あぁねったい

2014-1424今朝の伊豆は久々に晴れて、良いお天気です。

しかし、一昨日の夜、伊豆では、相当の雨が降りました。……が、少々疲れ気味だった私は、早めに床に入り、それをタエさんからそれを聞かされたのは昨日の朝のこと。見ると、家の中からあちこちの窓がべしょべしょになっており、この夜の風雨の強さを物語っていました。

その雨が、東へ移動し、昨日の札幌近郊はだいぶ大きな被害が出たようです。現在まだ道東で雨が降っているようですが、これ以上被害が拡大しなければいいのですが。

この雨は、おそらくは先日来の台風のなごりによって、取り残された湿気がもたらしたものでしょう。台風による直接被害ではありませんでしたが、まだまだこの先、こうした気象擾乱は起きやすい季節が続きますから、油断はできません。

また、今年の台風の発生数は、8月までだとまだ13個です。平年だと13.6個ですから、だいたい平年並みです。が、年合計の平年値は25.6個だということなので、ようやく半分程度に達したにすぎません。まだまだ9月10月と発生して日本列島に接近する可能性もあるわけで、今後とも注意が必要です。

それにしても今年はなぜか台風による直接被害ではなく、前線の停滞などによる集中豪雨による被害が多いような気がします。台風が来ていなくても、日本中どこかで必ず雨が降っているような印象で、例年になく大気が不安定なようです。

この集中豪雨というヤツですが、積雲や積乱雲によってもたらされるというのは、さんざんテレビやら新聞やらで知らされて誰もが知っていることです。積乱雲はもくもくと発達して急激に雲頂の高さを増しますが、こうした雲の中で対流中の空気の上昇流の速度は他の循環による上昇流に比べて桁違いに大きいことが知られています。

このため、積乱雲の上層部と下層部では、かなり大きなエネルギー落差が生じ、これによって雨粒や氷晶の急激な発達が起こり、激しい雨となるわけです。

2014-1397

では、にわか雨と集中豪雨は何が違うのでしょうか。

一般的な積雲や積乱雲では激しい雨をもたらすものの、そうした雨の多くは、急に降りだしてすぐ止んでしまう一過性の雨です。夏の日、とくに午後になると日本では大気が不安定になることが多く、このため散発的な積乱雲が発生し、いわゆる夕立をもたらしますが、これがにわか雨の代表選手です。

このにわか雨を降らせる積乱雲の場合、その塊が雑然と集ることなくそれぞれが独立的に活動しており、このため降雨は長続きしません。このようなタイプの降水をもたらす積乱雲をシングルセル(single cell)といい、雨域は水平方向に5~15km、寿命はおおむね30-60分ほどです。

ところが、大気が著しく不安定となった場合に積乱雲が発達すると、シングルセルがダブルセルになり、トリプルセルとなって雨量が増し、数十分で数十mm程度に達します。このような雨を気象庁は「局地的大雨」と読んでいます。

そしてさらに条件が整うと、1時間で数十mmの局地的大雨が数時間あるいはそれ以上継続し、総雨量が数百mmに達し、これが「集中豪雨」と呼ばれるものになります。集中豪雨になる必須条件としては、寿命の短い積乱雲が世代交代をして次々と発生・発達することであり、かつその積乱雲群が連続して同じ地域を通過することです。

局地的大雨も集中豪雨も、1つ1つのシングルセルの寿命は30-60分ほどですが、集中豪雨では積乱雲が世代交代しながら数時間もの間連続して通過することで雨の降った地域に壊滅的な影響を与えます。時には十数時間から数日に亘って強い雨が続く場合があり、過去には一週間以上も広域にわたって降り続いた例もあります。

昭和47年に起こった「昭和47年7月豪雨」では、高知、熊本、愛知、岐阜、神奈川などの各県において、7月3日から15日まで12日間も雨が降り続き、死者421名、行方不明者26名、負傷者1056名の大惨事を引き起こしました。

また、近年では5年前の平成21年(2009年)の7月19日から一週間に渡って山口県や福岡県で集中豪雨が続き、これは「平成21年7月中国・九州北部豪雨」と呼ばれました。時間雨量は防府市で70.5mm、福岡市博多区で114mmなどであり、大規模な土砂崩れが発生し、32人もの死者が出たことは記憶に新しいところです。

