PM2.15

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Happy birth day to me♪ Happy birth day to me ♫~

ということで、今日はありがたくも私の誕生日です。今日で、5×歳となりますが、読者ががっかりするかもしれませんので、例によって詳細な年齢は伏せておきましょう。

が、何時に生まれたかだけは明らかにしておきましょう。午後2時15分です。

……というわけで、今日のブログタイトルが何故PM2.15なのかおわかりいただけたでしょう。

このPMとは何の略かと聞かれて即答できる方は少ないでしょう。英語では午前と午後をそれぞれ ante meridian / post meridian といい、これはラテン語の原形のante meridiem / post meridiem からきています。meridiem は昼の真中を意味するので、昼の中央の前、または後という意味になります。

普段使い慣れている用語でも、その意味を知らないで使っていることは多いものです。最近、ニュースではほとんど毎日のように出てくる、PM2.5もまたしかりです。

このPM2.5の意味ですが、「午後二時半」に発生するので、そう呼ぶのだと思っている人もいるかもしれませんが、無論これは間違いです。ひどい人になると、芸人の江頭2:50さんの別称だと思っている人もいたりして、そういう方は、もう一度小学校から勉強し直してきてほしいと思います。

とはいえ、このPMもまた何の略かと聞かれてすぐに答えられる日本人はほとんどいないでしょう。

いったん流行りだすと、その意味も分からずにその言葉が流行語のように広まっていくのは日本の悪い風潮です。この言葉を頻発しているそのメディア側さえ、そもそもその意味を知らないし、きちんと伝えていないのではないでしょうか。

こうした用語が流行りだしたら、まず何の意味なのかを調べる癖をつけましょう。物事の基本を理解するためには重要なことです。

と、エラそうなことをいいながら、私もこのPMが何の略だったか、大学で習ったはずなのに忘れていて、改めて調べてみると、Particulate Matter の略称でした。Particulateは、粒子状、Matterは物質です。

従ってPMとは、大気中に漂う「粒子状物質」のことで、このうち、粒径が2.5μm(マイクロメートル)以下のものがPM2.5です。マイクロは100万分の1のことですから、1マイクロメートルは、1mの100万分の1、つまり、1万分の1mmです。

つまり、PM2.5とは、2.5mmの1万分の1の大きさの粒子状物質ということになります。

PM2.5よりもう少し大きいものには、粒子径が概ね10μm以下のものがあり、これはPM10と呼ばれています。1987年にアメリカで初めて環境基準が設定され、以降世界の多くの地域で採用されて、大気汚染の指標として広く用いられています。

ところが、ややこしいことに、日本では、PM10は環境基準に採用されておらず、代わりに「浮遊粒子状物質」という定義がなされています。英語表記では、suspended particulate matterなので、略して「SPM」とも言われます。

その定義はほぼPM10と同じで、粒子径が10μm以下のものなのですが、日本の環境基本法に基づく環境省告示の環境基準においては、粒子径10μmで「100%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子」とされています。

これに対して、PM10の「50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子」となっており、SPMの定義と少々異なります。

補集効率とは、粒子をろ過する効率のことで、この数字が大きいということは、それだけ細かい粒子も検出できるということです。つまり、日本の環境省が定義する「浮遊粒子状物質(SPM)」とは、大きさにするとPM6.5 ~7.0に相当し、PM10よりも少し小さな微粒子ということになります。

これは、大気汚染の指標としては日本のみで用いられているもので、なぜPM10よりも小さいかというと、これは1970年代に日本を席巻した光化学スモッグのようないわゆる「公害」の被害が著しかったことから、世界基準よりもより厳しい環境基準を設定しよう、ということで導入された概念だからです。1972年に正式に設定されました。

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PM2.5は、これよりもさらに細かいものですから、これを吸い込んだときには当然人体に悪影響を及ぼす影響もPM10よりさらに大きくなりますが、その害がどの程度かは後述します。

