後半戦の行方

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7月になりました。

後半戦の始まりです。

今日7月1日は、半年という区切りの初日であり、何かと新たにスタートさせたい、という向きも多いらしく、やたらと記念日が多い日でもあります。

いちいち取り上げるのも面倒くさいので、数だけ数えてみると、18~19ほどもあり、さらに、富士山の山開きや、暦の半夏生(はんげしょう)も入れると20を超えます。

これは雑節(二十四節気などの暦日のほかに、季節の移り変りを感じるために設けられた特別日)の1つで、半夏(烏柄杓)という薬草が生える頃だそうです。

また、その名もハンゲショウという、草の葉が名前の通り半分白くなる草をご存知の方も多いと思います。この草の葉が今頃からこのように半分「化粧」しているようになるためこの日を「はんげしょう」と呼ぶのだともいわれます。

この頃に降る雨を「半夏雨」(はんげあめ)と言い、大雨になることが多いようですが、農家にとっては大事な節目の日で、この日までに「畑仕事を終える」「水稲の田植えを終える」目安で田植えなどを終わらせ、この日から5日間は休みとするところも多いようです。

この日は天から毒気が降ると言われ、井戸に蓋をして毒気を防いだり、この日に採った野菜は食べてはいけないとされたりしたようです。また、三重県の熊野地方や志摩地方の沿岸部などでは、「ハンゲ」という妖怪が徘徊するとされ、これは7月になってもまだ田植えなどの農作業を行うことに対する戒めから来ているようです。

これらの言い伝えは、7月に入ると急激に気温が上がり、梅雨も明けて太陽が燦燦と注ぐようになれば、何かと体調も崩しやすい、といったところから来ているのでしょう。

この7月以降の後半戦にどんなイベントがあるかといえば、今年は、8月15日が土曜日なので、これに合わせてお盆休暇が取りやすくなります。また、翌月の9月19日(土)~23日(水)が、2009年以来の「シルバーウィーク」であり、5連休になります。さらに24日(木)、25日(金)を休めば9連休にもなります。

また、お盆といえば、やはり日本人としては、今年が第二次世界大戦・太平洋戦争終結から70年という節目の年であることも気になります。8月の終戦記念日には全国で大々的なイベントがいろいろ行われるでしょうし、被爆地である広島や長崎でもしかりです。

9月2日は、日本の降伏文書調印により太平洋戦争終戦した日でもあり、この日にもいろいろあるに違いありません。9月5日は、日露戦争における、日露の和解のための条約、日露講和条約ポーツマス条約が締結された日であり、今年はちょうど110年目にあたるため、こちらも何かとイベントが催されるでしょう。

さらに、12月8日は日韓国交正常化から50年という節目であり、これへ向けて日韓それぞれの思惑で物事が動いていくことでしょう。

それ以外は、というと、7月28日~8月8日まで、世界スカウト機構主催の第23回世界スカウトジャンボリーというものが、山口県のきらら浜で開催されるそうで、これは4年に一度のボーイスカウトの世界大会だそうです。

いったい何をやるのか、と調べてみたところ、スカウト一人ひとりが新しいアクティビティを体験したり、様々な冒険的アクティビティで肉体的、精神的課題に挑戦する、などだそうで、また、チームワークスキルを身につけることも目的とされているようです。

元々は参加国内だけの同一人種だけのチームワークを築けばそれで済むわけですが、世界大会ともなると国際的な協調性も必要になる、というわけです。また、様々な奉仕活動を行ったりもし、奉仕活動の内容は、森林の遊歩道整備や学校の修復、動物のための草のトンネル作りなど多種にわたるといいます。

今年の日本での大会は、約2週間に渡り全世界(世界スカウト機構加盟国)から約3万人の青少年が参加する予定だそうで、スローガンは「和: a Spirit of Unity.」。会場となる山口市きらら浜は広島市にも近いことから、「ピースプログラム」という平和のためのプログラムが設定される予定となっているそうです。

組織委員会総裁は、森喜朗元内閣総理大臣であり、他に顧問として、麻生太郎、羽田孜(ともに元内閣総理大臣)などがおり、また、「名誉会長」として地元の安倍晋三総理も参加するとのことです。

