偶然 or 必然?

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年表をみると、今日7月17日は、645年(大化元年)に、日本初の元号「大化」が制定されたということで、歴史的には記念すべき日のようです。

また、思い起こせば、2011年には、FIFA女子ワールドカップ決勝戦で、なでしこJAPANがアメリカ代表をPK戦で破り、初優勝を飾った日でもあります。1971年には、この日、プロ野球のオールスターゲーム第1戦(西宮)で、全セ先発の阪神タイガース、江夏豊が9者連続奪三振を達成するなど、つまり、7月17日はスポーツの面でも記念すべき日です。

この試合では、最終的に全セが継投によるノーヒットノーランも達成するという偉業を成し遂げており、さらに同年、今井通子がグランド・ジョラス北壁に登頂して女性初のアルプス三大北壁登頂を達成しています。

このようによいことばかりが起こった日のように見えますが、実は同時にやたらに災害やら事故が多い「特異日」でもあります。

記憶に新しいところでは、昨年の2014年にはマレーシア航空17便が墜落しており、1996年にはトランスワールド航空800便墜落事故が起きています。マレーシア航空の事故では、乗員乗客298人全員が死亡し、トランスワールド航空機事故でも230人全員が亡くなりました。

さらには、1981年、ハイアットリージェンシー歩道橋落下事故というのがあり、これはアメリカミズーリ州カンザスシティのホテルで空中通路が落下し、144人が死亡したものです。

もっとさかのぼると、1953年には、日本で南紀豪雨があり、 翌18日にかけて紀州大水害が発生して、死者615人、行方不明者431人という大きな被害を出しました。

また災害や事故ではなく戦争ですが、1945年には、第二次世界大戦中に沼津大空襲があり、焼夷弾のよって焼け落ちた町では274人が死亡しました。さらに、1944年には、アメリカで、のちに「 ポートシカゴの惨事」と呼ばれる事故があり、この事故では、過去の今日という日に起きた人災の中では最大の死者数、320人を数えました。

この事故は、カリフォルニア州のポートシカゴ海軍兵器庫で、1944年7月17日に発生した壊滅的な爆発事故です。太平洋の戦域に向かう貨物船に積み込んでいた弾薬が大爆発して、320名の水兵と民間人が死亡し、390名が負傷しました。死傷者の大半は徴募されたアフリカ系アメリカ人の水兵でした。

これほど事故や災害が重なった日というのは、そうそうないでしょう。ラテン文化圏では17日は忌みの日であるといい、17をローマ数字に置き換えた「XVII」を分解して並べ変えると「VIXI」となり、この意味は「私は生きた」となり、つまり「私は死んでいる」ということになります。イタリアでもこの17は不吉な数字とされているようです。

また、イエス・キリストの最後の晩餐に出席した人数が13人であったことから、同様に13は忌み嫌われます。さらに、キリストが金曜日に磔刑に処せられたとされていることから、13日でしかも金曜日であるというのは、いかにも不吉であるとされるようになりました。

一説には、イヴによるアダムの誘惑も大洪水からノアが脱出したのもバベルの塔が壊されたのも13日の金曜日だと言われます。

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「23エニグマ」というのもあります。これは最近の出来事、日常生活の中、あるいはメディアの中において23は、頻繁に現れるというものです。エニグマとはラテン語で「なぞなぞ」、「パズル」等を意味する意味で、23エニグマとはつまり、「23の謎」といったほどの意味になるでしょうか。

具体例をいくつかあげると、例えば以下のようなものがあります。

・両親は、子供のDNAに、各々23本の染色体を寄与する
・ユリウス・カエサルは、暗殺された際に、23回突き刺された。
・テンプル騎士団には23人の総長が存在した。
・ジョン・F・ケネディは11月22日に暗殺され、暗殺者オズワルドは11月24日に殺害された。これらの中間の日付は23日である。
・シカゴ・ブルズ時代のマイケル・ジョーダンは、背番号23だった。またデビッド・ベッカムの、レアル・マドリードでの背番号は23番である。
・23番目のアルファベット「W」は、キーボード上の2と3の真下にある。
・フォルクスワーゲンのロゴ「VW」は、2と3を足したローマ数字の「V」と、23番目のアルファベット「W」を含んでいる。
・東京都区部は23の特別区から成り立っている。

