誕生したころに相当しますから、我々にとっては途方もない昔のことです。

このように、同じ地域に多数の複成火山ができ、そのあとに単成火山群ができて両方が共存している例は、とくにまれなのだそうで、伊豆は、大きな学術的価値のあるものを持っているのだとか。以前にも書きましたが、伊豆ジオパーク構想などのお話が持ち上がっているのもわかるような気がします。

昨日は、小室山しか登れませんでしたが、今度は大室山やその他の単成火山にも登ってみたいもの。全部で15かそれくらいあるようです。そうした山に登りつつ、太古の伊豆を想像してみるのも面白いかも。山の頂からあちこちに噴煙が上がる伊豆半島の様子はさぞかし壮大でしょう。

そしてそのうち富士山にも。今年の夏実現できるかどかはわかりませんが。