こうした集中豪雨では、積乱雲の世代交代において、降水セルが線状あるいは団塊状にまとまることが多く、これはさらに単一の巨大な降水セルとなり、こうしたセルのことを「マルチセル」またはさらに激しいものを「スーパーセル」といい、たいてい雷を伴った激しい降雨をもたらすため、マルチセル型雷雨、あるいはスーパーセル型雷雨とも呼びます。

2014-2230

こうした雷雨は研究者によればさらに2~4種類に分けられるようですが、そのうちのひとつに「バックビルディング型」と呼ばれるものがあり、この用語は最近ニュースやワイドショーでよく取り上げら、すっかりおなじみになりました。

日本で最も発生しやすい型といわれており、成長期・成熟期・衰退期など異なるステージの複数のシングルセルが線状に並びつつ移動します。季節としてはやはり梅雨期が多く、1998年8月上旬に新潟県下越・佐渡で起きた「平成10年8月新潟豪雨」もこれでしたが、先日20日広島で起きた「平成26年8月豪雨」もこれだといわれています。

日本における集中豪雨は、発生時期で見ると梅雨の時期、特に梅雨末期が多いようです。が、この広島の災害の際には梅雨はとっくに明けており、にもかかわらずまるで梅雨前線のように停滞していた前線がこの豪雨をもたらしました。

停滞した前線がもたらす大雨は、年間を通して見ると、1時間程度の短時間のものは、「局地的大雨」として日本国内どこでも見られます。ところが、24時間以上続く長時間の集中豪雨は、暖湿流が流れ込みやすい九州や関東地方以西の太平洋側に多い傾向があるようです。また、梅雨期に限ると、集中豪雨はとくに西日本に多く発生するといわれています。

単位時間当たりの雨量の極値をみても、10分間程度の短時間における雨量は国内どこでもだいたい同じくらいで、その差は小さいようです。ところが、1時間雨量、24時間雨量になると南の地方ほど雨量が多くなる傾向があり、これらの地域でもさらに南側の斜面沿いの地点で多くなる傾向が顕著になります。

ちなみに10分間雨量の極値は日本では40~mm程度であり、これ以上になることはまずありません。これすなわち、10分程度の短時間の雨量は単一のシングルセルに起因するにわか雨であることにほかなりません。これに対し、長時間の大量の雨は上述のようなマルチセルやスーパーセルの積乱雲の連続通過に起因するわけです。

2014-1360

気象庁の観測統計によれば、こうしたマルチセルによる集中豪雨は、アメダス1000地点あたりでみると、時間雨量50mm以上のものが、1976~1986年に160回でした。ところが、1998~2009年には233回になっていて、+45%と明らかな増加を示しています。ここ数年の統計はまだなされていないようですが、最近の状況をみていると更に増えていそうです。

また、同じく時間雨量80mm以上のスーパーセルといわれるような豪雨の年間平均発生回数は1976~1986年に9.8回だったものが1998 ~2009年には18.0回になっていて、これも+80%と更に急激な増加を示しています。

2011年、気象庁の外郭団体である日本気象協会は「総雨量2000mmの時代を迎えて」と題する見解を発表しました。

この中で気象協会は100年後をシミュレーションした予測結果によれば日本の南海上の海面水温は台湾近海並みに上昇した水温となり、台風の進行速度や海面水温を考慮すれば、日本も台湾と同様に総雨量2000mmを超える大雨を想定した対策が必要としています。

世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本は、年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均(880mm)の約2倍にも相当します。年間降水量で日本を超えているのは、インドネシア(2702mm)、フィリピン(2348mm)、シンガポール(2497mm)の3カ国だけであり、2000mmはこれらに迫る値です。

いずれ、日本でもこうした国のように毎年のように大雨が降るようになり、このため植物がどんどん育ってジャングル地帯が多くなり、これに伴い生物相も増えて、ちまたにひらひらとたくさんの蝶々が飛び回る虫大国になっていくに違いありません。

