アロエをとるか休みをとるか ~下田市


今年のお正月はゆっくり家でテレビでも見る寝正月にしようかと思いましたが、結局元旦から近くの神社に初詣に出かけ、二日目も三島大社まで出向いてお詣りをしてきました。

人ごみの中を歩きまわるのはあまり好きなほうではなく、これはどうも人の「気」に敏感な体質のためのようですが、案の定、この外出のためか、先週末から風邪をひいてしまって、今も体調不良のままです。

天気が良いのに、体を動かそうとすると筋肉痛やらだるいやらで、外へ出ようという気にならず、このため庭のバラに寒肥をやったりといった手入れなどもしなければな~と思いつつ、まだ果たせないでいます。

もうそろそろ、下田の爪木崎の水仙が咲くころなので、元気になったらこちらにも行ってみたいのですが、タエさんが開花状況をネットで調べたところ、今年は寒波のせいで少し遅れているようで、みごろは1月中旬以降ということでした。

昨年は2月ころにここを訪れましたが、逆に少し遅かったためか、一部枯れ始めているところもありましたが、まだまだたくさんの水仙が咲き乱れ、なかなかの壮観でした。

が、昨年の訪問の際には天気がいまひとつの曇天だったため、今年はぜひ天気の良い、好天を狙って行きたいと思います。おそらく来週にはこの風邪も治まるでしょうから、この連休明けあたりがひとつの狙いめかもしれません。

伊豆は暖かいためか、一年中あちこちで花が咲いているようで、この1月から3月までの主要な花の名所を東海バスさんのHP情報から借用すると、以下のようになります。

1月
梅~ 熱海梅園
水仙~ 爪木崎

2月
梅~ 修善寺梅林
桜と菜の花~ 青野川沿い(南伊豆町)
河津桜~ 河津町
つばき~ 小室山つばき園
梅~ 伊豆アニマルキングダム(伊東)

3月
マーガレット~ 南伊豆町
わさびの花~ 河津町

3月のマーガレットとわさびの花は、いずれも白い花のようで、花自体が地味なのであまり知られていないようです。が、南伊豆町の海岸線沿いを走る136号線沿いは、通称「マーガレットライン」と呼ばれているようで、花卉栽培としてのマーガレットの出荷量は日本一とのことで、とくに町営ガーデン内のマーガレットはなかなかみごとということです。

わさびのほうは、河津町の山沿いの各所にあるワサビ田でみれるようですが、その花というのは私も見たことがないので、これも一度見てみたいものです。3月というと河津桜はそろそろ終わりごろかもしれませんが、河津には通常のソメイヨシノなども植えられているでしょうから、桜の見物と一緒にワサビのほうも見物に行くとよいかもしれません。

その他の梅やつばきといった花は、我々が住んでいる伊豆市近隣の町ばかりなので、これは今すぐにでも行けます。昨年は引越し前でどたばたしていてじっくり味わうこともできませんでしたから、ぜひ今年は堪能したいと思います。

なお、もう終わりかと思っていたのですが、南伊豆町や下田ではまだまだアロエの花が楽しめるようです。とくに、下田の爪木崎のやや北側にある「白浜アロエの里」のアロエは、昨日9日がほぼ満開だったようで、この週末の連休の最終日の14日まで「アロエ祭り」が開催されているとのこと。

今日はまだ風邪気味ですが、少しよくなったら週末に出かけてみるのもよいかもしれません。

この伊豆白浜には、その昔からアロエが多く自生していて、民家の軒先などにも必ずといっていいほど植えられているとのことです。

アロエといえば、外来種として知られる熱帯植物ですが、伊豆では1300年も前から栽培されているそうで、石廊崎にある石室権現という神社にある碑文には、この当時既に飢饉や疫病に苦しむ村人を役の行者がアロエをもって救った、という記録が記してあるということです。

1300年前というと8世紀初頭の飛鳥時代のことですから、このころ既に伊豆に海外からこうした植物を持ち込んできた便船があったということなのでしょうか。あるいは、畿内や九州あたりに伝わったものが陸路でここまでもたらされたのかもしれません。

「アロエ」というと何やら外来植物のような響きがありますが、ここまで古い歴史があるとするともう立派な「日本産植物」といってもよさそうです。

とはいえ、その原産地はアフリカ大陸南部で、とくにマダガスカル島に集中して生育する植物なのだそうで、古い時代に中国に入ってきたときは、そのもともとの呼称である「Aloe」の「ロエ」を漢字で音訳して「蘆薈」という字を当て、「ろかい」と称したそうです。

このため、8世紀以降の日本でもアロエをさす漢字はこれがそのまま使われて定着したようですが、その読みの「あろえ」は原語のまま伝承されたようです。ただし、沖縄ではこの漢字の中国風の発音がそのままなまり、「るふぇー」と発音するようです。

日本への伝来が中国を介してなのか、海外から海を渡ってそのまま直接入ってきたのかはわかりませんが、現在は九州、瀬戸内海、伊豆、千葉と主に太平洋側に多く自生しているそうで、もともとがアフリカのような温暖な地方で生育する植物ですからこうした温かい地方ばかりで生育しているのは当然といえば当然です。

その種類は、300種類以上もあるそうですが、日本では「キダチアロエ」と「アロエベラ」という種類が多く、そのほかアロエ栽培が趣味の人々の間では「サポナリア」とか、「不夜城」とかいった品種のアロエが観賞用によく栽培されているということです。