他にもたくさんありますが、これくらいにしておきましょう。これからわかるように、カエサルが23回刺されたなど、ぶっそうなものもありますが、17や13のように必ずしも23という数字が不吉な数字というわけではありません。

それにしても、我々の日常には、こうした事故の多い日や、数字にまつわるような偶然が、いくつもあり、時にはそれらが特別かつ特殊な重要性を持っていて、どう考えても偶然ではないよな~というものがあります。

悪い時には悪いことが重なるとか、良いことは続けて起こる、といったふうに思うことは誰にでもありますが、その度にそれを偶然ではなく、必然なのだ、と何かと我々は思い込みたがります。

こういうのを、「アポフェニア(apophenia)」といいます。その意味は、無作為あるいは無意味な情報の中から、規則性や関連性を見出そうとする人間の知覚作用のことです。ドイツ人の心理学者クラウス・コンラッドが定義した用語です。

つまり、何の関連性もないのに、人は同じ日に悪いことが起こったり、同じ番号の出来事が続いたりすると、それを偶然と考えずに、何か規則性や関連性があるのではないか、と疑い始めるという心理です。

上述の23エニグマ、という言葉も、このアポフェニアによって生み出されたものだといわれており、これはアメリカのSF作家、ウィリアム・S・バロウズが命名したものです。

彼はある日、23年間にわたり無事故で同じ航路を運航していたフェリーが23日に沈没したことを知ります。また、このフェリーの船長はクラークといいましたが、その後にニューヨーク・マイアミ航路上の23便の墜落事故を耳にした時、その便のパイロットの名前もまたクラークであることを知りました。

これにより、バロウズは数字の23にまつわる出来事の発生率の記録を集め始め、その有効性を著作の中で言及しました。アポフェニア効果により、バロウズの頭の中には、23という数字が一連の事故と結びつけて浮上するようになり、それを偶然とは考えられなくなっていったというわけです。

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上述のように私がとありあげた、7月17日が「事故の特異日」だという考え方もまたアポフェニアといえるのかもしれませんが、こうした特異日は、政治史にもあります。ドイツでは過去に11月9日に何度も政治事件が起こっており、この日も特異日だといわれています。

11月9日にドイツで起きた大事件としては、以下のようなものがあります。

・ウイーン十月蜂起に参加の市民活動家・ロベルト・ブルームが処刑される(1848年)
・ドイツ革命勃発(1918年)
・ミュンヘン一揆の鎮圧(1923年)
・水晶の夜(1938年。ドイツ各地でユダヤ人に対する襲撃が行われる。)
・ドイツの学生運動APO大学民主化を求める(1967年)
・ベルリンの壁崩壊(1989年。ただし、誤報により「国境が開放される」と発表された)

同じ日には、フランスで1799年に、ナポレオンが軍事クーデターを起こし総裁政府を倒しています。また、日本でも1867年に大政奉還が起こっているほか、1964年に 池田勇人首相が病気により辞任し、第1次佐藤榮作内閣が発足しています。さらに1989年には中国の鄧小平が、引退しています。ドイツだけでなく、世界的な特異日なのかもしれません。

こうした特異日はなぜ起きるか、については、これまで主に気象学の分野でその研究が行われてきました。特異日とは、その前後の日と比べて偶然とは思われない程の高い確率で、ある事象が起こることで、世界的に認められた概念であり、英語では「シンギュラリティ」(singularity)と呼ばれます。

気象学的には特定の気象状態(天気、気温、日照時間など)が現れる日のことで、例えば、今月の7月17日は雨の特異日とされています。実はこの日は、石原裕次郎の命日に当たり森田正光が「裕次郎雨」と名づけた事でも知られています。

気象特異日が起こる原因についてははっきりしませんが、幾つか仮説は立てられており、その一つは、季節変化により、大気の流れがある日突然変わるために特異日が生ずる、というものです。

ただ、長い間に特異日ではなくなってしまったのではないかと言われるものも多く、変動性があることが指摘されています。

例えば、晴れの特異日とされる文化の日(11月3日)は、戦前では確かに特異日でしたが、1950年代ごろからしばしば雨になりました。気象学関係者の間では特異日から外す意見もありましたが、最近はまた晴れることが多くなっています。