こうした背景にはやはり地球温暖化があるというのが一般的な見解です。最近デング熱の発生で話題になりましたが、とくに東京では急速に「熱帯化」が進んでいるといわれているようです。この「熱帯」の定義としては、最寒月の平均気温が18℃以上でヤシが生育できること、平均気温が一年中19℃以上であることなどです。

港区にある、国立科学博物館付属自然教育園は、東京でも数少ない自然に近いかたちで森を残してきた場所ですが、ここにはヤシ科のシュロが大量に繁殖しています。このシュロは、園内1万本の樹木の2割を占めるまでになったといい、最近では、実こそ結ばないものの、キウイまでもが普通に自生し、インコが飛び回っているそうです。

このシュロという木の若芽は、通常冬の平均気温が4度以下になると枯れてしまうといわれていますが、最近は枯れることなく、逆に繁殖が増加しているといい、こうしたことからも、東京は早、熱帯に含められるのではないか、といわれているわけです。

2014-2371

もっとも、熱帯ではなく、亜熱帯ではないか、といわれることもあります。しかし、実はケッペンの気候区分には亜熱帯という区分はありません。温帯に含まれる地域の一部を俗に亜熱帯と呼ぶことがあるだけです。

ケッペンの気候区分というのは、植生分布に注目して考案された気候区分で、気温と降水量の2変数から単純な計算で気候区分を決定できることに特徴があり、世界標準とされているものです。

このケッペンの気候区分に亜熱帯はないわけですが、一般的には、最寒月平均気温が-3℃以上18℃未満で、冬季の積雪は根雪にならないが、ヤシが生育するほどでもない地域のことを亜熱帯といいます。日本では、東京都小笠原の各諸島、鹿児島県の奄美群島、沖縄県の沖縄諸島・宮古列島・尖閣諸島などが亜熱帯に属するとされています。

その他の日本の地域はだいたい、「温帯」に分類されます。最暖月平均気温が10℃以上で、
安定した気候で四季の変化に富み、多くの動物・植物が生息します。

こうした中にあって、東京だけが熱帯化、あるいは亜熱帯化しているとされるのは、上述のようなシュロのような熱帯性の植物がごく一部とはいえ見られるようになったことに加え、夏には謎の集中豪雨がここを襲うことが多くなったことなどにも由来します。

とくに新宿などの東京西部が多いとされており、この東京西部という場所は、相模湾からの南風と鹿島灘からの東風がぶつかって上昇気流が起き、集中豪雨に見舞われる場所として以前から知られていました。

しかし最近、海からの風が吹かない日にも集中豪雨が起きることが知られています。これは乱立するビルのためだということが言われており、ビルなどからの人工排熱で大気が局地的に熱せられて上昇気流が起き、積乱雲が発生するためのようです。

また、真夏の東京23区内で1日に排出される人工熱量を試算すると、東京ドーム0.7杯分の水を瞬時に沸騰させ、蒸発させることができるほどの熱量になるといいます。驚くべき熱量です。

2014-4681

来たる東京オリンピックからわずか5年後の2025年ごろには、東京都心でも最高気温が40度を超すようになり、50年以降はそれが毎年のことになると予測する専門家もいるようです。また発熱は地下でも著しく、都心13カ所で下水道の温度を調べたところ、この30年で年平均温度が4.8度、冬に限ると7度も上昇しているといいます。

こうした現象は、家庭で風呂場や食器洗いなどで湯を使う量が増えた影響と考えられており、人工的に発せられる熱の1割が下水に捨てられているためだといいます。

さらには、この下水が流れ込む東京湾でもとくに冬場の水温上昇が著しく、20年間で2度も上がり、プランクトンが大量発生して酸素欠乏の状態が続き、外来種の貝の異常繁殖なども起こっているようです。

このような東京の熱帯化から、ひところ話題になった首都移転も再び現実味をおびてくるようになりました。しかし移転のためには多額の費用もかかることから、このためせめて夏場だけでも、首都機能を移転したらどうかという人もいます。真夏に霞が関の官公庁を訪れた人は分かると思いますが、ここは地獄です。

