イルカいるか?

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例年だと、まだまだ残暑が続くころですが、今年は先日の台風の影響なのか、比較的涼しい日が続いています。

この山の上では日中の最高気温も25℃を下回ることもあり、夜間気温は20℃近くになります。そろそろ秋の花のヒガンバナの季節かな、と気を付けてみているのですが、まだ咲いているところはないようで、おそらくは今週末の連休明けくらいから咲き始めるのでしょう。

「花と葉が同時に出ることはない」という特徴から、「葉見ず花見ず」とも言われるそうです。韓国では、ナツズイセン(夏水仙)という似たような花がありますが、こちらも花と葉が同時に出ないことから「葉は花を思い、花は葉を思う」という意味で「相思華」と呼びます。このため、同じ特徴をもつ彼岸花も「相思花」と呼ぶこともあるようです。

学名のLycoris(リコリス)は、ギリシャ神話の女神・海の精であるネレイドの一人、 Lycorias からとられました。ギリシア神話に登場する海に棲む女神で、姉妹の数は50人とも、100人ともいわれます。エーゲ海の海底にある銀の洞窟で父ネーレウスとともに暮らし、イルカやヒッポカンポスなどの海獣の背に乗って海を移動するとされます。

ヒッポカムポスというのは、半馬半魚の海馬です。前半分は馬の姿ですが、たてがみが数本に割れて鰭状になり、また前脚に水掻きがついて、胴体の後半分が魚の尾になっています。ノルウェーとイギリスの間の海に棲んでいて、ポセイドーンの乗る戦車を牽くことで知られています。

このリコリスの姉妹の一人に、アムピトリーテーというネレイドがおり、これは海神ポセイドーンのお妃さまです。ポセイドーンとの間に、トリートーン、ロデー、ベンテシキューメーを生みました。このうち、トリートーンは上半身が人間、下半身がイルカ(または魚)の姿をした海神で、手塚治虫の漫画「海のトリトン」のモデルです。

アムピトリーテーは美しい海の女神でしたが、大波を引き起こしたり、巨大な怪魚や海獣を数多く飼っていたり、強力な力を秘めていました。

ポセイドーンは彼女に求婚しますが、アムピトリーテーは野卑な彼を嫌い、その追跡の手から逃れるべく海の西端のナクソス島に住むアトラースのもとに逃げ、彼の館に住んでいた彼女の姉妹のネレイドたちによって匿われました。

すると、ポセイドーンはイルカたちにアムピトリーテーを探させました。イルカたちは方々を探しましたが、あるとき、アムピトリーテーは姉妹たちとともにナクソス島で賑やかに踊っていたところを、一頭のイルカによって発見されてしまします。このイルカは強引に彼女を連れ帰ることなく、逆に彼女を説得してポセイドーンの元へと連れて帰ります。

アムピトリーテーは、ポセイドーンの再三の求婚に最初は抵抗していましたが、最後にポセイドーンが最も気に入っていたイルカをプレゼントしてやろう、と言われると、婚姻を承諾しました。いつの時代にもプレゼント作戦は功を奏すことが多いものです。

こうして、ポセイドーンは願いかない、晴れてアムピトリーテーと結婚することができることになったわけですが、彼はこのとき、イルカの功績を讃え、代表してその一頭を宇宙に上げました。そして、これが現在我々が空を見上げると見ることのできる、いるか座です。

天の川の近くにある星座で、全体的に暗いものの、かなり星々が密集している星座であるため、天の川が見える程度に環境が良ければ見つけやすい星座です。

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ところで、イルカと言えば、最近、世界動物園水族館協会(WAZA)が「残酷だ」と問題視している「イルカ追い込み漁」を巡り、議論が巻き起こっています。

イルカ追い込み漁は、捕鯨の手法の一つで、クジラを対象とした追い込み漁です。いわゆるイルカと呼ばれるような小型の歯クジラに対して主に使われ、船と魚網で大海に至る抜け道を塞ぎ、入り江や浜辺に追い込んで捕獲する漁法です。

