先週のこと、そろそろ河津のバガテル公園のバラが見ごろだということで、二人して行ってきました。
去年に次いで二回目のことであり、何時ごろいったかな、と昨年のブログを見てみると、6月の上旬になってから出かけています(6/8ブログアップ)。
なので、温暖な河津のような場所では、バラの時期としては少し最盛期を過ぎている、というかんじであり、たしかに終わってしまっていたバラも多かったように思います。
で、今年はどうなのよ、ということなのですが、さすがに「旬」ということで、ほとんどのバラが満開状態であり、いやはや堪能しました。お天気も昨年はぱっとしないものでしたがこの日は晴天であり、青い空と色鮮やかなバラとのコントラストが楽しめました。
園の入口付近に入っただけで、ウッというほどにバラの甘い香りがたちこめており、この匂いが大好きな私はそれだけで酔ってしまいそうです。
一本一本のバラの香りを嗅いで回れるほど、「かぶりつき」でバラが植えられているのもこの公園の良いところ。あぁこれは好きな匂いだ、これは少し甘すぎる、これは上品な匂い……と自分なりに評定を加えながら園内をじっくりと歩くのも楽しく、無論、香りだけではなく、その色鮮やかな花々も本当に素晴らしいものです。
たしか、開園以来10数年経っているはずですが、バラの苗も若いためか勢いがあるかんじがします。本当に今、若い盛りのプリプリといったかんじで、生きのいいここのバラはできるだけたくさんの人に見て欲しいと思います。
この河津バガテル公園は、伊豆急河津駅から車で10分ほどの高台にあります。山間の緩傾斜面の土地をうまく整地して作ってあり、その広さは約5ヘクタール。うちの2haあまりがバラ園(甲子園球場が、1.3ヘクタールのおよそ2倍)であり、ここに1100品種6000株のバラが植栽されています。
左右対称の幾何学模様が特徴のフランス庭園式であり、これはパリのブローニュの森にあるバガテル公園を模して作ったものです。本家の1100種9500本には及びませんが、このパリのほうからも「姉妹園」として認められているそうで、その植樹のノウハウなどもパリ市やバガテル公園協会から直接指導を受けているそうです。
バガテルとはフランス語で「小さくて愛らしいもの」という意味。去年のブログでも書きましたが、初期のパリ・バガテル公園は、18世紀にルイ16世の弟のアルトワ伯爵という人が命令して、建築家のブランジェとその助手に作らせたものです。
それまでのクラッシックなフランス風の庭園ではなく、フランスの田舎の風景を模したものを作りたかったようであり、とはいいながら最初のものの原型は残っておらず、1905年にパリ市が公園を買収したあとは、このころ人気のモネなどの印象派の画家達の影響を受け、初期のものよりもかなり華やかになっているようです。
河津町がなぜこんな山奥に公園を作ったのかはよくわかりませんが、もともと河津町にはたいした産業などもなく、町内を流れる川べりの河津桜に代表される観光産業などに注力してきたという経緯があります。
ほかにも、天城山に近い山奥に河津七滝(ななだる)とよばれる七つの滝があるほか、天城トンネル、河津温泉郷(湯ヶ野温泉、河津七滝温泉)といった温泉施設もあり、街中にはこのほか、間欠泉がある峰温泉という温泉があります。間欠泉のある場所は「大噴湯公園」として整備されており、人気があるようです。
最近では花卉栽培にも力を入れていて、「かわづカーネーション見本園」なるものが河津川沿いで開かれているほか、バガテル公園と同じく花を売りにした公園としては「かわづ花菖蒲園」も整備されていて、バガテル公園の観覧券とこの菖蒲園の観覧券を合わせて格安にセット販売していたりしています。
山だけでなく、今井浜海水浴場という海洋リゾートまであって、ここにも今井浜温泉という温泉施設があり、海あり山あり、川あり、花あり温泉ありで、ありありだらけです。なので、どちらかといえば地味な印象の河津なのですが、もう少し脚光を浴びてもいいのかな、という気がします。
ただ、さすがに花のないオフシーズンには人は少ないだろうなーと。ところが、このあたりは町の人達も考えているようで、バガテル公園の入口付近には最近大きな温室が作られていました。おそらくここで、花の少ない季節に地場産業として定着している花卉栽培技術を使ってカーネーションなどを見せようというのでしょう。
このほか、冬場だからこそ強みの出る温泉施設の充実も図ろうとしているみたいであり、この辺、いつも思うことですが、花と温泉で町の活性化を図ろうとしている修善寺とどこか似ています。もっとも、修善寺には海はなく、その代りにたくさんの歴史施設があるという違いはありますが……
それにしても、バガテル公園の園内各所は、いつもきれいに清掃されていて気持ちがよいことこの上ありません。もともとがフランスの庭園を意識して作られ、バラの栽培技術もあちらから導入しているだけあって、こういうのがフランス式の公園整備なんだろうな~と思わせるようなものがあります。