建物の中は非常に暑くて、到底仕事に集中できる環境ではなく、確かにエアコンは28℃設定になっているのですが、実際はパソコンなどの電子機器も動いているのでもっと暑く感じます。こんな環境で働いても効率が落ちるだけですし、スーパークールビズでどうにかなるような話ではありません。

このため、思い切って夏の間だけでも中央官庁の機能を首都圏から仙台などの北にある場所に移転を考えてみようということで、官僚というものはもともと「転勤族」といわれているぐらいですから、元々移動には慣れています。これを契機に恒久的な移転の雰囲気も出てくる可能性もあるし、考えてみても良いのではないか、というわけです。

資料などの移動が大変だという意見も多いでしょうが、今のようにインターネット全盛でデジタルな時代には、基本的に身一つとオンライン環境さえあれば大概の仕事はできるはずです。機能を分散して涼しいところで働く人間を増やしたほうが、業務効率も上がるでしょうし、東北に官公庁が移転すれば、現地の復興の手助けになるかもしれません。

東京だけでなく、日本の気候はますます熱帯化しており、この首都圏のプチ移転を契機にあらゆる習慣、制度の見直しを進めるというのも手かもしれません。さらに、高校野球に代表される公式な競技大会も、酷暑の中で実施するのはやめて、思い切って北海道や東北などの涼しい地域に場所を移して大会を開催すればいいと思います。

あるいは、時期を秋にずらせば、春の大会と秋の大会ということでバランスがとれます。また、甲子園から東京ドームへ会場を移すといった手もあります。甲子園が聖地だからという理由だけで、これからも延々と真夏の炎天下での野球を球児に強要するのは理不尽な気がします。

2014-4684

2020年の東京オリンピックもまた、真夏の一番暑いときに行われる予定のようです。7月24日〜8月9日までの日程で、競技会場はいずれも東京都に所在します。「東京オリンピック」と銘打っている以上、こちらはさすがに開催地移動、というのは難しいと思いますが、一部競技を別の場所でやるくらいはIOCも大目にみてくれるのではないでしょうか。

自転車競技などは仮設の競技場を有明に作るとか言っていますが、伊豆には伊豆ベロドロームという国際基準に合致した立派な自転車競技場があります。伊豆も東京の一部だ、というのは多少(かなり)無理があるかもしれませんが、新たな競技場の建設費用のことなどを考えれば、検討してみる価値はあるように思います。

しかし、競技場などの代替地を周辺に求めたとしても、東京の熱帯化が今後も進んでいくとすれば、依然デング熱のような、いわゆる「熱帯病」の対策が必要になってきます。国際都市としての東京をアピールする際に、ここにこうした病気が蔓延したまま、というのはぜがひでも防がねばなりません。

この熱帯病ですが、とくにはっきりした定義はないようですが、熱帯地方に多くみられる病気とされています。熱帯地域には蚊やハエ、寄生性の強い原虫といった有害生物が多く、これらの生物を媒介してヒトに感染する病気が熱帯病とされることが多いようです。

デング熱意外にどんなものがあるかといえば、マラリア、黄熱病、HTLV感染症、リーシュマニア症、トキソプラズマ症、肝蛭症、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウム症、などなどです。

これ以外にも、狂犬病、トラコーマ、ハンセン病などのように、既に日本ではほぼ撲滅されたとされるものも含め、WHOではだいたい17種ぐらいを熱帯病として指定しているようです。

このうち、「マラリア」については、日本では過去に土着マラリアが存在しましたが、現在では絶滅しています。しかし海外から帰国した人が感染した、いわゆる輸入感染症が年間100例以上報告されており、増加傾向にあるといいます。現在も指定感染症とされており、診断した医師は7日以内に保健所に届け出る必要があります。

マラリアは、単細胞生物であるマラリア原虫がハマダラカによって媒介されることで発症します。発症すると、40度近くの激しい高熱に襲われますが、比較的短時間で熱は下がります。この点、現在流行しているデング熱と似ています。ただ、マラリアには、三日熱マラリア、四日熱マラリアなどの2~3種があり、症状はひとつではありません。

三日熱マラリアの場合は48時間おきに、四日熱マラリアの場合72時間おきに、繰り返し激しい高熱に襲われることになり、これが三日熱、四日熱と呼ばれるゆえんです。また卵形マラリアというのもあり、こちらは三日熱マラリアとほぼ同じで50時間おきに発熱します。