日本では、縄文時代の遺跡から鯨類の骨が発見されており、一部では大量のイルカの骨が集中的に出土していることなどから、この時代既に追い込み漁が行われていたと推測されています。捕獲された小型鯨類は主に鯨肉・イルカ肉として食用にされるほか、一部は水族館などイルカショーなどの展示や研究用に使われます。

2009年(平成21年)に和歌山県太地町の追い込み漁に対しての批判的な映画「ザ・コーヴ」が公開され、太地町で行われる追い込み漁は国内外で広く知られる事になりました。

しかし、日本ではイルカ追い込み漁は政府によって認められている漁法です。小型鯨類の捕獲に関して、現在の日本では農林水産大臣の許可の下で捕鯨砲を使って行われる「小型捕鯨業」と、都道府県知事の許可の下行われる「いるか漁業」がありますが、「追込網漁業」は、銛を使って行われる「突棒漁業」と共に「いるか漁業」を構成します。

残酷とはいいますが、「追込網漁業」は網の中にイルカを追いこんでいくだけなので、相手を大きく傷つけることはありません。

静岡県と和歌山県で知事により許可されていますが、静岡県では2004年(平成16年)にハンドウイルカ9頭を捕獲して以降捕獲実績がなく、現在追い込み漁が行われているのは和歌山県太地町の「太地いさな組合」によるもののみとなっていまする。

「いさな」というのはクジラの古語で、8世紀の奈良時代には文献上に捕鯨を意味する「いさなとり」の枕詞が既に出現しています。

2015年、WAZA は、和歌山県太地町で行う追い込み漁から小型鯨類を取得したことを理由に、日本動物園水族館協会(JAZA)を会員資格停止の処分としました。これに対して、水族館などイルカショーを行う機関や研究者は猛反発。

というのも、イルカを飼育している日本の多くの水族館や博物館などのほとんどは、この追込み漁のイルカを購入しているためです。JAZAがその元締めであり、各機関へのイルカの斡旋を行っていました。

このあおりを受け、イルカを飼う水族館でつくる日本動物園水族館協会JAZA傘下組織の「鯨類会議」も解散することになりましたが、この処置に反発する複数の水族館により新団体が設立される騒ぎに。

以後も、和歌山県太地町から追い込み漁によるイルカの購入を続けることを見すえ、一部の水族館はJAZA脱退を明言しており、この問題はかなり長引きそうです。映画で有名になった和歌山の太地町にある、「太地町立くじらの博物館」も、イルカの入手を継続するためいち早くJAZAを退会しています。

太地町の漁場協同組合も引き続き、追い込み漁を続けていくことになりそうです。しかし、それにしてもなぜそれほどまでにイルカを捕獲することにこだわるのでしょうか。

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日本の場合、戦前や戦後の食糧難の時代、クジラと同じくイルカも、貴重な蛋白源でした。今でも、比較的イルカがよく観察されるところでは食用にする習慣が残っているところもあり、例えば静岡県の東部地域や、駿河湾で水揚げされた魚貝類が流通する内陸部の山梨県でも一部イルカ食が行われます。

和歌山県でも古くからイルカ食文化があり、追い込み漁で仕留めたイルカの肉を町中の魚屋やスーパーマーケットなどで日常的に販売しています。岩手県や秋田などの東北の県、北海道などでも一部の地域で食するようです。

その可否については、ここであえて深い議論をするつもりはありませんが、現在は食糧不足だった戦後に比べれば、食べるものはたくさんある時代であり、その中であえてイルカを食する必要もないように思います。伝統の漁法、というところにこだわりがあるのでしょうが、それなら、捕獲したらリリースする、とかいう方法もあるでしょう。

また、反捕鯨団体「シー・シェパード」などの構成員による追込漁の網の切断や、古式捕鯨のモニュメントの破壊、といった過激な行動は許しがたいものがありますが、イルカ漁が野蛮であるとする彼等の主張にも一理あるように思います。

