秋の眠りは……

2014-63999月も下旬に入りつつあり、我が家の庭先にはヒガンバナが咲き誇っています。

ヒガンバナの名前の由来であるお彼岸ももうすぐ。暑さ寒さも彼岸まで。これから迎える豊かな秋に向けて、少々心がざわついているのは私だけではないでしょう。

伊豆で迎える秋ももう今年で3回目になります。自然豊かな地であるがゆえに、あちこちに紅葉のきれいなところはあるようですが、京都や奈良の紅葉の名所のように知名度の高いところといえば、すぐ近くにある修禅寺自然公園か麓の修禅寺温泉ぐらいであり、他は地元の人さえもあまり行かないような山奥が多いようです。

このため、ネットで何を調べても、ここの紅葉がきれいだった!と評判の場所がヒットせず、行く場所にあぐねてしまう、というのがこれまでのパターンでした。

ならば今年は少し趣を変え、今までいったことがないような場所にも飛び込みで積極的に行ってみて、これこそが伊豆の紅葉の名所!といえるようなところを自分で探しあてようと思ったりしている今日このごろです。

それにつけても日の長さはどんどんと短くなっていて、日中に行動できる時間が限られるのがこの季節の難点です。が、一方ではその分、月や星を賞でたり、読書や夜なべにいそしんだりする時間が増えていい、という人もいるでしょう。

とはいえ、私は基本的には朝型であり、夜明けとともに起きて活発に動き、日が沈むころには力尽きて眠たくなる、というパターンです。このように、早寝・早起きを好む朝型の人は、「ヒバリ型」ともいうそうで、これはヒバリが他の鳥たちと比べてみても早起きで、朝もはよからピーチク・パーチク上空で囀っているからでしょう。

逆に、遅く眠り、遅く起きる夜型の人は、「フクロウ型」というそうで、これは言うまでもなくフクロウが夜行性の鳥であるためです。こうした人それぞれが持っている生活リズムは、一般的には「体内時計」によるものだといいますが、これはより専門的には「概日リズム」と呼ぶようです。

平均的には、約24時間ちょっとで変動する生理現象であることが分かっており、ヒト以外の動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在している現象です。「概日」の「概」は、英語の“circadian”の冠詞である“circa”が「約、おおむね」を意味することから来ており、またdianはdiesから来ていて、「日」を意味します。

つまり、“circadian rhythm”とすれば、「おおむね1日のリズム」といことになります。1729年にフランスのジャン゠ジャック・ドルトゥス・ドゥ・メランという長ったらしい名前の科学者が発表した科学論文の中で初めて使われた用語で、彼は植物オジギソウの葉が、外界からの刺激がない状態でも約24時間周期のパターンで動き続けることに気づきました。

植物は光合成で生活していますから、基本的には昼間に活動し、花などは夜間は閉じられることが多く、植物の中には夜間は葉を閉じるものもあります。ドゥ・メランが気付いたオジギソウの動きとはこれであり、ほかにはネムノキなども夜に葉を閉じますが、このような植物の動きを「就眠運動」といいます。

しかし、中には逆に夜間に花を開くものがあります。これは、主に夜行性の動物を花粉媒介に利用している植物です。が、一般の植物は、昼は光合成と呼吸をしており、夜になると光合成をやめて呼吸のみをするようになり、動きを止めます。

このため、夜になると、昼に比べて大気中の酸素濃度はわずかに減少し、二酸化炭素濃度は増加することが知られています。これは植物が日中は二酸化炭素を吸い、光合成によって酸素を生み出しているものが、夜になるとその活動をやめてしまうために他なりません。

夜になると活動を止めるのは動物も同じです。ただ、動物の中には、夜に主に活動するものもあり、これがよく言われる、夜行性、昼行性という区別です。ヒトもまた元々昼行性動物ですが、火を使用し、さらに電灯などを用いるようになり、現在では昼夜を問わず活発に活動するようになりました。

しかし、基本的には現在でもヒトの昼行性は維持されていると考えて良いでしょう。他の動物もその多くが昼行性です。ただ、熱帯地方の砂漠などでは、夜行性の動物が圧倒的に多いそうで、これは昼間は活動するにはあまりにも過酷な環境であるためです。

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さて、一般的な動植物の体内時計を司る、概日リズムは、次の3つの基準で定義されています。

1. 白夜や逆に暗黒の世界であっても、約24時間の周期を持続する。
2. リズムの周期は、日昇や日没などの光や闇といった刺激によってリセットされる。
3. リズムは、一定範囲内の温度において周期が変わらない。