いずれの場合も、一旦熱が下がることから油断しやすいのですが、すぐに治療を始めないとどんどん重篤な状態に陥ってしまいます。一般的には、3度目の高熱を発症した時には大変危険な状態にあるといわれており、最悪なのは、マラリアの場合、放置した場合などにはこれが慢性化するケースがあることです。

マラリア原虫が肝細胞内で休眠型となり、長期間潜伏するためであり、この原虫は何らかの原因で分裂を再開し、再発の原因となります。四日熱マラリア原虫の成熟体は、血液中に数か月~数年間潜伏し発症させることもあるといいます。

明治~昭和初期の日本では、全国で土着マラリアが流行し多数の感染者を出しました。戦後も500万人を超える復員者による再流行が危惧されましたが、1946年ころの28000人ほどをピークに減少しています。しかし上述のとおり、外国でマラリアに感染し、帰国してから発症する例が年間100~150例程度あるものの、土着マラリアは流行していません。

その理由としては、マラリアの媒介者であるハマダラカの多く発生する水田地帯の環境変化、稲作法の変化などによる発生数の減少や、日本の住宅構造や行動様式の変化により夜間に活動するハマダラカの吸血頻度が低下したことなどが理由としてあげられているようです。

しかし、ヒトスジシマカのような、いわゆるヤブカといわれ、普通にどこでも繁殖する蚊によって最近デング熱が広がっているわけであり、ハマダラカもまた大量に発生する可能性は、今後とも大いにあります。

ちなみに、デング熱に効くワクチンはまだないようですが、マラリアの予防ワクチンは年々開発が進んでいます。このワクチンが実用化された場合、マラリア発症リスクが56%、重症化リスクが47%それぞれ低減されるとされており、日本でも大阪大学微生物病研究所らのグループで開発が行われているそうなので、オリンピックには間に合うかもしれません。

2014-4731

このほか、「黄熱病」はネッタイシマカによって媒介される黄熱ウイルスを病原体とする感染症です。ネッタイシマカは、全世界の熱帯・亜熱帯地域に分布し、日本ではかつて琉球諸島と小笠原諸島で生息が確認されたことがありますが、国内での定着は確認されていません。また天草諸島でも1944年に異常発生しましたが、1952年までに駆除されました。

1970年以降は天草での採取例はなく、沖縄でも20世紀初頭に確認されたこともありましたが、いつの間にか姿を消し、ヒトスジシマカに席巻されている状況です。最近デング熱で話題になっている新宿界隈でもまだ発見はされていないようです。

しかし、2002年、日本生態学会により日本の侵略的外来種ワースト100に選定されており、再び国外から侵入定着する危険が指摘されています。

このネッタイシマカやヒトスジシマカによってもたらされる黄熱病の特効薬はありません。が、1回接種の生ワクチンによって予防が可能です。ただ、移されると潜伏期間は3~6日で発症し、突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、悪心・嘔吐などの症状を呈します。

発症後3~4日で症状が軽快し、そのまま回復することもあります。が、重症例では、数時間~2日後に再燃し、発熱、腎障害、鼻や歯根からの出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血、黄疸などの症状がみられます。黄熱病の死亡率は30~50%と高く、この黄熱病の研究途中で野口英世が自ら感染し、死亡したことは良く知られています。

主にアフリカで発見された風土病であり、アフリカから遠く離れた日本ではこれまでに多くの人が感染したという例はあまりないようです。だからといって安心はできませんが。

「HTLV-1」もまた、アフリカ由来のウィルスといわれており、最近話題になっています。平成20年度の厚生労働省の調査によると、現在、国内には約108万人の感染者がいることが明らかとなりました。これはB型肝炎やC型肝炎に匹敵する感染者数で、決して少ない数ではありません。

もともと感染者は九州などの地域に多いといわれていましたが、厚生労働省の調査で関東や関西の大都市圏でも増加傾向にあるとわかりました。HTLV-1は、ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T-cell Leukemia Virus Type1)の略で、このウイルスは、血液中の白血球の1つであるTリンパ球に感染して白血病を起こします。

