先週の土曜日、以前から気になっていた、「伊豆四季の花公園」へ行ってきました。今、ここでもあじさい祭りが開催中、という広告をタエさんが新聞でみつけてきたのは1週間ほどまえ。その前にも下田公園へあじさいを見に行っていますが、以来、「花見」づいているわが夫婦としては、これを見逃すわけにはいかんだろう、と妙な義務感を共有している今日このごろなのです。
場所は東伊豆、伊東から南へ15kmほど離れた「富戸(ふと)」というところらしい。いわゆる城ヶ崎海岸といわれるところです。
この海岸、すぐ西側にある「大室山」という山が、その昔火山だったころに噴火したときに流れ出た溶岩でできたそうです。山から流れ出た溶岩が海にまで達し、その後長い時間をかけて、波がこれを侵食。そしてそうした自然の淘汰が、絶壁が連なる入り組んだ美しい海岸線を作りあげたもので、伊豆の観光スポットとしても一二をあらそう名所となっている場所。
どこからどこまでが城ヶ崎海岸、という定義はなさそうですが、一番北側では、富戸港といわれる漁港があるあたりから、南側では、伊豆急行線の伊豆高原駅があるあたりの海岸線までを指すみたい。
この富戸港のすぐ南側には門脇埼という岬があり、ここに灯台が設置されていることから、ここを中心に観光地としての整備がなされているようなのですが、クルマのナビで「四季の花公園」をさがしたのですが、みつからず、とりあえず、この灯台をめざして修善寺を出発。午後2時半ころに現地へ到着しました。
富戸港の脇を通りすぎるころから、道路のまわりには低木がびっしり茂ったブッシュが広がりはじめ、その合間あいまに別荘らしいお宅やペンション、土産物屋などなどが散在していて、なるほど観光地だな、というかんじ。
道路の脇に目をやると、大小の黒い石がころがっており、それがかつての溶岩だということに気付かされます。この溶岩が風化してできた大地に、草木が長年の間に生い茂ったものだ、とわかると、このエリアに低い木ばかりが育っているわけもわかります。土地が固いために大きな木が育たず、低木ばかりが広がるブッシュになるのです。
灯台横にある公営駐車場へクルマを止め、すぐそばにあった案内看板に目をやると、四季の森公園というのは、この灯台から1kmほど遊歩道を歩いて行った先にあるようです。その昔、「伊豆海洋公園」という名前だったものを最近改名して「伊豆四季の花公園」としたらしい。どうりでナビにも記名がなかったわけです。
灯台脇には観光用のつり橋などもあるのですが、これは後回しにして、とりあえず先に四季の花公園へ行こう、ということで海岸沿いに作られている「ピクニカルコース」という遊歩道を歩くことに。灯台脇の遊歩道スタート地点でも、林間から断崖絶壁の下の海が見えていましたが、歩き進むにつれ、至るところに絶景ポイントがあり、延々と続く入り組んだ絶壁と、この絶壁が押し寄せる波で食されて崩れ落ちた大小の岩や小島が海岸線沿いの至るところに広がり、波が砕けて散る様子はまさに壮観。
釣りのメッカとしても有名らしく、あちこちの岩場で釣り人が長い竿を垂れていましたが、中には、どうやってあんなところへ行けるんだろう、と思うようなところにいる人も。高所恐怖症の私にはとてもできない曲芸です。
壮観な海岸線に魅せられてバシャバシャと写真を撮っていたので、四季の花公園には20分くらいで着くところを一時間ほどもかかって到着。この日は、さほど暑い、というほどではなかったのですが、アップダウンの激しい遊歩道を通ってきたばかりで少々汗をかいていた二人。冷たい抹茶入りソフトクリームをいただいて一服。時刻は3時半になっていました。
この、四季の花公園、夕方からはお客さんが減るのを見越してか、夕方からの入園者には割引がきく、「トワイライト入園」というのを実施中。入場料が半額になるサービスです。その適用時間がなんと、3時半から、というので、超ラッキー!と喜ぶ二人。さきほどのソフトクリーム代を差し引いてもおつりが出るわい、と、ほくそえむケチな夫婦なのでした。
さて、この公園、海岸線に突き出るように飛び出した小さな半島のようなところに作られており、なだらかに海に向かう斜面をうまく利用して造園がされています。なかでも今回の我々のおめあてのあじさいは、最大の「売り」らしい。入口で貰ったパンフレットによると、230種以上の日本が原種のあじさいがあるそうで、その種類数は日本一とか。
そのあじさい園は最後に見ることにして、まずは入口近くにある西洋花壇やハーブガーデンを見学。規模は大きくないのですが、植栽係の人が10人ほどもいて、あちこちで、せっせせっせとお花の手入れをされているせいか、どの花壇もきれいに整備されています。さすがに「花」を売りにしている公園だけのことはある。
温室の中に入ると、今ブーゲンビリアが真っ盛りの見ごろらしく、人の背丈の二倍ほどある高さの株の上にびっしりとピンク色の花を咲かせていてなかなか見事です。ふだん、ガーデニングショップでみるような観葉植物はほとんど全部あり、しかも、それがみんないつもショップでみているような大きさではなく、巨大に成長しているのにはびっくり。