日本での世界スカウトジャンボリー開催は、1971年(昭和46年)に静岡県朝霧高原で開催された第13回世界ジャンボリー以来のことだといい、どんな盛り上がりになるのでしょうか。

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このほか、年内にはアラブ首長国連邦のドバイに建設中の、世界最大のテーマパークおよびエンターテインメント施設である「ドバイランド」が開園するそうで、これは約50億ドル(約5850億円)の投資で建設が開始されたもので、敷地の総面積は現在世界最大の面積を誇るテーマパーク、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの2倍に相当します。

内部は遊園地やホテル、スキー場、映画館、オフィス街、博物館など様々な施設が建設されているそうで、短期目標としては1500万人の観光客を集めることにしているといいます。はたして日本人で行く人はいるんでしょうか?

このほか、中国でも上海ディズニーランドが年末ごろにオープン予定だといい、他にスポーツイベントとしては、「2017 ワールド・ベースボール・クラシック」の予選大会が年内中に開催される予定であり、またに8月22日バレーボールFIVBワールドカップ2015が日本で開催。9月に「ラグビーワールドカップ2015」がイングランドで開催されます。

直近では、7月5日に女子ワールドカップカナダ大会決勝があります。なでしこジャパンは優勝できるでしょうか。

さらに、いまから2週間後の7月14日には、 NASAが9年前の2006年に打ち上げた、人類初の冥王星無人探査機ニュー・ホライズンズが冥王星に最接近します。

もう既に今年の初めの1月には、冥王星の観測を開始しています。4月後半には、送られてくる画像の画質がハッブル宇宙望遠鏡による最良のものと同等になったそうで、6月に入ってからは全ての観測機器が常時観測体制に入っています。

ニュー・ホライズンズは、冥王星大気の組成と構造を調べる紫外線観測装置のほか、モノクロとカラーの可視光カメラである、マルチスペクトルカメラを搭載しており、このほか冥王星とカロンの大気の温度・圧力・密度・温度を測定する装置も備えています。カロンは直径が冥王星の半分以上ある冥王星最大の衛星です。

図体がでかいので、冥王星とともに共通重心の周りを公転しているのでは、といわれており、このため冥王星とカロンの重力による探査機のわずかな軌道変化を測定して、冥王星、カロンの正確な質量を求めることも予定しています。

2015年7月14日、11時47分に冥王星をフライバイ(接近通過)することが既に決まっており、このとき、冥王星と衛星カロンを撮影。最接近時の距離は13,695kmで、カロンの公転軌道の内側を通ります。このときの通過速度は14km/sで、これは時速に換算すると50km/hちょっとですから、かなりの低速です。

冥王星についての詳細はまだ不明の点が多く、これはニュー・ホライズンズのような探査機などが未だに接近観測を行ったことがないことや、冥王星が遠すぎるために地球から望遠鏡で詳細に観測することも難しいことによります。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像からでも、表面の明暗や模様などがわずかに分かる程度であり、冥王星の表面の詳細な写真を直接的に得るのは不可能ですが、この接近が成功すれば、人類は初めてその詳細な素顔を目のあたりにすることになります。

ニュー・ホライズンズには、太陽風と冥王星の大気との相互作用を調べる装置や、冥王星から宇宙空間に逃げ出した大気物質を測定する特殊装置も搭載しています。これにより冥王星の組成もまたかなり明らかになる可能性があります。

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太陽系全体を通じて見ると、冥王星はどの惑星よりも小さく、圧倒的に質量が少ないのが特徴です。それだけではなく、地球の月と比較しても質量は0.2倍以下であり、冥王星よりも質量が大きい衛星が7つもあります。

このため、2006年8月14日からチェコのプラハで開かれた国際天文学連合 (IAU) 総会で惑星の定義を決めるための議論の結果、従来の「惑星」の枠から外され、単なる「準惑星」に格下げになっています。

これまで、世界中で太陽系の9つ目の惑星として長い間親しまれてきましたが、これにより惑星ではなくなりました。この星を1930年に発見したのはアメリカ人のクライド・トンボーであり、かつアメリカ人が発見した唯一の惑星でもあるため、冥王星は発見当初からアメリカ人の誇りとされてきました。

