ストレスとスピリチュアル

2014-3344サッカーワールドカップで、日本代表チームの一次予選敗退が決まりました。

過去最強のチームとも言われ、日本中が熱狂して応援旗を掲げた大会でしたが、終わってみると一勝もできず、試合をしていた選手達もそうでしょうが、応援していた国民の多くも、何やら夢でも見ていたような気が抜けたような、そんな気分の中にいるようです。

思えば、ほんの半年前には、オリンピックで同じような熱狂があったわけですが、ここでは勝利が相次ぎ皆が満足したものの、今回の大会では不完全燃焼の感は否めず、やり場のない気持ちの持っていきようのないこの状態は、大きなフラストレーションを生みそうです。

このフラストレーション (frustration) とは、欲求が何らかの障害によって阻止され、満足されない状態にあることです。

人は、欲求を満たすための行動を起こします。しかし、なんらかの原因によってその欲求を満たすことができないと、不愉快な気分になったり不安や緊張を感じます。この状態をフラストレーションの状態と言い、そして、その状態を解消しようと、暴飲暴食に走ったり、思い切り暴れ回ったりと、さまざまな行動を示します。

これはつまりストレスの発散であり、このストレスの原因はストレッサーと呼ばれ、これはストレスを生物に与える何らかの刺激のことを言います。その範囲は広く、暑さ寒さや痛みといった物質的な刺激の場合もありますが、怒り、苦しみ、など心理手的なものもストレッサーになります。

今、われわれ日本人が感じているストレスは、ワールドカップにおける日本チームの敗戦が引き金となり、日本人としての誇りが傷つけられたことへの憤りがストレッサーになっているのでしょう。

しかし、それを頑張った選手達のせいにすることもできず、かといって自分でどうこうできる問題でもなく、どこへも気持ちの持って行きようのないところがストレスとなり、フラストレーションが溜まるわけです。

そこで、ヤケ酒を煽ったり、くっそぉ~~とやみくもに走り回ったりしてしまう人もいるでしょうが、日本を破ったコロンビアやコートジボアール産のコーヒーなんか一生買わないぞ~、とばかりに自宅にあったそれを焼き捨てたりする人もいるかもしれません。

こうしたストレスによって引き起こされる行動は、ストレス反応といいます。このストレス反応は、医学的に説明すると、「ホメオスタシス(恒常性)によって一定に保たれている生体の諸バランスが崩れた状態(ストレス状態)から回復する際に生じる反応」、だそうです。

だんだんと難しくなってきますが、このホメオスタシス、つまり「恒常性」は生物のもつ重要な性質のひとつで、もう少しやさしく言うと、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質です。

ちっともやさしくないじゃないか、とまたストレスを溜めてしまいそうですが、つまり、生物が生物である要件のひとつであり、人間の健康を定義する重要な要素でもあります。

恒常性の保たれている、というのは、その生体の体温や血圧、体液の浸透圧やpHなどがバランスよく保たれている状態であり、また病原微生物やウイルスといった異物の排除、創傷の修復などがウマくいっている状態であり、つまりは普通に生活している状態です。

ストレスは、この恒常性を崩しますが、この崩れた状態には、必要性があって崩れる場合とそれ以上に過剰に崩れる場合のふたつがあります。

前者は生体的に有益であるため、「快ストレス」といい、後者は不利益であるため「不快ストレス」といいます。快ストレスの場合は、適度な量のストレスであり、これがないと、恒常性が失われてしまうために感じるべくして感じるストレスです。

あまりいい例が思い浮かびませんが、例えば、ぬるい風呂よりもやや熱めの風呂のほうが体は心地よく感じます。やや熱いというのは適度な量のストレスであり、このほうが体は快く感じますが、逆に水風呂では冷たすぎて、体がびっくりしてしまいます。

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行き過ぎた過剰なストレスを感じると、恒常性が崩され、不快になります。これがフラストレーションです。こうしたフラストレーションなどのストレスが貯まりすぎ、ある一定の限界を超えてしまうと、そのせいで身体や心に摩耗が生じます。この摩耗の事を医学的には、「アロスタティック負荷」と呼びます。

アロスタティックというのは、「アロスタシス」という言葉から来ています。これは「体が変化しつつ、ストレスに立ち向かう仕組み」であり、ヒトはストレスのなすがままにしていたのでは体がもたないため、体のほうでもストレスに合わせて変化して、それに対抗する必要があり、その仕組みがアロスタシスです。

