梅雨が近づくにつれ、天気のおもわしくない日も増えてきました。雨が降って花が散ってしまわないうちに、ということで、前から気になっていた、バラの名所、河津バガテル公園に行ってきました。
修善寺から天城峠を越えておよそ1時間ほどのところにある河津町は、本州で一番早く咲く桜、河津桜で有名な町。産業は何かな、とちょっと調べてみたら、どうもみかんなどの柑橘系の果物を作って出荷する農家が多いみたい。下田にもほど近いので、下田に仕事に出る兼業農家も多いのではないかと思われます。
お昼直前に着いたので、どこかでお昼を食べる良いレストランでも、と探していたら、伊豆急行の河津駅前にある、「伊豆海鮮どんぶり屋」というお店が目にとまりました。駅前にもかかわらず、ほかにはあまりお店らしいお店もないので、ともかく入ってみることに。お昼時にもかかわらず、先客は一組だけで、店内はがらんとしています。河津桜の咲く季節でもなく、平日でもあることを考えればこんなもんなのでしょう。店の名前からして、丼物中心だろうな、とは思っていましたが、案に違わずメニューは、いろいろな海鮮どんぶりがあります。
わたしは、豪快海鮮丼、タエさんは、サーモン親子丼を注文し、およそ待つこと5分。出てきた丼は、なるほど豪快にいろいろな地ざかなの刺身と青物が乗っています。タエさんのほうは、ピンク色のサーモンの上に、いくらがまぶしてあるタイプ。どちらもおいしそうです。ここの丼は、すべて酢飯になっているとのこと。寿司の好きな私にとっては大歓迎。早速いただくことに。
さすがに、良いお値段なだけに(二人で3500円ほど)、味は上々で、お刺身もぷりぷり。いろんな味も楽しめてなかなかのものです。ただ、値段の割には一緒に出てきたお吸い物の中身がわかめだけ、というのはちょっと寂しいかんじ。せめて何かの魚のあら汁くらいにして欲しかったかな~。まあ、大満足とはいいませんが、私的にはまずまずといったところで及第点を差し上げたいと思いました。しかしタエさんはといえば、おそばか何か別のもののほうがよかったみたい。もともと、どちらかといえば魚は苦手なタイプなので、もっと別の店があればそちらに入りたかったご様子。でも選択肢はあまりたくさんなかったんで、仕方がないねー。
まあ、公園に行ったら、おいしいケーキでもご馳走するよ、と少しご機嫌をとりつつ、今日の目的地に向かいました。
その目的地、河津バガテル公園は、駅から車で10分ほどの高台にありました。山間の緩傾斜面の土地を整地して作ったらしいその公園は、かなりの広さがあります。どのくらいの広さかなと思ったら、約5ヘクタールあるそうで、そのうちの2haがバラ園だそうです。甲子園球場が、1.3ヘクタールだそうですから、バラ園としては、かなり大きい公園です。
その名前の由来ですが、「バカ」が出る公園かと思っていたら、デルではなく、テルだそうです。しかも「バカ」ではなく、「バガ」。フランス語で、「小さくて愛らしいもの」という意味とのこと。
天才バカボンとも何の関係もないらしく、有名なパリのブローニュの森の中にある公園の姉妹園として10年ほど前に開設されたとか。
バガテル公園を運営する会社のHPによると、初期のパリ・バガテル公園は、18世紀にルイ16世の弟のアルトワ伯爵という人が命令して、建築家のブランジェとその助手に作らせたらしい。
「公園全体が単なる集まりの場ではなく、人の和・愛・知恵等を主張するスペースで、自分のイマジネーションを、純粋な子供の如く自由に働かせ、多様さに満ちた自然との会話を楽しむ憩いの場であるというものであり・・・」と長い説明があるのですが、よくわからん。が、どうやらクラッシックなフランス風の庭園をめざしたのではなく、フランスの田舎の風景を凝縮したようなものを作りたかったらしい。
その後、1905年にパリ市が公園を買収したあと、モネなどの印象派の画家達の影響を受け、公園のイメージは少しずつ変化し、だんだんと華やかになっていったそうです。当初は大きなバラ園はなく、現在のようなバラ園が誕生したのは更にそのあと。
で、なんで河津町にパリの公園? と突っ込んで調べたところ、よくわかりませんがたぶん、桜以外何の観光産業もない町のこと、町おこしのために大きな目玉が欲しかったんでしょう。平成9年に、パリのバガテル公園を運営している会社と基本協定を結ぶことに成功。その後町が主導する形の、第3セクター方式の会社を設立し、運営を始めたようです。
このあたり、何やらわが伊豆市の誇る、修善寺虹の郷とよく似てる。市や町が主導で第三セクターが運営する施設を町おこしの目的でつくる、というのはよくあるパターンです。しかし、なかなかうまくいった例はなく、開園後まもなく潰れてしまったという施設はゴマンとあります。