母子感染(主に母乳)、性交渉によって感染し、血液感染もします。HTLV-1に感染しても自覚症状はありませんし、また約95%の人は生涯病気になることはありませんが、ウイルスに感染していても症状がない人を「キャリア」と呼びます成人のHTLV-1キャリアのうち、約4~5%が白血病などを発症し、潜伏期間は約40年で男性にやや多い傾向があります。

日本にはもうすでにかなり浸透しているようであり、熱帯病というのは適当ではないかもしれませんが、そうしたものがある、ということも覚えておきましょう。

このほか、「リーシュマニア」は、原生生物が細胞内に寄生して引き起こし、この原虫は「サシチョウバエ」という、ハエによって媒介されます。日本にもチョウバエの仲間は、オオチョウバエやホシチョウバエなどがいますが、サシチョウバエのような吸血性のものは今のところ確認されていません。

これもアフリカ起源でアジア、アフリカ、中南米の熱帯地域に分布する吸血性の「サシチョウバエ」によって媒介され、感染後数ヶ月から数年たってから、発熱、肝臓や脾臓の腫大と貧血といった症状が出て、放置すれば死に至ります。ヨーロッパ各国による新世界の植民地化に伴って流行したもので、最近でも欧州と南米は発生が顕著なようです。

「トキソプラズマ」もまたは、寄生性の原虫によって引き起こされるもので、ヒトを含む幅広い恒温動物に寄生してトキソプラズマ症を引き起こします。世界人口の3分の1が感染していると推測されていますが、通常は免疫により抑え込まれるため大きな問題とはなりにくいようです。しかし、免疫不全の状態では重篤あるいは致死的な状態となりえます。

特に妊娠初期に初感染した場合、胎児が重篤な障害を負うことがあるそうです。日本では、まだあまり広まっていないようですが、症例がないわけではなく、また詳細な疫学調査はほとんど行われていないため、感染経路を含む感染の実数調査が望まれているようです。

「肝蛭症(かんてつしょう)」。これも寄生虫病であり、人獣共通感染症です。蛭によって感染します。日本ではこの原因になる「肝蛭」という蛭が広く分布しており、現状でも感染の可能性はあります。ただ致死性は少なく、初期では発熱や主に肝臓の機能異常を起こし、慢性期では不規則な発熱、貧血、腹痛、消化不良、下痢、黄疸、などがみられます。

「アメーバ赤痢」、これは一般にいわれている赤痢菌による赤痢ではなく、アメーバによって引き起こされるため、細菌感染症ではなく、これも寄生虫症に分類されるようです。大腸に寄生した赤痢アメーバによって引き起こされ、まれに肝膿症や脳・肺・皮膚などへの合併症が報告されています。

感染経路は性感染によるものもあるため、性行為感染症に分類される場合もあり、日本では男性同性愛者、海外旅行者や集団施設生活者などでの感染報告例などが多いといわれています。

「クリプトスポリジウム」、これも原虫によるものでヒトを含む脊椎動物の消化管などに寄生します。場合によっては致死に至ることもあり、先進国においてもしばしば集団感染が報告されています。有名な事例としては、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー市(1993年)や埼玉県越生町(1996年)の感染事故などがあります。

2014-4936

さて、以上ざっと熱帯病と言われる主なものを俯瞰してきましたが、ここに書いていないものでも日本で発症した例はいくつもあります。また、これらからわかるように、ほとんどの熱帯病は、原虫やウィルスを原因とし、蚊やハエ、蛭といった媒介者がこれを運ぶことでヒトに感染することが多いようです。

熱帯化するということは、こうした生物が増えるということです。なぜでしょうか?これは、生物が無生物から区別される特徴として、自己増殖能力、恒常性(ホメオスタシス)維持能力といった能力のほかに、高いエネルギー変換能力を持っているためです。

気温が高いということは、その生命維持のためのより高いエネルギーを得られやすいということであり、このため小さな微生物から大きな哺乳類に至るまで、さまざまな生物相が豊富になります。従って、赤道直下のように世界中で最も気温が高いところに、地球の生物相の大部分が集中しているといっても過言ではありません。