通常は、ストレスに対応して体がこれに慣れようとしますが、アロスタティック負荷が大きくなって限界を超え、心や体がぼろぼろになるような状態になると、過剰にこのストレスに反応しようとし、これがひどい場合には「ストレス障害」などの病的な症状をおこします。

急性のストレス障害ともなると、急激に高血圧になったり、消化器系に炎症を起こしたりしますが、通常のストレス障害の場合、そのストレスの原因となったトラウマの体験後4週間以内に、そのストレスのフラッシュバックや感情鈍磨などが現れます。

例えば、今回の日本の敗戦の結果、コロンビアの選手が日本側のゴールにボールを入れたシーンがやたらに鮮やかに脳裏に蘇ってくるとか、長友選手が試合後に涙をためて言葉を詰まらせた、といったことが、1ヶ月ほどのあいだ何度もフラッシュバックされたり、といったことです。

もし、こうしたフラッシュバックなどが頻繁におき、仕事も勉強も手に付かずぼーっとしているあなたがいたとしたら、それがつまり感情鈍磨であり、ストレス障害を疑った方がよいかもしれません。

一方では、こうしたショックよりもさらにひどいショック、例えば地震や火事のような災害、または事故、いじめや虐待、強姦、体罰などの大きな事件に遭遇すると、PTSDになる、とよく言わます。このPTSDとは、「外的外傷後ストレス障害」のことであり、これもストレス障害の一種です。

ただ、PTSDの場合、恐怖や無力感を感じ、感情が萎縮して、希望や関心がなくなったり、悪夢を見たりと、より症状がひどく、フラッシュバックは無論のこと、外傷体験以前になかった睡眠障害、怒りの爆発や混乱といったパニック症状が現れ、これらの症状が1か月以上経ってもなお持続することもあります。

症状が3か月未満で収まることもあれば、それ以上続いて慢性になることもあり、通常は重大なショックを受けてから6か月以内に発症するものですが、6か月以上遅れて発症する「遅延型」もあります。

が、一般のストレス障害はこれほどひどい症状は出ません。ましてや、好きなサッカーチームが試合で負けたぐらいでは、普通の人はストレス障害なんかにはなりません。

しかし、中にはサッカーこそが生きがいである人もいると考えられ、これはむしろ選手のほうに多いと思われ、こういう人達は長期的にはうつ病になったり、円形脱毛症になったりと、社会生活を送る上でも支障の出るような重大な病気になっていく可能性があります。

応援する側では、うつ病にまでなる人はそうそう多くはないとは思いますが、熱烈なサッカーファンもいることでもあり、この大会に賭けていた、という人もいるでしょうし、文字通り「賭け」をしてお金を失ったヒトもいたりして、そうした人達がストレス障害にかからないとは言い切れません。

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普通の人はスポーツで負けたぐらいでは落ち込みませんが、とくにネガっち思考の人には可能性がないわけでもないわけで、こうした人たちには適切なストレス対処が必要です。

その対処方としては、まずはストレッサーの解決を目指し、ストレスを溜める要因となった事柄に関して冷静になって改めて情報収集を行い、それをもとに自分がとった行動を再検証し、そこから解決策をみつけたりします。

また、「忘却とは忘れさることなり」、というわけで、起因となったストレッサーや問題を頭の中から追いだす、といったことも有効で、こうした基本対策を含め、ストレス対策をとることを総称して「ストレスコーピング」といいます。

または、「ストレス・マネジメント」ともいい、さらに具体的な方法としてどんなものがあるかといえば、その基本としてはまず、「3R」があります。Rest(休憩)、Relaxation(リラクゼーション)、Recreation(レクリエーション)であり、ようはストレスの対象から外れて、自分を解放して楽しませる、といったことが重要です。

趣味に没頭したり、運動をやったり、温泉に入る、あるいは瞑想する、といったことも効果があり、それでもストレスが解消しない場合は、自律訓練法、心理療法などが適用され、このほかにも認知療法といった医学的なアプローチがあります。

認知療法というのは、あまり聞き慣れない治療法ですが、ヒトは世界のありのままを観ているのではなく、その一部を抽出し、解釈し、自己に帰属させるなどのプロセスを経て「認知」しているのであって、その認知には必ず個人差があり、客観的な世界そのものとは異なっています。

