人は、たとえ、地の底に立たされても、這い上がる力を持っている

「人は、たとえ、地の底に立たされても、這い上がる力を持っている。必ず希望を見つけられる。」

これは、がんの患者を最期の瞬間まで支える看護のスペシャリスト、田村恵子さん(50)がおっしゃったことばだそうです。日本に100人あまりしかいない、がん看護専門看護師のお一人です。

がん看護専門看護師とは、専門的で高度な知識や技術をもって、がん患者が抱える多くの問題を解決するお仕事だそうです。田村さんは、大阪市の淀川キリスト教病院ホスピスで、年間300人を越える末期がんの患者さんと向き合っておられ、がんが進行し、迫り来る最期を前に、患者さん達が抱えている死への恐怖や悔しさなど、色々な精神的苦痛をひとつひとつ取り除き、最期まで患者が人生を積極的に生きられるように支えていらっしゃいます。

この言葉をどういう状況でおっしゃったのかわかりませんが、死に瀕した癌患者さん達のいる病院での最前線でのことばであることには違いありません。

最前線といえば、未曾有の大災害に見舞われた東日本大震災の被災地においても、尊い命が失われ、残された人達の多くが家を失い、愛する人々も失って、人生への望みを断ち切られたような気持ちでおられるに違いありません。

私も人ごとではなく、かつて最愛の妻を亡くしたときは、この世の終わりのような気持ちで何年も過ごしました。今回の地震津波災害のように、ある日突然最愛の人を失ってしまうという悲劇に比べれば、まだ、隣人の死というものに対して備えることができただけ、幸いだったかもしれません。それでも、やはり「這い上がる」のには、その後長い時間がかかりました。

この言葉は、家内が亡くなった当時に聞いたのではなく、先日のNHKのテレビ放送で耳にしたものですが、その当時にこのことばを聞いたなら、どんなに勇気づけられただろうかと思います。ですから、今、被災地でで絶望の底に追いやられている人にとっては、最も力強い勇気を与えてくれることばのひとつに違いないと思います。

日はまた昇る!必ず希望は見つけられる! 被災地の方々にもぜひこのことばが届けばいいな、と思います。(む)