むかつく力学


今日は、雨の特異日だそうです。

以前にも雨だったか晴れだったか忘れましたが、特異日だというので詳しく調べてみたところ、実際にはぜんぜん特異日でもなんでもない、ということがあったので、今回もほんとかな、と思って再度調べてみたところ、確かに統計的にも全国的で雨の降りやすい日のようで、とくに東京では過去に50%以上の確率で雨が降っているようです。

で、伊豆はどうなのよ、ということなのですが、こちらは今日は雨にはならないようです。ただ、お天気にも恵まれなさそうで、終日曇りということです。昨日までの天気予報では今日は多少なりとも日が射すというものだったので期待していたのですが、がっかりです。

この特異日というのは、説明するまでもありませんが、平日と比べて偶然とは思われないほどの高い確率で、天気、気温、日照時間などに特定の気象状態が現れる日のことです。外国でも認められており、英語では“singularity”といいます。

特異日がなぜ起こるかについてははっきりしていません。が、幾つか仮説は立てられていて、その一つには彗星説があります。

彗星の通過した後には細かな宇宙塵の帯が残りますが、地球は毎年ほぼ同じ時期にいくつかの彗星の残した塵の帯の中を通ることになるため、この塵が定期的に地球の天気現象にも影響し、それが特異日の原因となっているという説です。もっともらしくあるのですが、無論科学的に証明されているわけではありません。

このほか、季節変化により、大気の大きな流れがある特別の日に急に天候が変わることによって特異日が生ずる、という人もいるようです。これももっともらしいのですが、実証されているわけではなく、これも仮説の域を出ません。

結局のところ、特異日には直接的な原因は存在せず、単なる偶然ではないか、とも言われています。

サイコロの目が出る確率が6分の1であるのはよく知られており、これは科学的にも間違いないことです。ただし、これは多くの試行を行った場合のことであり、少数回では特定の目が続けて出たり、集中したりすることがあります。

これよりももっと複雑な乱数表で数字を決める場合にも特定の数が集中することがあり、また円周率の並びの中にも、所々に特定の数が連続することが見られるといい、こういう現象を「群発生」と言うそうです。

なので、特異日も、実は単なるこうした群発生に過ぎないのではないかというわけです。

が、いずれの説ももっともらしくはありますが、なんとなくすっきりしません。所詮は仮説にすぎず、いろいろある特異日をすべてをこのどれかにあてはめて説明できるわけでもなく、結局のところ特異日発生の原因についてはまったく不明、というのが実情のようです。

しかし、明らかに特異日ではないとされるものはあります。

例えば10月10日は東京の晴れの特異日であり、このために1964年の東京オリンピックの開会式の日はこの日に設定された、という俗説があります。しかし、10月10日は統計的にみても別に晴れが多い日とは言いがたいそうです。

これはむしろ、この日が東京オリンピックの開会式に選ばれたところたまたま晴れ、これ以降、この日が晴れの特異日であると思いこまれるようになったためだと思われます。

似たような思い込みの中には、七夕もあります。これは7月7日は毎年のように七夕にもかかわらず晴れる確率が低いので、実は逆に雨や曇りの特異日ではないか、とういうものです。

しかし、実際に7月7日が雨や曇りになりやすいかというと、特段そういうこともなく、これは単にこの日が梅雨時の間であるためであることが多く、この日を含むこの期間が全体が雨や曇りが多いからにすぎません。

そのほかにもよく特異日といわれるのが、「センター試験の行われる日」です。この日は大雪の特異日」といわれているようですが、実際は過去にセンター試験の日に大雪になったことがあり、ニュースとして大々的に放送されたために、これが人々の記憶によく残っているだけにすぎません。

しかも、センター試験の行われる日は毎年異なりますから、そもそもがセンター試験の日は大雪の特異日というというのは、むしろ「ジンクス」に近いものがあります。

このジンクスもまた、われわれの日常でよく取沙汰されるものです。英語では ” Jinx ” と書きます。語源ははっきりしていないそうですが、ギリシア語のjynxが語源ではないかといわれています。これはキツツキの一種だそうです。

