そろそろ雨の季節……かな?

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雨の季節が確実に近づいている感があります。

昨年の梅雨入りがいつだったか調べてみると、東海地方は6月8日、関東甲信も同日だったようで、これはいずれの地方も平年値と同一です。しかし、おととしの2013年に東海地方は5月28日に早々と梅雨入りしており、関東甲信は6月10日とやや遅れました。

が、これは、関東より南にある東海のほうが梅雨前線の影響を受けやすいためであり、毎年だいだい東海地方のほうが先に梅雨入りする傾向にあるようです。

今年の梅雨入りはいつごろなのかな~と各気象予報会社の予想なども調べてみたりしたのですが、東海・関東甲信の梅雨入りは例年より少し遅れそうだ、と予報しているところが多いようです。

一方、梅雨明けはいつごろかといえば、梅雨の期間はふつう1か月から1か月半程度であり、東海・関東甲信の平年値は7月21日です。これより関西、あるいは東部・北部の地域の梅雨明けの時期はこれより速かったり遅かったりですが、一方で梅雨の期間の長さそのものはほとんどかわりがありません。

しかし、この間の降水量そのものには明らかに違いあり、例えば梅雨期の降水量は九州では500mm程度で年間の約4分の1です。これに対して関東や東海では300mm程度で年間の約5分の1です。

また、西日本では秋雨より梅雨の方が雨量が多いそうです。が、逆に東日本では秋雨の方が多いようで、これは梅雨の時期に西日本のほうが台風が接近することが多いこととも関係があるようです。

日本本土で梅雨期にあたる6~7月の雨量を見ると、日降水量100mm以上の大雨の日やその雨量は西や南に行くほど多くなるほか、九州や四国太平洋側では2カ月間の雨量の半分以上がたった4-5日間の日降水量50mm以上の日にまとまって降っています。梅雨期の総雨量自体も、日本本土では西や南に行くほど多くなります。

従って、梅雨といえば、「雨がしとしとと降る」「それほど雨足の強くない雨や曇天が続く」というイメージがありますが、これは東日本では正しいようですが、必ずしも西日本ではあてはまりません。

なお、梅雨は何も日本だけの専売特許ではありません。日本も含め、朝鮮半島南部、中国の華北から長江流域にかけての沿海部、および華南、台湾など、東アジアの広範囲においてみられる特有の気象現象です。

ただし、梅雨の雨の降り方にも地域差があるようで、たとえば緯度的には西日本にもほど近い、中国の長江の中流域付近の「華中」と呼ばれる地域では、積乱雲が集まった「雲クラスター」と呼ばれる水平規模100km前後の雲群がしばしば発生します。そしてこれはこの地域に毎年のように激しい雨をもたらします。

このほか、華北の一部、長江下流の華東、中国の南部華南、台湾などでも梅雨がみられますが、これらの地域では、華中ほど激しい雨は降らず、どちらかといえばおとなしい日本タイプの梅雨です。ただし、中国南部や台湾は日本の西日本と同じように雨量が多く、激しい雨が降りやすいようです。

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それでは、これらの日本以外の国々では、日本と同じように梅雨入り梅雨明けを発表しているのでしょうか。調べてみると、まず、中国大陸部では各都市の気象台がこれを行っているといいます。また台湾でも中央気象局が梅雨入りと梅雨明けの発表をおこなっているようです。

中国各都市すべてを平均した梅雨入り・梅雨明けの日にちは、だいたい緯度的に九州とほぼ同じ、長江下流域、上海などの華中に代表されるようです。1971年~2000年の統計では、梅雨入りは6月14日、梅雨明けは7月10日です。

また、華中から600~700km内陸に入った淮河(わいが)流域などの、中国奥部などでとった統計では、梅雨入りは6月18日、梅雨明けは7月11日とやや後ろへずれます。

ただ、これらは、日本でいえば東北から九州まですべてのデータを押しなべて平均したようなもので、少々乱暴な統計です。

なので、地域的に順番にみていくと、台湾や華南などの南部の地方では5月中旬ごろに梅雨前線による長雨が始まり6月下旬ごろに終わります。時間とともにだんだんと長雨の地域は北に移り、6月中旬ごろから7月上旬ごろに上述の華中や華東、そして6月下旬ごろから7月下旬ごろに華北の一部が長雨の時期となるということです。