また台風の特異日である9月26日は、1950年代は極めて明瞭で、洞爺丸台風・狩野川台風・伊勢湾台風のような顕著なものだけでなく、台風の接近・上陸が多かった日ですが、1960年代からその傾向は弱まり始め、特異日の資格を失っています。こうした変動の理由も含めて、地球上における気象特異日の発生原因はまだはっきりしないのが現状です。

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一方では、地球上のこうした気象変動の原因を地球外に求める研究もあり、そのひとつが彗星です。彗星が太陽に接近して尾ができるのは、表面の物質が太陽の熱で気化し、太陽風や光圧で飛ばされるためですが、そのため彗星の通過した後には細かな宇宙塵の帯が残ります。

この彗星が地球の軌道を横切った場合、地球は毎年ほぼ同じ時期に彗星の残した塵の帯の中を通ることになります。そして、それは流星雨のような現象をもたらすと共に地球の天気現象にも影響するのではないか、そしてこれが特異日の原因となっているのではないかということが言われています。

先の東北大震災の前の3月7日~3月11日には、4日間も連続してそれぞれの彗星が近日点(軌道上で太陽に最も近くなる点)を通過する現象が発生しています。彗星が4日連続して太陽の近場を通過するというのは、やはり珍しい特異な現象だと思います。

この彗星の影響を受けてか、3月7日前から太陽の黒点数が100個を超え続けたといい、3月10日にはX級の太陽フレアが発生しました。そして、この30時間後に大震災が発生しています。

このことから、彗星が太陽の近日点を通過する時は、太陽活動を活発にするのではないか、ひいてはそれが地震を引き起こしたのではないか、といったことも取沙汰されているようです。

一方、彗星が飛び去った後に残された宇宙塵の中には、これまで人類が知りえない何等かの人体に与える成分が含まれているのではないか、という説もあり、事実、日本の古い文献にも、大きな彗星を目撃した後の現象に、疫病や飢饉が発生したことが書かれています。

さらにこうした物質はもしかしたら、我々の脳にも影響を与えているかもしれません。彗星が飛来したとき太陽黒点が増えることと関連して、我々の精神面にも影響を及ぼし、周期的に地球にやってくる彗星の場合、これが繰り返し起こる事故や政変の原因になる、といったことも考えられるかもしれません。

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気象学的な特異日に関しては、このように正しいかどうかは別として、地球内外の要因によって引き起こされるといった説明が試みられています。

一方で、事故や政変のような事象の特異日には、時空を飛び越えて関連づけられるような直接的な原因は考えにくく、これはやはり単なる偶然ではないのか、言われることが多いのも事実です。

サイコロの目が出る確率が6分の1であるのはよく知られますが、それは多くの試行を行った場合のことで、少数回では特定の目が続けて出たり、集中したりします。それと同じであり、せいぜい100年や200年のスパンでこれを特異日と呼ぶには、ちと過敏すぎやしないか、というわけです。

乱数表や、非常に優れた乱数であるとされる円周率でも、所々に特定の数が集中したり連続することが見られ、これを「群発生」と言いますが、特異日も、実は単なる群発生に過ぎないのではないか、と見ることもできます。

しかし、こうした確率論的な説明ですべての特異日を説明できるかといえば、そうでもなく、とくに過去における事例があまりにも多いものは、本当に統計的な考え方だけで片付けてしまっていいのか、という疑問が残ります。

ある人は、事件や事故、政変については、もしかしたら、何かすべて仕組まれた陰謀である、ということを言ったりもします。身のまわりに不思議な出来事が起こる。もしかしたら、それは偶然ではなくて、なにかの陰謀、企みではないだろうか、と考える人は割と多いのではないでしょうか。

事実、かなり古くから存在するフリーメーソンのような組織は世界で起こる多くの事件、事故、政治に関わってきたとされています。特定の個人ないし組織による秘密謀議で合意された筋書の通りに歴史は進行したし、進行するだろうとする「陰謀論」は、今も昔もあり、その首謀者は国家、警察、検察、あるいは大企業や多国籍企業などさまざまです。

場合によっては、巨大資本、マスコミ、宗教団体、エリートなどが一定の意図を持って一般人の見えないところで事象を操作し、または真実を衆目に触れないよう伏せているのではないか、と考えることもできます。

しかし、そうした大規模な操作をするためには、巨大な権力や政治力や財力が必要であり、そもそもなぜそんな操作が必要なのか、というところでこの議論は行き詰ってしまいそうです。