3.の一定範囲内の温度において概日リズムが変わらないことを、「温度補償性を持っている」ともいいますが、これは裏返せば温度が急激に変化するような状態ではリズムが狂う、ということになります。天候不順などで気温差が激しいときに体調を崩す人が多いのはこのためのようです。

この概日リズムは、動植物すべてが持つ「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子群によって引き起こされます。動物では“period”、“clock”、”cryptochrome”と命名されている遺伝子などによって司られていることなどが知られています。

こうした遺伝子は、進化上最も古い細胞に起源を持っているといわれています。太古の地球にはまだ十分な大気がなく、このため生物は、昼間はかなり有害な紫外線にさらされていました。こうした環境下では、傷ついたDNAが複製されてしまうため、これを回避するため、DNAの複製は基本的には、夜間に行われることとなりました。

これが、「概日リズム」という形で遺伝子に残り、現在ではほとんどの植物や生物が持っているというわけです。とくにヒトを含む動物において、この概日リズムは、睡眠や摂食のパターンを決定する点において重要です。脳波、ホルモン分泌、細胞の再生、その他の多くの生命活動において概日リズムが影響を与えます。

概日リズムが一時的に狂う現象としては、夜更かしによる不眠や航空機による移動により生じる時差ぼけが良く知られており、この症状の緩和に「強い光が有効」であることも広く知られています。これは、こうした症状の発生メカニズムを細胞レベルの実証実験で証明した結果得られた所見です。

また、外界からの刺激を絶たれた環境下で生活している人は、睡眠・覚醒リズムがずれてきますが、このような体内リズムの乱れは規則正しい明暗サイクルを与えることで解消されることもわかっています。こうした乱れた環境から元に戻すためには、朝晩規則正しく明暗の刺激を与え、これによりリズムを「リセット」します。

例えば宇宙飛行士は真っ暗な宇宙ではとかく体内リズムを崩しがちですが、こうした研究成果から、最近では宇宙船の中に明暗サイクルを模擬した環境を作ることで健康を維持するように仕向けています。

しかし、こうした宇宙のような一年中真っ暗な場所で生活する、というのは極端な例です。通常の人は、朝には陽を浴び、夜は日没によってもたらされる暗闇に促されて眠りにつきますが、こうした本来は、普通の概日リズムを持っている人が、現在では朝型と呼ばれています

一方では、仕事などによる生活パターンによっては、眠る時間がだんだんと後ろへずれて夜型になる人もいます。が、それでも正常な概日リズムを保ち、日常生活に差支えがなければ、誰からも文句を言われる筋はありません。

朝型か夜型かに係わらず、ノーマルな概日リズムを持つ人は、だいたい次のようなパターンを持ちます。

1.朝は予定した時間に起きる事ができ、夜は十分な睡眠がとれるように予定した時間に入眠することができる。
2.望みどおりに、毎日同じ時間に睡眠・覚醒できる。
3.いつもより早く起きなければならない新生活を始めた後も、数日経てば夜もいつもより早く眠ることができるようになる。

3についていえば、例えば、午前1時に眠り、午前9時に起きる習慣のある人が、新しい仕事に就き、月曜日からは午前6時に起きなくてはならなくなったとしましょう。その人は次の金曜日ころまでには、だいたい午後10時ごろに眠り始め、午前6時に起きる事ができるようになります。

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こうしたこの早い睡眠・覚醒時間への適応のことを専門用語で「睡眠相の前進」といい、健康な人は、睡眠相を一日におよそ1時間前進させることができるそうです。

また、通常の生活において24時間の昼・夜のサイクルを維持しようとするならば、規則的な環境の時刻情報を常に得ることが重要だといいます。例えば日の出、日の入りを確実に認知する、といったことのほか、朝食や夕食を決まった時間に摂る、といった毎日同じ時間に同じ作業を繰り返し行うといったことが有効です。

これによって、時刻情報を知った脳が細胞にこれを伝え、通常の概日リズムになるよう外界と調和させることができます。

ところが、最近のように昼夜逆転といった不規則な生活をする人が多い時代には、この概日リズムが何をやっても、元に戻らず乱れてしまう、ということもありがちです。これを「概日リズム睡眠障害」といい、この障害を持つ人は出勤、登校、その他の社会生活において要求される通常の時間に寝起きすることができません。