日本語では蟻吸(アリスイ)と書き、その名前の通り、地表や朽木に穴を開け、舌を伸ばして蟻を食べるそうです。背中にヘビに似た模様があり、自らの首を180度回転させ真後ろを向けることができることで知られており、これは摂餌の際に周囲を警戒してのためのようですが、その様子が不気味であることから、昔から不吉な鳥とされてきました。

このことから、jynxという用語がしばしば魔法や占いにも使われるようになり、やがては「縁起の悪い言い伝え」に変化していったようです。

従ってもともとはあまりいい意味のものではなく、ジンクスの本来の語義は「縁起が悪い」、「運が悪い」など悪いといったものですが、日本においては良い縁起という意味でも使われることが多いようです。

生活に密着した教訓・習慣・法則といった類のものですが、だからといってすべてが科学的根拠があるわけでもなく、昔からの経験に基づき唱えられている伝説にすぎないものも少なくありません。また、縁起担ぎに関するものでは、呪術的な発想に基づくものも多いようです。

どんなものがあるかといえば、例えば日本では、「三代目が家を潰す」というのがよく言われることです。

「売家と唐様で書く三代目」という川柳が江戸時代からありますが、これは、初代が苦心して財産を残しても、3代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれているという意味で、つまり、遊芸にふけって商いの道をないがしろにし、没落した商人を皮肉ったものです。

このほかにも「忌み数」というのが代表的なものであり、4は「死」、9は「苦」に通じることから、縁起が悪いということでホテルや病院の部屋番号や階層、鉄道車両の番号等で使用を避けることがあります。

自動車のナンバープレートでは、末尾「42」と「49」を飛ばして付番されており、車種を示す平仮名も「し」は「死」を連想させるので使われていません。ちなみに、「へ」もまた「屁」を連想させるため使われていませんが、これは本当の話です。

ただ、葬儀業者の電話番号は「1142(いい死に)」「4142(良い死に)」「4242(死に死に)」にしているところもあるということですが、これはちょっといただけません。

政治経済でいくと、知事経験者は他の都道府県の知事選に出馬しても勝てないというのがあります。これは、1947年に知事が公選制となり普通選挙で選出されるようになって以降、複数の都道府県で知事を歴任した人物はいないためです。

政変が起こると東京では雪が降るというのがありますが、これは2.26事件の日に雪が降ったり、赤穂浪士の討ち入りの夜が雪であったことなどに由来し、このほかにも選挙の月には宿泊施設の客が減る、というのはホテル・旅館業界で信じられているジンクスです。

スポーツの世界は、最もジンクスの多いジャンルでしょう。代表的なものに、「2年目のジンクス」というのがありますが、これは1年目に活躍した選手は2年目に活躍できないというものです。

このほか、オリンピック日本選手団主将は好成績を残せない、というのもあります。柔道の石井慧選手は、ロンドンオリンピックのとき、このジンクスを信じていたため主将に指名されることを拒否したそうで、この時は結局、やり投げの村上幸史選手が主将になりました。

大相撲は日本の伝統芸でもあり、ジンクスのオンパレードです。例をあげるとキリがありませんが、よく言われるのは「弓取式」を務める力士は出世しないというもの。これは弓取式を任される力士には、大銀杏を例外的に許されるためだといわれています。

大銀杏は関取の特権であり、弓取力士はまだ出世もしていないのにこれを許されて大勢の人達の前で土俵をつとめることができるわけです。このため、その後どうしても関取になってやろうとする強い意識が薄れてしまうことが原因でその後伸び悩むのだと取沙汰されています。

実際、弓取り力士の最高記録は、小結まで上がった巴富士という関取だけだそうで、大相撲ではこのほかにも「平幕優勝に大関なし」というのもあります。

野球もジンクスが多い競技です。「ラッキーセブン」とは、7回の攻撃で得点が入りやすいことであり、これは試合の終盤に入り先発投手の疲れが見え始めるころであるためといわれていますが、はっきりした根拠ではありません。