あちこちに、花を寄せ植えにしたワゴン車が置いてあって、これがまた公園の景観を形作る良いアクセントになっており、レストランやカフェやショップなどの合間あいまに植えてあるプラタナスやポプラの木の佇まいもまた魅力的です。
が、食事施設をもう少し充実させてほしい気がします。喫茶施設は十分だと思うのですが、ここのレストランのランチは2300円、入園料と合わせて2800円というのは、バラが一杯咲いている季節はともかくとして、花の季節が終わったらどうなのかな、という気がします。
もっとも他にもパスタやピザ、サンドといった単品もあるようですが、全体的にやや高め。メニュー自体も女性向を意識されているようにも思いますが、男性陣としてはもう少しボリュームのあるものが欲しいところ。まぁもっとも、こういうところですから、そばやラーメン、かつ丼といったメニューが並ぶのも考え物ですが……
これらカフェやレストランなどのお食事どころの横には、バラの苗を直売しているガーデニングショップもあります。一般のホームセンターや園芸店では置いていないような品種のバラも置いていて、買うとしたらどれかな~と見歩くのも結構楽しいもの。
新苗が1000円、大苗が3000円というのも、やはりホームセンターよりもやや高めですが、それでもこれだけの品種がそろうホームセンターはあまりないでしょう。
昨年は、この中から二株の新苗を買って持ち帰り、一年間鉢植えで養生し、つい先日庭に下したばかりです。そのうちの一つが、ついこの間大輪の花を咲かせ、フルーティな匂を周囲に振り撒いておりましたが、いやはやバラはやはり手間暇がかかります。
水やりや肥料、病虫害対策が結構大変であり、放っておいても花が咲くサツキやあじさいとは大違いです。それだけ手間暇かけたあとに咲いたものを見ると本当にうれしくなりますが、古今東西、そのバラづくりだけに生きがいを見出している人も多いようで、日本でも多くのコンテスト(品評会)があったりします。
この薔薇、ヨーロッパが原産かと思ったら、日本はバラの自生地として世界的にも知られているそうで、品種改良して近年流通するようになったバラの原種は、ノイバラ、テリハノイバラ、ハマナシなどだそうで、いずれも日本を原産とするバラです。
古くバラは「うまら」「うばら」と呼ばれ、「万葉集」にも「みちのへの茨(うまら)の末(うれ)に延(ほ)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」という歌があります。
ヨーロッパから入ってきたものは、江戸時代初期に、仙台藩の支倉常長が慶長遣欧使節として渡欧したときに持ち帰ったバラが最初のものとされています。このときのバラは、伊達光宗の菩提寺の円通院にある厨子にも描かれているそうで、このためこのお寺さんは現代でも「薔薇寺」と呼ばれて親しまれているとか。
その後、江戸時代には身分を問わずに流行しましたが、現代のようなも大輪のものではなく、「コウシンバラ」「モッコウバラ」などのツルバラが多かったようです。
明治期以降、第二次世界大戦前までは、バラはまだ「高嶺の花」であって、庶民が栽培するようなものではありませんでしたが、戦後すぐの1948年には銀座でバラの展示会が開かれ、さらには1949年には横浜でバラの展示会が開かれるようになります。
こうしたことから鳩山一郎や吉田茂といった有名人でバラの愛好する人も増え、戦後の高度成長の波に乗り、バラは嗜好品として庶民にも普及していくようになりました。
また、鉄道会社が沿線開発の一環として、バラ園の造営を行うようになり、各地にバラ園が開園されるようになりました。これを一番最初に始めたのが京阪電鉄であり、同社は「東洋一のバラ園」の造園計画をぶち上げ、「ひらかたばら園」という大きなバラ園を実際に開園しています。
ちなみに、この京阪電鉄が行ったバラ事業はその後、「京阪園芸株式会社」として発展し、現在でも多くのバラの苗を栽培して、各地のホームセンターに卸しています。お近くのお店などで、この会社の名前が入っているタグがついたバラ苗を見たことがある人が多いのではないでしょうか。
「ひらかたばら園」のほうも同社の運営により、現在は「ひらかたパーク」という遊園地として発展し、現在もバラの季節には多くの観光客で賑わっているそうです。
……とこの後もバラの話題を続けようかとも思ったのですが、バラについては昨年の7月に「バラ・薔薇」の題で結構書いているので(7/25)、もうこのくらいにしておきましょう。いろいろな有名人の名前にちなんだバラ品種が開発されている、との話題などでした。ご興味のある方はそちらもどうぞ。
さて、この上天気も明日一杯くらいのようです。来週からは梅雨の前哨戦なのか少し天気の悪い日が続いていくようなので、お出かけはできるだけ今日明日にしましょう。できれば、前回見損なった中伊豆の「大見城」を見に行こうかと思いますが、もしかしたら萬城の滝まで足を延ばすかもしれません。
そういえば、伊豆へ来てまだ「滝シリーズ」を制覇していないので、今年はぜひチャレンジしたいと思います。暑くなるこれからはぴったりのテーマです。乞うご期待。