大当たり!

2014-1120272私は、肉よりもどちらかというと魚のほうが好きで、また魚の中でもとくにサバが好きで、〆鯖などがあると、他におかずはいらないぐらいです。

この〆鯖も出来上がったものを買うと結構いい値段がするのですが、自分で生のサバを買ってきて捌いて酢締めをする、ということを最近覚え、頻繁に自分で〆鯖を作るようになりました。

ところが、いわゆる「サバにあたった」ようで、先月末から頻繁にジンマシンが出るようになってしまいました。

最初はサバが原因だとは気が付かなかったのですが、ネットで調べてみたところ、その症状が一致したことから、それとわかりました。そこで、なぜ「あたる」のかについても色々調べてみたところ、原因は3種類ほどある、ということがわかりました。

まず、その一つはサバの身に対するアレルギー。これは体質の問題なので、どんなに新鮮なサバを食べてもあたります。

このアレルギーが起こる原因は解明されていませんが、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因ではないかと考えられているようです。

これまではサバを食べてもアレルギー反応が出ることなどなかったのに、急にジンマシンが出るようになったのは、生活環境の変化か何かかな~と思ってみたりもするのですが、あるいは、最近運動不足気味なのと何か関係があるのかもしれません。

このアレルギーとは、英語かと思ったら語源はドイツ語のようで、アレルギー(Allergie)という言葉を初めて提唱したのは、オーストリアの小児科医C・V・ピルケールという人だったようです。

ピルケールは、「生体が、自分の成分とは異なった物質(アレルゲン)が、いったん身体の中に入ってしまうと、これに反応する物質(抗体)などができてしまい、一定の潜伏期間を経て、同じ物質に対して違った反応をするようになる」ということを発見しました。

そして、この症状に、ギリシア語のアロス(変わった)とエルゴ(反応)を組み合わせ、アレルギー(Allergie)というドイツ語の造語を与えました。

外来の異物(抗原)を排除するために反応する物質ができることを、免疫反応といいますが、これはヒトの生体にとって不可欠な生理機能でもあります。とはいえ、大好きなサバを食べて、免疫反応が起こるというのはどこか釈然としないものがあります。

なので、もうひとつの可能性としては、「ヒスタミン中毒」ということも考えられます。ヒスタミンは花粉症などと関連するアレルギー症状を起こす物質で、サバの血合いにはアミノ酸「ヒスチジン」が多く含まれています。サバの死後、これが細菌の作用でヒス夕ミンに変わります。

人の体の中で、ヒスタミンが過剰に分泌されると、ヒスタミンは、「ヒスタミン1型受容体」というタンパク質と結合してこれがアレルギー疾患の原因となり、ヒスタミン中毒を引き起こします。

サバだけでなく、マグロやカツオにもヒスチジンが多く含まれているそうで、これらでも中毒は起きます。しかし、同じ赤身の魚の中でも、サバやイワシ、アジといった小型の青魚のほうがあたりやすいようなイメージがあり、マグロやカツオにあたった、という話はあまり聞いたことがありません。

これについて専門家は、大きい魚は内臓を取り除いてブロック化するのできれいに管理しやすく、細菌が発生しにくいのに対し、サバ、イワシなどの小型の魚は細菌がより活動しやすい可能性がある、ということを言っているようです。

サバ、イワシといった魚は身がやわらかく、水っぽいことも細菌の増殖には有利に働らくようです。しかし、こうした青魚でも、低温に保てばヒスタミンはつくられないそうです。ただし、獲れてから時間が経った魚は、低温処理だけでは、ヒスタミン生産細菌の増殖とヒスタミンの生成を完全に抑制することはできません。

このため、冷温してあったし、臭いとも思わないようなサバでも、実際にはヒスタミンの量が中毒の閾値を超えてしまっている場合もあるそうです。また、ヒスタミンは熱に強く、できてしまうと加熱調理しても防げないといいます。

じゃあどうすればいいのよ、ということなのですが、まずは新鮮なうちに捌いたものを食すことと、水分を取って身を引き締める「酢〆」も、酸が細菌の繁殖を抑える効果が期待されるということです。

酢には強力な殺菌作用があり、これで洗うなどの処理はヒスタミン生産細菌の増殖を抑制することができるため、鮮度保持には有効なようです。従って、ヒスタミン中毒にならないためには、できるだけ新鮮なサバを食べること、またできるだけ酢〆をして食べることが肝要のようです。