このほか、「代わった所に打球が飛ぶ」「野球は9回二死から」なんてのもよくありますが、意外に知られていないのが、「中日ドラゴンズが優勝すると政変が起きる」というもの。

中日ドラゴンズが優勝し、日本一になった1954年には、造船疑獄によって吉田内閣が退陣しており、このほか1974年優勝時の金脈問題による田中内閣退陣、1982年優勝時の鈴木内閣退陣、1988年優勝時のリクルート事件などなど枚挙のいとまがありません。

このほか、政変ではありませんが、1999年にも、中日が優勝を決めた日に茨城県の東海村でJCO臨界事故が起きており、2004年には新潟県中越地震が発生しています。そういえばおととし2011年にも中日が優勝しており、この年には東日本大震災が発生しています。

今年は、今のところ中日はあまり調子がよくなさそうなので、政変や災害は起こらないかもしれませんが、万一優勝してしまうと今度は富士山が噴火してしまうかもしれないので、私としては優勝して欲しくありません。

似たようなジンクスは読売ジャイアンツにもあり、巨人が優勝した年、またはその翌年は景気が悪くなる、というのがあります。

昭和50年代以降においては、巨人が優勝した年またはその翌年において、日経平均株価が大きく下落する年が重なっており、そういえば昨年巨人が優勝しており、衆議院選挙での民主党の大敗の影響もあり、景気は低迷しました。

逆に阪神タイガースが優勝した年、またはその翌年は景気が良くなるそうです。 阪神が優勝した年において、日経平均株価が大きく上昇する年が重なっているというものですが、果たして今年はどうでしょうか。今のところ阪神は好調のようです。

芸能界にも無論ジンクスはあります。AKB48には「彩」の呪いというのがあるそうです。

AKB48及び系列各グループで、名前に彩の字があるメンバーはトラブルに見舞われたり、大成出来ずにグループを去るというもので、まず上村彩子が初代チームK発足から2ヶ月後の2006年6月で突然脱退し、高田彩奈も2007年6月に卒業しています。

さらに梅田彩佳は足の疲労骨折で1年余りの休養を余儀なくされ、菊地彩香は恋人を作っていた事が発覚したことにより解雇。研究生の林彩乃・石井彩夏・伊藤彩夏も正規メンバーになれぬまま卒業。

「総選挙26位の呪い」というのもあり、これは選抜総選挙で26位になったメンバーは、その後トラブルに見舞われるなどしてグループを去るというもの。

第1回から第3回まで3回連続で26位となった平嶋夏海が男性との私的写真流出を理由にAKB48を脱退したことからこの呪いが生まれ、第4回でも26位に選ばれた増田有華がDA PUMPのISSAの自宅に宿泊したことがもとでAKB48及びDiVAから脱退しています。

先ごろ行われた、今年の「栄えある26位」は、昨年47位だった宮脇咲良ということですが、果たしてどうなることでしょう。

日本以外の諸外国にも当然ジンクスはあります。代表的なものでは、欧米人は13を嫌います。イエス・キリストの最後の晩餐に出席した人数が13人であり、彼を裏切ったのが13番目の弟子だったことに由来しています。このほかにも「666」は悪魔の番号であるとして使用を控えることが多いのは良く知られていることです。

黒猫が前を横切ると災厄に見舞われるというのも有名ですが、イギリスでは逆に黒猫は幸運の象徴とされています。

この黒猫による災難の例としては、メジャーリーグのシカゴ・カブスが最大8ゲーム差をひっくり返されリーグ優勝を逃したという史実が有名で、この事件は ” The Black Cat ”としてアメリカではよく知られています。

1969年9月9日のニューヨーク・メッツ戦でネクストバッターサークルにいた主将のロン・サントの後ろを、突然どこからやって来たのかひょこひょこと黒猫が横切り、そのためかどうかその試合を落としたのをきっかけとして、その後のペナントレースで大失速したというものでした。

