雨が降ったりやんだり、その合間に晴れ間も出て昨日はよく富士山が見えるな、と思っていたら今朝はまた雨です。
この繰り返しによってだんだんと暖かくなるといいますが、たしかに最近朝晩の冷え込みは少しやわらいできました。
昨日、二人で三島へ出かけた帰り道、日没直後で温度が下がりはじめる時間帯ではあったのでしょうが、三島にいたときには10度前後だった気温が、山の上の我が家に帰ってくると3度になっていました。
なので、暖かくなってきたとはいえ、ここ伊豆でもこの地はかなり寒い場所と考えてよいでしょう。おそらく伊豆で一番寒いのは天城山のあたりで、ここと三島を結ぶ直線の四分の一ほど天城山よりの我が家のある修禅寺あたりは、天城山に次ぐ寒さということになるのではないかと思います。
さて、ここ数日チョー忙しくてブログの更新がなかなかできていません。忙しい理由は、急な仕事の依頼があり、その中間締切が迫っているためでもあります。
この仕事の内容というのが、昨年10月にアメリカを襲ったハリケーン・サンディの被害状況とこれに対する政府自治体等の対応をまとめる、というものです。
ニューヨーク界隈だけで70人以上の死者を出し、2005年にニューオリンズを襲ったカトリーナに次いで米国史上二番目の被害を及ぼしたといわれるハリケーンですが、日本人居住者には被害がなかったことから、日本のニュースでもあまり取り上げられることはありませんでした。
今その全貌を調査している真っ最中なのですが、この嵐はアメリカに上陸する直前に熱帯低気圧になったため、雨や風による直接的な被害は比較的少なく済んだものの、台風の通過に伴って著しい海面上昇があり、これと高波が重なりあって高潮となり、これがニューヨーク一帯を襲ったことによる被害が甚大でした。
台風やハリケーンというのは、いわば低気圧が巨大になったものです。「低気圧」というのは読んで字のごとく、低い気圧の空気の塊であり、気圧が低いためにこれが海面にあると、海水面がその部分だけ盛り上がります。
天気図をみると、台風の目を中心とした渦巻き状の巨大低気圧があるのを誰しもがみたことがあると思いますが、これを立体的に少し誇張してみてみると、この周辺の海面は台風の目を中心として山のように盛り上がっていることになります。
1hPa下がる毎に海面は約1cm上昇するといわれており、例えば気圧が980hPaの台風の場合、1気圧(1013hPa)よりも33hPa低いので約30から33cm程度の上昇が見られるということになります。
ハリケーンサンディの場合にはこの最低気圧が946hPaといいますから、最大で60~70cmほど海水面が盛り上がったということになり、腰ぐらいの高さですが、この数字を見る限りではたいしたことないじゃん、と思われるかもしれません。
しかしこれはあくまで沖合の洋上の数字であり、ここで発生した波はより浅いところにくると更に大きさを増し、海岸線を襲います。海岸に近づいた波は浅くなればなるほどその波高を増し、遠浅の海岸ならば、ある一定の水深まで来たときに砕け(これを砕波といいます)、ここからは更に波高を増幅させます。
地図をみると良くわかると思うのですが、ニューヨークは東京と同じく海に面した町です。
ニューヨーク湾の入口から北に向かってはハドソン川があり、この川を中心として町の中心街が広がっていますが、湾口から入った高波は高潮とあいまって更に高さを増しながら市内に侵入。とくにハドソン川の右岸のジャージーシティーなどで深刻な被害をもたらしました。
また、ニューヨーク湾の入り口から東に向かってはロングアイランドという細長い半島状の地域があり、背後には住宅街などが立ち並んでいますが、ここにも高潮が押し寄せ大きな被害を出しました。
さらにヨーク中心街から10kmほど西南に位置するスタテン島という島があり、ここはニュージャージー州と狭い海峡を隔てた島なのですが、人的な被害はここに集中し、ここで40人以上の人が亡くなりました。
ニューヨーク港では最大約10mもの潮位が観測されたといい、これは津波にも匹敵するほどの高さの大波です。しかも当日は大潮と重なっていたといい、これが市内へ海水が流入するのをさらに助長しました。
ニューヨークは地下鉄の発達した町です。市内を走る地下鉄はMTAという交通局が管理運営しており、ハリケーンの到来を予測して予め電車は安全なところに避難させ、海水が浸入してきそうなところは土嚢などを置いて予防措置をとっていました。が、それでも高潮はこれを乗り越えて侵入。この浸水によって7本の地下鉄トンネルが水没し、ほかにも市内では二カ所で道路トンネルが水没しました。
地下鉄の車両基地や駅も浸水し、さらに信号機などの運行システムにも著しい被害出ました。ニューヨークの地下鉄の設備は非常に古いものが多く、もっとも古いものでは100年以上も前のものもあるということで、今回の海水の浸水によって清掃しても使えない場合、新規に調達が難しく、復旧までに更に時間を要する可能性があります。
トンネルなどの排水作業には陸軍の工兵隊が出動し、50mプールを15分で排水できるポンプをはじめ、数百台のポンプによってが排水作業が行われたといいます。
さらにはニューヨークを中心とした地域では広範囲にわたって停電となり、ひどいところでは1週間近く電気がつかえなかったといい、またこの真っ暗闇の中、火災がおき、ニューヨーク市のクイーンズというところでは住宅111戸以上を含む大規模火災が発生しました。
ニュース報道によると、最大風速79マイル/h、つまり時速126kmという想像もつかないような突風が観測されたといい、これが火災規模を拡大したようです。高潮により道が5フィート程度(約1.5m)浸水しており、消防隊が迅速に現場に駆けつけることができなかったというのも被害拡大を招いた要因のようです。
さらには空の便も被害を受けました。ハリケーンがニューヨークを襲った10月28、29日だけで6800便のフライトがキャンセルされ、ニューヨークのJFK空港、LaGuardia空港、ニュージャージーのNewark空港が閉鎖しました。各空港とも滑走路が浸水したため飛行機を飛ばせなくなり、ニューヨークの主な空港は全て閉鎖され、キャンセルされたフライトは合計19000便以上に達したそうです。
ニューヨークだけでなくなった方は70人以上となり、高齢の方が多いのかと思いきや、若い人も結構多く、その死因は強風によって倒れてきた倒木の下敷きになったという人も案外と多く、その他は侵入してきた高潮によって逃げ場を失いおぼれ死んだ溺死でした。前述の火災によって亡くなった方もかなりの数にのぼるようです。
……というようなことをいままとめているところなのですが、この調査のそもそもの目的は、こうした被害に至るまでい政府や自治体の関係者がどういう行動をとったか、どういう情報をいつの時点で得て、適切な行動をとれたかどうか、というところです。
日本も東京湾は海に面しており、ここにサンディのような大型の台風がやってきたら、単に都市機能がマヒするだけでなく、多くの犠牲者が出る可能性があります。
この調査はそうしたときに行政がそのそしりを受けないように、あらかじめできるだけ調査して準備するための基礎資料というわけです。
……というわけでこうした調査モノとしては最新の情報をみなさんにお届けできるだろう、ということで、みなさんにも有用な情報になろうかと思います。
守秘義務あるので、調査で知り得たことをあまり大っぴらなことは書けませんが、また面白いと言っては何ですが、調査を進めていく中でみなさんの防災のお役に立ちそうな情報があったら、役所に報告する前にこのブログでも書きましょう。
今日はこれから都内で打ち合わせです。忙しくなりそうです。