日本の環境基準では、PM2.5は、粒子径2.5μm以下でPM10と同じく、「50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子」とされていて、SPMあるいはPM10が「粒子状物質」と呼ばれるのに対して、「“微小”粒子状物質」の語が充てられています。

日本以外の外国では、この“微小”について、とくにsuper fineのような熟語はあてがわれず、もっぱらPM2.5とだけ呼ばれています。そもそもは、アメリカで1997年に初めて環境基準が設定されて以降、1990年代後半から採用され始め、世界の多くの地域でPM10とともに大気汚染の指標とされてきました。

実は、これらPM2.5や、PM10よりもさらに細かい「超微小粒子(ultrafine particle・ウルトラファイン・パーティクル)」というのもあり、PM0.1などのようにPM2.5よりもさらに一桁以上小さい粒子状物質もあります。PM2.5よりもさらに健康影響が大きいとされていますが、まだまだ研究途上にあって、その基準も定義もはっきりと定まっていません。

いずれにせよ、これらの大気中に浮遊する粒子状物質はこうした数ミリの大きさの物質の100万分の1という小さい粒であるため、いったん吸い込んでしまうと肺の奥深くまで入り込みやすく、ぜんそくや肺がんなどのほか、不整脈や心臓発作、花粉症など循環器への影響も指摘されています。

無論、大気汚染の原因物質でもあるため、各自治体で測定の上環境省の定める環境基準(大気1立方メートルあたり35マイクログラム)を超える場合は、各種注意報を発令するとの措置が講じられています。

これからの季節では、季節風に乗って黄砂、および杉花粉との相互作用によってさらに気管支系統に障害が出てくる事も考えられ、外出する際のマスク装着等の着用はますます重要になってきます。

こうした微粒子を人間が呼吸を通じて吸い込んだ場合、まず、鼻、喉、気管、肺などの呼吸器にこの微粒子が「沈着」することで健康への影響を引き起こします。沈着とは、「底にたまって固着すること」であり、ようするにそこから粒子が動かなくなるということです。

つまり、その粒子に毒性がある場合は、その粒子が固着した場所から、いろいろな毒素が体に流れていくことを意味します。肺の奥のほうにまで達する(沈着する)とすれば、当然取り除くことは困難となり、沈着部位である患部における粒子は細胞などを構成する物質と反応して複雑な変化をおこし、場合によっては著しい化学反応を起こします。

では、その微粒子とは、どんな性質ものかというと、代表的なものとしては、煤煙、つまり燃焼により発生する粒子があり、石炭や石油の燃焼により発生するフライアッシュなどがこれにあたります。また、粉塵もそれであり、これは物の破砕等により発生します。

こうした微粒子として直接大気中に放出されるものを「一次生成粒子」といいます。最初は粗大粒子であることが多く、普通、滞空時間は数分から数時間で、数~数十kmを移動します。

水溶性、吸湿性が低いものが多く、煤煙や粉塵のほかにも、土壌粒子(風塵・砂塵嵐により大量に発生)があり、大規模なものとして、中国大陸奥部で発生する黄砂があります。

土壌粒子の成分は、主にケイ素 (Si)、アルミニウム (Al)、チタン (Ti)、鉄 (Fe) などの酸化鉱物です。ほかにも、海の表面から海水が蒸発する際に発生する、海塩粒子があり、これは主に炭酸カルシウム (CaCO3) や塩化ナトリウム (NaCl) からなっています。

このほかにも、ゴムタイヤ、スパイクタイヤなどの摩耗により発生する「タイヤ摩耗粉塵」や植物性粒子(花粉など)やカビの胞子などの動物性粒子なども、一次生成粒子です。

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これらは、一次生成粒子なので、比較的粒が大きいのが特徴ですが、やっかいなのは、この気体として大気中に放出された一次粒子が、大気中でさらに加工されて、生成される二次生成粒子です。