同じアメリカでは、大統領選挙の年のワールドシリーズで、アメリカンリーグ所属チームが勝てば共和党が、ナショナルリーグ所属チームが勝てば民主党が勝利する確率が高いというジンクスもあります。

同じアメリカの政治がらみでは、“末尾0(ゼロ)年”の選挙で選出されたアメリカ合衆国の大統領は、暗殺や病死などで任期を全う出来ないといわれており、これは「テクムセの呪い(Tecumseh’s curse)」といわれています・

これは、第9代アメリカ合衆国大統領ウィリアム・H・ハリソンの肺炎による死去から始まるアメリカ合衆国大統領の一連の死に関する呪いです。

この呪いは、部族の領土を白人に奪われ、1811年にウィリアム・ハリソンらによって殺されたインディアン部族、ショーニー族の酋長テクムセによるといわれており、その後1840年から1960年までの間に20で割り切れる年に選出された大統領はみんな在職中に死去しています。列記すると以下の通りになります。

1800年 トーマス・ジェファーソン、任期満了、退任17年後の1826年死去。
1820年 ジェームズ・モンロー、任期満了、退任6年後の1831年死去。
1840年 ウィリアム・H・ハリソン、1841年4月4日に肺炎で死去。
1860年 エイブラハム・リンカーン、1865年4月14日に暗殺された。
1880年 ジェームズ・ガーフィールド、1881年7月2日に暗殺された。
1900年 ウィリアム・マッキンリー、1901年9月14日に暗殺された。
1920年 ウオレン・G・ハーディング、1923年8月2日に心臓発作で死去。
1940年 フランクリン・ルーズベルト、1945年4月12日に脳溢血で死去。
1960年 ジョン・F・ケネディ 、1963年11月22日に暗殺された。

ただ、これ以降、ロナルド・レーガンが1980年に選出されていますが、直後の1981年3月30日に暗殺未遂に遭いながらも2期8年の任期を全うし、退任15年後の2004年に死去しています。また、2000年に大統領に就任したジョージ・W・ブッシュもいくつかの事故には遭っていますが、任期満了し、存命中です。

このため、現在では「テクムセの呪い」による過去の大統領の不慮の死は、単なる偶然といわれるようになりました。が、未だに「テクムセの呪い」を信じる人は多く、こうした人達はロナルド・レーガンについても亡くなりはしなかったものの、暗殺未遂事件があったことを例にあげて反論しています。

ただ、彼が在職中に死ななかったことにより、「テクムセの呪い」が解けたという人もおり、レーガン大統領が銃弾を受けながらもわずか1インチの差で生き残ったことで、それが破られたと考える人たちもいるようです。

いくつかのキリスト教団体は「呪い」を真剣に考え、2000年選出のブッシュ大統領も災厄から守られるように祈願していたといい、この祈願は1920年以来ずっと続けられているそうです。

このほかの諸外国でのジンクスで有名なのは、スポーツの世界で、世界選手権自転車競技大会で優勝しマイヨ・アルカンシエルを獲得した者は、翌年成績がガタ落ちしたり不幸に見舞われるというのがあります。

マイヨ・アルカンシエルといのは、は世界選手権自転車競技大会の優勝者に与えられるジャージのことです。五つの大陸を表す緑、黄、黒、赤、青のストライプが襟と袖、胴回りにあしらわれています。

このジンクスは「アルカンシエルの呪い」と呼ばれていて、実際このジャージを手にした選手が翌年には大きく成績を落としたり、またなぜかレース中の落車事故やメカトラブルが頻発したり、レース外でも家庭不和や事故、病気に罹患するなどのトラブルが起きることが多く、呪いは本物だとまことしやかに噂されたりしています。

ただ、これはこの優勝者はその後1年間、アルカンシエルを着用して全てのレースに出場することが許されるなど優遇され、最も目立つ存在となるため、他チームからは実力者とみなされて厳しいマークに遭いやすくなるうえ、マスコミからの格好の標的とされるために重圧に耐え切れなくなって調子を落とす場合が多いためともいわれています。