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さて、サバにあたる、という症状としてはもうひとつ、寄生虫によるものがあるそうです。「アニサキス」というのがそれで、サバを食べることによって、ヒトの体に入ると、その寄生部位により、胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症などの症状が出ます。

普通は胃を通って腸などに達する以前に症状が出ることが多いので、表面に出るのは胃アニサキス症が多いようです。

その症状は、食後数時間のうちに始まる激しい腹痛と嘔吐です。嘔吐に際しての吐瀉物は胃液のみで、下痢も一切認められないことが一般的な食中毒と異なる特徴だそうで、これはアニサキスの虫体が寄生のために胃壁や腸壁を食い破ろうとするために生ずる症状だということです。

激痛のため診断の確定を待たず緊急開腹せざるを得ないこともあるほどそうで、これは罹患したらすぐにわかります。なので、私のサバアレルギーとは明らかに違う症状なのですが、ついでですから、もう少し詳しく書いておきましょう。

このアニサキスは、サバが生きている間は内臓にいることが多いとされ、死んでから身に移るといいます。

なので、とれたてのサバの場合は、アニサキスはまだ内臓にいますから大丈夫ですが、遠く離れた場所でとれたサバを輸送しているうちに、身にアニサキスが移動してしまっている場合もあるわけです。

しかし、アニサキスは加熱に弱いそうなので、煮たり焼いたりすれば死んでしまいます。また、冷凍でも死滅しますが、逆に殺菌力のある酢で締めても死滅しないので〆鯖も危険だということになります。

もっとも、アニサキスに寄生された魚類やイカをヒトが食べても、ヒトの体内では成体になることはできず、産卵もされません。なので、おなかは痛くなるかもしれませんが、未来永劫この寄生虫と暮らすハメになる、とうことだけは避けられそうです。

対策としては、まずは鮮度が落ちると内臓から身へ移るので、鮮度の良いうちに内臓を処理することです。が、内臓を避けて食べても身に移っていたら感染を完全には防げないわけで、ですからどうしてもアニサキス中毒になりたくなかったら、煮るか焼くか、完全に冷凍して再解凍して食べるかしかなさそうです。

万一、アニサキスの侵入を許してしまったらどうするか。これは、胃内寄生の場合、その初期段階での一般的な治療法としては、開腹手術をするか、あるいは上胃カメラを用いて、消化管粘膜上の虫体鉗子を用いて取り除くかしかないそうです。虫体を取り除くとすみやかに症状が消失することが多いそうですが、ちょっと考えただけでもぞっとしますよね。

このように、サバを食するということは、アニサキス摂取のリスクがあるわけですが、にもかかわらずサバを生で食べる習慣というのは結構日本人には浸透していて、とくに西日本、特に北部九州などではゴマサバなどのサバを生食する習慣が根強く残っています。

これはなぜかというと、ひとつには、こうした関西で獲れるサバに含まれるアニサキスは関東で獲れるサバに含まれるものとは種類が違うのではないか、ということがいわれているようです。

サバが収穫された場所によっては、その地域のサバが保有しているアニサキスの種類が異なるということになり、ある種のアニサキスは内臓から肉身に移行する率が極めて低いそうです。

従って、生食習慣のある西日本や九州で獲れたサバが保有する種類のアニサキスはこの種のアニサキスということになるようで、サバは全国的に獲れる魚ですが、西日本や九州のサバならば比較的アニサキスの心配をせずに食べれるということになります。

ほんとか~という声が聞こえてきそうですが、まだまだ研究途中の話のようなので、関西のサバが大丈夫で関東のサバはだめ、ということにはすぐにはならないようです。が、いかんせん、関西サバにせよ、関東サバにせよ、できるだけ新鮮なものを食するというのが一番のアニサキス対策です。

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このサバですが、生物学的には、マグロ属、カツオ属など外洋を旅する大型のものもあるようですが、一般的にはサバ科サバ属に属するマサバやゴマサバが代表選手です。日本近海では、とくにこのマサバとゴマサバが取れますが、このほかにも南西諸島だけで漁獲されるグルクマサバ・ニジョウサバといった種類があります。

日本ではこのマサバとゴマサバのほか、ノルウェーなどから輸入されるタイセイヨウサバを合わせた3種がよくスーパーマーケットで売られており、我々の口に入ることが多いようです。ただし、鮮度の関係からかノルウェー産は主に塩さばに加工されていることが多いようです。

