広島・山口へのショートトリップを終えて、東京へ帰って来た二人。また新たに家探しを始めるのか~と少々うんざり感がありましたが、気を取り直して、Sさんにアドバイスされた「南西方向」にある物件についてのリサーチを始めました。
伊那の家については、管理する不動産屋さんにお詫びを申し上げて、購入を辞退することに。不動産とは「水もの」と言われるように、こうしたキャンセルは日常のようなことなのでしょう。社長さんはいやな顔ひとつせずに、了承してくださいました。
さて、多摩地方から南西方向にある土地といえば、伊豆や箱根観光地が真っ先に思い浮かびますが、そのほかにも、御殿場や沼津、三島といった、どちらかといえば町中の土地もあります。それぞれの土地にそれなりのよさはあるでしょうが、逆にマイナスの要素もあるはず。これらの中からどこを選ぶか、については自分達の希望する条件をまず整理することから始めました。そして、まとまった条件は以下のようなもの。
・夏でも快適に暮らせるよう、ある程度涼しいところ。
・東京都内には、少なくとも2~3時間で出られること。
・バス、電車などの交通機関が近くにあって、利用できるところ。
・建物は、できれば4LDK以上と大きいこと。
・湿気が少ないこと。
・できるだけ眺めが良いこと。できれば富士山でも見えるといいな・・・
「4LDK以上」は、二人で住むにしてはちょっと大きすぎるのでは、とお考えの方もいるでしょうが、我々二人の共通点として、書籍や書類を大量に所持していることがあり、これらの収納スペースを確保することと、来年以降、大学生となる息子君が返って来た時の部屋の確保、というようなことを考えると、やはり必要だな、という見解でした。
そして、ネットを駆使していろんな物件漁りをはじめたところ、以下のような候補地が浮かびあがってきました。
・芦ノ湖高原(神奈川県と静岡県の境界付近)
・十里木高原(富士山南東部、静岡県)
・南箱根(函南町と伊豆の国市境界付近、静岡県)
・伊豆高原(伊豆東部、伊東市の南、静岡県)
・天城高原(伊豆中部、静岡県)
これらの場所の周辺には、熱海や伊東、湯河原といった有名な温泉町もありますが、標高が低く、夏は暑そう、ということで除外しました。また、箱根は極めて物件数が少なく、というよりも高級別荘地が多く、我々の手の届く範囲ではなさそうなので、これも除外。三島や沼津、小山町、函南町などの市街、もしくは市街に近い土地は、標高もあまり高くなく、わりと住宅が建てこんでいて、せっかく移住するのに、また住宅地じゃあなーということでこれも除外。そのほか、下田や熱川などの伊豆南部も考えましたが、高原地帯が少なく、なにせ東京から遠い・・・下田からだと、東京まで4~5時間もかかるのではないでしょうか。
候補に残った土地のうち、芦ノ湖高原や十里高原は、富士山周辺に作られたリゾート地であり、人気も高く、ネットで調べるとなかなか魅力的の物件もありました。しかし、他の地域に比べると実際に購入できる物件数が少なく、なかなか決定打が出ません。また、芦ノ湖高原はかなり標高が高く、涼しいことは涼しいけれど、駿河湾から吹き上げてくる風が心配でしたし、十里木高原も良いところのようでしたが、アクセスが悪く、雨が多く、一年を通して湿気が多い、という情報もあり、やめることに。
雨の多さや湿気については家探しにおいて、やはり気になるところです。今回の物件探しにあたっても、気になったので色々調べてみましたが、富士山南部から南西部にかけての地域は、富士山ぶつかって上昇する気流の関係から雨が多いそうで、御殿場や裾野市、十里木高原での雨量は静岡県内でもかなりの量にのぼるようです。芦ノ湖高原のある三島は、雨量はそれほど多くないようですが、標高が1000m近い山の上になるため、やはり風の問題があり、夏は涼しいかもしれないが、冬は逆に寒さが気になるところ。