どう加工されるかというと、複雑でいろいろありますが、大気中での一次粒子同士の化学反応や、核生成、凝縮、凝固、雲や霧を構成する水滴への溶解や蒸発による析出、微粒子同士の凝集などが現在考えられている生成プロセスです。

また、高温環境下で凝集するもの、常温下で自ら凝集するもの、水滴に溶解して凝集するものなど様々です。

いずれにせよこうしたプロセスによって、微小粒子になることが多く、これらの多くがPM2.5の要因になります。無論、一次粒子のままでもPMになることもあります。

この二次粒子は小さくて軽いので、普通、滞空時間は数日から数週間で、数百~数千kmを移動します。日本にまで到達するのはこのためです。

水溶性、吸湿性、潮解性が高いものが多いのですが、成分としては、硫酸塩(SO42−)、硝酸塩(NO3−)、アンモニウム塩(NH4+)、水素イオンの化合物(水素化合物)、有機化合物(多環芳香族炭化水素 (PAH) など)などです。

また鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛 Zn)、マンガン(Mn)、鉄 Fe) などの金属、水を含んだもの(吸湿粒子)などからなどがあり、一見して、どれもこれもが人体に悪さをしそうな成分ですよね。

一次粒子が加工されて発生するばかりではなく、直接この二次粒子として大気中に出てくるものもあり、その発生源は、石炭や石油、木材の燃焼、原材料の熱(高温)処理、製鉄などの金属の製錬などです。

近年重化学工業を中心として著しい発展を遂げ、世界の工場といわれるようになってきた中国が得意とする工業ばかりであることは一目瞭然です。

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さて、こうして大気中を浮遊するようになったPMは一般に、鼻呼吸よりも口呼吸からのほうがより呼吸器の奥に沈着する傾向があります。これは鼻には鼻毛があって、奥深くまでPMが進入するのを防いでくれているからです。口から入ったPMをぶら下がっているだけのノドちんこは撃退してくれません。

なお、鼻・気道・肺胞などの形状は個人で異なるため個人でも差異があるといい、また、運動などにより換気量や呼吸数が増えると主に1~3μmの粒子を中心に沈着量が増えるといいます。つまり、外でジョギングなどの運動を行っているときには、PM2.5は摂取されやすくなるということです。

また、大人と子供でも摂取量が違うという結果も出ていて、アメリカ環境保護庁は沈着率は年齢に関係ないという結果も示す一方で、小児の方が成人よりもわずかに高かったという結果も提示しており、肺の表面積当たりの沈着量は小児の方が多かったことを報告しています。

日本の環境省が2008年にまとめた結果では、小児は呼吸数や単位体重あたり換気量が大きいため肺の表面積当たりの沈着量は大きい傾向があり、「吸入粒子に対するリスクが大きい可能性がある」としています。なので、お子さんの外出にはできるだけマスクをさせた方が無難でしょう。

さらに、呼吸器疾患、特に慢性気管支炎や肺気腫を含めた慢性閉塞性肺疾患の患者においては、健康な人よりも沈着量・沈着速度ともに大きく特に気道の病変に応じて大きくなるほか、沈着量よりも沈着速度の方が大きく増加するという研究結果があり、環境省はこうした疾患がある人への警告を呼びかけています。

このほか、粒子状物質への暴露は、人の気道や肺に炎症反応を誘導するほか、喘息やアレルギー性鼻炎を悪化させる作用を引き起こし、また呼吸器感染への感受性を亢進させる作用が実験動物でも認められているそうです。

人に関しては少なくともディーゼル排気ガスやディーゼル排気微粒子に関してはその毒性が確かめられていて、これを吸い込むことで喘息やアレルギー性鼻炎を悪化させる可能性が高いとされています。

さらには、循環器への影響もあるという研究結果もあり、実験動物では不整脈等の心機能の変化を示す報告があり、さらには自律神経についても、実験動物と人とで差異はあるものの影響を及ぼすことが示唆されているそうです。不静脈だったり、自律神経失調気味の人は、PM2.5の影響を考えたほうがいいかもしれません。