しかし、日本が熱帯化しているといっても、いきなりこのような赤道直下の国のようになることはあり得ません。日本の大部分の地域は温帯に属し、さらにいえば、温帯のうちの「温暖湿潤気候」に分類されますが、上述のとおり、小笠原村諸島や奄美群島、沖縄諸島などのように亜熱帯に属しているところもあります。

従って、熱帯化していると言われる東京もまた、熱帯地域と呼ぶのは少々言い過ぎであり、どちらかといえばこれらの島嶼地域のような亜熱帯に「移行しつつある」、考えるのが適当でしょう。

とまれ、熱帯であれ、亜熱帯であれ、東京だけでなく日本全体もまたこうした暑い地域の気候区分に分類される日が着々と近づいていることは確かのようであり、世界でももっとも生物相が多様といわれる地域になりつつあるわけです。

ということはすなわち、これからはますます、これまでには存在しなかった生物の脅威にさらされていく、ということにもなり、これまで経験しなかったような熱帯病の脅威もさらに増えてくると考えていいでしょう。

しかし、生物の数が増えるということは、必ずしも悪いことばかりではありません。上述のように世界で最も年間降水量の多いインドネシアでは、世界最大といわれる約32万種ともの動植物が生息・生育しており、とくに哺乳類は515種であり、これは世界の12%に相当します。

一国に生息する種数としては世界最多であり、またその多く(36%)が固有種であるなど、インドネシアはアマゾンなどとともに世界でも有数の生物の多様性に富んだ地域となっています。温暖な気候のためもあり、人口も多く、その総人口は日本のおよそ倍の2億4000万人ほどであり、中国・インド・アメリカ合衆国に次ぐ世界第4位です。

今後も人口は着実に増加してゆく傾向にあり、これを支えているのが、この国の豊かな生物相だといえます。マングローブ林などに代表される低湿地から高山帯にいたる森林まで、実に多様な生息・生育環境、生態系が存在します。

振り返ってみれば、日本は高齢化が進み、人口は減る一方です。現在においても豊かな季節変化に恵まれ、世界的にみても多様な生物や植物が生息・生育しているわけですが、これらがさらに多様な方向へシフトしていくと考えれば、まんざらでもなく、もしかしたらそのことによって、人口の減少にも歯止めがかかるかもしれません。

温暖化が悪い悪いとばかりいわずに、増え続けていくであろう生物や植物の多様性をむしろ積極活用し、生活に生かしていくようすれば今後はさらにより豊かな国になっていくような気もします。

熱帯化を大きなビジネスチャンスとしてとらえる向きもあります。例えば温暖化によって増える可能性のある災害に対する備えは、巨大な建設需要にもつながる可能性があり、環境の変化に対応した食住のダイナミックな変化対応の中にもまた商機はあるでしょう。更には、上述のような伝染病の蔓延を防ぐための企業の開発力も培われるでしょう。

また、アパレルの世界では、これまでは8、9月になると来たるべき秋を先取りして秋物が売れていましたが、最近では温暖化が進んで売れなくなっているといいます。秋になってもまだまだ暑いのに、そんなものもう着ていられるか、というわけです。

そういった中で、「見た目は秋、機能は夏」という商品が売れるようになっているそうで、こうした新商品は、購入者の「そろそろ秋モノという頭と、まだ暑いという実感」のギャップに注目したものであり、これからは気候の変動に伴うこうした新たな商品がどんどん出てくるに違いありません。

このように気候の変動は、人の営みに大きな影響を与えるだけに、その変わりゆく部分に広くアンテナを張り、ヒントを探し、取り込む力が、今後の日本人には求められていくのでしょう。

もっとも、暑いところが嫌いな私としては、それでもやはり、涼しいところに住んでいたいと思います。年間降水量2000mm時代の伊豆がどんなところになっているかわかりませんが、気温もさらに上がるようであれば、今度は北海道にでも移住を考えなくてはなりません。

しかし、ここ伊豆だけは、生きているうちには本気でそういうことを考えなくて済む程度の環境変化であってほしいと思うのですが、どうなるでしょうか。

皆さんのお住まいの土地はどうでしょう。熱帯化、進んでいますか?

2014-4956