昨日5分咲きだった目の前の公園にあるソメイヨシノは、今朝はもう7~8分咲きになっており、早くも見ごろです。狩野川沿いの修善寺駅裏にある桜並木も、昨日通りがかったときには6分くらいだったので、今日明日にもほぼ満開に近い状態になるでしょう。
あちこちのサクラが咲き始める今、急がないと「写期」を逸してしまうのでは…と少々焦り気味の今日このごろです。
このサクラですが、日本では平安時代の国風文化の影響以降、花の代名詞のようになり、春の花の中でも特別な位置を占めるようになりました。
国風文化というのは、10世紀の初め頃から11世紀の摂関政治期を中心とする我が国の文化で、中国の影響が強かった奈良時代の文化(唐風)に対して、これを国風文化と呼んでいます。
「和風(倭風)」という言葉もここから来ており、現在まで続く日本の文化の中にも、この流れを汲むものが多く、浄土教に代表される仏教や、かな文字の使用、古今和歌集などに代表される詩歌の流行などもこの時代に生み出されたものです。
竹取物語や伊勢物語、源氏物語や土佐日記、枕草子といった超有名な作品もすべてこの時代に作られていて、この国風文化の時代こそが、日本の原点といっても過言ではないでしょう。
これらの文学作品の中にも桜は頻繁に登場し、これ以降日本では、桜は花の代名詞のようになり、春の花の中でも特別な位置を占めるようになりました。
桜の花の下の宴会の花見は風物詩であり、各地に桜の名所が作られ、日本の年度は4月始まりであることや、学校に多くの場合サクラが植えられていることから、人生の転機を彩る花にもなっています。
ところが、サクラは公式には国花ではありません。100円玉にもその意匠があしらわれるなど、国花の一つであるかのように扱われていますが、実は日本の国花は菊です。菊は皇室の象徴としての意味が強く、幕末の王政復古以降、一貫して皇室の花=国の花とされてきました。
これに関連して、国歌である「君が代」についても、この「君」は一般的には天皇をさすのだと解釈する人も多く、日本では国花、国歌ともに王室礼賛をするためにこれを定めているとの見方は否定できません。
それが何がいけないんだと開き直る人もいれば、いやいやそういう風潮への蔓延が戦前の軍国主義への回帰につながるのだとする人もいて、公式の場での君が代の斉唱をも拒否する、といった事件もしょっちゅう起きています。
私自身は、別に国歌も国花もこれまで通りでいいじゃないか、とは思うのですが、君が代の歌詞にある、「君」である天皇の長寿を祝し、その御世に寄せる賛歌としての位置づけには若干の抵抗がなくはありません。
いっそのことこの古臭い歌をやめて、新しい歌を一般公募で決めてそれを新国歌とすればいいのに……とかも思ったりもするのですが、その反面、子供のころから国歌として慣れ親しんできたこの歌に愛着があるのも確かです。
結局のところ、国歌や国花を差し替えればそれで国が生まれ変わるというわけでもなく、長く伝統として保ってきたものは今後も保ち続けるでいいではないか、と思う次第です。
ところで、この国花ですが、ほかの国はどんな花を定めているのだろう、と気になったので調べてみると、まず日本と最も親しい国であるアメリカの国歌は、バラだそうです。
へー意外、というかんじなのですが、これが定められたのはごく最近であり、1985年に上院でこれを国花とする決議を可決したばかりであり、その翌年の1986年にこの当時のロナルド・レーガン大統領がホワイトハウスのローズガーデンでその法律に署名し、正式に公布されています。
アメリカ合衆国の第31代大統領でハーバート・フーバーという人がいますが、この人にちなんで「プレジデント・ハーバート・フーバー」という品種のバラがあり、これがこの国の国花としてよく引き合いにだされるようです。ちょっとオレンジがかった黄色いバラで、なるほど明るいイメージの好きなアメリカ人が好きそうな花ではあります。
もっともアメリカの場合は、それぞれの州で「州花」が定められていて、こちらのほうが重視されることも多いことから、バラが国花であることすらも知らない人も多いのではないでしょうか。
イラン、イラク、オマーン、キルギス、サウジアラビア、アルジェリア、モロッコ、ブルガリア、ポルトガル、ルクセンブルグ、セントルシア、ホンジュラス、エクアドルなども、それぞれ品種こそ違え、バラを国花にしており、バラは世界中で人気の花といえるでしょう。