それゆえ、誤解や思い込み、拡大解釈などが含まれた自らに「不都合な認知」をしてしまい、結果として怒り、悲しみ、混乱といった、嫌な気分が生じてきます。

このため、認知療法では不快な気分や不適切な行動の背景として「考え方」つまり「認知」の仕方に着目し、この中で不都合な認知が何であるかをみつけ、これに対して気分がどう変わっていったのかといった、「気分の流れ」などを紙に書いて把握します。

また、それをみながら、別の気分の流れはなかったか、別の流れであれば不快にならなかったのではないか、などの観点を見つけるべく、紙に書いたものに繰り返し修正を試みたりもします。

つまり認知療法とは、「認知の歪み」を治すことであり、このため間違った解釈に対する反証を見つけてあげたり、多面的に解釈ができるように手助けをしてあげることです。

このように自らの認知を修正することによって、身体反応が軽減したり、苦しみの少ない方向に情動が変化したり、より建設的な方向に行動出来るようになったりできるようになります。

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さらに、ストレスの症状や苦痛の程度についてスケール(尺度)で表現したり、イメージの置き換え、自己教示、間違った考えの中断(思考中断)、直接的な議論、などなどの方法により色々な「認知修正」が試されますが、案外とそのプロセスの中に単なる「気晴らし」を加えるのも有効なようです。

うつ病や不安障害に科学的に証明された確実な効果が認められているといい、他の治療法より短い時間で効果が大きいことが証明されており、アメリカの保険会社やイギリス政府は治療効果を承認しているそうで、日本でもこれからより普及していくかもしれません。

治療は一般的に医師や心理カウンセラーのもとで行われますが、最近では、認知療法を対話形式で行うことができる書籍も出版されています。が、日本では書籍やメディアでもてはやされるほどには、治療者がいないのが現状です。

ところで、こうした医学的にも認められているストレス治療法以外に、「前世療法」というものがあります。

催眠療法の一種ともいわれますが、いわゆる「退行催眠」により患者の記憶を本人の出産以前まで誘導し、ストレスなどの心的外傷等を取り除くとされており、アメリカの精神科医であるブライアン・L・ワイス博士によって提唱されたものです。

このブログでも以前何度かご紹介したものですが、催眠療法中に「前世の記憶」が発見され、これを自覚することによってその障害が取り除かれるとされるもので、ワイス博士1986年に記した著著、”Life Between Life” という本で世に知られるようになりました。

退行催眠療法により出産以前に遡った記憶(前世記憶)を思い出すことにより現在抱えている病気が治ったり、治療に役立つともされ、その後、多くのケースで施行され、その効果が認められてきました。

以後、ワイス博士に賛同する人も増えて博士と同様に前世療法を実践する人も多くなり、例えばカナダ・トロント大学医学部のジョエル・ホイットン博士は、約30人の被験者を集め、退行催眠を用い彼らの記憶を探りました。

その結果、全員に複数の前世と思しき記憶が見られ、原始時代まで遡る事が出来たといい、被験者の全員が「魂には男女の性別がない」と語り、多くの被験者が現在とは違う性に生まれた経験がありました。そして全員が「人生の目的は進化し学んでいくことであり、何度も生まれ変わりを繰り返すことによってその機会が与えられている」と語りました。

この前世の記憶の再生がなぜ「療法」なのかといえば、例えばホイットン博士の実験では、被験者が前世記憶を辿ったところ、心理的・肉体的に深く癒される、という結果が得られたためです。

また、同じアメリカのテネシー州にあるカンバーランド病院内に女性精神科病棟を創設したことで知られるドリーン・バーチュー博士は、セラピストとして患者に接した実例から、過去の事故や戦争により受けた傷が、生まれつき現在の体に備わっていることがあることを示し、前世の記憶をよみがえらせることでこれが治療できる可能性を示しました。

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このほか、同じくアメリカの心理カウンセラー、キャロル・ボーマンは精神的な心的外傷などを治療する事を目的として、子供を対象に多くの前世療法を施しています。ボーマン氏は「子どもたちの前世」という新しい研究分野の第一人者として、広く認知されている人です

このキャロル・ボーマンが示した症例の中には、精神的障害を持つ5歳の白人の子供がかつて黒人の兵士であったという「前世記憶」を持っていたケースがあり、この例の場合、子供が語る戦争についての記憶はかなり詳しく、当時の大砲、武器の特徴まで詳細に描写したといいます。

こうした前世で戦争経験を持ったことのある例では、その前世の体験が現在の肉体に身体的特徴として現れる場合も多いといい、例えば前世の戦争で亡くした片足に現世では大きな腫瘍ができていたり、また大砲のような大きな音を聞くと、恐怖で凍り付いてしまう、といった具合です。

