台風4号の通過でほっとしていたら、今度は台風5号くずれの低気圧が通過していき、伊豆では、昨日の夜から今朝がたまで、強い雨と風に見舞われていました。今、ようやく雨がやみ、少し日が射してきているところをみると、午後からは少しは外出できるような天気になるのでしょう。
先日、なにげなくテレビをみていたら、「南方曼荼羅」なるものが紹介されていました。和歌山県が生んだ大博物学者の南方熊楠が知人への書簡の中で描いたものだそうで、なんでもその当時、熊楠は科学と仏教を融合させる方法を研究していたとのこと。「我が国特有の天然風景は、我が国の曼荼羅ならん」という言葉も残していて、この曼荼羅は、それを現したものだそうです。
このマンダラについては、いろいろな解釈があるようですが、その私が見ていたテレビでは、生物のゲノム研究などの大家で、「生命誌」なる言葉を生み出した、JTの生命誌研究館館長の中村桂子さんがインタビューに応じ、このマンダラを次のように解釈している旨、説明されていました。
「自然は時間とのつながりでできている。宇宙も人間も時間が生み出したものであって、つながりのないものはない。このマンダラは、この世界と時間とのつながりを表現しているものである。」
この世にあるものは、すべて時間の経過とのつながりでできている、ということのようで、うーむ、なかなか奥が深いわい。と、その時は思ったものの、わかったようなわからんような説明なので、この中村さんってどんな研究をされているのかを少し調べてみました。
すると、中村さんたちがやっている研究は、大きく分けて二つあって、一つは、生物や植物のゲノムを解読し、進化の跡を追うことだそうです。例えれば動植物の体に関する大百科事典を編纂していくようなもの。もう一つは、このゲノムを基に、生き物の発生や再生などの過程を観察すること。たとえば、たった一つの細胞である受精卵からチョウができ上がっていく過程や、でき上がったチョウが舞うメカニズムを研究することがそれにあたるようです。
こうした研究をしていくと、生物のゲノムに閉じこめられた「時間」、すなわちその進化の過程が解きほぐされてくるそうで、それをもとにひとつの生物の「系統図」を描くことができる。そして、この世に生きている生命の中に流れた時間と、あらゆる生き物の関係を調べ、その結果を織り込んでいけば、それは、ひとつの曼荼羅になるはずである・・・
ようするに、生命の中に流れた時間とあらゆる生き物の関係を織り込んだ、生き物の曼荼羅が南方曼荼羅そのものだ、という解釈のようです。
なるほど、曼荼羅というと、単にお釈迦様が真ん中にいて、その弟子たちがその周りを囲んでいるごちゃごちゃした絵だ、というふうに思っていましたが、それを自然界の法則に置き換え、時間との関係で論じる・・・この世に存在するものはすべてつながっていて、それが存在するためには時間という要素が欠かせないんだーと理解すると、なるほどそういう考え方も面白い。
でも、それって、ようするにいわゆる四次元空間の話だよなー、と考えていると、なんだか頭がこんがらがってきそうなので、この話はとりあえずやめにします。
ところで、この熊楠先生は、実は大変霊感のある人だったらしく、生前、幽体離脱を経験したり、何度も幽霊をみたりしたことがあるそうです。研究のために那智の山に入ったときに何度も幽霊を見るようになったそうですが、普通の人なら怖がって山を降りるところ、彼は幽霊を観察し、研究・分類するということをやったらしい。本物の幽霊と幻覚の違いの研究までしたそうですが、しまいには、幻覚なのか本当のものなのかがわからなったらしく、死の直前、自分の正気を疑い、「死んだら、脳を調べてほしい」と遺言して亡くなったとのこと。
その死の直前にも、天井に紫色の花がたくさん咲いているのが見えたそうで、そのことを熊楠さんの娘さんが手記で書き残しています。
「こうして目を閉じていると、天井一面に綺麗な紫の花が咲いていて、からだも軽くなり、実にいい気持ちなのに、医師が来て腕がチクリとすると、忽ち折角咲いた花がみんな消え失せてしまう。どうか天井の花を、いつまでも消さないように、医師を呼ばないでおくれ。」(南方熊楠記念館HPブログより抜粋)
と、これを読む限りでは、亡くなる前の幻覚のようにも思えますが、もしかしたら、死後の世界での花畑が天井に見えていたのかもしれません。
熊楠さんは、紫色の花が好きだったそうで、庭の草花も紫色が多かったとのこと。私も実は紫色の花が好きで、あじさいは無論のこと、今度新しくつくる庭には、紫色のバラや桔梗をたくさん植えようと思っています。そういえば、先だって訪れた下田のペリーロード奥にある了仙寺には、紫色のアメリカジャスミンが咲いていましたっけ。
こうした紫の花ばかりを集め、四季折々に紫の花の咲く庭園、というのも面白いかも。そこに集まってくる虫たちや鳥たちを撮影できるのも楽しみです。そこは、きっと我が家の小さな曼荼羅になるはず。しかも紫いろの。
もうじき夏。紫色は涼しげで暑さを忘れさせてくれそうです。あっそうそう、紫色の朝顔も植えなくては。