梅雨とは思えないような良い天気が二日ほど続いています。窓から富士山も見え、その上に広がる青空はとても雨季のものとは思えないほど。
午前中、リビングにふりそそぐ陽射しの中、テンちゃんが絨毯の上を転げまわって遊んでいます。新聞を広げて読んでいるその横で、しばらく体中をなめまわしていたと思ったら、いつの間にか眠っていました。例によっておなかを上に向けてきもちよさそうです。ネコでなくてもこんな陽気の日には眠くなってしまいます。
先日、といってももう10日ほど前のことになりますが、この別荘地の温泉管理組合の総会があるというので、タエさんと二人して行ってきました。総会に出席することで、この別荘地のなりたちや、問題点などいろいろなことがわかってきたので、この場で書いておこうと思います。
さて、管理組合には、当別荘地に土地を持ち、給湯権を持つ人のみが入ることができます。新規に権利を持つには400~500万円くらいいるらしいですが、現在は別荘地の入居者も減ってきており、組合の収入も落ち込んできていることから、昨年から350万円に値下げをしたそうです。それでもこれまでのところ、新規の入会はゼロとのこと。長引く不況の中、それだけの投資して新規会員権を手に入れようという人は少ないということでしょう。
ちなみに、我々はすでに会員権に入っている方からこの家を譲り受けたため、その譲渡費として50万円のみを組合に納めるだけで済みました。それでも高いと思われる方もいるかもしれませんが、今後半永久的に温泉が使えることを考えれば安いと私は思います。
もっとも温泉にかかる費用はこれだけでなく、二か月で19000円を組合に払っています。ひと月に8500円というお金がかかるわけですが、供給されるお湯は全別荘地で45度以上が保障されていますから、お風呂に入るための水道代と燃料代を温泉に使っている、と考えればある程度元はとれることになります。それでも普通のお風呂を沸かすよりは高め、とお考えでしょうが、温泉の効用ということを合わせて考えると、十分に安い、と重ねて思うのです。
その温泉の効用なのですが、ウチの風呂場の脱衣場の上にかけてある効能書きをみると、
「神経痛、筋肉痛、関節炎、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え症、病後の回復期、疲労回復、健康増進」に対しての適応があるということです。分析は、衛生環境センターという静岡県の機関がやったようなので、間違いなさそうです。
で、実際のところどうなのよ、ということなのですが、これが本当にいいんです。ここ数か月は、引越しの際の重い荷物の上げ下ろしや、家の中の整理、そして庭木の抜根、伐採と重労働が続いてきたわけですが、日によっては腕がいたくて、肩もあがらないようなときもありました。ところが、毎日温泉に入っているせいか、まるでといっていいほど、その痛みは長続きせず、重労働をやめて2日ほどもゆっくり温泉につかるを繰り返しているうちに、痛みはウソのように消えていきます。
東京に住んでいたころは、荷物の上げ下ろしで手を痛めたり、ジョギングのやりすぎで足を痛めたりするたびに、行きつけの鍼灸院に行っては針とマッサージの治療を受けていましたが、最近はもうまったくそれが必要なくなりました。
また、今年は年明けから寒く、4月5月になっても、まだまだ寒い日が続いていましたが、夜、温泉に入ったあとは、まったくといっていいほど湯冷めをすることがなく、体がほこほこのまま、布団に入ることができるのです。東京にいたころ、冷え症のタエさんは、冬場、毎日のように足が冷たくて寝れない、とこぼしていましたが、ここへ来て以来、そういうこともなくなったようです。
別荘地に家を買う場合、温泉がついているかどうかというのはひとつの大きな選択肢になると思います。私の場合、温泉はついていてもいなくてもどうでもいいや、と最初は思っていましたが、今は違います。絶対温泉があったほうがお得だと思います。
ところで、こうした温泉を持つ家、すなわちこの別荘地で給湯権を持っている世帯はおよそ600とのことです。伊東市や函南町にはこれよりもっと大きい別荘地がたくさんありますので、別荘地の規模としては中規模といったところでしょうか。
こうした伊豆の別荘地の多くは、バブル期に開発されたものも多く、バブル崩壊後、管理会社が倒産したところがかなりあります。当別荘地も、もともとは、ある民間の株式会社が経営していましたが、管理運営が立ち行かなり経営から撤退。このため、住民どうしが話し合って温泉管理組合を結成。そしてその運営を行うために、組合員を社員とする株式会社を立ち上げたそうです。
この別荘地の良いところはその管理運営がある程度うまくいっているところ。組合による株式会社が成立した時点で、別荘地内の道路と上水道についてはすべて市に移管することに成功し、道路と上水道の維持管理の経費を軽減。現在下水道については、株式会社が組合員から費用を直接徴収していますが、来年にはこれも市へ移管する予定になっています。つまり、自前の土地内の設備以外のインフラ整備はすべて市がやってくれることになるため、組合株式会社としてはその分を別の環境整備に充てることができるというわけ。