戦争体験のようなPTSDにもかかりそうな精神的にも深刻的なダメージを受けたあとに転生した場合、こうした前世での経験が現世でのストレスの原因にもなりうるといったことなども次第にわかってきており、こうした前世の記憶を精神医学的な治療に役立てる具体的な方法については、多くの科学者たちが研究をはじめています。

例えば、上述のジョエル・ホイットンの実験では、退行催眠により現れた記憶を「前世」のものと仮定することで、子供が生まれながらに持つ言語的なまりや恐怖症、癖や異様な性癖などの特徴が発生した原因を矛盾なく説明できたといいます。

日本においては、こうした研究はまだまだの感があるようですが、元福島大学の教授、飯田史彦さんが「前世の記憶」を語った子供たちの事例を集め、その真偽を詳しく調査した結果、証言内容の人物が実在し、証言通りの死に方をしていることなどを示しています。

また被験者の発言内容の多く歴史的事象と一致していたことなども証明し、前世での死に方や病気が現生に影響している可能性を示しました。こうした話は、飯田さんの著著にたくさん出ていますので、本屋に行って「飯田史彦」さんの名前で探してみてください。

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こうした、前世回帰は、一般に幼児期に見られることが多く、子供によっては鮮明に前世のことを覚えていて、覚醒状態でそれを話すことができる子もいるようです。しかし、大人になってからは、前世の記憶があいまいになるケースが多く、これを引きだすために必要なのが催眠療法のような措置です。

アメリカ合衆国のヴァージニア大学精神科の主任教授イアン・スティーヴンソン博士は、人間の発達は、遺伝要因と環境要因に加えて,「生まれ変わり」という第3の要因の影響を受けるのではないか、と推測し、彼が率いる研究グループは、東南アジアを中心に、前世の記憶を持つとされる子どもたちの事例を2300例ほど集めました。

スティーヴンソン博士は、主として2歳から5歳までの間に「前世の記憶をよみがえらせた」子供とその関係者を研究対象として選びました。その調査方法は主に面接調査であり、これにより子供がもつ記憶の歪み、証言者たちの相互の証言の食い違いがないかを調査し、「前世の家族」を明らかにしました。

この結果、「乳幼児期の恐怖症」「幼児期に見られる変わった興味と遊び」「(酒類やタバコなど)大人の嗜好品への愛好」「早熟な性的行動」「性同一性障害」「一卵性双生児に見られる相違点」「子供が持つ理不尽な攻撃性」「左利き」「母斑」「先天的欠損」などの広範な現象は、生まれ変わり説を採用することで容易に説明できるということがわかりました。

こうしたことから、ストレスについても前世から引き継いだ何らかのカルマであることも考えられ、例えば何につけてもストレスを溜めやすい、といった性癖がある人は、前世においてセクハラやパワハラ、幼児虐待を受けるなど、そうした抑圧された生活が原因で前世では鬱屈した一生を送った、といったことも考えられるわけです。

このケースでは、今生ではそのストレスを発散し、前世で抑圧された魂が解放されることが、現世に転生してきた理由、といいうことになるでしょうか。

しかし、こうした前世があるかないかという議論については、いつの時代にもついていけないという人がいます。

例えば上述のように幼い子供が被験者であることを元にした仮説に対しては、試験した子供が実は嘘をついていたのではないか、といったふうに考える人が必ずおり、また「前世があった」と語る子供は、そのことを自分自身に強く言い聞かせることで、自分自身をだましているのではないか、つまり自己欺瞞に陥っているのではないか、という人もいます。

また、すべてを単なる偶然の一致と片付ける偶然説をとる人、前世の人物に関する情報をテレビや新聞などのマスコミなどから見聞きしたことが表面化したのだという潜在意識説や、記憶錯誤説などを唱える人も少なくありません。

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とくにもっともらしい反論としては、「遺伝記憶説」というものもあります。

これは「前世の人物」が親戚や家族だとされるケースなどでは、その子供が遺伝の影響により故人から何らかの記憶を受け継いだのではないか、という解釈です。しかし、上述の科学者達がこれまでに調べたケースでは、子供が持つ「前世」の記憶は極めて詳細にわたるのに対し、遺伝に基づくと証明される記憶は過小で、この説には説得力がありません。