2010年にシー・シェパードと太地町と彼等との話し合いがもたれたようですが、その中で彼等の代表のひとりが、「伝統と文化に対しては理解している。長く続いているからいいというものではなく、もう続けてはいけないものがあることも理解しなければならない。奴隷制度のように、時がくれば終わらせなければならないものがある。」と語ったといいます。

この主張はわからないでもありません。イルカが北欧や日本などの海産国で食用として利用されるのとは異なり、現在ではイルカを中心にした産業が成立しているケースは世界的に見ても少なく、フェロー諸島、南太平洋の島国や日本の一部の地域、カナダのイヌイット地域などで肉が食用に供されているに過ぎません。

よそがやめたから、自分たちもというのでは自主性がないといわれるかもしれませんが、世界的にみても大儀のない食習慣の継続は、今後日本が世界にリスペクトしてもらえるような国になっていく上においては、良い面はあまりないように思います。そろそろやめ時かもです。

それにしても、間近で見るイルカはかわいいものです。水族館において展示飼育されるのはバンドウイルカなどのイルカが多いようですが、シロイルカという種類はとりわけ人懐っこく、エンゼルリングなどを吐きだすその姿は、子供たちにも大人気です。

一方では、訓練されたイルカたちは、海面上へのジャンプや立ち泳ぎ等によるアクションもこなし、彼等はイルカショーでも大人気です。一般には観客席に囲まれたプールでトレーナーが手で合図を出し、イルカが様々な得意技を披露します。現在ではイルカショーという呼び名を用いずに「イルカパフォーマンス」などの呼び名を使う施設も多いようです。

イルカは頭が良く、アクションもそれに大きく支えられており、ショーの中でゲームなどをやってイルカの知能を解説する水族館もあります。また、一部の博物館(水族館)などでは、その多彩なアクション(演技)をもってイルカの高い知能や運動能力を説明する、科学的な啓蒙を伴う場合もあります。

好奇心が旺盛とともに遊びが大好きなので、トレーニングの際においては、餌と笛で馴致しつつも、基本的にはイルカ自身が楽しんでパフォーマンスを行なう様にし向けているといいます。

本人(本海豚)たちが楽しんでいやっているのだから、見ている方も楽しいわけです。このため、水族館でやっている数あるアトラクションでも一番人気が高く、イルカショーを目玉とするところも多いようです。

動物療法(アニマルセラピー)として、イルカと触れ合うことで心が休まることなど、精神的な疾病の治療にも利用されることもあります。水族館での生活に適応できた個体は長生きし繁殖まで行うことができ、一部の施設では三世代繁殖の成功もしています。

最近近畿大学がマグロの完全養殖に成功しましたが、イルカ追い込み漁などに頼らず、イルカをたくさん繁殖させる方法を見つける、というのも今後のまた別の選択肢です。

ところで、この頭のいいイルカを使って、アメリカやソ連は、「軍用イルカ」を開発している、といわれます。軍事用途のために訓練を受けたイルカで、既に機雷を発見したり、水難救助の補助者として実際に使われているそうです。

アメリカ海軍のサンディエゴ基地(カリフォルニア州)では、「米海軍海洋哺乳類プログラム」という軍用イルカ養成プログラムを持っており、計画に基づいてメキシコ湾でイルカを捕獲しています。これによって養成された軍用イルカは、1990年代の湾岸戦争、2003年のイラク戦争においては実戦で使用されました。

退職した米国提督のティム・キーティングという人は、引退後にメディアからのインタビューを受けた際、2012年1月にイランがホルムズ海峡を封鎖したとき、この軍事イルカを用いて機雷を見つけることに成功した、と語りました。

米海軍が、上の和歌山県太地漁港からハナゴンドウを買ったこともあるそうで、1989年、日本の和歌山県太地町から、2頭のハナゴンドウがアメリカ海軍に買い付けられたことが、報道されました。ただ、このイルカはカリフォルニアの方ではなく、ハワイのパールハーバー海軍基地へ送られたようです。

ソ連海軍もまた、かつては軍用イルカの開発に注目していたといわれます。黒海にあるセヴァストポリ基地において、海洋哺乳類の軍事利用を目的とした研究をやっていたようです。しかし、1990年代初頭にそのプログラムは中止されたといいます。