このほか、サバは天然モノだけではなく、養殖技術も開発されていて、大分県や鳥取県では養殖が盛んに行われているそうです。ほぼ一年を通じて、スーパーマーケットで買って食することができるのは、このためでもあります。

しかし、サバはの味は秋が一番で、とくに秋のマサバは最高だという声が高いようです。ただ、太ったマサバは秋以外の季節では日本近海では捕獲できないそうで、この点、一年を通して日本中のどこかで獲れ、品質が安定しているゴマサバのほうが食卓に上がることが多くなります。

サバ好きの私としては、ゴマサバもマサバどちらも好きなのですが、調理方法として私が愛してやまないのはやはり〆鯖であり、このほか、焼き魚、鯖味噌などにしてもおいしく、鯖寿司、なれ鮨などは郷土料理としている地域もあります。

マサバでは豊後水道の関さば・岬さば(はなさば)が有名ですが、このほか、神奈川県の三浦市松輪の松輪サバ、ゴマサバでは屋久島の首折れ鯖、土佐清水市の清水サバなどの地域ブランドが存在します。

缶詰にされる煮鯖も多く、最近、このサバ缶には痩せる効果があると話題になっているようです。

サバの缶詰には、「GLP-1」という物質が含まれており、この成分は糖分が急激に体に吸収されるのを抑え、空腹感を抑制する働きがあるということで、サバ缶を食べることで無理なダイエットをしなくても自然と痩せる効果があるのではないか、ということが言われています。

しかし、もともとサバ缶は1缶あたりのカロリーは約380kcalとやや高く、糖質も含まれているため、食べ過ぎは禁物で、やはり栄養のバランスを考えながら、色々な食品を偏りなく摂ることが大切です。

とはいえ、サバ缶には良質なたんぱく質をも多く含まれており、血液をサラサラにし、動脈硬化を防ぐEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの高度不飽和脂肪酸も含まれているので、健康的な食品であるといえるでしょう。

その一方で、生のサバは、やはりマグロやカツオといった魚に比べると痛みやすく、「鯖の生き腐れ」と呼ばれるほど鮮度の低下が著しいという欠点もあります。

古来よりサバは、食あたりが発生しやすい食材と知られており、これは脂肪分が多く鮮度低下が比較的早いということと、上述のとおりヒスタミン生産細菌によりヒスタミンが生じやすいことが原因です。

年を誤魔化す際の「サバを読む」という言葉は、鯖が大量に捕れ、かつ鮮度低下が激しいため、漁師や魚屋が数もろくに数えず大急ぎで売りさばいたのが起源という説もあるようです。

また、相撲の「鯖折り」ということばは、釣り上げた鯖の鮮度を保つために、エラから指を入れて頭部を上方に折り曲げるという手法がよく取られたことに由来します。

こうした相撲用語にも使われるほど、サバは古くから日本人になじみの深い食用魚です。「さば」の名称の由来は、一説には、小さい歯が多いことから「小(さ)歯(ば)」の意であるといいます。

平安時代には貢納品として朝廷などに貢納されることもあったといいますが、このころ既に鯖売りの行商が行われていたという記録もあり、庶民には馴染み深い魚であったようです。

弘法大師が旅僧の姿である商人に鯖を請うたという話があり、このときこの商人は弘法大師に鯖を与えなかったため、のちに罰せられたという伝説も残っています。

徳島県海陽町の「鯖大師本坊」には僧が鯖を手にもつ像が祭ってあるそうで、このお寺さんは弘法大師を本尊としているそうです。ここでは「鯖斷ち三年祈願」と言って、願掛けした後に鯖を三年間食べないことで、病気平癒・子宝成就・心願成就の御利益があると信じられています。

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金沢の北國新聞社がかつて出版した「おもしろ金沢学」という本には、「棟上げのサバは天狗よけ」と題して、越中五箇山や飛騨白川の山間地では正月の膳に必ず能登の塩サバが用意される、といった話が書いてあるということです。

京都や大阪では、「年とり魚」に塩ブリを使うそうですが、このように金沢や富山県の山間部では塩サバが使われるようです。

「年とり」というのは、大晦日に行う新年を迎えるための行事のことで、歳神様を迎えるにあたって、豪華な縁起物の料理を並べて祝うもので、昔はいわゆる「おせち料理」もこの夜のうちからふるまわれていました。

