成人考

2014-1120634
一昨日のこと、山の上にあるこの別荘地内には、うっすらですが、雪が積もりました。初雪です。

麓の修禅寺温泉街や長岡へ出かけたときは、雪らしいものはなかったようですから、やはり200mの標高差がなせる技でしょう。外に出て遠くの天城山を眺めると、やはり山肌のあちこちに雪が見え、ここよりも更に厳しい寒さがうかがえます。

年が明けて1月、2月になると途端にこうした雪や雨の日が多くなります。寒さも増し、それまで毎日のように明るい冬の陽がさしていたものが、どんよりとした日も多くなり、時にドカ雪が降ったりもします。

しかし、先日母の見舞いの際に立ち寄った長岡の狩野川沿いの河川公園では、はやスイセンが咲き誇っており、菜の花も満開でした。我が家の庭のウメにも蕾が点々とあちこちに見受けられ、開花の準備に滞りはなさそうです。

春になったな~と本当に感じられるのはまだまだ先のことでしょうが、厳しい寒さの中とはいえ、こうした春の息吹を感じられる季節になったのだな、と改めて思う次第です。

明日は成人の日だそうで、若い人達にとっても、これからの季節は希望に満ちた日々に違いありません。かくいう、ウチの息子君も、今年成人式を迎えます。今年は先妻が亡くなってからちょうど10年目になりますが、あれからもうそんなに経ったかと思うと同時に、子供の成長がいかに速いかを驚かざるを得ません。

この成人ですが、日本では20歳ですが、世界的にみると18歳としている国が圧倒的に多く、さらには、北朝鮮のように17歳、キルギス、ネパールでは16歳とさらに低い年齢を成人としている国もあるようです。

プエルトリコとハイチに至っては14歳だそうで、これは日本ではまだ中学1、2年の年齢です。

じゃあ、成年とは何なのよ、ということなのですが、法的には、「単独で法律行為が行えるようになる年齢」ということになっているようです。

が、一般社会においては、身体的、精神的に十分に成熟する年齢を指すことが多く、日本以外の諸外国で18歳としている国が多いのはそのためでしょう。18歳ともなれば、とくに身体能力に関しては、成人以上の力を発揮する人達もいて、スポーツの世界大会などに出場するような選手の中には、14~15歳といったさらに若い人もいます。

じゃあオリンピックはどうなのかな、と思って調べてみたところ、一般的には年齢制限がないそうです。

しかし、スケート競技については、オリンピック大会前の7月1日に満15歳以上であることが出場要件であり、また体操競技では、男子16歳以上、女子15歳以上、新体操は16歳以上である必要があります。また、水泳の飛び込みにも15歳以上の制限があるそうです。

従って、基本的には国際競技とみなされるようなスポーツには年齢制限がないとはいえ、こうした例を見る限りにおいては、肉体的には、14~15歳くらいを成人とみなす、というのが普通のことのようです。

が、この年齢が精神的にはどうかということになると、うーんと考えてしまいます。14、15歳といえば思春期に入ったばかりのころのことであり、とても安定した精神状態にあるとはいえない年齢です。

また、日本では、飲酒、喫煙は20歳以上となっていますが、これは14、15歳といった弱年齢では酒やタバコは脳の発達には有害であるとする医学的な根拠もあるためであり、ひいては精神的なダメージを与えると考えられているからです。

ただ、一方では選挙権など公法に関わる行為については、こうした若年層にも認めることで、国や地域の一員であるという自覚を促す上で有効ということで、未成年者にも投票権を認める事例が増えています。

さすがに14、15歳で参政権というのは難しいだろうと思ったのですが、長野県平谷村では、2003年5月に中学生が住民投票に参加した例があり、また2002年9月に秋田県岩城町が実施した住民投票では、史上初めて未成年者を含む18歳以上の人が投票しました。

また、天皇家については、天皇、皇太子、皇太孫だけは、18歳で成年とするということが、皇室典範で定められているほか、結婚についてはご存知のとおり、男女とも18歳から認められています。つまり、子をなす生殖能力としてもそれが完熟するのは18歳ぐらいだろう、と考えられているからでしょう。

このように考えてくると、「成年はいくつか」あるいは「いくつであるべきか」という質問に対しては、おおむね18歳くらいが妥当ではないか、と多くの人が考えるのではないでしょうか。