ディズニーのキャラクターとして親しまれているプルートは、冥王星が発見された年に誕生しており、冥王星(プルート)から名前が取られました。こうしたこともあり、多くのアメリカ人はこの准惑星への格下げに憤慨し、失望や落胆、不満の声が渦巻きました。

NASAの無人探査機等の研究開発及び運用に携わる研究所、ジェット推進研究所などがあるカリフォルニア州のパサデナでは、惑星に扮した8人の科学者が冥王星の入った棺と1,500人以上の会葬者を伴って街を練り歩いたといいます。

しかし、今回のニュー・ホライズンズの接近成功で、またアメリカ国内は沸くに違いありません。だからといって準惑星への格下げが取り下げになるわけではありませんが、その成功はそれなりにアメリカ人の自尊心をくすぐるでしょう。

2015年8月後半には、接近後の探査終了し、2016年4月後半で全てのデータを送信完了する予定のようですが、冥王星軌道を通過後、ニュー・ホライズンズはさらにエッジワース・カイパーベルト内の別の太陽系外縁天体を探査することを計画しています。

エッジワース・カイパーベルトは、太陽系において、冥王星よりも内側にある海王星軌道にある、ドーナツ状の天体が密集した領域であり、長周期彗星や非周期彗星の起源と考えられています。

地球では、彗星からもたらされた物質などによって生物が誕生したという説があり、こうしたエッジワース・カイパーベルトにある天体を調べれば、地球において生命が誕生した起源となる水・一酸化炭素・二酸化炭素・メタンなどの物質が発見されるかもしれない、ということで期待されているわけです。

ただ、このブログを書いている時点では、目標となる天体はまだ公表されていないようです。NASAのHPもみてみましたが、はっきりしたことは書かれていませんでした。が、エッジワース・カイパーベルト内の太陽系外縁天体を観測は、2020年頃まで続けるということなので、一つだけではなくいくつもの天体を観測しようという気長な計画のようです。

その後は太陽系を脱出します。ニュー・ホライズンズには、星条旗、公募した43万人の名前が記録されたCD-ROM、史上初の民間宇宙船スペースシップワンの機体の一部だったカーボンファイバーの破片、冥王星を発見したクライド・トンボーの遺灰が搭載されているそうで、これらとともに永遠の宇宙の旅に出ることになります。

このトンボーのことや、冥王星のさらに詳しいことなどについては、以前書いたブログ、「幽王」でも書きました。これ以上は二番煎じになるのでもうやめましょう。

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このほかの、今年後半における宇宙イベントしては、12月上旬、日本の金星探査機「あかつき」が金星を周回する軌道への投入に再挑戦する予定です。2010年12月7日に金星の周回軌道に入る予定でしたが、軌道投入に失敗し、金星に近い軌道で太陽を周回していました。起死回生なるかどうかが注目の的です。

さらに、天然の天体ショーとして見ものなのは、8月13日 ペルセウス座流星群極大、10月22日~ オリオン座流星群極大、11月18日 しし座流星群極大、12月15日 ふたご座流星群、などです。

これらは例年の行事でもありますが、とくに今年の8月のペルセウス座流星群の極大は、月明かりがほとんどないため、好条件で観測できるということです。規模も大きくなかなか期待できそうです。蚊にさされないよう防備して、夏の夜の天体ショーを楽しみましょう。ちなみに残念ながら、今年はもう月や金星の「食」の類のものはないようです。

さらにエンターテイメントでいくと、宇宙モノではありませんが、今夏、映画ターミネーターシリーズ最新作「ジェネシス」が公開予定です。シリーズとしては第5作に相当し、三部作の第1弾となるようです。かつてT-800を演じたシュワちゃんが復帰するそうで、ターミネーターT-800は青年・中年・初老という3つのタイプが登場するといいます。

一方、宇宙モノとしては、往年の名作、「スター・ウォーズ」がこれまた3部作の第一弾として復活します。12月18日、「スター・ウォーズ・エピソード7/フォースの覚醒」として、全米と日本国内で同時公開予定だそうです。2005年公開の「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」以降の、なんと10年ぶりの復活です。

以下が過去の公開作品の一覧です。

「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」(1977年)
「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」(1980年)
「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(1983年・旧邦題:「ジェダイの復讐」)
「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」(1999年)
「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」(2002年)
「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(2005年)

