今日の誕生花は、「ドクニンジン」とあったので、どんな花かいな、と思って調べてみたら、セリ科の有毒植物のひとつだそうで、ちょっと見た目にはパセリにも見えることから「毒パセリ」とも呼ばれるようです。
花言葉は、「死も惜しまず」だそうで、今日3月15日に生まれた人は、そんな献身的な人なのかな~と、思って調べてみると、騎手の武豊さんが1969年の今日生まれています。きっと死をも恐れず、馬を走らせているんだろうな~と思ったりもしますが、確かに乗馬は危険なスポーツには違いありません。
このドクニンジン、かつては日本に自生していませんでしたが、近年ヨーロッパと気候の似た北海道の山野では帰化植物となっていて普通にみられるそうで、このためパセリなどと間違えて採取され、食べた人が死んだ例も報告されているとか。
北海道だけでなく、東日本でもしばしば水辺やどぶなど、水はけの悪い土地で発見されるということで、とりわけ若葉は、パセリや、山菜のシャクと見間違えやすいそうなので、パセリにみえても摘んで持って帰らないように注意しましょう。
とはいえ、ドクニンジンは、鎮静剤や、痙攣止めの用途のために昔から使われてきた薬草でもあるそうで、古代ギリシアや中世アラビアの医学では、関節炎などのさまざまな難病の治療にドクニンジンを用いたといいます。しかし、治療法によっては必ずしも効能が期待できるわけでなく、服毒量も多いと危険が高く、呼吸困難に続いて麻痺や言語障害を引き起こし、死に至りかねないそうです。
この点、今真っ盛りのウメも同じで、ウメの実は漢方薬として使えるそうで、燻蒸(くんじょう)して真っ黒になったものを、「烏梅(うばい)」といい、これを服用すると、健胃、整腸、駆虫、止血、強心などの効果があるということです。
しかし、ウメの未成熟の青い果実の種には、青酸配糖体(アミグダリン)という物質が含まれているため、青ウメを種ごと食べてしまうと、腸内にある細菌が持っている酵素により、この物質がシアンを生成します。
このシアンは実は猛毒であり、これが胃酸によって反応してり有毒性を発揮すると、痙攣や呼吸困難、さらには麻痺状態になって死亡するといわれています。ただ、ほんの少し青ウメを食べたくらいでは、シアンを生成するほど胃酸や胃の消化酵素が分泌されないので、大量の種子をかみ砕く、などといった無茶をしない限りは、青ウメを食べたからといって死ぬ、などということはめったにないようです。
こうした天然にあるシアンをうまく科学的に調合して作られるのが、シアン化合物であり、そのひとつのシアン化カリウムは、いわゆる「青酸カリ」(青酸カルシウム)とも呼ばれ、劇薬の代表選手として最も有名な存在です。
その、経口致死量は成人の場合150~300mg/人と推定されていて、胃酸により生じたシアン化水素が呼吸によって肺から血液中に入り、体内の重要臓器の細胞を「壊死させる」ことで死に至らしめるとされ、このため、青酸カリを飲んで中毒した人の呼気を吸うのは、非常に危険ということです。
実際に飲んだことがないのでよくわかりませんが、摂取した場合の症状としては、めまい、嘔吐、激しい動悸と頭痛などの急速な全身症状に続いて、血液のpHが急低下することによる痙攣が起きるそうです。
致死量を超えている場合、適切な治療をしなければ15分以内に死亡するといい、青酸カリで死んだかどうかは、静脈血が明るい色になって皮膚に浮き出てくるのでひと目でわかるといいます。ちなみに一酸化炭素中毒も同じように、静脈が浮き出てくるそうなので、一酸化中毒なのか、青酸カリで死んだのかわからないときには近づかないようにしましょう。
ただ、青酸カリで死んだ人の死体の死斑は必ずしも明るいピンク色ではないとする説もあって、「青酸ガス」による中毒の死斑であれば間違いなくピンク色なのだそうですが、口から青酸カリを飲んだ場合には体表面に特徴的な死斑が現れない場合も多いのだとか。
どのみち、ご縁がないことを祈りたいクスリですが、もし、これから警察官にでもなろうというご希望がある方は覚えておいたほうがよいかも。