長雨はそれぞれ1か月ほど続く点はいずれの地方も同じです。が、これから中国へ旅行に行かれる方は、南方面ほど梅雨明けが早まる、北はその逆、と知っておくと良いでしょう。傾向は日本と同じであり、入梅明梅の時期は各地域による緯度差で判断できそうです。

なお、朝鮮半島はどうかというと、これらの地域の緯度は、日本では中国地方から東北地方のそれに相当します。日本と同じく6月下旬ごろから7月下旬ごろに長雨の時期となり、1か月ほど続く点も同じであり、北にいくほど梅雨明けがやや遅れるのも中国や日本と同じです。

が、韓国北部では日本の東海・関東甲信と同じようにしとしと長雨になる傾向があるとのことです。また、北朝鮮はかなり北になるので、北海道と同じくほとんど梅雨はないようです。

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このように、日本だけでなく各国とも梅雨入り梅雨明けの時期があり、それぞれの国での観測結果に基づいて入梅明梅の宣言をしているわけですが、それにしても、こうした発表をする意味はどこにあるのでしょうか。

日本の気象庁が梅雨入り・梅雨明けの情報提供を始めたのは1955年(昭和30年)のことで、最初は、「お知らせ」として報道機関に連絡していただけでした。が、当初、気象庁としてはこうした情報提供には乗り気でなく、積極的におこなわない方針であったといいます。

その理由はよくわかりませんが、この時代の気象庁の長期予報の精度はまだまだ甘く、下手に梅雨入りや梅雨明けを宣言すると、社会の混乱を招く、といった判断などがあったのでしょう。

気象情報として公式に発表を始めたのは精度も十分にあがった1986年(昭和61年)になってからで、このときの理由としては、人々に大雨による災害に関心を持ってもらう、ということだったようです。

とくに梅雨入りを発表することで、長雨・豪雨という水害・土砂災害につながりやすい気象が頻発する時期に入ることを知らしめ、防災意識を高める目的がありました。

梅雨入りの宣言によって、多くの人が防災意識を持つようになれば、雨の季節だから何かと気をつけよう、という予防意識が芽生えると思われ、これにより官民による色々な防災対策の推進が図りやすくなる、ともいいます。

ホントか~?思ったりもしないでもありませんが、これから雨の季節になることを意識することで、実際にいろいろ雨対策をとったりすることも多いものです。例えば地下室に雨水が流入しないように土嚢を用意したり、家の周囲の側溝のゴミを取る、雨どいの枯葉を掃除しておくといったことは、個々の家庭で、いざというとき役に立つように思われます。

また、雨のシーズンに先駆けて、崩れやすい斜面の点検をしたり、普段あまり見ることのないマンホールの中をチェックしたりといった公的な対策も施して、用心するにしくはありません。

一方、高温多湿が長続きする「梅雨」の時期をしらせることは生活面・経済面でも役に立つことがあります。

例えば衣類をかびさせないように除湿剤を早めに買い求めるとか、高温多湿の季節になるので食中毒にかからないよう、食べ物の保存に気を付けるといったことであり、またそうした生活必需品や食料を提供するメーカー側も、梅雨の期間の間にどれだけ売れるかどうかという推測が立てやすくなり、在庫管理がしやすくなります。

さらに「梅雨」という一種の季節の開始・終了を知らしめることは、四季がはっきりしているがゆえに季節に敏感な日本人の感覚にとっても「季節感を知る」という点においても重要な意味を持ちます。同様に、春一番、木枯らし、初雪などの発表も、日本人にとっては季節感の把握のための重要情報というわけです。

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一方、入梅明梅宣言をする短所としては、梅雨特有の長雨・豪雨という気象パターンが強調されるがゆえに、それ以外の季節にときたま訪れる豪雨に対する防災意識・対策がおろそかになる、ということがいわれているようです。

これは当たっているともそうでないとも言えそうです。が、確かに梅雨明けだ!と宣言されると安心してしまい、ちょっとした雨なら、梅雨でもないし、どうせひどくはならないさ、すぐに止むだろう、と軽視してしまう、といった傾向はあるでしょう。