もし自らの体内時計の要求する時間に自由に寝起きすることが許される、例えば昼過ぎまで寝ていて、夜は朝まで起きているという生活パターンが許されるならば、通常十分な睡眠をとることができ、睡眠の質も通常なことが多いのですが、学校へ行ったり仕事を持っている人はそういうわけにはいきません。

このため、中には「非24時間睡眠覚醒症候群」という症状に陥る人もおり、これは概日リズムの乱れによる慢性的な睡眠障害であり、睡眠障害の中でも重症の部類に入ります。

この病気の原因は、環境の時刻情報に反応して睡眠覚醒リズムを調節する能力の低下にあると考えられており、こうした人達は通常より長い概日リズムにシフトするようになっており、時刻情報に十分に反応することができないようになってしまいます。

最近の研究では、健常者の概日リズムは成人であればだいたいどの年齢層も、平均で24時間11分であることがわかっています。が、非24時間睡眠覚醒症候群の患者の睡眠サイクルはこの時間を超えることが多くなり、このため、社会的に受け入れられる時間帯に寝起きすることができません。

例えば、最初のころは午前4時に就寝し正午に起床していたものが、だんだんと起床時間が遅れ、昼過ぎて2時になり3時になっても起きないというふうにずれていき、やがてはこれが当たり前になっていくため、日常のことをやろうとするあまりに睡眠時間が足らなくなり、通常の社会生活をおくる事が困難となります。

ヒトが睡眠をとる目的はまだ十分には解明されていませんが、心身の休息、記憶の再構成など高次脳機能にも深く関わっているとされ、このほか睡眠中には成長ホルモンが分泌されることがわかっており、子供の成長には欠かせません。また創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に促進され、免疫力の向上やストレスの除去などの効果もあるとされています。

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睡眠を十分にとれないということは、こうした効果が十分に得られないということであり、通常の生活支障が出るのはもちろん、人格的なものにも影響を与え、場合によっては精神分裂病のような精神障害に至る可能性もあります。

こうした概日リズム睡眠障害の治療法としては、まず、「高照度光療法」というのがあり、これは患者に強い光を当て、患者の生物的な概日リズム調整する方法で、患者は、睡眠相の前進か後進に適した時間に、一回に30分~60分の間、10000ルクス以内の高照度の光に曝され、これによって睡眠を遅らせたり早めたりすることができるようになるそうです。

場合によってはメラトニンのような自然な眠りをもたらす薬や、覚醒をもたらす薬、また短時間作用型睡眠薬などを与えることもあるということです。また、行動療法というものがあります。これは、患者に昼寝やカフェインなどの刺激剤を与えないことが避けることや、睡眠と性交以外のときにベッドに入らないことを医師が指示します。

さらに、一番手っ取り早い方法に、「時間療法」というのがあり、これはなんのことはない、毎日1~2時間ずつ寝る時間を遅らせたり早めたりして調節するだけです。

が、そうした指示に従えなかったり、元々動機付けとしてそうしたことができないためにこの病気にかかっているわけであり、個人の意思でそういうふうに調節できるようになるのは簡単なことではないでしょう。こうした病気にかかってしまわないよう、日常から規則正しい生活を心がけることが肝要です。

一方では、この非24時間睡眠覚醒症候群ほどではないにせよ、より軽い症状で、朝起きれない、という人も多いでしょう。

これも病名がついていて、「睡眠相後退症候群」といい、英語の“Delayed sleep-phase syndrome”を略して「DSPS」とも呼ばれます。慢性的な睡眠のタイミングに関する障害と考えられており、概日リズム睡眠障害のひとつです。DSPSの患者は、ほぼ毎日といっていいほど遅い時間に眠りにつく傾向があり、朝起きることが困難です。

ただ、非24時間睡眠覚醒症候群と違って、就寝リズムが少しずつずれていくのではなく、毎日ほぼ同じ時間に眠り起きできるとされており、睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害を持っていない限りは熟睡もできます。ただ、通常と同様の睡眠時間を必要とするわけで、夜遅く寝れば普通の人が起きる時間に起きれないのはあたりまえです。

このため、数時間の睡眠しか取れないまま、学校や仕事に出かけるため起床しなければならないことになり、社会生活の上では困難が生じます。ただ、例えば、午前4時から正午までのように自由な時間に眠ることが許されているのであれば、よく眠り、自然に目覚め、再び彼らにとっての”夜”が来るまで眠たいと感じないのがこの病気の特徴です。