ついでにもうひとつ豆知識としては、青酸カリを口から摂取して胃酸と反応するとアーモンドまたはオレンジ臭、アンズ臭を発するそうで、ここでいうアーモンド臭とは、収穫前のアーモンドの臭いであり、お菓子に使われるアーモンドエッセンスの甘い香りと異なり、甘酸っぱい香りだそうです。
なので、アーモンドチョコレートを食べた彼、または彼女から甘酸っぱいアーモンドの香りがしたからといって、逃げなくても大丈夫ですからご安心を。
ちなみに、ミステリー小説などで、青酸カリは口から飲まない限り毒性はない、などと書いているものもあるようですが、これは真っ赤な嘘で、実際には経口でも注射でも両方で即死させることができ、青酸ガスの場合は、皮膚からも吸収させることができるといいます。
ただ、胃酸と反応して発生するシアン化水素が死に至らしめる中毒の原因であることから、仮に青酸カリを舐めても、その直後に口内を洗浄すれば毒性を発揮しないそうなので、ここのところをうまく使えば面白いミステリーが書けるかも。
このほかにも、ミステリーでは青酸カリを「あらかじめ塗っておいた」食べ物を、仕掛けた犯人が逃げおおせたあとに、知らずに登場人物が食べて死ぬ、つまりは犯人のアリバイが成立する、なんてのもあると思いますが、実際には空気中では青酸カリは、炭酸水素カリウムや炭酸カリウムに変化してしまうので、これはあまりありえない設定なのだとか。
また、化学変化なんかしていなくても、青酸カリを混ぜた食べ物は、味が強烈なうえ、強アルカリ性なので口の中に激痛が走るため、致死量に至る青酸カリは通常は吐き出されるということで、「私がバナナに塗っておいた青酸カリで、彼は死んだのよ!」 なんて描写も実際にはありえん話なのだそうです。
その昔、ロシア帝国の皇室を牛耳って宮廷人事を意のままにあやつった、「怪僧ラスプーチン」という悪人がいましたが、このおっさんに宮廷貴族たちが危機感を抱き、ついに暗殺計画が立て、ラスプーチンを晩餐に誘い、彼の食事に青酸カリを盛ったといいます。
しかしラスプーチンは毒入りの食事を平らげた後も、まったく平気の平左だったそうで、まるでその態度にも変化を示さず、周囲を驚愕させたといいます。ラスプーチンは、甘いものが何よりも好物で歯を磨く習慣がなかったため、虫歯だらけだったそうですが、この暗殺の時もお菓子に青酸カリを盛られたといいます。
おそらくはこのケースでも、お菓子に入れた青酸カリが時間が経って化学変化を起こして無害になったため、食べても大丈夫だったのでしょうが、こうした事実もあったことから、ラスプーチンは、「怪物」といわれるようになっていったようです。
しかし、その怪物伝説は、ウソではなかったらしく、その後何度も暗殺計画があったにもかかわらず、その都度死からよみがえり、その最後のときも、食後に祈りを捧げていたラスプーチンに背後から鉄製の重い燭台で、頭骨が砕けるまで激しく殴打された上、大型拳銃で2発の銃弾を撃ちこまれたといいます。
それでも反撃に出るラスプーチンに対してさらに2発、計4発の銃弾を受け、倒れたところに殴る蹴るの暴行を受け、最後には窓から道路に放り出されたとか。それでも息が残っていたので、絨毯で簀巻きにされ、さらには凍りついた近くの川まで引きずられ、氷を割って開けた穴に押し込まれ、これでようやく怪物も死んだか、と暗殺者は思ったようです。
ところが、驚くなかれ、三日後にラスプーチンの遺体が発見され、警察の検視の結果、肺に水が入っていた事から死因は溺死とされたといいます。
川に投げ込まれた時もまだ息があったというわけで、もし簀巻きから解放されて岸に泳ぎ着いていたら、歴史は変わっていたやもしれず、本当にゾンビのような強靭な肉体を持った人物だったことがわかります。
……さて、毒の話を書いていたらだんだんとエスカレートしてきて、自分でも気持ち悪くなってしまいました。
今日は根を詰めて仕事してきたので、少々疲れ気味。息抜きのつもりでしたが、返って疲れてしまいました。明日以降はもっと楽しい話題にしましょう。
でもみなさん、けっして青ウメを大量にかじらないようにしましょう。