お隣の韓国の気象庁は、2009年から梅雨明け・梅雨入りの予報を行わなくなりました。近年の気候パターンの変化によって梅雨前後の降水量が近年増加してきており、梅雨入り・梅雨明けを発表することによって住民の災害への警戒がおろそかになるなどの弊害が大きくなった、というのが理由だそうです。

現在の日本で気象庁が梅雨入り梅雨明け宣言をやめたらどうなるか、ですが、日本では1993年の気象業務法改正によって、気象庁以外の者でも天気予報が出せるようになったことから、さまざまな気象予報会社が設立されるようになっています。

彼等は単に天気予報をするだけでなく、食品や衣類などの各製造メーカーの製造管理における天候変化による影響まで予測するようになっています。従って、もし気象庁が梅雨入り梅雨明け宣言をやめたとしてもこれらの民間会社が引き続き梅雨の季節の情報を流し続けるでしょうし、気象庁もこれを止めることはできないでしょう。

もっとも、気象庁のほうも、上述のとおり人々に防災意識を啓蒙する上でもきめ細かい気象情報の発信は重要と考えているようですから、韓国のように梅雨入り梅雨明けの情報公開をやめてしまう、というような乱暴なことはやらないでしょう。

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さて、梅雨の話はネタが尽きてきたのでそろそろやめにしましょう。

それにしても天気予報というものは、その地域や国によってかなり異なるようであり、日本では全国どこへ行ってもほぼ同じ気象予報ですが、国土の広いアメリカなどでは、地方によって天気予報の表現が結構異なります。

アメリカの天気予報では、例えば、dew point というのが使われる地方があります。これは何かと言えば、日本ではあまり使われない、「露点温度」というもので、大気中の水蒸気が水滴、つまり露になる、すなわち「結露」する温度のことです。湿度が高ければ露天温度も上がり、湿度が100%のときは、温度=露天温度です。

これは何に使うかと言うと、結露が起きると農産物や建築物、機械などに被害を与えることがあるので、その防止に使うということのようです。とくに広大な地域で農作物を栽培することの多いアメリカでは、結露情報は重要です。このため、日本では、湿度はパーセントだけで表示されますが、アメリカではこの dew point の方も併用してよく使われます。

ちなみに、アメリカの気温表示は、華氏温度(Fahrenheit)であり、これは˚F と表示されます。私は当初アメリカ渡った際、これっていったい何度なんだ?とずいぶん困惑したものです。これを我々が普段使っている摂氏温度に換算するためには、この華氏温度から32を引き、9分の5をかけると摂氏温度になります。

すなわち 80˚F は27.72˚C です。が、これは結構面倒くさい計算になるので、簡単には華氏温度から30を引き、それを半分で割ってそれよりやや多めの1~2度上の温度が摂氏温度、という計算をすれば、だいたい合っています。暗算が苦手の人は試してみてください。

なぜ摂氏ではなく華氏なのかといえば、アメリカは未だにメートル法を採用しておらず、ヤード・ポンド法を採用してるからであり、単位系を変えると色々七面倒くさいことが出てくる、ということのようです。

今やメートル法を採用していないのはアメリカとミャンマーだけだそうで、日本も含めヨーロッパ諸国もメートル法なのにいい加減に変えろよ、といいたくなってしまいます。が、メートル法を採用していても、アメリカを真似て華氏表示のままの国も多いので、いずれにせよ、上の換算法は覚えておくと良いでしょう。

とはいえ、要は慣れの問題です。私もアメリカにいたころには、そのうちこの華氏温度での表示に慣れてしまいました。また、華氏の方が便利なこともあって、例えば、日常生活で使う温度は、0˚Fから100˚F の間にだいたい収まり、温度の刻みが小さいので、摂氏のように小数点を使わなくてもより細かい温度がわかる、という利点もあります。

キーボードを打つときにいちいち小数点をうち込まなくても済むということでもあり、つまらん話ではありますが、このことはデータ処理をすることが多い職種などでは結構重宝です。

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このほか、温度といえば、こうした摂氏や華氏温度によるその日の最高温度や最低温度だけでなく、その下に、「体感気温」という表示をする国もあります。例えばタイの天気予報には、通常の摂氏温度の下に“cool”とか“hot”とかの表現がなされています。

