金利とギャンブル

2014-11405544月になった昨日、退院してきたばかりの母も伴って買い物に出かけましたが、何か買おうとするたびに、??と思ってしまうのは、えっ、これってこんなに高かったけ?ということ。

たかが3%の値上げなのに、こんなにも値段が違うのか、とついつい思ってしまうのですが、おそらく前回消費税が3%から5%に上がったときも同じように感じていたはずであり、それが長らくの間に不思議とは思わなくなったことを考えれば、この税率の改正にもやがて慣らされていくのでしょう。

が、いずれはまたさらにこの消費税も上がるところとなり、2015年の10月からは今度はなんと10%になるということで、今回の増税はその前哨戦にすぎません。

10%ともなると、購入金額は対象とする商品の正味の金額の1割であり、ついつい、昔流行った高利貸しの金利である「トイチ」を思い浮かべてしまいます。

無論、利率は全く異なり、これは借入金利が「十日で一割の金利」の略で、年利365%の金利です。100万円を借りていると10日目に10万円の利子が発生し、このまま返済を行わずに20日目になると前回の10万円の利子にトイチの利子がさらについて121万円になります。

30日目には利子に利子がついて133万円になり、この調子で返済しないままでいると40日目には146万円、50日目161万円、と続いて行き、360日目には3091万円に達します

しかも、実際の借入に際しては、借入時に第一回目の支払利子を差し引いた形で支払われるので、100万円の借金契約を結んだ場合でも、90万円しか支払われません。これはすなわち100万円が欲しい場合には、112万円を借り入れたこととなります。

現在では利息制限法というのがあり、金融業では29.2%で、それ以外は109.5%が金利の限度となっているため、正式にはこうしたトイチによる融資をすることはできません。が、いわゆるヤミ金と呼ばれる違法金融業者は現在もいて、このトイチほどはひどくはないでしょうが、今もかなりの高金利での融資が実際に行われているようです。

自己破産したり、病気で仕事ができないなどの理由でやむを得ず闇金融に手を出す人々がいつの時代にも必ず一定数おり、闇金融側からするといい餌食となっている現状は今も続いています。このほかにも、客と業者ではなく、個人から個人への融資の形をとって貸し付けるといったケースも後をたたず、文字通りの「闇の世界」になっています。

最近あまりみかけなくなった、「質屋」ですが、ここでは現在でも法的にも利息制限法を超える109.5%の利息が認められているそうで、質屋として名目上許可を得るという「偽装質屋」も問題となっているそうです。

三年前の2010年(平成22年)には、出資法が改正され、利息制限法に定める上限金利は超えるものの出資法に定める上限金利には満たない、いわゆるグレーゾーン金利で融資を行っていた消費者金融(サラ金・高利貸し)業者の多くがこれによって大打撃を受けました。

おかげであのうっとうしい、初めてのア●●とか、ほのぼのレ××といったコマーシャルが街頭やテレビから姿を消し、ずいぶんと平穏になったかんじがします。

しかし、質屋を装った闇金融などはまだ摘発の対象となっておらず、こうした事態を抜本的に打開しようと活動を始めた自治体というのは、まだ岩手県と鹿児島県の2県ぐらいしかないそうです。

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実は、こうした闇金融とパチンコ業界は密接な関係があるようで、このグレーゾーン金利の撤廃がなされて以降、パチンコ業者の倒産件数が増えたそうです。この規制強化によって、賭博性の高い機器を交換する際の費用を消費者金融業者から調達することが困難になったことが原因のようです。

法改正の前には、地方都市の繁華街中心部や駅前などの一等地では消費者金融業者の看板が普通の看板を席巻し、どの街に行っても大手業者の巨大な看板が占拠しているといったことがよくあり、それぞれの街の持つ独自の景観が破壊されるということがありました。

それが最近はほとんどなくなりましたが、あいかわらずパチンコ屋は日本中にいまだあって、画一的で没個性的な街並みがつくられる原因のひとつとなっています。町の景観だけでなく、テレビのメディアにも頻繁に登場し、静岡県などではコン●●●●と称するパチンコ屋の宣伝がテレビ番組の合間を縫ってうんざりするほど流れています。

不況によって広告収入が減っているテレビ業界にとってはお得意さんなのでしょうが、消費者金融がはびこっていたころとどこか似ています。早々に自粛して、こうしたコマーシャルを流すのを撤廃したテレビ局は大いに世の人々に賞賛されると思うのですが、いかがなものでしょう。

消費者金融のCMが姿を消したのは、日本弁護士連合会などがテレビCMの中止を求める意見書を政府に提出したからだそうです。

これを受けて、2005年(平成17年)ごろから、テレビ局側も午後5時~9時までは放送しないとする方針を決定し、「借りすぎにご注意」などの警告表現のないものは規定不適合とされ、放送が不可能になりました。

こうした規定によって長らく放送されていた業界間で内容が似通った「コミカルなストーリー」「ポジティブな演技」で一般受けを狙っていた大量のCMが姿を消し、これを機に自動契約機のCMも姿を消しました。

さらに、翌年の2006年(平成18年)からは午前7~9時、午後5~10時までといったゴールデンタイムでの放送ができなくなり、午後10時から深夜0時までの時間帯における放映数上限は50 本に制限され、しかも各社のCMをそれぞれ月間100本までに制限することになりました。

これによってあのうっとうしい消費者金融のCMはようやく姿を消したわけですが、同じような処置をパチンコのCMについてもぜひやってほしいと思います。

とはいえ、そうした表面上の対策をとったところで、闇の世界の業師たちの暗躍は消え去ることはけっしてないのでしょう。

いつの時代にも金利で暴利をむさぼる輩ははびこるものであり、金利を取る商売を禁止するとしたら、銀行などもすべて撤廃しなければなくなってしまいます。

が、モラル、というものがいつの世にもあってしかるべきであり、消費税のアップが次々と行われるこれから数年の間、そうした道徳的規範や倫理といったことが希薄になっていくことが心配です。

江戸時代の日本は、儒教のひとつである朱子学を中心に仏教や神道などの影響を強く受けての道徳が形成され、武士道では、「上を敬い、下を導く」といった上下関係を重んじる傾向が強く、また一般でも君に忠、親に孝の率先が美徳とされました。

明治以降、文明開化とともに、西洋の価値観が移入され、道徳も変容しましたが、明治政府が統一国家としての共有道徳を創生しようと努力した結果、現在においても多くの日本人が無意識にこの江戸時代の伝統道徳に従って行動しており、これこそが日本人の倫理観だといわれています。

「日本型管理社会」の形成の要因は、この道徳によるところが大きいわけであり、人格形成を重視することこそが、日本の道徳の特徴です。

そうした人格形成の重視傾向が損なわれているところが、ウソがまかり通る最近の殺伐とした世相を生み出しているともいえ、かつての消費者金融の蔓延、現在のようなギャンブル産業の繁栄もその延長にあるような気がします。

欧米の多くの心理学者や道徳哲学者は、道徳心が発露されるには他者への共感が必要であると主張しており、共感は、他者を同じ共同体の一員であるとみなすことによって起きます。

金利やギャンブルで人からお金を搾取する風潮が蔓延しているいまこそ、日本古来のこの道徳教育の復活と、この欧米の「思いやり思想」を合体させた新しい倫理観を築くべき時代が来ているのではないでしょうか。

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