この「年とり」になくてはならないのが「年とり魚」であり、味もよく、立派な外見を持っている魚を「年とり魚」として供しましたが、この「年とり魚」としては、「東の塩ザケ」「西の塩ブリ」といわれるように関西ではブリ、関東ではサケに決まっていました。

その昔は、魚の保存方法と輸送手段が限られていたためで、江戸ではサケが入手しやすく、西日本では魚がブリのほうが入手しやすかったのがその理由です。

もともと戦国時代に、京都や大阪で、年とりの魚として北陸地方産の寒ブリを食す習慣がありましたが、この習慣が東に移行し、信州の松本、木曽福島、諏訪、飯田あたりまで広まり、江戸時代中期にはこの地方でもブリで祝う習慣が定着しました。

つまり、この長野県のラインがいわば「ブリの北限」で、これよりも北もしくは東ではサケが年とり魚とされたわけです。

それにしても、なぜ関西では年とり魚がブリなのに、これにほど近い金沢や富山などの山間部ではサバなのかはよくわかりません。

が、サバはどちらかといえば太平洋側でよく獲れる魚です。このため、その昔は、日本海側の金沢や富山では流通量が少なく、ましてや山間部では手に入りにくいものであったため、正月のめでたい供物としてはこちらのほうがより高級魚と判断されたのかもしれません。

現在でも静岡や三重、千葉といった太平洋側の県のサバの漁獲量に比べて、石川県や富山県のサバ漁獲量は十分の一以下と少ないほうです。

ところが、同じ日本海でも、京都に近い福井県の若狭湾などでは、その昔はサバがよく獲れたようで、この若狭湾で獲れたサバを畿内に持ち込むために開かれた専用街道もあったほどです。

現在の福井県はその大部分がその昔、若狭国と呼ばれ、ここは小浜藩が領有していましたが、この街道はこの小浜藩領内と京都を結ぶためのものでした。主に魚介類を京都へ運搬するための物流ルートでしたが、その中でも特に鯖が多かったことから近年になってからこれは「鯖街道」と呼ばれるようになりました。

現在のように鉄道や自動車が普及する以前の時代には、若狭湾で取れたサバは無論、徒歩で京都に運ばれました。さすがに距離があるため、痛みやすい生サバを京都市民が食することはできませんでしたが、若狭で生サバを塩でしめ、京都へ持ち込まれるころにはちょう良い塩加減になっていたため、この塩サバは京都の庶民に大人気だったそうです。

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福井県側の小浜市南部から鯖街道を通って、滋賀県側の高島市に入る際、標高約830mの「針畑峠」という峠を越えますが、冬にこの峠を越えて運ばれた鯖は寒さと塩で身をひきしめられて、特に美味であったとされています。

しかし、夏期は運び手が多かったものの、冬期は寒冷な峠を越えることから運び手は少なく、運び手の中には冬の峠越えのさなかに命を落とす者もいたそうです。

この鯖街道は、サバだけでなく多くの種類の海産物を京都に持ち込みました。平城宮の跡や、奈良県明日香村の都の跡で発掘された木簡には、若狭からタイの寿司など10種類ほどの海産物が運ばれたとする記録が残っているそうです。

また、現在の京都府橿原市にある藤原宮跡から出土した木簡には塩の荷札が多数見つかっており、鯖街道を利用して塩も多く運ばれたとみられています。

こうした史料から鯖街道の歴史は1200年以上、あるいは約1300年程度もあると考えられていますが、この鯖街道と呼ばれるものは、小浜市から若狭町三宅を経由して京都市左京区に至る「若狭街道」を指し、これはおおむね現在の国道27号や国道367号に相当するようです。

ただし、往時の若狭街道は現在の国道367号ではなく大見尾根を経由する山道であったほか、それぞれの国道ではバイパス道路が建設されているため旧道となっている区間もあるため必ずしも全部が全部は一致しないようです。

また、広義には、福井県南部から京都を結んだ街道全てを鯖街道と呼ぶこともあるようで、これらには例えば、小浜から琵琶湖の水運を経由して京都へ至る琵琶湖経由のルートも含まれます。