かなりアバウトな表現ですが、これは、タイは熱帯地方のため、暑いのが当たり前であり、あまり細かい温度を示しても誰も気にしない、ということのようで、それなら体感温度で示したほうがよりわかりやすいだろう、という配慮のようです。

それにしても、この国では、最低気温が18度以上あっても”cool”などになるようで、逆に30度を超えても、”hot”になることは少ないといいます。ところ変われば、暑さ、寒さの感覚がこんなにも違うわけです。それにしても、あくまでその国の人にとっての「体感温度」であり、外国人にはわかりにくい予報とはいえます。

また、国によって、天気予報マークの種類や表現方法の違いかなり違います。例えば北欧諸国では雪の予報は降り方に応じて5~6種類あるのが普通で、とくにエストニアは雨や雪の表現が豊かで、雪に関しては7種類もあります。

ちなみに、日本では雨を「傘」で表しますが、世界では「雨雲」がほとんどです。「ほとんど」というより、私は傘マークを日本以外で見たことがありません。

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このほか、最近は天気予報のほかにも、紫外線情報や熱中症情報などの生活情報を出す国も多くなっています。しかし、日本では「紫外線予報」というのはありません。これがあるのはオーストラリアなどであり、この国はいち早く日焼けによる健康被害に注目した国で、世界で最も進んだ紫外線対策の基準を発表しています。

1980年代からスタートし、現在でも世界で最も進んだ対策を行っています。「サンスマートプログラム(Sun Smart Program)」といって、非常に具体的なのが特徴であり、紫外線の害を予防しようという考えは国民の間に広く浸透しています。

紫外線から肌を守るために、衣類や帽子、サングラスといった身に着けるものにこまごまとした指針が定められており、また日焼け止めについても細かい規定があります。

日本人にとっても参考になりそうなものを取り上げると、例えば衣類。これはまず、ゆったりめの軽い服装で、できるだけ腕、脚、首を覆うものが良いそうです。またTシャツは首が隠れないので、ポロシャツの方が望ましく、生地は、綿、麻等の風通しが良いものを選びます。

ポリエステル・綿の混紡や綿100%の衣服は紫外線被害を95%防ぐという結果が出ており、
洋服が濡れていたり、あせたり、古い場合には予防効果が弱まります。また、一般には白い色がいいと思いがちですが、意外にも、薄い色より濃い色の衣服の方が紫外線を吸収しないため、紫外線対策としてはより良いのだそうです。

また、オーストラリアの衣服には、紫外線保護指数UPF(Ultraviolet Protection Factor)なる基準があり、衣服のラベルにUPF指数が表示されているものが多いようです。これは衣服が太陽の紫外線を遮断する効果を数値化したもので、UPF値が高いものほどその効果が高いといいます。日本でも参考にしてはどうかと思う次第です。

このほか、帽子は、顔、首、鼻、耳、頭皮を紫外線から守れるものを着用します。屋外では、8~10cm(小さい子どもなら6cm)程度のつばのある帽子をかぶること。ただし、帽子のみだと部分的にしか覆うことができないため、日焼け止めも必ず使用します。

野球帽やサンバイザー、つばの浅い帽子は顔や首をおおうことができないため、あまり好ましくありません。また、帽子は上からの紫外線予防には役立ちますが、反射からは守ることが出来ないため、サングラスの着用や顔・首に日焼け止めを塗ることを忘れないようにします。

さらに、紫外線は、日焼けの他、目の痛み、白内障、盲目等のダメージを与える場合もあります。このため、サングラスと帽子を両方着用することにより、目に届く紫外線を98%カットすることができるとされ、普段メガネをかける人は、紫外線防止フィルムをメガネにつけるか、できれば度付きサングラスを購入します。

日焼け止めについては、日本で販売されているものにも最近は、SPF(Sun Protection Factor)という基準値が表示されているものが多くなっているようです。オースラリアでもこの値が重要な目安です。最低SPF15、できれば30のものを使用しますが、状況に応じて異なります。細かい使用方法はネットでもたくさん出ていますので参考にしてください。

ただ、サンスマートプログラムでは、浸透する時間を考え、屋外に出る最低20分前に塗るようにすることや、2時間毎に塗り直すこと、また、泳いだり運動したりした場合にも、すぐに塗り直すことなどを推奨しています。

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このオーストラリア政府が推進するサンスマートプログラム中でも、特に力を入れているのが子どもへの紫外線予防指導です。これは、「スリップ・スロップ・スラップ・ラップ(Slip, Slop, Slap, Wrap)」というスローガンを合言葉を用いた具体的な対策です。紫外線予防のために取るべき行動を示す言葉で、次のような意味があります。

長そでのシャツを着よう! (Slip on a long sleeved shirt!)
日焼け止めを塗ろう! (Slop on some sunblock!)
帽子をかぶろう! (Slap on a hat that will shade your neck!)
サングラスをかけよう! (Wrap on some sunglasses!)