陰謀論の中には宇宙人や地底人の陰謀によるものといった荒唐無稽なものもあります。先日書いたブログ、「惑惑する…」でも書いたように、宇宙のかなたには地球人以上の知能を持った生命体がおり、彼らが地球人をマインド・コントロールしようとしている、と考えれば特異日の謎は解けそうな気もします。

が、仮にそういうことがあるとしても、彼らが何のために特異日を設定しようとしているのか不明です。現実論とはかなりかけ離れたところまで議論が行ってしまいそうなので、とりあえずこの話題からは少々離れましょう。

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特異日と関連づけてよく言われる事象に、「ジンクス(jinx)」と呼ばれるものもあります。「実際によく起こること」であり、「縁起の悪い言い伝え」であったりもして、さまざまなものがありますが、生活に密着した教訓・習慣・法則の一つです。

こちらも、科学的根拠に基づかず、経験に基づき唱えられる場合が多いため、迷信に陥っているものが少なくありません。しかし、近世になってから裏付けがとれたものもあり、全てが迷信とは言いきれるわけではありません。

ジンクスの語源は不鮮明ですが、ギリシア語のjynxは鳥の「アリスイ」のことで、これはキツツキの一種です。このアリスイは、自らの首を180度回転させ真後ろを向けられます。人間ではとてもできない芸当であり、このため不吉な鳥とされました。しばしば魔法と占いに用いられたことから、魔法のような出来事をジンクスと呼ぶようになったのでしょう。

ジンクスの代表例としては、上でも書いたキリストの巡教日、数字の13がありますが、東洋でも、4は「死」、9は「苦」に通じることから、縁起が悪いとしてホテルや病院の部屋番号や階層、鉄道車両の番号等で使用を避けることが多いものです。韓国でも病院やマンションで「4階」がなく、「F階」に代えられたりしています。

また、中国も勧告も日本同様に「死」を連想させる忌み数として避けることが多く、これは数字の4である中国語の「スー(si)」、韓国語の「サー(사、sa)」いずれもが「死」の発音が同じためです。このため、中国などでは麻雀のスーカンツ(四槓子)を、スーを発音しないよう、わざわざ「カンカンフー」と読み替えるそうです。

キリスト教圏では、「13」を不吉な番号としますが、「666」も悪魔の番号であるとして使いたがりません。このほか政治経済やスポーツ、ギャンブル、天候に至るまで数多くのジンクスが存在します。が、私にはどれもがどうもうさん臭く思えます。

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その中でも、頻度が多いなど、多少なりとも真実味のありそうな例をいくつかあげると、例えば知事経験者は他の都道府県の知事選に出馬しても勝てない、というのがあり、これは1947年に知事が公選制となり普通選挙で選出されるようになって以降、複数の都道府県で知事を歴任した人物はいないという事実です。

政治がらみではこのほか、選挙の月には宿泊施設の客が減る、というのがあり、これも理由はよくわかりませんが、ホテル・旅館業界では常識だそうです。このほか、家電量販店業界で、売上トップの座を明け渡した企業が再びトップに返り咲くことはない、というのも事実で、スポーツでは中日ドラゴンズが優勝すると政変が起きる、というのがあります。

1954年日本一時の造船疑獄による吉田内閣退陣、1974年優勝時の田中金脈問題による田中内閣退陣、1982年優勝時の鈴木内閣退陣、1988年優勝時のリクルート事件(翌年竹下内閣退陣,昭和天皇崩御)、1999年の(中日が優勝を決めた日に)東海村JCO臨界事故、2004年の新潟県中越地震などが、実際に起こっています。

さらに、「交響曲第9番」を作曲すると死ぬというのがあり、これは「第九の呪い」といい、ベートーベン他5人の有名作曲家が死んでいます。このほか、アメリカで“XXX0年”の選挙で選出されたアメリカ合衆国の大統領は、暗殺や病死などで任期を全う出来ない、というのがあり、こちらは「テカムセの呪い」です。

このように、確率論では説明できないような似たような出来事が過去には何度も繰り返し起こっており、我々の周囲にはとても偶然とは思えないような事象が渦巻いています。

特異日や陰謀論、ジンクスしかりなのですが、とはいえ、こうしたものをすべて十把ひとからげにまとめ上げるのは無理があります。が、あえて統括するならば、複数の似たような出来事が離れた場所で、しかも時間差をおいて、発生するということです。

