九州地方はとうとう梅雨に突入したようです。伊豆も時間の問題でしょう。先日、山口の母に電話をしたとき、そちらのホタルはどうかと聞いたら、もうそろそろ終わりに近いそうで、近くのホタル生息地、一の坂川のホタル祭りは、この3日に終わったそうです。ここ伊豆では、修善寺のほたる祭りが10日までなので、関西よりはやはり少しホタルは遅いようです。天城湯ヶ島のほたる祭りに至っては、7月1日までだそうで、伊豆では山奥に行けばいくほど遅くまでホタルが見れる、ということなのかな。おそらく、天城のほうが修善寺より気温が低いためなのでしょう。
さて、今日はタエさんとの30年ぶりの出会いの話などを書きだそうかな思っていましたが、昨日までの塀づくりで多少疲弊(へい)しているのと、天気もどん天で、気分もいまひとつ乗りません。今日のところはやめておきましょう。なので、昨日に引き続き、宮島での結婚式について書いていくことにします。
広島プリンスホテルから出航した船は、雨模様の中、それでも静かな瀬戸内海をゆっくりと進み、30分ほどで宮島の桟橋に着きました。宮島へ行ったことがある人は、ご存知だと思いますが、桟橋から厳島神社の社殿までは、通常徒歩で向かいます。途中、お土産物屋さんがあるルートと、海沿いの静かなルートのふたつがありますが、まずは海沿いの静かなルートを通って参拝し、帰りはお土産物屋さんのいろんなお土産で目を楽しませながら帰る・・・というパターンが一般的でしょう。
海沿いのルートには、本物の鹿があちこちにいて、観光客を迎えてくれます・・・といっても餌をねだりに近寄ってくるだけなのですが、なかなかかわいいもの。しかし、さわってみるとわかりますが、そのゴワゴワ感はやはり野生生物。あちこちにフンも落ちているので参拝のときには気をつけましょう。
もし、その日が晴れた日で多少時間に余裕がある方は、神社から10分ほど歩いた山の手にある「紅葉谷」という場所から出ているロープウェーに乗って、宮島の最高峰、弥山(みせん)に登ってみるのも良いかも。頂上からは、瀬戸内海の雄大な景色が広がり、最高の気分を味わえると思います。運がよければ猿の群れにも出くわすことができ、なかなかワイルドな経験をするかもしれないぜぇ。
あまり時間がない方にお勧めなのは、神社のすぐそばにある、「千畳閣」という建造物。別名、豊国神社といいますが、これは実はかの豊臣秀吉が建てようとした神社。「建てようとした」のですが、秀吉が途中で死んでしまったので、未完成のまま放置され現在に至っている建物です。「千畳閣」の名前どおり、とてつもなく広い伽藍で、広さは857畳とか。未完成なので、外壁はなく、その北側には広々とした瀬戸内海が見通せます。わたしは、子供のころからここの風景が好きで、宮島へ行くと必ずと言っていいほどここへ行きました。宮島の中でも最もおすすめのスポットです。
ちょっと脱線してしまいましたが、このほかにも宮島にはたくさんいいところや、おいしいものがたくさんありますので、一度も行ったことがない方はぜひ行ってみてください。島内にはほかにも面白いスポットがいろいろあるので、また機会があればご紹介しましょう。あ、そうそう、宮島へ行ったら、ぜひ「あなごめし」を食べてみてください。店にもよりますが、絶品ですよ!
・・・で、桟橋に到着した私たち一行ですが、さきほど説明したような通常の観光客が通る参道は通らず、その山の手側にとおる山道をバスで、社殿に向かいました。この道は、地元の人が使っている道で、観光客でごったがえすふもとの参道を迂回するためのいわゆるバイパスです。宮島は世界遺産ですが、昔から人が住んでいて、現在も2000人を超える住人がいます。参道からちょっと裏の路地に入ると、普通の民家がたくさんならんでいて、そのギャップにちょっとびっくりしますが、まぎれもない庶民の町。あちらこちらから島の暮らしの生活の匂いがします。
そんな裏道を通り、社殿前の駐車場に到着した我々一行が向かうのは、神社の最奥部にある本殿横にある待合室。その待合室までは、朱塗りの柱と天井に囲まれた長い渡廊下を通っていきます。我々の結婚式だからといって、別に貸切というわけではなく、普通に観光客が通っている廊下。おおぜいの観光客が和服のわれわれをジロジロと見ていきます。
羽織紋付の私と金襴緞子を着たタエさんは、とくに目をひくらしく、中には写真に撮る人も。途中、外国人さんのご一行がすれ違い、その人がハーイ、ハッローと声をかけてきました。写真を撮らせてくれ、と言うので、二人して外人さんご一行とハイ・チーズ。なんだかしらないけれど、珍しいものが撮れた、という感じで手を振りながら喜んで去っていきましたが、へへぇ、国際親善に一役買ってしまったなあぁ、とわたしは少しご満悦。
式直前で少し緊張気味ではあったのですが、そんなこともあってすっかりリラックスできた私。でもタエさんのほうを見るとやっぱ、緊張しているなーという感じ。そりゃあそうだ、生まれて初めての結婚式ですもの。私は二回目だけど・・・