ちなみに、このほとんどがオレンジ色の花を咲かせますが、アロエベラの花は黄色だそうで、伊豆白浜に数多く自生するキダチアロエは、少し赤みがかったオレンジ色の花が咲きます。

自生のものはもとから町のあちこちで見られていましたが、20数年前にこのアロエを使って村興しをしようと、伊豆白浜でも特にアロエがたくさん自生していた場所を「白浜アロエの里」と名づけて村人が手入れを始め、いまでは結構な観光名所に成長しました。

村全体でいったいどれくらいの本数があるのかは明らかにされていないようですが、海岸線沿いだけでなく、各家々の庭先にまでアロエが植えられていて、この季節は町中がオレンジ色になるということです。

昨年爪木崎の水仙をみるためにこの近隣を通ったのですが、このときは花の盛りは終わっていたものの、確かに至るところにアロエが咲いており、細い石垣の間の道は右も左もアロエで埋め尽くされており、これが満開だったらきれいだろうな~と思ったものです。

この「キダチアロエ」という名称は、「木のように立つアロエ」という表現から名付けられたようです。この「白浜アロエの里」があるのは、下田市白浜の「板戸一色(いたどいちき)」という小さな漁村であり、この「一色」ももしかしたら、木立アロエの赤い色のことをさすのかもしれません。

ここで見られるアロエは、数十年経過している株も多く、樹木のように太く成長した幹となっているものも多く見られるそうで、露地でキダチアロエが育つ環境は全国的にも無雪、無霜のこうした場所に限られ、このように群生出来ること自体が稀といいます。

なぜこのキダチアロエがここまでたくさん植えられたかというと、これはやはり飢饉のときなどのための食用にするためだったようです。花は無臭ですが蜜はあり、これはそのまま天ぷらにして食べれるそうです。また葉っぱのほうも食材として加工して食されたり、染料や調味料、化粧水にも使われ、広い用途があります。

地元の女性はアロエの焼酎漬けを寝酒にしたり、化粧水に加工したりして楽しんでいるそうで、こうした利用にあたっては、基本的に皮付きのままそのすべてが用いられます。が、外皮を剥くとゼリー状の「肉」が出てきて、これはそのまま食しても苦味が少ないため、そのまま湯通しして「アロエ刺身」としても食べれるそうです。

いろいろあるアロエの中でもこのキダチアロエは、昔から「医者いらず」といわれ「薬」としてもよく服用されてきており、とくに葉肉を食べると胃が丈夫になるといわれています。一方ではこの葉っぱには「バルバロイン」という物質が含まれていて、これは下剤効果があるそうなので、便秘の人にも効果がある一方で、食べ過ぎると下痢になります。

また、体質によっては胃炎を起こす場合があり、継続して摂取しすぎると、大腸の色素沈着を起こすそうです。色素沈着とはシミやソバカスのことですが、ふだんは目にみえない大腸ですから、別にシミソバカスができてもいいじゃん、と思うかもしれませんが、外から見えないとはいえ、斑模様の大腸になるのって、やっぱいやですよね。

このほかにもこのキダチアロエが、外用薬として傷や火傷に用いられる場合もあるようですが、逆に悪化させた例も報告されているそうで、どんな場合にもOKというわけではなさそうです。

ただ、ドイツの薬用植物の評価コミッションによれば、キダチアロエの葉の中央の柔組織に存在するゲル状物質に関してだけは、痛みや火傷の回復に対して有効性が示唆されているということです。キダチアロエの葉っぱのすべてが薬用になるのではなく、その一部だけがやけどなどに効くということのようです。

実際、このキダチアロエを家に常備しておいて、やけどに塗る薬がない場合にはとっさに利用する家庭も多いようです。事実私も子供のころにやけどをした際、このアロエの葉っぱを折って、その汁を塗りつけたものです。効いたかどうかはよく覚えていませんが……

このほか、専門機関の研究によれば、長期間の多量摂取や12歳以下の小児の摂取には注意が必要だそうで、また、キダチアロエには子宮収縮作用が有るため、妊娠中の使用は避けるべきとされているそうです。

妊娠中・授乳中だけでなく、月経時や腸の病気の場合にはとくに注意が必要だそうで、やけどなどの外用薬として使う以外でこれを食べる場合には、女性や子供さんは気をつけたほうがよさそうです。

なお、キダチアロエは、「日本薬局方」に基原植物として収載されており、その「薬用」効果が認められていますが、これ以外の観葉植物として出回っているほとんどのアロエには、薬効となる成分はほとんど含まれていないそうです。

なので、やみくもにキダチアロエ以外のアロエに薬用効果を期待して皮膚に塗ったり、食べたりするのは意味がないし、場合によっては副作用もあるかもしれないのでやめたほうがよいと思います。

ただ、「アロエベラ」は、「食用」としてはよく使われるようで、テレビCMなどでもアロエ入りのヨーグルトや、化粧品の宣伝を見たことがある人は多いと思います。キダチアロエと同様、「刺身」にしてもいけるそうです。

さて、ここまで書いてきたら、いやがおうでもアロエを見に行きたくなってしまいました。問題はこの風邪をどうするかです。今日明日と少し養生して、元気になったら週末に行ってみようかなと思ったりしています。

が、その週末にはきっと人が多いんだろうな…… アロエをとるか、人ごみを避けて静かに過ごすか、究極の選択が迫られる週末になりそうです……