しかし、時間差をおかずに、同時多発発生する、という事象も中にはあります。これは一種のシンクロニシティ(synchronicity)と思われます。「意味のある偶然の一致」のことで、日本語訳では「共時性(きょうじせい)」「同時性」「同時発生」とも言います

心理学者、カール・ユングによって提唱された概念で、何かの原因に基づいて事件や事象が起こる「因果性」の事象とは異なり、何の因果関係もなく、複数の出来事が離れた場所で、同時期に起こる、という原理です。

実際、何か意味やイメージにおいて類似性を備えた出来事群、何らかの一致する現象が、離れた場所で、ほぼ同時期に起きる、というのは我々の人生においてよく起こることです。

こうした複数で起こるこうした事象は、従来の「因果性」の説明方法ではうまく説明できない場合も多く、これを説明するために提示されたのがシンクロニシティです。

わかりにくいので例をあげると、会いたいと思っていた人にバッタリと出会う、タクシーをさがしていると目の前で客が降りる、欲しいと思っていたものを突然プレゼントされる、ダブルブッキングをした知人との約束をキャンセルしなければと思っていると、当の本人から予定の変更連絡が入る、といったことなどです。

このほか、何か非常に困難な問題に直面していて、情報が得られず困っている時、あるパーティーに出席したところ、たまたま隣の席に座った人がちょうど必要な情報を提供してくれた、とか、昔の同級生に連絡をとろうとしたけれども住所がわからず、混雑したエレベーターに乗り込んだところ、たまたまそこに彼女が立っていた、なんてのもあります。

ユングによる説明では、どうしてこういうことが起こるかといえば、これは人それぞれの意識同士は、実は「集合的無意識」であり、そもそも無意識に交流しているのだといいます。これはつまり、人の心は表面的には個別的であるかのように見えてはいても、実は潜在意識位の中で根本的には交流している、ということのようです。

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しかし、ユングの説では同時多発的なことを説明できるだけで、時間差を置いた、特異日、陰謀論、ジンクス、は説明できません。数十年、あるいは数百年を経てまでこうしたシンクロニシティが人々の間に共有され、特異日になるというのは考えにくいことです。

ところが、スピリチュアル的な観点からは、このシンクロニシティが起こるのは、直感や意識が次元や時空を超えているからだとされ、同時におこる物質的な因果ではなくて、時空を超えて意識や心が連動する因果だとされます。

自分が望んでいることを引き寄せたり、同時に同じような偶然が起こったりするのは潜在意識が現実的に体現しようと無意識に行動しているからだとし、無意識でも、確実にそれを引き起こす原因を意識レベルで発生させているともいいます。

次元や時空を超えるということは、つまりあちらの世界の人々の意識ともつながっているからだという人もいます。さらに自我というものが過去からの輪廻転生によって形成されているならば、過去にさかのぼり、あるいは未来に向かってそうした意識が共有された結果として、偶然の一致、いや必然が起こる、ということもいえるかもしれません。

一方、こうした時空や次元を超えた一致をあくまでも科学的に捉えようとして、仮説を立てる人もいます。イギリスの元ケンブリッジ大学フェロー、生物学者のルパート・シェルドレイクは、「シェルドレイクの仮説」という仮説を立てており、これは形態形成場仮説、モルフォジェネティク・フィールド仮説とも言います。

いかにも難しそうですが、この仮説は以下のような内容からなります。

・あらゆるシステムの形態は、過去に存在した同じような形態の影響を受けて、過去と同じような形態を継承する(時間的相関関係)。
・離れた場所に起こった一方の出来事が、他方の出来事に影響する(空間的相関関係)。
・形態のみならず、行動パターンも共鳴する。
・これらは「形の場」による「形の共鳴」と呼ばれるプロセスによって起こる。

といった単純なものであり、簡単に言えば、「直接的な接触が無くても、ある人や物に起きたことが他の人や物に伝播する」とする仮説です。

単純なだけに、この仮説を肯定する人々もいますが、一方で「事実上、超常現象や超能力に科学的と見える説明を与えるようなもので、疑似科学の1つ」と否定的な見解を示す人もいます。とくに、そもそも「形」とは何、「共鳴」とは何よ、というところに議論は集中しそうです。