このほか、通常では知るすべのない出来事を子供が知っているのは「超能力」によるものであり、そうした能力によって得られた情報を「前世の情報」としてまとめあげたのではないか、とする「超能力説」もあります。が、調査された子どもたちのなかで、超能力をもっていたと証明されたような例はこれまでありません。

さらには、憑依説というものもあります。この説では,「肉体を持たない人格」という実体、つまり霊の存在を認めた上で、それが肉体にとり付いて子供たちを支配していると考えます。しかし,もし本当に子供たちに霊が憑依したのならば,その支配に成功した人格が,子供たちが4~8歳になった以降に、急に憑依をやめてしまうのは疑問が残ります。

また、憑依した霊の人格と取りつかれた人格とが闘う、といった人格分裂の傾向はこうした子供たちには見られていません。成長著しい子供たちは、その過程でも特に人格の変化を見せることはなくそうした記憶を話すことから、人格変化や意識変化を伴うことの多い憑依と前世回帰とは違う現象です。

スティーヴンソン博士はこのように前世を否定する「仮説」に対してひとつひとつ反論のための傍証を重ね、いずれもが妥当ではないことを確認し、間違いなく生まれ変わりはありうる、と断言した上で、こうした前世を子供たちに思い出させることは、その子供たちが成長後に患る病気の治療にも役立つことをも示しました。

さらに、子供たちの中には、自殺で生涯を終えた前世を語る者もいます。こうした事例は「自殺しても苦しみは終わらない」ことを自殺願望者に気付かせるきっかけとなるのではないか、と博士は期待しているそうです。

ただ、こうした前世療法で使われる退行催眠において、催眠状態がもたらす「記憶の歪み」はしばしば批判の対象となってきました。つまり、退行催眠によって思い出されたことの史実上での裏付けを取ると、微妙に事実と異なることがあり、これが「歪み」だとされます。この現象について前述のブライアン・ワイス博士は以下の見解を示しています。

「ゆがみについては、例えば、ある人を子供時代まで退行させて、幼稚園のことを思い出すよう指示すれば、当時の先生の名前や自分の服装や壁に貼ってあった地図、友達のこと、教室のみどり色の壁紙などを思い出すかもしれない。」

「そして、そのあとでいろいろ調べてみると、幼稚園の壁紙は本当は黄色だったこと、緑色の壁紙は、実は幼稚園ではなく小学校一年生の時のことだとわかったとしよう。しかし、だからといって、その記憶は間違ったソースから来ている記憶とは言えない。」

ワイス博士はまた、過去世の記憶は一種の歴史小説のような性格をもっており、思い出した過去生はファンタジーや創作的な要素が強いものもあり、ゆがみ等も当然あるかもしれない、しかし、その核心にはしっかりした正確な記憶があり、「それらの記憶はすべて現世で役に立つものである」、と語っています。

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こうした、前世療法などを駆使して病気を治す手法は、スピリチュアルケア(spiritual care)として近年着目を浴びています。「生きがいを持ちやすい人生観」への転換を推奨し、人生のあらゆる事象に価値を見出すよう導くことにより、人間のスピリチュアルな要素(心あるいは魂)の健全性を守る術のことです。

「なぜ生きているのか」「何のために生きているのか」「毎日繰り返される体験の意味は何か」「自分はなぜ病気なのか」「自分はなぜ死ななければならないのか」「死んだあとはどうなるのか」「人間に生まれ、人間として生きているということはどういうことなのか」などの問いは、人間誰しもが抱えています。

スピリチュアルケアというのは、こういった問いに真正面から対面し、探究し、健全な解決へと向けて、絶え間なく働きかけることです。

人は誰でも、たとえ元気なときでも、どこか潜在意識的にスピリチュアルケアを必要としているといい、ましてや、病気になったとき、どうにもならない困難と対峙したとき、あるいは死に直面しているときなどは、なおさら、霊的な助けが欲しいと感じるようになるといいます。

ところが、現代西洋医学というのは、機械医療、つまりハイテクノロジー重視の医療へと変化してしまっており、こうした霊的な観点からの治療を非科学的だとみなし、むしろ廃除しようとする傾向があります。

西洋にその起源を発する、古い伝統的医学はスピリチュアリズムに寛容でしたが、各文化圏の伝統医療は、長い時代の変遷とともに、そうした部分をかなぐり捨て、機械医療に特化してしまいました。このため、現代西洋医学の従事者の多くは、病んでいる人のスピリチュアル・ニーズや、その切実な叫びに耳を貸さなくなってしまっています。

