伊豆高原にて ~伊東市

今年の修善寺での桜のさかりは、4月を迎える前に足早に過ぎ去ったようで、昨日通りがかったふもとの狩野川沿いのサクラも既に散り始めていました。

今年は、伊豆での生活もようやく落ち着いてきたこともあり、満開の桜を見ようと、先日も松崎まで足を延ばして那賀川沿いのサクラ並木を見てきましたが、一昨日も伊東のさくらの里と伊豆高原に行ってきました。

が、結論からいうと、さくらの里の桜は少々期待はずれでした。

ここの桜の売りは、たくさんの品種があることであり、広い敷地内に所狭しと色々な種類の桜の木が植えてあるのですが、満開のものもあれば、既に終わったものもあり、そうではなく、まだまだ蕾のままのものなど、さまざまです。

たくさんの種類を植えることによって、3月から5月までの長期間にわたって桜が咲き続けるようにしたかった、ということなのでしょうが、全体としてまとまりがなく、一度にワッと咲いた桜を期待していた私にとっては何やら物足りないかんじ……

また、植えられている種類も、花よりも葉っぱが先に出るタイプの大島桜が多く、このため花だけが優先して咲くソメイヨシノのような華やかさもあまりありません。

桜と桜の間にウメや花桃も植えてあって、色鮮やかなので、むしろ、こちらのほうが目立ってしまって、せっかくの桜の花が引き立たないといった面もあり、全体を通してみて、うーん、とちょっと残念なかんじがしました。

とはいえ、時期を先か前かにずらせば、もしかしたらもっと多くの花が見れる時期があるのかもしれません。所詮はこれだけ違う種類があれば、公園全体で一斉開花を望むのはお門違いといったところ。

ただ、会場内の桜の多くはまだ蕾のままのものが多かったので、これから4月に入ったらもっと華やかになるのかも。幸い、桜の里は修善寺からも近いので、来週にでもまた来てみようかと思います。

このようにさくらの里はまだまだ花の盛りではないといったかんじでしたが、それでも会場には平日にもかかわらず大勢の人が花見に訪れており、写真を撮ったりお弁当を食べたりで、会場にはゆったりとした空気が流れているようでした。

それにしても上野公園のように桜の下にシートを拡げて宴会という光景が見られないのは、そういう飲食が禁止されているためでしょうか、それともここ静岡では花見しながら飲み食いするという風習があまり一般化していないのでしょうか、よくわかりません。

が、先日の那賀川でもそういう光景は見られなかったことから、静岡では案外と桜の下でおおっぴらに宴会をするという習慣がないのかもしれません。

そういえば、先日、「ローカル・ルール」の項を書くときに色々調べていたら、静岡県では、主として中部地域などで新聞の購読や他紙への契約変更を促す戸別訪問によるセールス活動がないということが書かれた記事をみつけました。

地域の秩序や商慣習などを守るための、一種の「紳士協定」のひとつだと思われますが、この花見の習慣についても、こうした自然や景観を守るための、ルールみたいなものがもしかしたらあるのかな、と思ったりもします。

が、真偽のほどはよくわからないので、今度同じ別荘地内の人に聞いてみて、本当にそういう事実があるのならまたご報告しましょう。

さて、このようにさくらの里は少々不発気味だったので、それでは、ということで、次の目的地の伊豆高原に向かいました。さくらの里は大室山の北側に位置するのですが、伊豆高原はこの南から東にかけての一体に広がる別荘地で、さくらの里からはクルマで15分ほどで行くことができます。

もともとは、「八幡野(やわたの)」という地区を中心として伊豆急行が開発した別荘地であり、城ヶ崎海岸に代表されるきれいな海と、その背後に広がる美しい天城山をはじめとする山々などの自然を売りにする形で土地が分譲されました。

新幹線で熱海まで来ればそこからはもう伊豆急一本でここまで来れるということで、都心からのアクセスが比較的容易であるうえ、近年では東京からJRの特急踊り子号が伊豆急行線に直接乗り入れており、下車駅の伊豆高原駅までは乗り換えなしに来ることができます。

自動車でも、熱海から国道135号か伊豆スカイライン経由で一時間ほどのアクセスであり、この伊豆スカイラインからの眺めも素晴らしいこともあり、ここを訪れる大部分の人が車利用のようです。

ただし、連休の時やシーズンの週末などはかなり渋滞がひどいため、伊豆高原まで電車で移動して現地でレンタカーを借りて観光するという人も多いと聞いています。

それにしても、いつもこの地を訪れて驚くのは、この伊豆半島の東側の道路の複雑さです。一応、東側の海岸線沿いに南北に国道が走ってはいるのですが、これを一度はずれて脇道に入るやいなや、道路はまるで網の目状になり、しかも、アップダウンの激しい坂道ばかりの道が多く、しかもそれぞれの道路の狭いこと狭いこと。