なお、2008年公開のアニメ「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」というのもありますが、これは番外編ということで、ここからは外してあります。

ご存知のとおり、本シリーズは、歴史物語(サーガ)の形式をとっており、1~3作目が終わるとそこから過去へ戻り、第4作目のファントム・メナスですべての物語の発端となるエピソードが綴られる形をとっています。

ややこしいのは、今回発表されるシリーズ7作目が、再度3作目の「ジェダイの帰還」の時代に戻り、その続編という形をとる、ということで、これまでの全作品を見て頭に入れておかないと、何がなんだかよくわからなくなる、ということになりかねません。

が、物語の中核はルーク・スカイウォーカーと、父のダース・ベイダーの宿命の対決です。そこを理解すれば全体像がわかり、新しい作品も楽しめるでしょう。今年公開される新作では、「ジェダイの帰還」でダース・ベイダーが、息子に討たれた後の宇宙世界の行方が描かれることになるはずです。

このあと、エピソード8、9と続く3部作の発端になる話が描かれるはずですが、ただし、いまのところ、エピソード6の「ジェダイの帰還」の約30年後から物語がスタートする、ということが発表されているだけです。このあといったいどういう展開になるのか、詳細についてはまったく発表されていません。

そもそも、このエピソード7~9というのは当初は計画されていなかったようで、エピソード6の「ジェダイの帰還」時に、ジョージ・ルーカスがインタビューされたときにその存在は否定され、公式見解でも6部作ということになっていました。

また、エピソード3の「シスの復讐」が2005年に公開されたとき、ルーカスフィルムは、これでスター・ウォーズはもう打ち止めだ、と宣言していました。

しかし、1作目にあたるエピソード4の「新たなる希望」が成功した後には、「9部作になる予定だ」と発表されていたそうです。そして、2012年10月、ルーカスフィルムがウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されるとこの話が再燃し、これを機会に「エピソード7」の製作が決まったといいます。

2005年でシリーズが終了して以後もスター・ウォーズ人気は高く、再登場を願う声も多かったことを反映しての復活でしょう。が、無論、ディズニーとしては人気の高い同作品を復活させれば、良い興行収入が望めると踏んだのでしょう。根強いファンは多く、製作会社がどこであろうが、この復活は彼等にとって大歓迎でしょう。

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この話が決まる前から、スターウォーズについては、いわゆる「スピンオフ作品」が、コミック、アニメ、ゲーム等で発表されていました。スピンオフとは、本編から派生した作品のことで、いわば番外編とか外伝とされるものです。

スピンオフ作品としては、ルーカスフィルム自体が、「エピソード2/クローンの攻撃」と「エピソード3/シスの復讐」の間の物語として描いた上述のアニメ、「クローン・ウォーズ(2008年)をオフィシャル作品として製作公開しており、これ以外の巷のスピンオフ作品もルーカスは盗作だ、と文句を言うでもなく容認しています。

ただしルーカス本人は他人が作った「外伝」については全く関心がなく、ほとんどの作品を目を通してすらいないそうです。従って、ルーカスの影響がささやかれる新公開のエピソード7についても、これらのスピンオフ作品に題材をとった内容になる、ということはおそらくはないでしょう。

また、本作品ではルーカスはこれまでと違って総指揮をとっておらず、ディズニー支配下の今後の撮影にも口を差し挟まない、と言っているようです。ルーカスフィルムが買収されたことで内外の事情も変わってきており、ディズニーは儲かるならスピンオフ作品をどんどん出していく、という方針のようです。

このため、エピソード7に引き続き、たちまち来年すぐにでも別のスピンオフ作品が公開される予定だといいます。さらに2017年に公開予定の「エピソード8(仮称)」の翌年にもスピンオフ作品が予定されているといい、ファンにとってはこれから毎年のように新たな作品が見れる、ということでこれまた歓迎する向きも多いでしょう。

しかし、こうして今後は毎年のように同作品が「乱発」されることについては、これまでの作品に見られたような「緻密さ」「繊細さ」が失われるのではないか、とする声もあがっています。また今後は、シリーズの産みの親である、ジョージ・ルーカス自身も製作から遠のいていくことで作品の質が落ちていくことが心配されます。