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このように、PM2.5はいかにもおどろおどろしい物質なのですが、その昔はこんなもの取沙汰されていなかったのに、なぜ最近になって話題になっているかというと、それはやはり中国から飛んでくる粒子状物質が激増しているからです。

資料が確認できる限りでは、中国の粒子状物質濃度は経済発展などにより、1990年頃にはすでに深刻なレベルに達していたようです。

例えば、上海における1990年のPM10の年平均濃度は350μg/m³を超えており、WHO暫定目標で最も緩い暫定目標1の5倍以上でした。この値は年々減少し、2001~2008年の間は年平均100μg/m³前後の水準にありましたが、最近では依然として暫定目標1よりも高い状態です。

また、北京におけるPM10年平均濃度も2000~2011年の12年間に減少傾向にあるものの、100μg/m³強の水準にあってこちらも依然として暫定目標1より高いままです。

このように中国の粒子状物質濃度は数十年来高い水準にありますが、こうした大気汚染の本場?の中国では粒子状物質以外の大気汚染物質、オゾンの発生源となる二酸化窒素などの方がどちらかと言えば影響度が大きいといわれているようです。これは、二酸化窒素との化合により急性の健康被害を起こす二酸化硫黄などが発生するためのようです。

こうした中、粒子状物質による大気汚染の深刻さを浮き彫りにしたのが、2011年11月に北京アメリカ大使館が始めた独自観測値の公表です。同大使館は独自にPM2.5や空気質指数(AQI)の監視を行い、ツイッターで公表を開始し、翌2012年5月には上海アメリカ総領事館も同様の公表を開始しました。

これにより、中国の行政当局が発表している値と大使館の値が比較されてインターネット上で大騒ぎとなり、当局が公表を差し止めるよう要求する事態にまで至りました。

その後当局は方針を変えて測定・発表を始めているそうですが、そもそも、中国では北京などがある華北を中心として暖房用燃料の使用が増える冬季に大気汚染が悪化する傾向がありました。

2011年12月や2013年1月に激しい汚染が発生して高濃度の粒子状物質が観測されています。はじめ当局は数値を公表せず、汚染について国営メディアは「濃い霧」などと報じていました。

2013年1月の汚染は「1961年以来最悪」(北京日本大使館)、「歴史上まれにしか見られないほど」(中国気象局)とされるレベルで、風が弱かったため10日頃から始まった激しい汚染はおよそ3週間も継続し、呼吸器疾患患者が増加したほか、工場の操業停止や道路・空港の閉鎖などの影響が生じました。

12日には北京市内の多くの地点で環境基準(日平均値75μg/m³)の10倍に近い700μg/m³を超え、月間でも環境基準(同)を達成したのは4日間だけとなり、北京日本大使館によれば143万km2・8億人、中国環境保護部によれば中国国土の4分の1・6億人に影響が及びました。

北京ではPM10も、2012年の年平均値が109μg/m³で環境基準(年平均値70μg/m³)を超過しています。この汚染の様子は他国にも報じられ、韓国や日本への越境汚染が懸念される事態となりました。

例えば日本では報道により国民の関心が高まり、2013年2月になって既存の環境基準に加えて環境省が「注意喚起のための暫定的な指針」を設ける事態となっています。

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中国共産主義青年団の機関紙「中国青年報」
の世論調査(2013年1月、31省市約3,000人対象)では、中国国内で大気汚染によって生活に影響が出ていると答えた人は9割を超え、約4割が外出時にマスクをつけるなどの対策をとっているといいます。

北京大学の研究(2012年)によると北京・上海・広州・西安の4都市でPM2.5に起因する死者は年間約8,000人で、世界銀行・中国環境保護部(2007年)によるとPM10を中心とする大気汚染による死者は中国全土で年間約35~40万人と推計されています。