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この症候群は通常、幼少期または思春期に発症し、思春期または成人期の始めになくなるといわれています。ただ、治療もできますが完全なる治癒はできないとされており、慢性的な不眠症の7~10%は、DSPSが原因であるとされるデータもあるようです。

しかし、こうした症状をDSPSだと断定してくれる、あるいはDSPSという病気を認識している医師そのものが少なく、このため、患者は治療を受けられなかったり、不適切な治療を受けたりしていることも往々にあるようで、中には精神障害による不眠症または、精神疾患と誤診する医者もいるようです。

睡眠相後退症候群とは逆に、「睡眠相前進症候群」というのもあり、これは睡眠相が望ましい時間帯から慢性的に前進しており、後退させることが困難な状態をさし、これはつまりはや夕方からもう眠くなり、夜中の2時3時には目が覚めると言った人です。

案外と私がそれかもしれません。午前中よりも午後のほうが集中力が落ちるため、極端な場合には仕事や生活にも支障が出ます。もっともたいていの人は午後になると疲れてきて仕事の能率は悪くなりますが。

このほか、概日リズム障害には、「不規則型睡眠」というのもあり、これは覚醒パターンとしての睡眠や覚醒の出現が不規則に起こり、一日に複数回睡眠するというものです。脳腫瘍がある場合などにも似たような症状が出ることもあるようですから、いずれにせよ、病気であり、こうした症状があったら、病院に行ったほうが良いでしょう。

このほか、いわゆる「躁うつ病」も、最近は概日リズム機能の低下と結びつけて考えられており、薬物によって上述の「時計遺伝子」に働きかけることで症状を改善する、といった治療もおこなわれているようです。

また、長期的な概日リズムの乱れは、体の健康を深刻に悪化させることもわかっており、特に心血管病を発生・悪化させるそうで、リズムの乱れは、内分泌・代謝系および自律神経系も影響を与えることから、高血圧になる人も多く、高血圧は心血管疾患を起こしやすくなります。こうした病気にも体内時計を考慮した投薬による治療が行われています。

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気管支喘息もまた、概日リズム的な症状を呈することが多く、日中は内因性ステロイドというホルモンが分泌されているため発作が出ませんが、減少する夕刻〜明け方にかけて咳き込む症状が多く見られ、この病気には気温も影響しているということが言われています。

逆に糖尿病は、午前中のほうが午後と比べインスリン需要が高くなることが知られており、インスリン注射療法では午前中の投与量を多くします。このように、概日リズムは、よく知られている病気にも関係することが多く、病人もさることながら、健常者においても健康を保つために極めて重要なものであるといえます。

話しは変わりますが、古代インドで成立した思想・学問に「ヴァーストゥ・シャーストラ」というものがあります。

この教えは、ヨガのように心身の調整・統一を図る修業をするのではなく、また医学・健康法のようなものでもなく、どちらかといえば、現代の建築環境工学、都市工学、心理学、脳科学などに近い学問体系のようです。

インドでは住居や寺院の立地、間取り、インテリアの配置などを決定するため、こうした思想を伝統的に用いられてきており、いわゆる北枕はよくない、といった日常の行動についてもルールにも言及しています。

「インド風水」と称される場合も多く、「ヴァーストゥ」とは、サンスクリット語では「建築物」や「住居」を意味し、また、「シャーストラ」は「(~を扱う)思想・学問」を意味します。

「ヴァーストゥ」広義には「生命力」や「環境」などをも包含した概念を指し、気の流れと調和しようとする点では中国の風水思想と近いようです。が、立地や建物の間取りの方位など中国風水とは実践面で大きな違いがあるといいます。

その思想によると、自然は地(ブーミ)、水(ジャラ)、火(アグニ)、風(ヴァーユ)、空(アーカーシャ)という五つの要素で構成され、自然状態ではそれらのバランスが取れているとされます。他方、人工的なものはそのバランスが崩され副作用を起こすため、ヴァーストゥ・シャーストラによってバランスを取る必要があると考えられています。

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なお、この五つの要素、すなわち五大何々という考え方自体が、古代インド思想であり、のちに仏教の思想体系に取り込まれ、仏教思想として日本を含む東アジア一帯に広まっていったものです。身近な例としては、主に供養塔・墓塔として使われている五輪塔がありますが、これも、ヴァーストゥ・シャーストラの流れを汲むものです。