ナビゲーションがあれば道に迷うということはあまりないのでしょうが、そのナビ様もまたこれだけ複雑な道路では計算がしにくいらしく、一本道を間違えて再計算するたびに、それまで示していたルートとは全く別のルートを指示するなど、混乱しっぱなし。

以前、同じような経験を横浜でしたことがあります。横浜もその名のとおり、浜沿いに造られた町であるため、海岸から少し山側に入ったとたん、急斜面で複雑な地形が待っており、しばしばナビが誤作動をおこします。

しかし、伊豆高原の道路の複雑さはもしかしたらそれ以上かもしれません。地図を持たないでこの地域に入った人は、一生ここから出て来れないのではなかろうかと思えるほどです。

この複雑な道路網がなぜできたのか。伊豆急がその開発のときに手を抜いたのでしょうか。

いや違います。この伊豆高原は、伊豆東部火山群の活動によって形成された丘陵地帯だからです。町の基盤はすべて大室山からの溶岩流でできており、行ってみればわかると思いますが、町のいたるところに大室山から噴出された溶岩の塊がゴロゴロしています。

従って、この溶岩でできた大地を切り開くにはそれなりに労力と手間がかかるため、できるだけ溶岩の少ないところに別荘地と道路を切り開いていたらこうなったというわけ。

大室山の麓から相模灘に面する海岸線までを含めてこの地帯一帯を「伊豆高原」と呼んではいますが、実は高原地帯でもなんでもなく、本当は「溶岩地帯」なわけです。その証拠に、「高原」と呼ばれてはいるものの、日本中で「高原」と呼ばれている場所の中ではここの標高が最も標高が低いと言われています。

それだけに、「高原」というと涼しい場所というイメージがありますが、夏場もけっしていつも涼しいというわけにはいきません。ただし、伊豆高原でも大室山にかなり近い北側方面は結構涼しいらしく、また西南側に続く天城山一帯の高地も夏場でもかなり気温が低いようです。

天城山まで行ってしまうとここはもう伊豆高原ではなく、「天城高原別荘地」になってしまいますが、ここの気温は夏場でも麓より3~4度も涼しく、ただそれだけに冬場の気温も低くて、一冬に何度も雪に見舞われます。

もっとも、一番標高の低いところに造られた伊豆急の伊豆高原駅あたりになると、もうこのあたりの気候は熱海あたりとあまり変わらないみたいです。ここからはもう、その東側に広がる城ヶ崎海岸も近く、山の気候というよりは海の気候です。

この城ヶ崎海岸もまた、大室山の噴火によって流れ出した溶岩が海に流れ込み、急激に冷やされてできた海岸であり、非常に複雑な地形をしています。城ヶ崎自然研究路および、城ヶ崎ピクニカルコースが整備され、断崖絶壁の海岸の上を歩くことができ、以前このブログでもその様子をご紹介しました。

一方、伊豆高原駅から北西方向には、この地域のメインストリートがあり、これが伊豆高原の「桜並木」として知られる通りであり、伊豆高原駅から約3kmにわたって続いています。

実は私はここに来るのは、3度目くらいです。そのうち一度はこの桜の季節にやってきており、ここからすぐ近くのペンションに滞在しました。そのころはまだ先妻も元気で、幼稚園へ入ったばかりの息子を連れ、桜並木の下を三人で仲良く手をつないで歩いたことが懐かしく思い出されます。

もうかれこれ15年ほど前のことですから、ここの桜もそのときから同じ年齢を重ねているはずです。

そのためなのかどうかはよくわからないのですが、以前はここの桜はもっと勢いがあったなと感じたと思うのですが、この日の伊豆高原の並木は少し華やかさが足りないなと思いました。

この日は花曇りの天気であり、そのせいなのかなとも思ったのですが、通りに並んだ桜の木一本一本を見ていくと、やはりかなりの「お年」を召しているかんじがし、この点、先日見たばかりの那賀川の桜の木と比べると、明らかに老齢化しています。

そこで伊豆高原の別荘地を伊豆急が開発した年を調べてみたところ、分譲地としての販売が開始されたのが昭和38年だそうです。ということは、このころに樹齢10年ほどの若木を並木として植えたとしても、それから50年経っているわけですから、多くの木が樹齢60年以上は経っているということになります。

「ソメイヨシノ60年寿命説」というのがあるそうで、それから考えるとそろそろこの並木も……ということになるのですが、果たしてどうなのでしょうか。

もっとも、すべての桜が60年経ったらバタバタと倒れるというものでもないと思いますし、東京都内の砧公園のソメイヨシノは1935年に植えられすでに80年近くが経過していますがいまだ健在です。

近年ではリンゴの剪定技術をソメイヨシノの剪定管理に応用することで樹勢回復できる技術も進んでいるということなので、こういう新技術を駆使すればまだまだ元気なままでこの景観を保っていけるかもしれません。