経済誌「財経」に掲載された上海復旦大学教授の分析でも2006年の1年間で大気汚染に起因する死者は113都市で30万人、経済損失は3,414億元(約5兆1,000億円)とされているそうです。

こうしたPM10やPM2.5の濃度上昇の原因は、石炭の燃焼による排気成分や、自動車排気、煤煙などと分析されています。特に、石炭は中国では依然として発電用燃料の主力であり、家庭でも暖房用燃料に広く用いる。自動車も保有台数が年々増えており、北京市の例をとっても2012年末時点の保有台数500万台という数は2008年から僅か4年間での倍増です。

これについては、ガソリン中の硫黄分の規制値が日欧の15倍という緩さが拍車を掛けているという見方があります。

旧暦で新年を迎える際(春節1月前半~2月前半)の慣習で一斉に用いられる爆竹の煙も汚染源となっており、例えば北京ではPM2.5が2012年1月23日午前1時に前日の80倍の1,593μg/m³に急上昇した後、朝には約40μg/m³まで低下しています。

この状況について、大気汚染対策が全国人民代表大会の主要な議題になるなど当局の問題意識は高まっているようですが、市民は対策が不十分と感じている事が報じられています。

北京市の対策例を挙げると、自動車排気ガス基準の厳格化、石炭ボイラーの改造やガス化(石炭からガスへの転換を「煤改気」という)、電化(石炭から電気への転換を「煤改電」という)、植林などが掲げられています。

各国や地域では、他の大気汚染物質と並んでPM10、PM2.5、SPM(日本)などの、環境中の濃度の観測値や予測値を発表しています。

ところが、これらの環境中の濃度は屋外の大気を代表したいくつかの観測地点における値です。一方、人に健康影響を与える粒子状物質は、屋外だけではなく屋内も含めた様々な場所の空気に含まれ、それぞれの場所での暴露の量は地域・社会・個人により異なります。

ただ、道路沿いなど発生源の近くを除けば、概ね屋外と屋内の濃度は同じか、屋内の方が少し低いという研究結果が得られている。また多くの研究において、屋外よりも屋内、PM10よりもPM2.5のほうが、それぞれ個人の暴露影響との相関性が大きいとされています。

こうしたことから中国でも1990年代後半からはPM2.5の環境基準のほうが優先されて導入されるようになり、こちらの基準で監視が行われています。

また、10μmより大きな粒子はほとんどが鼻や喉咽頭などの上気道で捕捉され大気中でも比較的速く落下する一方、10μmより小さな粒子は下気道や肺胞での沈着が多く大気中でも落下が遅く長く滞留する事などから、PM10(日本に限ってはSPM)の環境基準でも引き続き運用され監視が行われているそうです。

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が、いかんせん、根本がクリーンになったわけではなく、汚れてしまったままの中国の大気は依然日本の上空へ流れつづけており、その脅威は依然残ったままです。

こうした大気の高濃度汚染への対策としては、汚染への暴露をできる限り低減することが基本とされています。具体的には手洗い、うがい、屋内では窓や戸を閉めて隙間を塞ぐ措置、屋外ではマスクの着用などが挙げられます。また、汚染の激しい日は外出を避ける、寝室などの長時間滞在する部屋に空気清浄機を設置するなどの対応も必要です。

とくに子供は汚染に対するリスクが高いことから、幼稚園や学校などでは汚染の激しいときに屋外活動を制限する対応が取られる場合もあり、北京ではこれが日常のことになっているようです。

PM2.5は粒子の大きさが非常に細かいため、通常のマスクで防ぐことはできません。

マスクに関しては、PM2.5に限ると、通常のマスクは製品ごとに性能に差異がある。高性能の防塵マスク(N95やDS1以上など)はフィルター自体は高性能のため粒子の吸入を低減する効果があるものの、適切な着用方法でなければ期待されるような効果が得られないとされています。