待合室では、式が始まるまで30分ほどもいたでしょうか。この間、宮司さんから式の進行手順などの説明があり、それが終わるとお茶が出ました。式を待つ間、お茶を飲みながら親族同士でなごやかに会話をしたのですが、しかし、厳島神社本殿横の待合室、という特異な環境のためか、みなさんもやはり少し緊張気味のご様子。タエさんも緊張したせいか、おトイレに行きたくなったらしいのですが、なにせ重厚な帯でぎしぎしにおなか回りを「縛って」いるわけですから、無理からぬこと。付き添いの方に手伝ってもらってなんとか用を済ませたようですが、いやはや女性は大変だわ。
私はというと、羽織紋付とはいえ、いたって軽装なので小用もらくちん。鼻唄混じりで用を足しましたが、さきほどの外人さんとの一件もあり、なんだかとってもリラックスしていて、さあ出陣じゃ~という気分。酒を飲んでいるわけでもないのに、式直前になって妙にハイになっていました。
そしていよいよ式が始まりました。待合室のすぐ横はもう本殿の広間になっており、そこには神棚を中心として、そのすぐ前に新郎新婦の席。その両サイドにはそれぞれの親戚・友人の席がずらりと並びます。通常は、新郎新婦のほかに媒酌人、つまりお仲人さんがいるものなのですが、我々二人はとくにお仲人さんは設けませんでした。それで問題ないのか、と思われる人もいるかもしれませんが、媒酌人はいてもいなくてもいいのだそうです。若い人が結婚する場合、ゆくゆくの後見をしてもらうという意味から媒酌人を設けるようですが、我々のような熟年夫婦にはその必要はない、という判断でした。
神道における結婚式の手順は、日本全国だいたいぜんぶ同じです。入場から始まって、退場までだいたい10ぐらいの手順がありますが、簡単にいうと、まず、神主さんによるお祓いの儀式と全員による一拝。神主さんによる祝詞(のりと)の奏上。そしていわゆる三々九度の儀式をおこないます。三々九度のあとは、神社の「楽団」によってお神楽が奉納され、それが終わると、夫婦そろって神前で誓いの言葉をのべます(誓詞奏上)。
その後結婚指輪の交換を行ったあと、夫婦で玉串を神様に捧げます。玉串というのは、榊(さかき)などの小枝に紙を添えたもの。神様に対する貢物みたいな意味を持つようです。その儀式は玉串奉奠(たまぐしほうてん)というのだそうですが、これと、三々九度のふたつが、もっとも儀式めいた作法といえば作法です。それほど難しい作法ではないのですが、玉串奉奠では玉串を持ちかえる所作などに決まりがあり、三々九度でも最初の一口では酒を口に含まない、などの決まりがあります。この二つは結婚式では誰もが一番緊張するシーン。事前に練習しておくと本番で焦ることもありません。
玉串の奉納が終わると、今度は、親族一同が順番にお神酒をいただきます。そして最後に全員で神様に一拝して、無事、結婚式の終了です。
実際の式では、ちょっと心配だった三々九度と玉串奉奠の儀式もスムースにやることができ、晴れて二人は夫婦になりました。わたしとしての採点は95点ぐらい。緊張もしていなかったし、とくに誓詞奏上は気持ちよく行えました。用意された誓詞を夫婦二人して読み上げるのですが、わたしはこれをできるだけ大声で読み上げました。
神様に誓うのだから、声は大きいほうが良いと思ったからなのですが、式当初からかなりハイだった私の声はいつになく大きく、読み上げる本人もびっくりするくらい本殿に響き渡ります。これがまた実に気持ちのイイこと。だからといってとりわけご利益があるというわけでもなかったでしょうが、大声を出したことで、さらに気分はすっきり。気持ちよく本殿をあとすることができました。
結婚式が終わったあとは、社殿内のあちこちで、親戚や友人と記念写真。きらびやかな結婚衣装を着たタエさんはとくにみんなの引っ張りだこで、大人気でした。出口に向かう回廊では、これから参殿する大勢の観光客とすれ違いましたが、おめでとう、と声をかけてくれる人もいて、気分は最高潮。あー、宮島で結婚式をしてよかったなー、と実感できる瞬間でもありました。 が、三度目をやりたいか、といわれると、もういいかな。面白かったし、良い経験ではあったけれど、やっぱ肩こるわ。
社殿からはふたたびバスに乗って桟橋へ。そして、また船に乗ってプリンスホテルへ向かいます。午後からはいよいよホテルでの披露宴の開始。これまでは親戚と親しい友人だけでしたが、これからは、ほかの招待客も交えての宴が始まります。あとで聞いた話では、その披露宴には我々がお呼びした招待客だけでなく、あちらの世界からもお客様が見えていたとのこと・・・
そんなスピリチュアルな話も交え、またその披露宴の様子なども、このブログで紹介していこうと思います。そして、我々二人のなれそめのことなども。
今日はこれから、残る塀の作業を完成させなければなりません。疲れていなければまた明日続きをアップしましょう。