老齢化しているとはいえ、大室山に向かって北側に向かう道路の両脇に延々と連なるサクラ並木はいまだ健在です。評判通りの「桜のトンネル」を形成していて、このトンネルを目当てに来た多くの観光客がシャッターをパシリパシリと切っていました。

並木の一番北側のはずれに、できたばかりと思われる喫茶店があり、タエさんとここでお茶をして休憩することに。こちらの喫茶店、「ドックラン」を併設しているということで、犬連れのお客さんでも入れるという趣向。

このときも3~4組のお客さんがワンコ連れで来られていましたが、飼い主も犬たちも楽しそうで、それを見ながらお茶をしている我々も穏やかな気分に浸ることができました。

ちなみに、この伊豆高原の桜並木を見るためにクルマで来られる方は、この山の手のほうにはほとんど駐車場がないことにご注意を、です。

この地域全体がそもそもが別荘地なので、大きな駐車場は設けてありません。従って、クルマで来た場合には、ふもとの伊豆高原駅のすぐそばに大きな駐車場が2~3カ所あるのでここに止めてから歩いて行くことになります。かなり大きな駐車場なので、平日は満杯になることはまずないでしょうが、休日にはそれでもかなり混雑するかも。

ちなみに、伊豆急直営の駐車場は15分無料で、終日利用でも500円というなかなか良心的な値段でした。ただし、この駐車場から並木へと続く「山道」への歩行は結構な重労働です。「登山」といったほうがよいかもしれません。

とはいいながら、それなりの観光客を集めているのは、この桜並木以外にも私設の小規模な美術館や博物館が散在しており、それなりの楽しみがあるからです。「ねこの博物館」や、最近できた「伊豆高原ドッグフォレスト」などといった施設もあって、最近のペットブームにあやかった施設も多いようで、ペット同伴で宿泊できるペンションもあるようです。

伊豆高原では、この別荘地の風土にあこがれて移住してきたアーティストさんたちも多く、陶芸や絵画、木工や編み物といった様々な工芸文化が育まれています。

また、もともとは素人だったものが、こうした人達に教えを受け、そのうち上達してプロ並みの技術を身につける人も多いようで、こうして培った技術を使ってできた作品をさまざまな形で販売もしていたりします。

この桜並木の季節にも、「伊豆高原桜まつり」と称して、その実は「クラフトフェスティバル」である催し物が開催されており、伊豆高原駅前の広場とともに、桜並木の途上の各所にもそうした芸術家さんたちのお店が開かれています。

我々が訪れたのは平日でもあり、また夕方近かったため、あまり多くの出店はオープンしていませんでしたが、この週末にはさぞかし賑やかだったことでしょう。今年は、3月23日~4月5日までの二週間続くということです。地元の方だけなのかと思ったら、全国からこういう作家さんを招致しているみたいで、その総数は100軒にも及ぶとか。

春だけでなく、秋にも同様のフェスタを開いているらしく、こちらは10月に同様に駅前広場などでクラフト作家さんの作品の展示販売があるようです。

伊豆高原ではこのほかにも1993年から毎年、「伊豆高原アートフェスティバル」という催しがあるそうです。毎年5月1日から31日までの一か月間、広い別荘地のあちこちにある、自宅のリビングや客間、別荘の部屋、喫茶店やレストラン、ショップ、ペンションなどがギャラリーになります。

参加者は前述のような本職のアーティストさんたちだけでなく、素人さんも参加できる自由な作品展示会だそうで、これが町ぐるみで行われるというところがなかなか面白い試みだと思います。毎年この時期になると、それぞれの別荘敷地内で、作品を作る人と訪れる人たちとのにぎやかな会話がはずむそうで、これもまた楽しそうです。

去年で20回目を迎えたといいますから、結構長いこと続いているイベントのようです。去年、新聞で読んで私もこのことを知ってはいたのですが、まだまだ引越し騒動の余韻の冷めやらぬころのことで、伊豆高原まで出かける余裕はありませんでした。が、今年はぜひ足を運んでみたいと思っています。

さて、今日もまたお花見……といきたいところですが、ここのところずーっと、花曇りの天気ばかりで、今日もまた曇り時々雨といった天気のようで、ぱっとしません。これから桜はどんどん北上していくでしょうから、この先見ごろになるのは、おそらく御殿場とか山中湖でしょう。来週、御殿場あたりにでも行ってみることにしましょう。

昨年は引っ越してきてすぐのことでもあり、桜見物なんてする余裕すらありませんでしたが、今年はその恨み?を晴らすべく、もっともっと桜を見たいと思います。桜が終われば次はシャクナゲ、シャクナゲが終わるころにはそろそろバラが咲きだし、その先にはアジサイも待っています。

今日で3月も終わり。暦的にはひとつの節目ですが、我々二人のお花見見物にはまだまだ節目は訪れそうもありません。次はいったいどんなきれいな景色がみれるでしょうか…… 楽しみです。