ルーカスは、シリーズ5作目のエピソード5「帝国の逆襲」からは監督を後身の若手に譲り、自らは「総指揮」として、製作に関わってきました。が、今回の7作目からはこの総指揮の座も「ミッションインポッシブル・ゴーストプロトカル」や「スタートレック」シリーズの監督だったトミー・ハーパーに譲っています。

このハーパーという人がどういう人なのかについては、日本国内でもまだあまりレビューされていないのでよくわかりませんし、彼の力量もよくわかりません。今後シリーズがどういう方向に向かうのかもわかりませんが、いずれにせよ、ルーカスの手による過去の作品群に比べ、今後の作品はかなり性質が変わってくる、と考えていいでしょう。

「エピソード4」が制作された1970年代中盤というのは、ベトナム戦争終結等の社会風潮を受け、内省的なアメリカン・ニューシネマが代表の時代でした。

ベトナム戦争以前の「古きよきアメリカ」を描いた「アメリカン・グラフィティ」で一定の成功をおさめたルーカスは、かつてのアメリカ娯楽映画復権を意図し、古典コミック「フラッシュ・ゴードン」の映画化を企画しました。

しかし、様々な問題が絡みこの企画の実現が不可能となり、その設定を取り入れて自ら脚本を執筆したのが「スター・ウォーズ」でした。この作品は、現在の映画の主流ともなっている、「原作を持たない」画期的な、オリジナル企画作品でした。

それまで普通であった、文芸作品などの「原作からの映画化」という流れを逆転させ、オリジナルである映画からほかのメディアへ展開することで相乗効果を興し、これを商業的にも成功させて映画を世界的規模のビジネスに発展させた最初の成功例であったわけです。

そういう意味からすると、今回から新たに公開される作品は、既に「原作がある」ということにもなり、商業的にも目新しさはなく、古色感は否めません。新時代のスターウォーズを担う、総指揮・トミー・ハーパー&監督・J・J・エイブラムスのコンビが、そこをどう変えてシリーズに新たな息吹を吹き込んでいくかは、ある意味見ものです。

いままでのルーカス路線を踏襲しつつ、さらに徹底的に細部にこだわった造作をするのか、あるいはもっと別の大胆なしかけがあるのか、はたまた凡庸なリバイバル作品に終わってしまうのか、ファンとしては見極めたいところです。

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ジョージ・ルーカスは、スター・ウォーズの製作において、特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼンに影響を受けたと語っています。「僕達のほとんどが子供の頃から彼の影響を受けてきた。その存在なくして「スター・ウォーズ」は生まれなかった。」と語っており、その影響が大きかったことを明らかにしています。

ハウゼンは、1950年代から1970年代に活躍し、多くの特撮SF・ファンタジー映画を手がけた人で、代表作として日本人にも馴染の深いのは、「シンバッド七回目の航海((1958年)や、「アルゴ探検隊の大冒険(1963年)」などです。

シンドバッドシリーズはこのほかにも「シンドバッド黄金の航海」(1973年)「シンドバッド虎の目大冒険(1977年)」などがあり、シンドバッド3部作と呼ばれています。最後の作品となったのは「タイタンの戦い(1981年)」で、これらの永年の功績により1992年にはアカデミー賞特別賞を受賞しています。2013年、92歳で死去しました。

ルーカスはこのほかにも、「普遍的な物語」を求めて、エドガー・バローズ、E・E・スミス、フランク・ハーバートなどのSF作品、グリム童話やC・S・ルイスなどのファンタジー、や各地の神話などを読み込んだといい、なかでも大きな影響を与えたのが、神話学者ジョセフ・キャンベルが神話の構造を分析した「千の顔をもつ英雄」だったそうです。

スターウォーズの中に出てくる、「フォース」の概念については、アメリカの作家・人類学者。カルロス・カスタネダの書から影響を受けたといいます。カスタネダは、「呪術師」に関する哲学的研究が多く、アメリカを中心に世界に広がったカウンターカルチャー全般、とりわけスピリチュアリズム、ニューエイジ運動に影響を与えた人として知られています。