このほかヨーロッパで古くから信じられているものに、第九の呪いというのがあります。これはクラシック音楽の作曲家が「交響曲第9番を作曲すると死ぬ」というジンクスであり、ベートーヴェンが交響曲第9番を完成させた後、交響曲第10番を完成することなく死亡したことに由来しています。

実際、「交響曲」を作曲するのには長い時間と体力・精神力を要し、さらに作曲家が実際に創作を行える時間を考慮すると、9曲程度が限界であるという説もあります。

グスタフ・マーラーは、この「第九の呪い」を恐れて、交響曲第8番の完成後次に取り掛かった交響曲を交響曲として認めず「大地の歌」と名づけたそうです。それでも死ななかったため、なーんだ大丈夫じゃないか、と安心して「交響曲第9番」を作曲した後で死んでしまったという逸話があります。

このほか「交響曲第9番」作曲と前後して死去した主要な作曲家として、シューベルト、ブルックナー、ドヴォルザーク、ヴォーン・ウィリアムズ、シュニトケ、ヴェレスなどがいます。

私は、最近何かと話題になっている盲目の日本人作曲家、佐村河内守(さむらごうちまもる)さんは大丈夫だろうかと心配してしまいます。

耳が聞こえなかったといわれるベートーヴェンの再来とも言われる天才作曲家で、数千枚も出れば大ヒットだといわれているクラシック音楽の世界で、彼が創った交響曲第1番のCD売上はオリコン週間総合チャートで2位を獲得し、その後も売上を伸ばし続け、2013年5月現在10万枚を記録するヒット作となっています。

今後いくつ交響曲を作曲されるかわかりませんが、何ごともなく活躍されるよう願いたいところです。

ところで、こうした特異日やジンクスといった人々の思い込み?偶然?はすべて「マーフィーの法則(Murphy’s law)」で説明がつく、ともいわれます。

マーフィーの法則とは、先達の経験から生じた数々の経験則をユーモラスにとりまとめたものであり、アメリカで発祥し、日本でも1980年頃から計算機科学者を中心に知られるようになり、1990年代前半に広く流行しました。「都市伝説」の類ともいえますが、中には重要な教訓を含んでいるものもあります。

その起源となったのは、“Everything that can possibly go wrong will go wrong. “というあるアメリカ人が語った言葉であり、これを邦訳すると「不都合を生じる可能性があるものは、いずれ必ず不都合を生じる」という意味になります。

「マーフィーの法則」という名は、オハイオ州デイトンのライトフィールド基地にある空軍研究所に勤務していたエンジニアのエドワード・アロイシャス・マーフィー Jr.(Edward Aloysius Murphy Jr.)大尉の名前を採ったものです。

この言葉は、マーフィー大尉が「「線形減速に対する人間の耐性」という軍の実験を行っていたときに発せられました。簡単に言うと、後ろ向きに座ったまま航空機を飛ばしたときにその姿勢で人間にどんな負荷がかかるか、とう実験だったようです。

1949年5月、カリフォルニア州のミューロック空軍基地に来ていたマーフィーは、この実験の最中にあるトラブルに遭遇します。そして誤作動を起こした装置を調べているうちに、それが誰かがこの実験装置に間違ったセッティングをしていたためであることを発見します。

ここで彼の言ったセリフが先の“Everything that can possibly go wrong will go wrong. “であり、また “If there is any way to do it wrong, he will.” 「もし失敗する方法があるとすれば、かならず誰かがその方法で失敗する」と語ったとも言われており、これらの言葉がその後マーフィーの法則の土台となっていきました。

その後、ノースロップという航空機の開発者でありNASAの前身のジェット推進研究所にも勤めたジョージ・E・ニコルズがこれを「マーフィーの法則」と命名し、軍向けのある論文の中で公表しました。