実はイギリスも連合王国としての国花は、バラであり、こちらも、「クィーン・エリザベスII」に代表されるバラ品種などがあります。
お隣の中国はといえば、現在国花選定中だそうで、候補としては牡丹と梅のほか、日本と同じ菊や蓮、蘭が挙げられているそうです。
まさか現在のようにもめている最中に日本と同じ菊を選ぶとは思えませんが、過去に何度か国民投票を実施した際にはボタンとウメが常に1位、2位を占めていたといいますから、このどちらかになるのではないでしょうか。ちなみに台湾の国花は梅です。
また、韓国の国花はムクゲだそうで、韓国の国章はこの花を基にデザインされているほか、国歌にもこの花の名が登場するようです。なるほど韓国らしいかんじがする花ですが、その北側の北朝鮮の国花もスモモだそうで、こちらもこの国に合うかんじがします。
このようにやはりその国に合った花が国花になる傾向があるようで、イタリアはデージー、オランダはチューリップ、スペイン・カーネーション、スイス・オーストリアはともにエーデルワイスが国花です。
このほか、宗教にちなんで国家が決められたのではないかと思われるのが、インドであり、国花は蓮だそうですが、とくに仏教とは関係のなさそうなエジプトもまたロータスが国花です。
エジプト以外のアフリカ各国の国花となると、我々の知らないような花ばかりであり、例えば、シエラレオネのギネアアブラヤシ、ジンバブエのグロリオサ・ロスチャイルディアナ、ナイジェリア・コスタス・スペクタビリス、などは名前を聞いただけではどんな花なのかさっぱり想像もできません。
ナミビアに至っては、ウェルウィッチアという舌をかみそうな名前の花が国花であり、これは邦訳すると、「奇想天外」という意味になるそうです。種子から発芽した個体が再び種子をつけるまでに、25年ほどかかると考えられていて、寿命は1,000年以上と言われているそうです。
世界的にも珍しい希少植物であることから、ナミビアでは厳重に管理されているそうですが、ちなみに、和名としては、サバクオモト(砂漠万年青)という名前が与えられています。
京都府立植物園など、国内の何ヶ所でも栽培されているそうですが、この京都府立植物園のものは、2004年8月に温室にあった鉢2株が盗まれたといいます。
ちなみに、日本と同じように桜を国花としている国はあるのかな、と調べてみたところ、今クリミア半島の帰属問題でロシアともめているウクライナの国花が日本のサクラとは品種は違いますが、「スミミザクラ」というサクラの一種です。
写真を見るかぎりでは日本のソメイヨシノよりも白っぽくまた小ぶりな花のようです。その果実は、日本のサクランボのように甘くなく、あまりにも酸っぱいため生食には不向きだそうですが、スープや豚肉料理などによく使われるそうです。
また、砂糖とともに調理することで、酸味を抑え香りや風味を引き出すことができるといい、このため、スミミザクラの果実のシロップもしくはスミミザクラの果実そのものを使ったジュースやリキュール、デザート、保存食もあるといいます。
以前、このブログで1917年にロシア革命が勃発したとき、ロシアに対抗するために極東に「緑ウクライナ」というウクライナ人による国が建国されかけて失敗した、と書きました。
このとき日本国内にもロシアと対抗するためこの緑ウクライナに同調する動きがありましたが、建国に失敗したため、この運動の中心だったたくさんの白系ロシア人が日本に亡命してきましたが、その中に大相撲の大鵬関のお父さんがいた、といったことも書きました。
そうした過去に思いを馳せつつ、そのウクライナ人たちの末裔たちが造った国の国花が我々の愛するのと同じサクラであると聞くと妙にこの国に親近感を感じてしまうのは、私だけでしょうか。
さて、今日は長らく骨折で入院していた母がリハビリ病院から退院することになっており、午後から彼女を迎えにいきます。
その途中にもあちこちでサクラが咲いているはずであり、長らく病室にいて四季の移ろいをみることができなかった母にそれを見せてやれるのがとても楽しみです。
おそらくは今週はあちこちでサクラが満開になることでしょう。退院した母を連れ、それをぜひ堪能したいと思います。
みなさんの街にもサクラがあふれていることでしょう。桜の季節はほんのわずかです。仕事や勉強ばかりしていないで、遊びにでかけましょう。