それからすると、開園後、バラだけで10年以上も頑張っているバガテル公園はなかなかたいしたもの。うーん、あなどれんなー、敵もなかなか・・・とすっかり伊豆市のスパイのような気分。
実際、中に入ると、確かになるほどなるほど、とうなづけるようなしかけがいろいろあります。入場料一般1000円が高いかどうかは別として、園内のレストランで食事をすると、セット料金で食事代が割安になるというのは、ひとつのアイデアです。また、春から秋はよいとして、冬のオフシーズンにはバラは咲かないことから、こうしたオフシーズンには逆にそのレストランでの食事やショップ運営などを売りにしています。オフシーズンには入園料を安くし、いろんなイベントを打って、食事の質で集客を図る・・・ 園内の食事処のクオリティがいまひとつの修善寺虹の郷とは違ったアプローチといえます。
とはいえ、さすがにオフシーズンには人は少ないだろうなーと思う次第。ただ、この第三セクター、国民宿舎の管理運営もやっているそうで、公園とそのショップ運営だけではやっていけない部分を他で補っているらしい。だから、10年以上ももっているんだあ、と妙に感心。
それにしても、園内各所はきれいに清掃され、入口からバラ園に至る途中のレストランや喫茶店、お土産物屋、噴水、そしてそれらを囲むような木々、といずれも本当にフランスにやってきてそのの風景を見ているような趣があり、なかなかえーです。あちこちに、花を寄せ植えにしたワゴン車が置いてあって、これがまた牧歌的な雰囲気をかもしだしています。
この日はあいにく先にランチを済ませてしまっての入園だったので、レストランで出されるというフランスの田舎料理を食べることはできませんでしたが、次回はぜひその質を確かめてみたいもの。
・・・さて、前置きが長くなりましたが、肝心のバラ園はどうだったかというと・・・これもすばらしいものでした。手前から奥に向かうやや細長い形で配された庭園は、縦横に砂利の園路が配され、バラが植樹されている部分はすべて芝生で覆われています。庭園の一番奥は展望台になっていて、ここからは太平洋が見えるしかけ。逆に一番手前には宮殿風の休憩所の建物が作られていて、中はちょっとしたイベントが開催できるホールになっています。この日はそのホール内で写真展をやっていて、バガテル公園でバラをとったアマチュア写真家の写真がたくさん並んでいました。グランプリには河津町長さん賞などが与えられたみたい。ざっと拝見しましたが、グランプリ受賞作品はなかなかのクオリティでした。
バラの種類は、全部で1,100品種。6,000本のバラがあるんだそうで、広い園内を隅から隅まで歩いては、気に入ったアングルでいろいろな写真を私も撮ってみました。今日ここに掲載しているのはそのほんの一部ですが、今改めてみても写真からほのかな甘い匂いが漂ってくるようではありませんか。
園内をくまなく歩き、満足のいくまで写真を撮ったあとは、カフェでのどを潤しましたが、タエさんと食べたケーキもなかなかのもの。値段も手ごろで、納得感あり。カフェやレストランは、有料のバラ園の外にあるので、お茶や食事だけの利用客も利用が可能。これから何度か下田方面に来ることもあろうかと思いますが、ここで食事だけを楽しむために来るというのもありかな、と。良いスポットを見つけた、とタエさんと二人で大喜びです。
これらカフェやレストランの横には、バラの苗を直売しているガーデニングショップもあります。一般のホームセンターや園芸店では置いていないような品種のバラも多数置いてあって、それらをひとつひとつ見ていくのもまた楽しいもの。お土産にどれか買っていこうというわけで、二人で小一時間ほども見てしまいました。
最終的に、二株を選び、修善寺に持ち帰ることに。今回は二株だけですが、これからもたびたび訪れて、いろんなバラを集め、庭に植えようねと二人で話ながら、バガテル公園を後にしました。
そんなわけで、今日のショートトリップにはふたりとも大満足。それにしても、これだけ遊んでも帰宅は5時すぎ。東京ならば、ちょっとした遊び場へ出かけるにしても、帰りの渋滞に巻き込まれて、帰りが遅くなるなんてことはしばしば。伊豆半島内のどこにでも数時間で行くことができるという立地は、修善寺ならではのもの。あらためて良いところに住んでいるなーと実感できました。
そんなわけで、来週は下田まで行ってみよう、ということに。今、下田ではアジサイが見ごろになっているはず。こちらも出かけていき、たくさん写真を撮ってこようと思います。その結果はまたブログにアップしますね。それでは今日のところはこれまで。