その結果、この「法則」は軍部内に広まるようになり、やがて軍内にとどまらず、広く全米の各種技術雑誌から一般雑誌・新聞の話題へと広がって行っていくようになります。

そして1977年には、アーサー・ブロック(Arthur Bloch)という人が、「Murphy’s Law and Other Reasons Why Things Go Wrong (マーフィーの法則と誤った方法で行なわれる他の理由)」という題名で本を出版し、これは全米のベストセラーにまでなりました。

この本には、マーフィー大尉が最初に発したことばだけでなく、他の様々な表現も合わせて掲載されており、それらはマーフィー大尉が語った最初のことばを要約した“ If it can happen, it will happen.(起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる)” が基本になっています。

この本の中には例えば、次のような表現があります。

“Anything that can go wrong will go wrong.””Everything that can possibly go wrong will go wrong.”

「うまく行かなくなり得るものは何でも、うまく行かなくなる」「何事であれ失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する」という意味であり、なかなか含蓄があります。

このほかにも、”If that guy has any way of making a mistake, he will.”というのがあります。

「何か失敗に至る方法があるとすれば、人は結局はそれをやってしまうことになるだろう」という意味ですが、このほかにも、

「もし一つ以上の作業手順があるとして、その中にひとつでも結果をだいなしにするものが含まれているとするならば、結局は誰かがそれを実行することになるだろう ”If there’s more than one way to do a job, and one of those ways will result in disaster, then somebody will do it that way.”」、といったものや、

「私が洗車しはじめるといつも雨が降りはじめるけれども、実は私は雨が降って欲しくて洗車をしているんだ」”It will start raining as soon as I start washing my car, except when I wash the car for the purpose of causing rain.”」というのもあります。

このマーフィーの法則はその後世界的にも大反響を起こすようになり、とくに科学の世界でももてはやされるようになります。

同じアメリカの科学雑誌“Astounding Science Fiction Magazine”主に数学や情報科学等の広義の自然科学全般にあてはまる「マーフィーの法則」を1957年に募集したところ、その後2年以上もの間、投稿が殺到したといいい、同誌はこれらをまとめて、「フィナグルの法則(Finagl)」というタイトルで出版しました。

その中には、

「うまく行かなくなりうるものは何でも、うまく行かなくなる-しかも最悪のタイミングで “If an experiment works, something has gone wrong”」とか、

「もし実験自体が成功したのであれば、それはその実験過程で何らかの失敗をしたからだ “No matter what result is anticipated, there will always be someone eager to misinterpret it.”」

といったウィットに富んだものも多く、このほかにも「どういう結果が予想されても、誰かが必ず結果を曲解しようとする」等々、何かとストレスの溜まりやすい科学者なら、日頃のうっぷんを一気に晴らしくれそうな、あるいは自分の失敗を笑い飛ばしてくれそうな名言が数多く並んでいます。

こうした名言を眺めていると、我々が偶然に起こったと考えているものも実はそれなりの原因があって起こっていることだ、と考えられるようになってくるから不思議です。

やれ特異日だジンクスだと言われてきたものも、実は確かに何か要因があってのことだと考えれば、たとえその原因がわからなくても「必然」のような気がします。

だとすれば、今日という日が雨の特異日というのも何か必ず要因があるに違いありません。
何であるかは説明できませんし、わかりませんが、ともかく何か理由があってのこと……
そう考えるだけでいいのではないでしょうか。

さて、今日は何やら謎めいた話になってしまいましたが、最後にもうひとつだけ、「マーフィーの法則」の物理学版として「開発」されたことばを紹介しておきましょう。

「物の振る舞い」についてとりまとめた“Gerrold’s Laws of Infernal Dynamics”という本に掲載されているもので、これは「むかつく力学」というタイトルに邦訳されています。

それによると、

1.運動している物体は、誤った方向に動いている。
2.静止している物体は、誤った位置にある。
3.ある物体を正しい方向に動かす時に、またはある物体を正しい位置におく時に要求されるエネルギーは、貴方が期待するより多く、しかし遂行をさまたげる程ではない。

だそうです。なるほど……ここでじっとしているのも動きだすのも、なんとなく間違っているような気がしてきました。妙にむかつきます……