そもそも、成年が20歳というのはどういう法律によるものかといえば、これは明治期に定められた「民法」に定められているそうです。第4条に「年齢二十歳をもって、成年とする。」という規定があります。

「20歳」という年齢については、この当時の徴兵制度や課税の基準年齢であったことに由来します。20歳ともなれば、戦争にやっても十分自分の能力で戦えるし、また働きに出て十分な稼ぎも得ることができ、税金も納めることができるだろう、という判断のようです。

しかし、この民法が定められる前の日本では、15歳程度を「元服」の年齢とし、これを成年としていました。また、日本以外の諸外国では逆に21歳から25歳が成年と見なされていたそうで、この両方の習慣との衡平を図るために、20歳という年齢が定められたという説もあるようです。

ところが、そもそも、戦後に作られた現在の日本国憲法では、憲法の改正手続きについて規定している「国民投票法」で、投票権は18歳以上の日本国民が持つことができると定められているそうです。これはつまり、憲法上も18歳が成年と認めているということにほかなりませんが、このことは意外にあまり知られていません。

しかし、1950年に、主として衆議院議員や参議院議員などを選ぶ国政選挙への投票を規定する、いわゆる「公職選挙法」では、18歳以上の者が国政選挙に参加できるようになるまでは、「暫定的に20歳以上とする」と規定されることになってしまいました。

この理由はよくわかりませんが、おそらく国会議員を選出するような重要な選挙において、20歳未満のような若輩者には選挙権を持たせるべきではない、との意見が席巻したか、GHQあたりが何等かの理由で選挙権を18歳とするのは時期尚早と判断したのかもしれません。

あるいは明治期に定められた民法の規定を遵守すべきとされたのかもしれず、いずれにせよ、このときには成年の年齢が20歳のまま据え置かれたため、これは結局現在まで変更されないままということになっています。

2014-1120640

しかし、明治維新から既に150年が経とうとしているのにこの規定はいくらなんでも古すぎます。

そもそも現行憲法で定めてあるのに、いつまでも20歳まで選挙権がないままにしておくのは問題があるだろうということで、このため、法務省は諮問機関の法制審議会に「民法成年年齢部会」という委員会を作りました。

そしてこの部会の最終答申としては、「民法及び公職選挙法は18歳に引き下げるのが適当」とする最終報告書をまとめ、これは一般にも2009年7月に公表されました。

今は政権を失ってかつてのような元気が見られない民主党も、これに先立つ2002年に、衆議院に成年年齢を18歳に引き下げること、18歳選挙権を実現すること、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることの三点を盛り込んだ「成年年齢の引下げ等に関する法律案」を提出しています。

同党によると、成年年齢等の引き下げは「政治における市民参加の拡大を図ると同時に、若者の社会参加を促進する第一歩」となると言っていたようです。

また「18歳は経済的自立が可能な年齢であり、現に結婚や深夜労働・危険有害業務への従事、普通免許の取得、働いている場合は納税者であること等、社会生活の重要な部面で成人としての扱いを受けている」こと、「世界のすう勢も18歳以上を成人としていること」に対応するものであるとも表明しており、全くその通りだと思います。

しかし、実際に、法律上での成年が、憲法ともギャップのない18歳まで引き下げられるためには、これに関する法令を200本以上も改正する必要があるとのことで、今後日本で永年が20歳となるまでには、まだまだかなりの時間がかかりそうです。

一方では、現行の成年は20歳とする法律では、酒煙草のような健康を害する嗜好品から子供を守るためには有効と考えられます。また公営ギャンブルなどのように賭博性の強いものに巻き込まれることを防ぐという意味でもこうした年齢制限は必要でしょう。

しかし、最近何かと話題になっている、性同一性障害を持つ子供の性別の訂正は、民法に基づき20歳の成年にならないとできなくなっているそうです。

これまではこうした問題を抱える人達は世間にそのことを知られるのを嫌がり、あまり表面化していませんでしたが、最近の調査では、こうした障害を持つ人は、全国で4万6千人ほどもいるということです。

ところが、最近はこうした障害を克服して異性としての自分を見つめ直す人が増えており、とくにテレビなどで有名タレントさんが実はそうであったことなどをカミングアウトした結果などが共感を呼び、堂々と障害があることを公表する人も多くなってきています。