理由はよくわかりませんが、アメリカと違って、軍用には適さないと考えたからかもしれません。その後このソビエト海軍によって訓練された軍用イルカたちは、2000年にイランに売却された、という新聞報道もあったようですが、イランはこれを何に使ったのでしょうか。

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この軍用イルカなるものが本当に存在するのかどうかは、アメリカもロシアも軍事機密なので詳しいことは明かしていません。が、メディアにおいてしばしば取り上げられる小話として、アメリカ海軍が軍用イルカに機雷を装着させ、神風攻撃のように、敵の戦闘員もしくは民間人を殺害させる計画を有しているのではないかという噂もあます。

自爆攻撃による潜水艦の破壊、毒矢の装備、ソナー撹乱機器の装着、イルカ同士の戦闘さえも計画されているとされるようですが、少なくとも米海軍ではこのような計画を否定しており、その証拠も存在しないようです。

そもそもソナーの撹乱機器装着に至っては、イルカ自体が反響定位を行い、反射音により物体の位置や距離を測定する為、感覚が狂ってしまう恐れもあります。

しかし、アメリカ海軍は、防衛、地雷検知、新しい潜水艦や新しい水中兵器を開発するために、イルカやアシカの能力を研究しようとしているといわれており、1960年にプログラムを開始し、彼等の能力の何が有効であるかの数々のテストを行ったことが公表されています。

イルカやアシカを含め、19以上の種もの哺乳類が試験されたといい、他にサメや鳥も試されたといいます。最終的には、バンドウイルカとカリフォルニアアシカは海軍が、彼等の目的のためには最良であることが示されました。

とくにバンドウイルカの能力は、水中の地雷を見つけるのに最適であり、その高度に進化したバイオソナーの能力を遺憾なく発揮できるといいます。また、アシカの能力は、敵の潜水艦を発見する上において、非の打ちどころのないものであることがわかったそうです。

軍事機密といいながらも、米国海軍は、現在もこのプログラムを継続しており、その研究内容はある程度公開されています。2007年度には、海底における遺失物の捜索や地雷探知を目的とした海洋哺乳類のトレーニングプログラムが組まれ、この海洋哺乳類の研究のために、1400万$もの予算をつけ、75頭のイルカに訓練を行っています。

このとき、これらの特別な訓練を受けたイルカはまた、外洋において多くの命を救うための、良きライフセーバーであることも確認されたそうです。

この訓練及び研究に供されるイルカやアシカの世話は、専任の獣医師や、技術者、および高度な訓練を受けた海洋生物学者が行っているといい、こうした医師やスタッフは、彼等が最良のケアが受けられるように、24時間待機しているそうです。

現在においても、健康イルカやアシカを維持し、日常の身体検査、栄養を監督するとともに、大規模なデータの収集と管理を行っています。これらイルカやアシカの訓練は、5チームに分けられており、そのうちの3チームの任務は、海難救助、海底資源探査、および遺失物回収に特化しているそうです。

最終的には、いざ有事の際には、これらの各チームを動員し、72時間以内に目標とする場所に辿りつけるよう、訓練がなされています。イルカは水中鉱山や敵の潜水艦の存在を発見し、その結果を調教師たちに報告するように訓練されているそうです。

その訓練の様子は、まるで警察犬や狩猟犬の訓練のようだといい、正しい成果をあげるたびに好物の魚などを報酬として与えられるともいいます。が、イルカのほうが犬よりもはるかに知能が高いため、その訓練の内容についても、犬のそれらと比べものにならないほど、高度なものだそうです。

近いうちに、津波や船舶の沈没等の海難事故によって、行方不明者が出たとき、イルカが彼等を見つけてくれるような時代がくるのかも。

また、先の水害においても、まだ見つかっていな多数の犠牲者がいるようですが、海の生物であるイルカの登用は無理としても、似たような高度な知能を持った水棲生物に捜索を行わせる、といった時代も来るかもしれません。

それにつけても、もう9月も中旬…… 今年もまだまだ台風がやってくるのでしょうか……

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