これに対して、シェルドレイクは記憶や経験は、脳ではなく、種ごとサーバーのような場所に保存されており、脳は単なる受信機に過ぎず、記憶喪失の回復が起こるのもこれで説明が付く、と説明したそうです。

わかったようなわからんような説明なのですが、これをスピリチュアル的に解釈すれば、記憶や経験は、輪廻転生によって継承され、過去から未来へ受け継がれ、魂レベルではそれを他の魂と共有している。現世に生まれてきてそれを共有している複数の人々の間で、シンクロニシティが起こるのは、そのためである。すっきり説明がつきます。

ただ、このシェルドレイクの仮説も間違ったことを言っているわけではなく、スピリチュアル論を言い換えただけのような気もします。彼が言うところの受信機だのサーバーなどは存在せず、実は魂同士がその情報をやりとりしているだけです。

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しかし、このシェルドレイクの仮説を実験で立証しようとした人達もおり、「離れた場所に起こった一方の出来事が、他方の出来事に影響する」という「空間的相関関係」については、1983年にイギリスのテレビ局テームズ・テレビによって、公開実験が行われました。

まず、一種のだまし絵を2つ用意し、一方の解答は公開しないものとし、もう一方の解答はテレビによって視聴者200万人にもの多数の人々に公開しました。

その一方で、2つの問題のうち、テレビで「公開されなかった」問題は、この番組が放映されない遠隔地に住む住人1000人を対象として回答を得ました。その結果、テレビ公開の前の正解率は9.2%で、放映後には10.0%でした。

一方、テレビで「公開された」ほうの問題は、同じくこの番組が放映されない別の遠隔地に住む住人800人を対象として回答を得ました。その結果、テレビ公開前の正解率3.9%に対して、放映後は6.8%になりました。

つまりこれにより、この番組を見ることができないような遠隔地にいた住人において、「公開されなかった問題では正解率は余り変化しなかったが、公開された問題は大幅に正解率が上昇した」ことになります。

そして彼等はこの結果を、地理的な問題を克服し、テレビを見たその他の地域の人々の意識情報が、この番組を見ることのできなかった遠隔地の人々に伝播した、と解釈しました。

またこの結果は、テレビ放映とその後の回答率を得るためのアンケート調査の時間差なども考えれば、シェルドレイクのもう一つの仮説、「過去に存在した同じような形態の影響を受けて、過去と同じような形態を継承する(時間的相関関係)」をも実証したといえなくもありません。

アンケートの方法やらテレビ放映の方法、あるいは調査結果が確率論的にはたして本当に有為なものかどうかなど色々疑問はありますが、こうした結果をみると、人と人の間には直観やら意識やらが時間や場所を超えて「共鳴」する、という事実はあってもよさそうだ、という気になってきます。

実はこのシェルドレイクの仮説については、似たような実験が日本でも行われており、これは2000年11月11日に日本テレビで放映された、「世界を変える7つの実験」という番組の中で行われたものです。

飼い主とペットの双方をカメラで追跡するというもので、ペットは飼い主がいつ家路についたかを感知するかどかを確認する実験だったそうです。飼い主は仕事の関係で帰宅時間が不規則ですが、遠く離れた飼い主の自宅では、果たしてペットが玄関に移動して出迎えるなどの様子がみられたということです。

番組を見ていないのでよくわかりませんが、おそらくはこのペットというのは犬でしょう。つまり、人と人との間だけでなく、人とペットのような動物との間にも、共有している「集合的無意識」がある、ということになるのでしょう。飼い主と犬という深い関係であるがゆえに、さらにその意識のつながりは強いのかもしれません。

さて、長々と書いてきましたが、これ以上書いてもこの項の結論は出そうもありません。が、人知を超えたところにこの不思議な一致の答えはあるに違いなく、それを知るのはあるいはあの世に行ってからかもしれません。

そしてあちらの世界で過去に起こってきた数々の偶然の一致の理由をもし知ることができれば、それをこの世の人にも伝えたいと思います。が、案外とそうした情報が、故人になっている人達からすでに常々我々に伝えられているのかもしれません。

生きているうちには、それをもっと敏感にキャッチできるようになりたいと思いますが、果たして実現できるでしょうか。

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