これは琵琶湖の西側を陸路で辿るルートで「西近江路」とも呼ばれ、おおむね現在の国道161号に該当するものです。このほか、小浜から朽木・久多・花脊峠経由、鞍馬街道を経て京都へ至るルートもあり、そのほかにも小浜から京都への最短距離をとる小浜街道ルート、そして、小浜から名田庄を経由する「周山街道」などがあります(ほぼ国道162号と一致)。

しかし、これらの街道を通ってその昔には大量の鯖が運搬されたというのに対して、現在の福井県での鯖の漁獲量はかなり少なくなっています。平成23年の統計では、茨城県の121900トンが一位なのに対して、福井県のそれはわずか200トンにすぎません。

もっとも、近年は日本近海で獲れるサバそのものの漁獲量が減っているようで、これが最近ノルウェーなどのヨーロッパからの輸入ものが多い理由です。

ヨーロッパでもサバはポピュラーな魚であり、フランスではエイプリルフールのことを Poisson d’avril というそうで、これは「4月の魚」とい言う意味で、この魚とは鯖を指しているといいます。これはヨーロッパではその昔、鯖が4月に入るとたくさん釣れたため、といわれています。

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このヨーロッパのサバは、「大西洋サバ」と呼ばれ、ノルウェー沖でよく獲れることから、通称「ノルウェーサバ(S. scombrus)とも言われているようです。昔は4月によく獲れたのかもしれませんが、やはりその旬は日本と同じ秋です。

アイルランド沖で春先に産卵し、孵化した幼魚は餌をとりながらノルウェー南部海域を目指すそうで、ノルウェー南部海域にはルンベと称される浅瀬があり、そこには海草が生い茂り波も静かでプランクトンが豊富です。

幼魚時期にここで成長し、回遊ができる体になってから北上を始めますが、ノルウェー北部海域にはプランクトンが豊富にある海域があり、索餌行動をして丸々と太ったサバは産卵のため南下を始めます。

程よく脂も抜けて、身もしまり風味が良くなる時期が、9月中旬から10月中旬であり、特にノルウェー中南部のオーレスンド沖で水揚げされる戻りのサバが最良とされているそうです。

近年の日本は、多くのサバをこのノルウェーから輸入しており、ノルウェーから日本への空路を指して、「現代の鯖街道」と言う人もいるほどです。

一方、日本で捕獲される鯖もやはり秋が旬で「秋サバ」と称されます。太平洋沿岸を回遊するサバは、伊豆半島沖で春頃産卵し、餌を食べながら北上します。特に北海道沖での海域は、プランクトンが豊富にありサバは丸々と太りますが、脂肪分は 皮と身の間などに貯められるため、まだ身に均等にまわっていません。

このサバが産卵のために南下を始める時期が9~10月頃であり、その時期のサバは脂肪が身に入りこみ、寒さのために身もしまり風味は格段に上がります。特に八戸沖で水揚げされる戻りのサバは最良とされているそうです。

北上するサバと南下するサバとでは脂肪含有率が全く違いますが、脂肪含有率の多い順は北海道沖→八戸沖→三陸沖→常磐沖→銚子沖→伊豆沖です。しかし、これより更に南下して九州沿岸に至ったサバ、あるいはこの海域で育ったサバは冬になると逆に脂肪を蓄えるようで、このためこの地域では冬が旬であり、俗に「寒サバ」と称されるのがこれです。

ちょうどいまごろ、我々が住まう伊豆半島の沖の海では、生まれたばかりのサバが餌を食べながら北上しているはずです。これから暑い季節がまたこの地にもやってきますが、この間、鯖たちは悠々と北海道の海で豊富な餌を食べ、またこの地に向かって帰ってくることでしょう。

秋になったら、その伊豆へ帰宅途中の丸々太ったおいしいサバを捕獲したものをたらふく食べたいものですが、それまでにこのサバアレルギーが完治していることを願ってやみません。

ちなみに、「秋鯖は嫁に食わすな」という言葉があるようです。元々は嫁いびりのために使われていたようですが、現代では「脂肪が多いから嫁さんにはよくない」という解釈もあるようです。

我が家でもデブになったタエさんは見たくないので、この秋サバを勧めるのはやめ、自分ひとりで食べようと思います。その秋が待ち遠しいところですが、その前にこのうっとうしい夏をなんとか生き延びねばなりません。

が、焦っても夏は通り過ぎてはくれません。月日の流れるのをサバサバと見守ることとしましょう。

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