このため個々人の顔の大きさにあったものを選んだり、空気が漏れないようにするなどの検討が必要となります。ところが、こうしたものを選ぶと、息苦しさを感じやすいので長時間の使用には適さない、といったジレンマが出てきます。

空気清浄機に関しても、メーカーや製品により性能に差異があり、環境省の専門家会合報告書は製品表示を確認したり販売店やメーカーに確認したりするよう勧めています。

PM2.5は、人間以外にも影響を与えており、それは建造物や気象など自然環境などです。含有物質にもよりますが、建造物では金属の腐食、塗装面の劣化、彫刻などの芸術作品や人工構造物の劣化などの物理的被害があげられ、自然環境でも、降雨へ取りまれて酸性雨の発生に寄与するなどの間接的影響が考えらえます。

また、煙霧の原因物質として視程を悪化させる作用、凝結核として働き雲を生成する作用、雪の表面に堆積し太陽光を吸収する作用、大気中のエアロゾル粒子として働き太陽光を吸収する作用(日傘効果、地球薄暮化)による気候への影響も考えられていようです。

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こうした汚れた物質を排出し続け、大気汚染が日常化している北京では、北京咳(ぺきんせき、Beijing Cough)というのがあるそうです。これは、中国北京における呼吸器症状を指す俗語である。2013年初頭、北京におけるスモッグが深刻な問題となり、北京市民にも注目されるようになったものです。

1990年、国際ロータリーの機関誌「The Rotarian」において、北京における大気汚染を原因とした呼吸器症状を「Beijing Cough」と紹介したのが初出とされています。

2000年に入り、アメリカの経済学者の著書に再び取り上げられた後、2003年、アメリカの北京旅行ガイドが、12月から4月にかけて悩まされる咳として紹介し、その後、北京を訪れる外国人の間で、北京を訪れる間にのみ現れる呼吸器症状を指す言葉としてよく使われるようになりました。

当初北京市民にはあまり馴染みのない言葉であったが徐々に普及し、2013年1月に発生した、北京における大規模なスモッグを受け人口に膾炙し、中国国内の新聞記事においても取り上げられるようになっています。

原因としては、大気汚染によるものとされる一方で、北京の冬の気候が乾燥していることも影響しているとされているようですが、はっきりとした因果関係についてはわかっていないようです。

それをいいことに、中国政府系メディアである新華社が発行する経済参考報などでは、北京大学人民病院の医師の発言として、上記に加え生活習慣も合わせて考えねばならず、明確な原因がわからない中で北京咳と呼ぶことは「北京市に対する極度の侮辱」と伝えたそうです。

が、PMがその原因に違いないことは誰の目にも明らかです。

2013年1月12日、在北京アメリカ大使館の測定による北京の大気汚染指数(Air Quality Index)は過去最悪の755、PM2.5は1立方メートルあたり886マイクログラムを記録しました。

Air Quality Indexの値は201~300が「Very Unhealthy(とても不健康)」、301を超えると「Hazardous(危険)」となります。北京大学とグリーンピースの協同調査では、北京、上海、広州、西安においてPM2.5が原因となった死者は2012年だけで年間8,500人を上回ったとしており、2013年9月29日には市の大気汚染が最悪レベルにまで達しました。

中国の著名な実業家で慈善活動家でもある陳光標氏という人が、北京で「空気の缶詰」を1缶5元で販売したところ、10日間で800万個もの売り上げを記録した、というニュースは各メディアがこぞって取り上げ話題になったので、知ってる人も多いでしょう。

中国は、辺境のウィグル自治区など迫害していますが、こうした奥地のきれいな空気で新鮮な「空気の缶詰」作って、北京で売りさばいて、その儲けた金をこの地域の振興につかってはどうでしょう。

また、その金で北京の空を綺麗にすべく、日本の優秀な空気清浄器をたくさん買ってもらい、せめてこれを日本に飛ばさないようにしてほしいものです。

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