修善寺へ

純和風建築の保養所・・・

伊豆高原から帰ってきて、一日じっくり休んだその翌日。息つく間もなく今度は、N社さんのご紹介の修善寺の物件を見るため、再び伊豆へ。

東京の多摩地方から伊豆へ向かうルートは大きくわけて二つ。一つは、多摩から南下して厚木へ出て、小田原厚木道路経由で伊東方面へ抜けるルート。もうひとつは、同じく厚木から東名高速道路に乗って、沼津インターチェンジで出てから南下するコースです。

熱海や伊東、伊豆高原といった東伊豆へ行くには前者のほうが便利。しかし、修善寺へ行くには、東名高速道路を経て行く方がよりスムースに現地に到着できます。高速料金がかかるのが癪ですが、今後、多摩と伊豆を行き来することも頻繁になれば東名を使う頻度も多かろう、とも思い、試すつもりで東名に乗ることに。

その日や水曜日。道はトラックでごった返していて、足柄インター付近まではかなり車の量。しかし、西へ向かうにつれ、かなり車の量も徐々に減って快適に。沼津ICで降り、国道1号線をしばらく走ったあと、通称、「下田街道」と呼ばれる国道136号線に入り、南下して修善寺へ向かうことにしました。

梅雨はまだ先のようだけれども、この日も良いお天気で、気温はおとといの伊豆高原以上にあるように思われました。じりじりと肌をさすような陽射しの中、両側に店舗が居並ぶ、136号を韮山、長岡、大仁と南下していく中、突然パーっと開けた視界。そこには・・・

名川として名高い「狩野川」がありました。修善寺あたりで、川幅が300mほどもあるでしょうか。ぎらぎら照りつける太陽の光線を跳ね返すように、こちらは「きらきら」ひかりながら、ゆるやかに流れており、二人とも思わず、「きれいなところだねー」。

実は、今回の伊豆行きにあたって、二人で決めていたことがありました。それは、先日N社さんから、近々500万円の値下げがある、と聞かされていた物件について。その決心とは、もし、現地でみてこれがかなり優良な物件ならば、今度こそ即決して決めよう!ということ。まだ見てもいない物件のくせして、捕らぬ狸のなんとやら・・・ なんと単純な夫婦なことか・・・

それにしてもHPで見る限り、その物件は申し分のない広さと、眺めの良さを持ち、敷地面積も十分。修善寺という立地は、伊東や伊豆高原などに比べると沼津や三島などの大きな町にも近く、加えて、修善寺駅まで、車で10分ほどという好立地という物件はなかなかないのでは。

これは、後で知ったことですが、修善寺という場所は、伊豆のほぼ中央と言える場所にあるためか、伊豆の各地の観光拠点として位置付けられており、伊豆箱根鉄道の終点駅でもあるこの修禅寺まで電車で来て、ここからバスに乗り換えて伊豆各地へ向かう、という観光客も多いそうで、文字通りの伊豆観光の中心地ともいえる場所。

修善寺の温泉街そのものもちょっとした観光地。ここはかつて弘法大師が開いた「修禅寺」というお寺の門前町として発展したそうで、このお寺では、鎌倉幕府を開いた源頼朝の長男、頼家が暗殺されたとのこと。何やら血なまぐさい感じでもする町なのでは・・・とも思ったけれど、実際に行ってみると、ひなびた温泉町、といった風情。車ニ台がなんとかすれ違えそうな狭い道路を挟み、居並ぶ温泉宿や食べ物屋さん、お土産物屋さんの数々。宿場の真ん中には、桂川という川きれいに整備された川が流れており、湯上りの川沿いの散歩も風情がありそう。

真昼なのでさすがに浴衣姿で歩いている人はいませんが、きっと夜になると浴衣を着た観光客で賑やかになるのでしょう。

めったに来ることもないので、昼食はできればここで済ませよう、と思ったけれども、狭い温泉街ゆえ、大きな駐車場はない様子。しぶしぶ、もと来た道を引き返し、狩野川沿いにある、うなぎ屋さんに入ることに。

狩野川では天然のうなぎも採れるそうですが、それよりも鮎が遡って来る川として有名で、その日もそのお店、凡道留(ぼんどーる)から見える狩野川には、長いつりざおを持った太公望があちらこちらに。河岸の緑とさわやかな流れと釣り人達のたたずまいは、ひとつの風景になっていて、とても気持ちが和むもの。出て来たうな重の味も格別で、これは、きっと今日は良いことがあるに違いない、と確信したムシャどのでした。