しかし、現行の法律では、20歳以上でないと性別の訂正ができません。このためこれを18歳以上で可能にしてほしい、という切なる願いは増えています。

本来ならばもっと子供のころから異性であると認めてほしいという人も多いのでしょうが、まだその判断のできかねる15~16歳とはいわないから、せめて18歳くらいにはしてほしい、というわけです。

また、現行の法律では、満18歳以上20歳未満の者が自由にローン契約をすることができないそうで、このほか、この年齢で養子縁組をしたりすることはできなくなっています。

つまり、18歳では親の了承がなければカード決済などでローンを設定できないということであり、また子供ができないことを理由に恵まれない子供を引き取って養子にしたいと考えている若い夫婦の希望をも削いでいることになります。

成年を引き下げることは、税法上の未成年者控除や刑法上の未成年者保護の点で問題があるとする、慎重な意見もあるようですが、一方では高齢化が進む日本では、もっと若い世代に参政権を与えて、政治の世界に息吹を吹き込むべきだという意見のほうがもっと多いようです。

現行の強い安倍政権は、アベノミクスによる成功を治めつつあるようで景気は回復する方向にあるようですが、一方では外交や特定秘密保護法の立法を強行し、情報靖国問題などでも強気な姿勢を崩しておらず批判を浴びています。

これを機に、こうした成年年齢の引き下げなどの国民の多く望んでいるであろう法令の検討なども行い、人気を回復させるのはけっして悪い選択ではないと思うのですが、そのあたりのこと、どう考えているのでしょうか。

その昔、江戸時代より行われていた「元服」の儀式は、およそ数え年で12~16歳の男子が行うものでした。元服すると、氏神の社前で大人の服に改め、角髪(みずら)と呼ばれる子供の髪型を改めて髷を結い、前髪を剃って月代にした上で、その頭に冠をつけてもらうという儀式を行ったそうです。

実は女性にも元服があったそうで、ただしこれは結婚と同時に行う儀式でした。女性の場合の元服は、地味な着物を着て、日本髪の髪形を時代劇などでよく見るあの「丸髷」などにしました。江戸時代には、髪型と化粧をみると、未婚か既婚かわかったそうで、未婚の女性は島田髷で、既婚女性は丸髷でした。

また、結婚=元服以降は、元服前より更に厚化粧になりお歯黒を付けてもらった上で、眉を剃って引眉をしました。

未婚の場合でも。18~20歳くらいでこの元服の儀式をしたそうですが、江戸時代には18歳を過ぎるともう婚期遅れとみなされる風潮があったため、たいていこれより低い年齢で元服だったようです。

こうした昔ながらの元服を現在に復活させろ、とまでは言いませんが、その昔は多くの日本人は18歳未満で既に大人とみなされ、それなりに大人としての自覚を持っていたはずであり、とくに男性はその傾向が強かったようです。

その証拠に幕末の志士たちの多くは20歳未満の若い人達でした。元服前の幼髪を切り落とし、各地の戦乱に飛び込んでいった若者が多数いた時代であり、そうした若い原動力が、時代を動かし、明治維新を成し遂げました。

日露戦争で連合艦隊を勝利に導いた東郷平八郎は、わずか14歳で薩摩藩士として薩英戦争に従軍しており、同じく日露戦争で、第3軍司令官(大将)に親補されて旅順攻囲戦を指揮した乃木希典は、16歳で長州藩士として奇兵隊に入り、幕府軍と戦っています。

のちの陸軍大将で陸軍参謀本部次長として203高地の攻略を指揮した児玉源太郎もまた、16歳で下士官として箱館戦争に参加した後、陸軍に入隊しており、明治期に功をなしたとされる軍人の多くは元服間もないころから維新の矢の下をかいくぐっています。

そうしたことに思いを馳せると、現在のように成年が20歳というのは若者に大人になるという自覚を持たせる上でもあまりにも遅すぎるようにさえ思えてしまいます。

16.7、8歳というと、何かと子供扱いされる年齢ですが、その一方で最近のように未成年者の犯罪がやたらに目立つのは、まだ大人になっていないから、何でも許されるという甘えから来ているような気もします。

早い時期に自覚を持たせ、社会の秩序維持においても、社会的貢献においても若年層に期待すべき時代が来ていると、私は思うのですが、みなさんはいかがでしょうか。

2014-1120642