それでもあきらめずに、これら富士山に近い土地柄で売りに出ている物件を色々あたってみましたが、数もそれほど多くなく、気になる物件もなかなか出てこないので、ついにはこの地域については断念することにしました。
そして、残る伊豆の三地域です。このうち伊豆北部と伊豆高原は、不動産物件が多い地域です。とくに伊豆北部の函南町と伊豆の国市付近の、いわゆる「南箱根」と呼ばれる地域には、バブルの頃に建てられた別荘がゴマンとあり、ネットで不動産情報を探すと、これらの別荘地情報であふれていました。
富士山や駿河湾が一望できる景色の良い場所に建てられた別荘地も多く、建てた当時はかなりのお金がかかっただろうな~という物件も少なくありません。伊豆箱根鉄道や東海道線などの各駅に近いために交通の便もよく、価格も手ごろのものも多いので、これらの別荘地の中から選ぼう!と思い始めたころ・・・
・・・とある情報が目に入りました。
・・・その情報とは、これらの別荘地のいくつかは、管理会社がバブル崩壊と同時に倒産し、敷地内の道路や水道などのインフラの管理が行き届かなくなっている、というものでした。管理会社が倒産したため、道路が傷んでいたり、路肩が崩れていたりといった箇所の修復がままならず、また側溝に貯まった落葉の処理が進まない、水道管や下水道管の老朽化の問題・・・など色々な問題が起こっているというのです。
最も深刻だなと思ったのは水の問題。と、ある別荘地では、別荘地内近くの井戸水をくみ上げて管理会社が供給していますが、その水の値段が周辺の市町村で供給されている公共水道よりもはるかに高い価格になっている、というものでした。もともとの管理会社が倒産してしまった、ある別荘地では、修復別荘地内に住む住民が結集して新たに組合を作り、ここが主体となって別荘地内の道路や上下水道の管理を始めました。しかし、別荘地の管理に関してはやはり素人集団。この組合の運営をめぐって住民とのトラブルが発生し、裁判沙汰にまで発展しているとか。
バブル崩壊から20年以上経過していますから、地中に埋まっている水道管や下水道管の老朽化もこれからどんどん進んでいくと思われます。南箱根の別荘地すべての管理会社が倒産しているわけではありませんが、別荘地を造った大手の不動産会社や建設会社の中には、別荘地を維持していくことがかなりの負担になっているところも多いようです。道路や上下水道の管理を周辺の自治体に委譲したがっているところもある、というような情報も出て来ました。
私が調べたところ、とくに問題になっている別荘地では(ここに住んでいらっしゃる方へも配慮して、どこの別荘地かはここでは明かしませんが・・・)、多くの別荘が「ダンピング」状態で売りに出ているものも少なくなく、このため、不動産価格が著しく下落しているようです。何も知らないで買った人は、入居してみて水道料金の高さや、道路などの維持管理の悪さに気付くのです。上下水道の将来的なメンテナンスに関しても不安材料となります。
風光明美な土地で温泉も出る、といった魅力的な場所でも、そこを維持していくためのインフラが整っていなければ、安心して住むことはできません。
そういうわけで、伊豆北部のこれらの別荘地の物件は、魅力的なものも少なくなかったのですが、それを管理する管理会社や管理組合のことも調べて見て、これはちょっと、と思われるものは除外することにしました。
そうすると、あれほど魅力的な物件が多かったこの地域の物件で、これを見てみよう、というものはほとんどなくなってしまいました。ここに至るまでに、伊豆や静岡県内の少なくとも30社以上の情報をみてきましたが、不動産会社の中には、こうした問題のある別荘地の物件ばかりを紹介しているところすらあります。問題のなさそうな別荘地を中心に物件を紹介している会社でも、問題のありそうな別荘地物件が含まれていることもあり、しかも、それをほめちぎっているような不動産会社は敬遠することにしました。(・・・続く)