また、現代社会においては、若さ・バイタリティー・美などが高く評価されますが、一方で、苦しむことや病気の状態を生きること、あるいは死ぬことといった、後ろ向きなイメージのあることがらについてはむしろタブー視する傾向があり、これらについて深い考察を行ったり、言及することを避ける人も多いように思われます。

ところが、病いや死は突然やってきます。その段になって初めて、人はスピリチュアルな痛みを感じつつ、「自分は何のために生きているのか」「死んだあとはどうなるのか」といったスピリチュアル的な問いを自分に対して行いますが、それまでの怠慢がたたって、そうした段階ではなかなか素直にその世界へは入っていけません。

スピリチュアル・ケアというのは、こうした人達に死後の世界はどういうものかを教える、真剣に病気や死と向き合い、それがどういう意味を持つかを考えさせる、といった教育的なことも含んでおり、身体的ケア・精神的ケア・心理的ケアに次いで、人間にとっての究極的なケアとまで評価する人もいます。

前述の飯田史彦さんは、スピリチュアル・ケアとメンタル・ケアとの違いは、メンタル・ケアが「とにかく大丈夫ですよ」などと答えをあいまいにしたままであるのに対して、スピリチュアル・ケアにおいては「人生についての根本的疑問」に理路整然と回答し、納得を得る必要があることだとしています。

つまり、現生を生きている意味をしっかりと自分で考えるとともに、前世と照らし合わせた上で、自分がなぜ今生に生まれてきたのか、これまでの人生で何が得られてきたのか、今この世を去るとして、来世に残すべき課題は何なのか、といったことを整理し、納得することこそが、スピリチュアル・ケアにつながります。

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ところで、前世を思い出すには、専門家による催眠療法がないとできない、と思っている人も多いかもしれませんが、前世の記憶は、専門家の助けを得なくても自分だけで取り戻すことができます。

ワイス博士の著書は日本でも翻訳されて発売されており、これらについているCDなどで、自己催眠をかけるのはそのひとつの方法です。が、こうしたツールがなくても、部屋を落ち着けてリラックスできる環境にし、ベッドに寝て深くゆっくり呼吸しながら自分で催眠状態を作り出すこともでき、こうした自律訓練的な方法を試してみるのもひとつの手です。

私も自分でときどきこうした自己催眠を行い、色々な前世の出来事を思い出していますが、こうした中で過去生における亡き先妻とおぼしき人物に出会ったり、悪行の限りをつくした自分の過去を思いだしたりもしています。

が、こうした自己催眠効果は個人差もかなりあるようで、私は色々なものを見るのですが、嫁のタエさんはあまり見れないとよくぼやいています。

しかし、ここではこれ以上詳しくは説明しませんが、うまく過去生を思い出すようにできるための方法が多くの出版物に掲載されており、またWeb上でもその方法を教えてくれるサイトはたくさんありますので、みなさんも色々探してみてください。

ただ、実際にやってみるとわかりますが、これは夢なのだろうか、あるいは幻影にすぎないのではないかという不安に駆られることもあります

が、大事なのは、ワイス博士も言っているように、記憶にはゆがみがあるかもしれませんが、その根本にはしっかりした正確な記憶があるはずであり、ゆがんでいたとしても、それらは「すべて役に立つもの」であるということです。

そうしたものもまた過去生の記憶の断片と考え、場合によってはそれらを繋ぎ合わせてみて、そこから何が見えてくるかをじっくり考えることが大切です。その核心には現世で役に立つ何かが必ずあるはずであり、それを見つけることことが癒しにつながり、それこそが前世療法を行うことの意味です。

さて、今回のサッカー世界大会における日本チームの敗戦は、今生に住まう我々日本人の記憶に残る苦いものとなりましたが、この記憶もけっして悪いものというわけではありません。

この記憶をもとに、なぜ負けたのか、というその根本的問題を明らかにすることができ、これに素直に向き合ってそこから何らかの回答を得ることが重要であり、何よりもこの敗戦にも意味があったということを知り、その結果に納得することが大事だと思います。

それできたら、今後はそれを更なる発展のために役立てればいいわけであり、その際にはこの敗戦での悔しい思いをバネにすることができ、これによって次の成長を目指して今後ともがんばることができるはずです。無論、頑張るのは選手達だけでなく、応援していた我々もです。

次のワールドカップまでには、たとえ負けたとしても、これに動じず、ストレスを溜めこまないような、ケセラセラと笑い飛ばせる、そんな自分を作りましょう。そう考えると、4年後が楽しみではありませんか。

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