N社のMさんと待ち合わせたのは、駅から2~3km離れたところにあるS別荘地内にある、「かんぽの宿修善寺」。標高200mを越える高台に造成されたこの別荘地の中でも一番高いところに建っています。目標物件は、この別荘地のはずれにあるようでが、初めての場所なので、現地で待ち合わせをせず、知名度の高いこの宿で不動産者さんと待ち合わせることにしたのです。

待ち合わせ時刻になって、白いワゴンから降り立った人のよさそうなおじさん、Mさんは、少々小太りで、、髪を整髪料でなでつけ、オールバック。不動産屋らしく、ワイシャツにズボンでお見えでしたが、何故かサンダル履き・・・ 印象は悪くない人だけれども、サンダル履きとは・・・ ちょっとなー

しかし、あとで聞いた話では、Mさんは今、痛風を患っていらっしゃるとのこと。傷みで靴が履けないのだそうで、現地を案内する他のお客さんにも毎回律儀に説明するのだとか。我々にも、案内の前に申し訳なさそうに説明されておりましたっけか。

それは別として、それにしても・・・よくしゃべる人だな~ というのは私は無論、タエさんも同感。いったん口を開くと、こちらが聞いてもいないのに、不動産物件のことから、ぜーんぜん関係のないことまで、延々と講釈が続きます。

これも後でわかったのですが、このおしゃべりは、この人のサービス精神から来ているのだなということ。お相手に色々な情報をできるだけたくさん分けてさし上げるのが、サービスだというふうに思っていらっしゃる風。それはそれでよいことではある・・・よいことではあるのだが、それにしてもよくしゃべるなー。まあ、うんうんと聞いておけばいいんで、別に文句言うほどのことでもないし・・・と、何とか自分を納得させつつ、その日の賑やかな物件めぐりがはじまったのです。

その日の最大の関心事は、やはり前回お話した500万円の値下げがあるという物件。しかしその日は、「参考のため」に他の物件もみせていただく予定。そしてまず最初にNさんが最もお勧め・・・とおっしゃる物件を見せてもらう事にしました。

それは、最初の待ち合わせ場所の「かんぽの宿」からもほど近い高台にある物件で、沼津にある金属加工会社の「保養所」として使われていたもの。

その物件は、私もHPでも見ており、保養所らしく広々とした間取りは好印象。ただ、北向き斜面に建てられた家であることや、隣家とも間近いようなのが気になり、HPで見た写真もなんだかくすんだような色合。なので、「これはないな」と、あまり、というかぜんぜん期待していませんでした。

ところが・・・

Mさんに案内されて行き、実物をみたところ・・うん?・・・これは?・・・と意外な印象。確かに北向きに建っているのだけれども、なぜ北向きに建てたかについては、それなりの理由が・・・案内された保養所の庭に立ち、北の方角をみるとそこには、こんもりと繁った小さな森のように見える一角があります。

すると、Mさん曰く、「あの方向に一応富士山が見えるんですよ」。エッ!? 富士山?びっくりしたのも無理もありません。HPには富士山のことなど、これっぽっちも書いてなかったからです。

確かに、Mさんの指さす方向には森、というかちょうどその方向に背の高い木が一本立っていて、富士山など見えません。ところが、敷地の端へ移動し、再度さきほどの森がある北の方角を見ると・・・そこには、なんとまがうことなく白い雪渓をわずかに残した富士山が見えるではないですか!

ここから見える富士山は、山中湖や河口湖などの富士五湖から見える富士山と違い、その手前に低山があるため、四合目ぐらいから上しか見えません。しかし、沼津や三島の町中ではそれこそ、6、7合目から上の頂上付近しか見えないのに比べれば、ここからの富士山は十分に観賞に値するもの。不動産案件としても敷地内から富士山が見えるというのは、大きなポイントです。

建物に目を向けると、これはしっかりとした和風建築で、玄関回りの垂木と柱はまるで寺院のよう。入口だけをみると、どこかの料亭のような雰囲気でもある。

うーむ。これはあなどれないぞ・・・と思いつつ、早速、中に・・・まだたくさんの荷物が残っていましたが、まず驚いたのがそのリビングの広いこと広いこと。

資料をみると、リビングだけで24.5畳もあり、これ以外にも1、2階合わせて部屋が6つもある!すなわちナント6DK!

このほか、広々とした温泉付き浴室と脱衣所、トイレが6つもあり、ともかくその広さには圧倒されそう!

しかし、そうした富士山ビューや建物の広さ以上に私がうなったのは、リビングの隣りにある、キッチンをのぞいたとき。そこには・・・