温室内だけではなく、屋外にもこうした熱帯植物が植えられていて、圧巻なのが、南アメリカ原産だという「オンブー」の木。実は、「木」ではなく、草なのだそうで、成長が速いので、すぐに10mほどの高さにもなるとか。こういう木、いや、草が、野外で普通に育っているのは、あたたかい伊豆ならではのことです。
園の一番奥には、「見晴らしの丘」という広場があり、その先端には展望台もあって、そこに立つと、遠くに伊豆大島や利島?らしいものも見えます。この日はガスが少しかかっていてあまり遠見はきかなかったのですが、晴れた日には伊豆七島すべてが見えるらしい。また、運がよければ沿岸を泳ぐイルカもみることができるそうなのですが、この日は残念ながら見ることはできませんでした。
そして、最後に期待のあじさい園を見学。結構アップダウンの激しい小道の両側を歩くと、我々がいわゆる「がくアジサイ」と称する少しまばらに花をつけるあじさいが展開されていきます。ここ伊豆半島や伊豆近辺の島などが原産のあじさいも多く、その名も「伊豆の華」、「城ヶ崎」「八丈千鳥」など。我々がふだん見慣れている、おまんじゅうのような形のあじさいは少なく、例えるならば、花火のようなかんじの花が多いようです。
そのためか、全体的に下田公園のような華やかさはないものの、薄暗い園内にひっそりとさく花々は、控えめに挨拶をしてくれているようで、なかなかかんじの良いもの。ただ、もうさすがにあじさいの季節は終わりに近づいているようで、枯れているものや茶色くなっているものも多く、もう少し早く来ればもっと楽しめたかな、といったところでしょうか。
とはいえ、二人で500円しか払わず、これだけの花をみせてもらったことに大満足のふたり。帰路は同じピクニカルコースを通って、灯台までを引き返しました。
灯台に到着したのはほぼ5時。日が長くなった昨今は、まだまだ明るい時刻です。灯台の展望台は5時までしか入場できませんでしたが、せっかく来たのだから、ということで、灯台のすぐ脇にある、つり橋へ向かいました。このつり橋、長さ48mとそれほど長くはないものの、海の上の高さ23mだそうで、すぐ真下は、断崖に波しぶきを上げる黒々とした海が見えるスリル満点のしろもの。
この灯台やつり橋のある場所は、「門脇崎」という名称の御崎になっていて、ここは、大室山から流れ出した溶岩の量がとくに多かったらしい。海に流出した溶岩が台地状の地形を作っていて、その風景はといえば、岩・岩・岩、また岩です。ピクニカルコースのあちこちで見えた断崖の景色もなかなかのものでしたが、ここの豪快さには負けるかんじ。灯台の真下の岬の突端までごつごつの岩の上を這うようにして歩いていくと、そこから断崖は真下まで垂直に落ちていて、青黒い海が見えます。高所恐怖症の私にしてはめずらしくそこまで辿りつきましたが、一瞬覗いただけで、すぐに首を引っ込めてしまいました。ドキドキ。やめておけばよかった。
つり橋のほうも、こわいっちゃーこわかったのですが、真下さえ見なければなんとか渡れるほどの幅と安定性があり、とりあえずクリアー。見ると、その先にも断崖絶壁が延々と富戸漁港のほうまで続いて行っているようです。遊歩道もその断崖に沿って作られているらしい。目を沖のほうに向けると、沖のほうには伊豆大島がかなりの大きさで見え、大きなケーソン(注:防波堤を作るための大きなコンクリート製の箱。浮かせて運ぶ。)をけん引するタグボートなども見えます。すぐ目の前には陸地から切り離された大きな岩があり、距離にして、20~30m先なのですが、断崖と海に阻まれてさすがにそこまでは行くことができません。
その岩の上空を無数のツバメ、海ツバメというのでしょうか、キーキーと甲高い声をあげながら飛び回り、空中ショーを繰り広げています。数百羽はいるでしょうか。すごい数です。なんで、こんなに集団で飛び回っているんだろうねーと二人で話していましたが、結論としては、岩の上に群がる昆虫などを飛び回りながら口にしているのでは、ということ。確かに回りには蚊などの小虫が飛び回っているようなので、彼らにとっては、夕方のごはん時のごちそうタイム、ということなのでしょう。
あたりは、だんだん暗くなりつつあり、よくみると、灯台にはもう灯りが点っています。夕方遅いこともあり、今日はここまでにしようということで、帰宅の途につくことに。ショートトリップではありましたが、伊豆の海の豪快さとあじさいの繊細さの両方を満喫したふたり。一路、わが町修善寺へ向けてクルマを走らせたのでした。
この日は、門脇埼から富戸漁港までの残りの遊歩道、ピクニカルコースを踏破できなかったので、次回はぜひ、ここを歩いてみたいと思っています。それにしても、もう7月になります。早いもので今年も前半戦が終わり。波乱万丈だった今年前半と今日の短い旅を振り返りつつ、その晩は夜遅くまで晩酌を続けたのでした。