この地、水、火、風、空の五つの要素は、以下のエネルギーにも相当します。

地:安定性を表すエネルギー
水:流動性、冷性を表すエネルギー
火:熱性や反応を表すエネルギー
風:軽快さ、運ぶ働きを表すエネルギー
空:空虚さ、空間性を表すエネルギー

自然界や人工物同様、人間の身体や気分、そして出来事も、これらの組み合わせ、あるいはそれぞれのエネルギーでできているとされ、すべてこれら五つのエネルギーで表現されるといいます。

例えば、「体温」は火のエネルギー、「物流」は風のエネルギーとして表され、また、「憂鬱」は火のエネルギーの増大として、「冷静さ」は地のエネルギーの安定性として、「落ち着きのなさ」は風のエネルギーの性質として表現されます。

さらに、この五大要素はその調和・バランスによってエネルギーの性質が変わり、正の調和は良いエネルギーを、不調和は悪いエネルギーをもたらすとされています。

土地や家に関しても、この五大要素のバランスのとり方によって生じるそのエネルギー量が変わり、その総和がプラスであるかマイナスであるかによって、そこに棲む人間の生活への影響も変わってきます。

こうしたヴァーストゥ・シャーストラの五大要素の中には、「光」は含まれていません。が、光はこれらとは一線を画す別の次元の重要な要素のひとつと考えられているようで、そしてこの考え方が、睡眠障害や情動障害などに一定の効果があるとされる「光療法」と同様の効果を持つという人もいるようです。

とくに光の中でも朝日が重要とされており、これは日中に比べ朝は紫外線が弱いため、過度の紫外線による影響を予防する効果があるためだ、という指摘をする人もいるようです。

インド風水においても、朝早く起きて朝日を浴びることを推奨しているわけで、これが健康を保ち、規則正しい生活をするもとになるのだ、と理解できます。なので、毎日夜更かしをしてお昼まで寝ている人は、その一番大事な自然の恵みを逸していることになります。

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ちなみに、このヴァーストゥ・シャーストラは、インド本国においてはヒンドゥー寺院建築などに細々と伝えられるのみで衰退していましたが、近代以降、欧米諸国で注目を浴びるようになり、逆輸入される形で再び隆盛してきているそうです。

最近では、繊維メーカーから発し、巨大な石油化学メーカーとなり、最近では小売業や情報通信産業にも進出し世界有数の企業となっている、インドのリライアンス・グループの代表、ムケシュ・アンバニ会長が、ヴァーストゥ・シャーストラに基づいた、総工費約2000億円ともいわれる自宅を建設していることが話題になりました。

この家は、インドの西海岸に面するマハーラーシュトラ州の州都、ムンバイ中心部の一等地にあり、地上約170mもの高さがあります。本来、60階になるところを、各階ごとの高さを多めにとって27階建てにしたという贅沢な造りで、ヴァーストゥ・シャーストラに基づいた、インドの伝統的な建築デザインになっているといいます。

アメリカのフォーブス誌によれば、ムケーシュ・アンバーニーは、2008年度版の世界長者番付で第5番目となり、その資産が430億ドルといわれる大富豪であり、実弟のアニル・アンバーニーもまた関連する会社グループの代表で、同世界長者番付の第6番目に名を連ねており、兄弟の資産高を合計すれば世界一になるそうです。

そこまでの大富豪になれたのも、このヴァーストゥ・シャーストラの教えの賜物なのかもしれません。

アメリカでは、そんな大富豪もヴァーストゥ・シャーストラを利用していると聞き、急増するインド系市民を核に、一般層や企業にもこの思想が広がりつつあると言われており、マイクロソフト、amazon.com、ボーイング、世界銀行、NASA、オラクル等も、社屋の設計にヴァーストゥ・シャーストラを取り入れたと言われています。

ですから、これから家を新築される方は、一度研究されてみるといいかもしれません。3~4年前ころから、インドやアメリカで発売された翻訳本が日本でも発売されているようなので、ネットで探せば関連本がみつかるでしょう。

ただ、私も調べてみましたが、それほどまだ多くはないようです。まだ爆発的な大人気というところまで盛り上がってはいないというのが現状のようですが、案外とこれからブレークし、ブームなっていくのかもしれません。

秋の夜長に、ヴァーストゥ・シャーストラに関連本を一冊買って読んでみる、というのも良いかもしれません。が、概日リズムを崩して、睡眠障害にならないよう、気を付けましょう。

いつの世も「朝は夜よりも賢い」です。早寝早起きを実践しましょう!

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