子どもの時に大量の紫外線を浴びることが将来的な健康被害リスクを高めるため、紫外線から子どもたちを守ろうということで、このスローガンが誕生しました。

このほかにも、子どもが日中長時間過ごす学校では、分かりやすく、きめ細かい指導が行なわれており、例えば、「ノーハット・ノープレイ」ということで、帽子をかぶらない子どもが校庭で遊ぶことを禁じている学校が少なくありません。しかも、戸外活動授業でさえ禁止してしまうという徹底ぶりです。

日光の当たる身体部分にはすべて日焼け止めを塗ることを義務づけ、各クラスには日焼け止めが常備されています。さらに子どもは先生や大人を見習い、真似をする中で学ぶことが多いため、学校では先生が、家では親が良い手本を示し、上述のような衣類やサングラ・日焼け止めに至る細かいサン・スマート・プログラムの規定を実践しています。

もっとも、肌の色が白人ほど白くない日本人にそれほどまでの徹底した紫外線対策が必要かと言えば、そこまで神経質になる必要はない、という意見もあります。

そもそもなぜ肌の色が人種によって違うかといえば、実は黒人のような濃い肌の色は紫外線を遮断するために生まれたといわれています。

それによって肌が炎症を起こしたり、皮膚がんになるのを防ぐ効果があるといわれており、日差しの強い赤道直下の人種の肌が先天的に黒いのは、紫外線が強いためにそれに体が合わせて長い間に変化してきたのだという説が有力です。上述の衣類の話でも色の濃い色のほうが紫外線をカットしやすいと書きましたが同じ理屈です。

このため、高緯度になるほど紫外線が弱まるため肌の色も薄くなっていきます。中緯度に住む我々は肌が白くはなくて黄色であり、北欧などの地域を起源に持つ欧米人に白人が多いのはそのためといわれています。

紫外線の悪影響は、これが科学的に研究されてきた結果、現在では皮膚や目だけでなく、免疫系へも影響があることがわかっており、急性もしくは慢性の疾患を引き起こす可能性があることが解明されています。

皮膚の色の薄い欧米人はこれを遮断できないためこうした病気の罹患の可能性が高くなります。従って、紫外線を防ぎたいという気持ちは我々黄色人種よりも強いわけです。

しかし、なんでもかんでも紫外線を遮断すればいいというわけではなく、紫外線は人体にとっても重要なものです。

皮膚においてビタミンDを生成しているため、これが欠乏すると色々な障害を起こすことがあります。大腸癌、乳癌、卵巣癌、多発性硬化症の相対的な多発が指摘されており、ビタミンDの欠乏を起こし、アメリカで何万もの死者が生じているという学者もいます。

米国では日照の少ない緯度の高い地域でとくにこうした患者が多いといい、このほかビタミンD欠乏は、骨軟化症(くる病)を生じさせ、骨の痛みや、体重増加時には骨折などの症状を生じさせます。さらに、皮膚の疾患、例えば乾癬と白斑の治療において、紫外線の利用は有効であり、必ずしも紫外線は悪者というわけではありません。

精神病の治療に、紫外線が利用される場合もあるようで、まったく紫外線を浴びないで生きて行くというのは日陰のモヤシになるようなものです。

従って、黄色人種である我々は紫外線対策、日焼け対策を重要と考えつつも、多少その恩恵も享受しつつ、四季を過ごすというのが正しい生き方のようです。

これから入る梅雨にはその紫外線を含む太陽光を浴びる時間も少なくなりがちです。家に閉じこもってばかりおらず、梅雨の晴れ間には外出して少しの間紫外線を浴びるとともに、日本ならではのその豊かな自然を満喫しましょう。

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