作家のよしもとばなな、音楽家の細野晴臣もカスタネダの著作を愛読書として挙げていますが、一方ではルーカス自身は逆に日本人である黒澤明監督にも大きな影響を受けたと語っています。とくに、最初の作品、「エピソード4/新たなる希望」のストーリーは、黒澤作品である「隠し砦の三悪人」に大きな影響を受けていると言われています。

また、ダース・ベイダーのデザインには日本の鎧兜とかつてのドイツ軍のヘルメットを、アミダラ女王の服装や化粧などには日本をはじめ、アジア圏の着物や芸者の風貌も取り入れ、ジェダイ達の服装にも着物の影響が見られます。

本シリーズに登場する機械や建物は歴史感および生活感のある「汚れ(ウェザリング)」がほどこされており、これも黒沢作品に代表される日本の時代劇を研究し、そこにある「汚れ」を取り入れた結果だといいます。当の黒澤監督自身もそのことを知ってか知らずしてか、エピソード4を見て、「この映画は汚れがいいね」と評価したほどです。

過去のスター・ウォーズシリーズでは、このように徹底してリアリティーを追求しており、その手法はCG(コンピュータグラフィックス)が多く使われた新3部作(第4~6作)でも見ることができます。

いわんや、本シリーズを語る上で欠かせないのがこうしたSFX(特殊効果)です。SFXとは特撮を意味する英語 Special Effects の略語で、フィルム、ビデオ映像に対して美術、光学処理などにより特殊な視覚効果を施し、通常ではあり得ない映像を作り出す技術であり、CGも広義にはこれに含まれます。

1980年代以降は、CG映像を後から加工する技術が生まれ、それらはSFXに対してVFX(Visual Effects、視覚効果)と呼ばれています。映画業界ではSFXとVFXは別々のものとしてはっきりと区別していますが、一般には浸透しておらず混同されているようです。

ルーカスは自分のイメージを映像化するには従来の撮影技術では不足と感じ、自ら新たな特殊撮影専門の会社を設立しました。そしてこれこそが後にハリウッドSFXの代名詞的存在となった「インダストリアル・ライト&マジック(ILM)」です。

ILMのスタジオで製作された精密無比な小道具(プロップ)と、モーション・コントロール・カメラを多用した宇宙船の描写、ストップモーション・アニメーションによる四足歩行の巨大装甲車などの重量感ある動きは、SFオタク、軍事オタクを惹きつけてやみません。

また、光輝く剣ライトセーバーによる剣劇、特殊メイクによる様々なエイリアン(異星人)の表現など、従来の子供向けなチープなSF映画の常識を打ち破る斬新な映像は多くの「大人の」観客を熱狂させました。

ただ、ルーカス自身にとってはそれでも決して完全に満足できる出来ではなく、旧3部作(第1~3作)の完結後は映像技術的な限界を理由に長い空白が生じました。事実、1983年のエピソード6「ジェダイの復讐」と次回作の1999年のエピソード1「ファントム・メナス」の間には実に16年の月日が流れました。

しかし「ターミネーター2」、「ジュラシック・パーク」などの作品で培われたその後のILMのCG技術の進化によりその限界が払拭され、旧3部作「特別編」におけるトライアルを経て、全編に「CGキャラクターが躍動する」新3部作が製作されることとなったわけです。

今回から始まる新シリーズは、この新3部作の最後の作品が公開されて以後10年目の作品となり、「新々3部作」とでも呼ぶべきでしょうか。この間の技術の進歩は押して図るべきであり、最新作がどんなFSXをもって登場するのかは誰にも予測がつきません。たとえ、監督や総指揮がルーカスから変わっているとしても、そこは非常に楽しみです。

楽しみといえば、今回公開される作品では、ハンソロ役のハリソン・フォードの再出演が決まっていますが、これ以外にも、かつてレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーや、ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルも出演するといいます。

チューバッカ役のピーター・メイヒューなども出演するそうですが、こちらはメイクでごまかせるとして、ハリソン・フォードは既に72歳、キャリー・フィッシャーは58歳、マーク・ハミルは63歳になっており、無論メイクでも昔の姿は取り戻せません。いったいどんなふうに登場させるのか興味津々です。

スター・ウォーズでは、これまで公開された全6作品全編において、登場人物の誰かが必ず「嫌な予感がする(I have a bad feeling about this.)」とつぶやきます。

はたしてその予感はあたるでしょうか。

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