当別荘地では、このように自治体との連携がうまくとれているため、安心して住んでいられます。しかし、伊東市や函南町の別荘地の中には、これがうまくいかず、バブル期に購入した高価な別荘が破格の安値でダンピングされているところがあるようです。どういうことかというと、こうした別荘地が位置する市町村も財政難のため、別荘地内の道路や上下水道の管理を引き受けることを嫌がっているためです。
バブル崩壊後に管理会社が撤退したこれらの別荘地では、住民側がやむなくそのあとを引き継いで管理組合を作ったりしましたが、道路や上下水道の維持管理には多額のお金がかかるもの。バブル期からもう20年以上経過した道路や上下水道はボロボロになっているものもあり、それを補修したり、交換するためには思った以上のお金がかかります。このため、これら別荘地では水道料金が普通の民家より高かったり、組合に納める月謝が異様に高かったりするようです。こうして別荘地としての評判をどんどん落としていき、しまいにはダンピング価格で放出する人が続出・・・ということになるのです。
とはいえ、わが別荘地もよいことばかりではありません。この別荘地には合わせて5つの源泉があり、何百メートルもの地下から温泉をくみ上げ、これをボイラーで加熱して適温にしたあと別荘地内の各戸に供給しているそうです。ところが、この温泉をくみ上げるポンプや各戸に温泉を送るパイプが経年劣化によってかなり傷んでいて、修理したり取り替えたりするための費用が年々嵩んできているというのです。
実際に供給できる温泉の量は、くみ上げた量の数十パーセントだそうで、つまり、源泉からボイラー室へくみ上げた温泉を送る場合にどこかに大きな穴があり、大量の温泉が漏れているらしいのです。そんなに効率が悪くて大丈夫なんかい、と思うのですが、源泉の量はほぼ無尽蔵にあるので、ボイラーであたためて各戸に配るあたたかい温泉そのものが漏れていなければ大丈夫、ということのようです。
とはいえ、大量の源泉をくみ上げるためにポンプを無駄に使っているわけで、いずれはその穴をみつけてふさぐ必要があります。今年になってその調査費用をようやく計上した、というのですが、ずいぶん、のんびりしているなーとは思います。が、そういう現実があるということがわかっているだけでもよしとせねば。そんなことも把握していないような組合に運営は任せられません。
実はこの組合、昨年までの執行部が全員辞職して、新しい選出された幹部で今年度からスタートしたもの。昨年までの幹部の運営にはそういうことすら把握できないような問題点があったようで、よくはわかりませんが、それを住民側から指摘され、売り言葉に買い言葉で執行部が反論。もめにもめた上、えーいそんならやめてやる~ということで、全員が辞職したという経緯があるようです。
先日我々が参加したその管理組合総会。1年に一回、この時期に行われるようで、会場には40人ほどの方が見えていました。しかしそのほとんどが、60台以上の方のようにお見受け。50台の人は我々だけではなかったかと思います。それほど、この別荘地内の住人の高齢化も進んでいるということ。これはまたこれで別の問題点です。
高齢者が多ければ多いほど、住民による環境の維持活動は難しくなってくるわけですから。たとえば側溝の掃除とか公園などの共有スペースの掃除とかは現在、組合員が自前でやっているようですが、高齢化が進む中、組合の管理運営のための財政も悪化しているならば、こうしたことを外部委託したくてもできなくなってくるおそれがあるからです。
別荘地を選ぶ際、高齢化していないところを探す、というのは日本全体が高齢化している現在、不可能に近いと思います。だとすれば将来にわたって、別荘地としてではなく永住する予定があるのならば、その活力が未来に至っても維持されるかどうかという見極めはしておいたほうがよさそうです。自前で維持できるならばそれでもいいですが、できないならば、国や自治体に頼るしかありません。その別荘地の管理会社、もしくは管理組合は将来にわたっても大丈夫か、ということはよく調べてみる必要があります。
さて、今日は昨日までの回想録やら見聞録と違って、少し固い話になってしまいました。が、これから我々のように伊豆へ移住しようと考えている方にとっては少しは参考になるお話だったのではないでしょうか。
現在移住を考えていない方でも、温泉に入れる別荘地が欲しいと考えている方、別荘地にもいろいろあって大きな問題を抱えている場合もあることをよーく調べた上で決断をされることをお勧めします。くれぐれも建物の外観や土地の広さだけにだまされないように。別荘地の管理運営そのものに問題がある場合、将来的にわたってその価値が下がっていくのは当然のこと。それだけでなく、将来住めなくなる可能性だって否定できないのですから。